425 / 491
9
424.宇宙人の概念
しおりを挟む
「あら、どうして?
私の体調管理を含めて、きちんとお世話する事は、例の王妃殿下と側妃殿下連名の契約書に書かれているわ?」
「ですから、こちらは聖女を世話役につけているではありませんか。
大体、それとこれと何の関係が……」
確かに今は聖女だけが僕についている。
何故か王子もついているけど、彼はノーカンでいいよね。
むしろ聖女は王子のお世話も担っていて、邪魔なんだけど。
契約書を持ち出すと、前回の一件もあってか、エセ教皇は警戒したように、怒りの勢いを無くした。
「あるに決まっていてよ。
聖女にしても、私の家族より治癒魔法は下手くそ。
さらに回復魔法は遥かに劣っていますもの。
いつまでも下手くそな魔法を受けていたら、私の体調が悪化してしまうわ。
1度でも私が大きく体調を崩し、生死の境を彷徨えばこの教会、ああ、もちろん本部も支部も含めて、私の家族によって物理的に潰されるかもしれない。
それは既に報告済みよね?
そうなれば……ふふふ、他国からも糾弾されるのではないかしら?」
「た、他国?」
エセ教皇の眉が寄る。
自国の王家ならともかく、流石に他国までは戦う想定していないのかな。
「何せ私、他国の王侯貴族にこそ繋がりが深いのですもの。
教会が望むような形で、この国が落ち着くのは……未来永劫ないかもしれませんわ」
「お、脅しか?!」
「いいえ、事実しか申し上げていなくてよ。
けれど然るべき誠意を見せていれば……最悪の事態は回避できる……かも?
そちらが誠意を見せるなら、王妃殿下と側妃殿下の両方と、同時にお会いするという条件付きで、お目通りしてもよろしくてよ?」
「なに……同時?
王妃と?!」
僕の話のテンポに目を白黒させ始めちゃった。
畳みかけるなら、今かな。
「あら、よくお考えになって?
完全なる王族側の、それもかなり重要な方がここに訪れるかもしれない。
この機会を設ける事により、得られる利益を」
「……利益」
社会科の教科書的宣教師風の目に、欲が透けて見える。
「ええ。
でもそうでなければ、私が側妃殿下にお会いする事はない。
私が他国の高位貴族令嬢である以上、これは決定事項。
そちらが正しく理解するべきよ」
諭すように微笑めば、彼は無言になる。
きっと頭の中で、欲にまみれた損得勘定を弾いているに違いない。
「…………側妃殿下と……話し合ってから決断致します」
やはり王妃よりも、この教会が重要視するのは側妃か。
色々情勢が垣間見えるね。
「ええ、もちろん。
ただ……本当に私をここに呼び寄せた方とひと月以内に会えないのなら、もう帰国致しましてよ」
その言葉に、片頬がピクッと反応を見せたけど、それを誤魔化すように、慌てて立ち上がる。
「……し、失礼致します」
そそくさと出て行こうとするエセ教皇はともかく、聖騎士は何だか名残惜しそうなお顔で僕を見る。
この人、何してんだろ?
暫し互いに見つめ合ってしまう。
「何をしておる!」
「ハッ、申し訳ありません!」
先に歩く教皇は、聖騎士がついて来ないのに気づいて、腹立たしそうに声を荒げた。
そこでやっと聖騎士が慌てて後を追い、そのまま2人で出て行く。
「惚れられたな」
「私のお顔は美少女だもの。
仕方ないよね」
ずっと無言で控えていたベルヌを振り返れば、とっても呆れたお顔だ。
かと思えば、彼はすぐに眉を顰める。
「ったく、自分で言うな。
それより少し休むんだ。
顔色が悪くなってるぞ」
「…………そうだね。
ちょっと疲れてきちゃった。
それより早く君の雇用主に来るよう、連絡してくれない?」
「……いや、だが……」
僕の言葉に、多分少なからず勝手をしているだろう、熊さんのお顔が曇る。
「あの令息につまらない痕跡を残すなら、さっさと来い。
宇宙人を燃やしちゃうぞ、って言っておいて」
「ウチュウジンて何だ?
隠語か?」
そういえば、この世界に宇宙の概念はなかったよね。
「全然違う。
意味はわからないと思うけど、意図は伝わるよ。
おやすみなさい」
「はぁ……言うだけかよ。
ああ、おやすみ」
立ち上がって、すぐ隣の寝室に向かう。
ベルヌはすれ違いざまに僕の頭を撫でてから、僕の座っていた椅子に腰かける。
これできっと、あの変態ひょろ長さんを駆使してでも、アイツはここに来るはずだ。
そう思いながら寝室に入って、ベッドにダイブ。
そのまま目を閉じた。
私の体調管理を含めて、きちんとお世話する事は、例の王妃殿下と側妃殿下連名の契約書に書かれているわ?」
「ですから、こちらは聖女を世話役につけているではありませんか。
大体、それとこれと何の関係が……」
確かに今は聖女だけが僕についている。
何故か王子もついているけど、彼はノーカンでいいよね。
むしろ聖女は王子のお世話も担っていて、邪魔なんだけど。
契約書を持ち出すと、前回の一件もあってか、エセ教皇は警戒したように、怒りの勢いを無くした。
「あるに決まっていてよ。
聖女にしても、私の家族より治癒魔法は下手くそ。
さらに回復魔法は遥かに劣っていますもの。
いつまでも下手くそな魔法を受けていたら、私の体調が悪化してしまうわ。
1度でも私が大きく体調を崩し、生死の境を彷徨えばこの教会、ああ、もちろん本部も支部も含めて、私の家族によって物理的に潰されるかもしれない。
それは既に報告済みよね?
そうなれば……ふふふ、他国からも糾弾されるのではないかしら?」
「た、他国?」
エセ教皇の眉が寄る。
自国の王家ならともかく、流石に他国までは戦う想定していないのかな。
「何せ私、他国の王侯貴族にこそ繋がりが深いのですもの。
教会が望むような形で、この国が落ち着くのは……未来永劫ないかもしれませんわ」
「お、脅しか?!」
「いいえ、事実しか申し上げていなくてよ。
けれど然るべき誠意を見せていれば……最悪の事態は回避できる……かも?
そちらが誠意を見せるなら、王妃殿下と側妃殿下の両方と、同時にお会いするという条件付きで、お目通りしてもよろしくてよ?」
「なに……同時?
王妃と?!」
僕の話のテンポに目を白黒させ始めちゃった。
畳みかけるなら、今かな。
「あら、よくお考えになって?
完全なる王族側の、それもかなり重要な方がここに訪れるかもしれない。
この機会を設ける事により、得られる利益を」
「……利益」
社会科の教科書的宣教師風の目に、欲が透けて見える。
「ええ。
でもそうでなければ、私が側妃殿下にお会いする事はない。
私が他国の高位貴族令嬢である以上、これは決定事項。
そちらが正しく理解するべきよ」
諭すように微笑めば、彼は無言になる。
きっと頭の中で、欲にまみれた損得勘定を弾いているに違いない。
「…………側妃殿下と……話し合ってから決断致します」
やはり王妃よりも、この教会が重要視するのは側妃か。
色々情勢が垣間見えるね。
「ええ、もちろん。
ただ……本当に私をここに呼び寄せた方とひと月以内に会えないのなら、もう帰国致しましてよ」
その言葉に、片頬がピクッと反応を見せたけど、それを誤魔化すように、慌てて立ち上がる。
「……し、失礼致します」
そそくさと出て行こうとするエセ教皇はともかく、聖騎士は何だか名残惜しそうなお顔で僕を見る。
この人、何してんだろ?
暫し互いに見つめ合ってしまう。
「何をしておる!」
「ハッ、申し訳ありません!」
先に歩く教皇は、聖騎士がついて来ないのに気づいて、腹立たしそうに声を荒げた。
そこでやっと聖騎士が慌てて後を追い、そのまま2人で出て行く。
「惚れられたな」
「私のお顔は美少女だもの。
仕方ないよね」
ずっと無言で控えていたベルヌを振り返れば、とっても呆れたお顔だ。
かと思えば、彼はすぐに眉を顰める。
「ったく、自分で言うな。
それより少し休むんだ。
顔色が悪くなってるぞ」
「…………そうだね。
ちょっと疲れてきちゃった。
それより早く君の雇用主に来るよう、連絡してくれない?」
「……いや、だが……」
僕の言葉に、多分少なからず勝手をしているだろう、熊さんのお顔が曇る。
「あの令息につまらない痕跡を残すなら、さっさと来い。
宇宙人を燃やしちゃうぞ、って言っておいて」
「ウチュウジンて何だ?
隠語か?」
そういえば、この世界に宇宙の概念はなかったよね。
「全然違う。
意味はわからないと思うけど、意図は伝わるよ。
おやすみなさい」
「はぁ……言うだけかよ。
ああ、おやすみ」
立ち上がって、すぐ隣の寝室に向かう。
ベルヌはすれ違いざまに僕の頭を撫でてから、僕の座っていた椅子に腰かける。
これできっと、あの変態ひょろ長さんを駆使してでも、アイツはここに来るはずだ。
そう思いながら寝室に入って、ベッドにダイブ。
そのまま目を閉じた。
0
あなたにおすすめの小説
転生騎士団長の歩き方
Akila
ファンタジー
【第2章 完 約13万字】&【第1章 完 約12万字】
たまたま運よく掴んだ功績で第7騎士団の団長になってしまった女性騎士のラモン。そんなラモンの中身は地球から転生した『鈴木ゆり』だった。女神様に転生するに当たってギフトを授かったのだが、これがとっても役立った。ありがとう女神さま! と言う訳で、小娘団長が汗臭い騎士団をどうにか立て直す為、ドーン副団長や団員達とキレイにしたり、旨〜いしたり、キュンキュンしたりするほのぼの物語です。
【第1章 ようこそ第7騎士団へ】 騎士団の中で窓際? 島流し先? と囁かれる第7騎士団を立て直すべく、前世の知識で働き方改革を強行するモラン。 第7は改善されるのか? 副団長のドーンと共にあれこれと毎日大忙しです。
【第2章 王城と私】 第7騎士団での功績が認められて、次は第3騎士団へ行く事になったラモン。勤務地である王城では毎日誰かと何かやらかしてます。第3騎士団には馴染めるかな? って、またまた異動? 果たしてラモンの行き着く先はどこに?
※誤字脱字マジですみません。懲りずに読んで下さい。
強制力が無茶するせいで乙女ゲームから退場できない。こうなったら好きに生きて国外追放エンドを狙おう!処刑エンドだけは、ホント勘弁して下さい
リコピン
ファンタジー
某乙女ゲームの悪役令嬢に転生したナディア。子どもの頃に思い出した前世知識を生かして悪役令嬢回避を狙うが、強制力が無茶するせいで上手くいかない。ナディアの専属執事であるジェイクは、そんなナディアの奇行に振り回されることになる。
※短編(10万字はいかない)予定です
転生したら鎧だった〜リビングアーマーになったけど弱すぎるので、ダンジョンをさまよってパーツを集め最強を目指します
三門鉄狼
ファンタジー
目覚めると、リビングアーマーだった。
身体は鎧、中身はなし。しかもレベルは1で超弱い。
そんな状態でダンジョンに迷い込んでしまったから、なんとか生き残らないと!
これは、いつか英雄になるかもしれない、さまよう鎧の冒険譚。
※小説家になろう、カクヨム、待ラノ、ノベルアップ+、NOVEL DAYS、ラノベストリート、アルファポリス、ノベリズムで掲載しています。
一緒に異世界転生した飼い猫のもらったチートがやばすぎた。もしかして、メインは猫の方ですか、女神様!?
たまご
ファンタジー
アラサーの相田つかさは事故により命を落とす。
最期の瞬間に頭に浮かんだのが「猫達のごはん、これからどうしよう……」だったせいか、飼っていた8匹の猫と共に異世界転生をしてしまう。
だが、つかさが目を覚ます前に女神様からとんでもチートを授かった猫達は新しい世界へと自由に飛び出して行ってしまう。
女神様に泣きつかれ、つかさは猫達を回収するために旅に出た。
猫達が、世界を滅ぼしてしまう前に!!
「私はスローライフ希望なんですけど……」
この作品は「小説家になろう」さん、「エブリスタ」さんで完結済みです。
表紙の写真は、モデルになったうちの猫様です。
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
美少女に転生して料理して生きてくことになりました。
ゆーぞー
ファンタジー
田中真理子32歳、独身、失業中。
飲めないお酒を飲んでぶったおれた。
気がついたらマリアンヌという12歳の美少女になっていた。
その世界は加護を受けた人間しか料理をすることができない世界だった
国外追放ですか?畏まりました(はい、喜んでっ!)
ゆきりん(安室 雪)
恋愛
私は、セイラ・アズナブル。聖女候補として全寮制の聖女学園に通っています。1番成績が優秀なので、第1王子の婚約者です。けれど、突然婚約を破棄され学園を追い出され国外追放になりました。やった〜っ!!これで好きな事が出来るわ〜っ!!
隣国で夢だったオムライス屋はじめますっ!!そしたら何故か騎士達が常連になって!?精霊も現れ!?
何故かとっても幸せな日々になっちゃいます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる