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428.真意はどこに〜ゼストゥウェルside
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「母上が?!」
「はい。
教会の者が急きょ、話し合いの場に参るようにと、今朝方迎えを寄越しました。
隣国のグレインビル侯爵令嬢が、是非この国の為にも話し合いの仲介をなさりたいと仰ったと。
あちらが持参した側妃殿下からの書状にも、そのように書かれてございます」
アリー嬢が異母弟である第3王子と共に、突如我が国の教会に赴いたと聞かされた。
内々にだが、ギディアス王太子にも頼まれる形で、王城で待機して情報を収集していた矢先の、寝耳に水な話。
伝えに来たのは、母である王妃の筆頭女官だ。
留学前にいた者と替わっている。
しかし如何せん、おかしな話だ。
それに私に伝えて来るのが遅すぎる。
今朝方起こった話を、昼過ぎに私へと伝えるのは何故なのか。
だがあのアリー嬢が、そんな不用意な話を進んでするはずがない。
つくづく自他国の王族と距離を置きたがる性分だ。
余談だが、そんなアリー嬢だからこそ、互いに名前で呼び合う仲となったルドルフは、早急な臣籍降下を行った。
私にとってもアリー嬢は特別な令嬢だが、私にはできなかった。
彼女への想いは封印すると、そう誓っている。
だからこそ腑に落ちない。
特に教会と王家で内戦状態と注目を浴びているこの状況で、それはあり得ない。
絶対に裏があると確信する。
彼女は妖精姫と呼ばれるくらいには、おっとりとした外見だ。
しかし中身は血の繋がりが無くとも、グレインビル家の気質そのもの。
意に沿わない束縛や、利用しようとする者には、対応が苛烈となる。
「共は3人のみ、教会という場所柄、全て女性とせよと申したか?!
こんな一方的な話を何故受けた?!」
「しかし国王陛下も許可を与えました」
「お前は何故もっと早く伝えに来なかった」
「申し訳ございません。
王妃殿下より、王子には黙っておくよう命令されました故に」
「ならば何故、今になって伝えに来た。
お前は王妃の筆頭女官であろう。
主に同行しなかったのは、何故だ」
「それは……」
「急ぎ陛下の元へ参る」
口ごもる筆頭女官に、違和感を持ち、更なる追求をしようとすれば……。
「その必要はない」
予想外の人物の登場に面食らう。
「陛下」
「この場で心のない挨拶などいらん」
正式な礼を取ろうとすれば、国王陛下によって素気なく断られる。
陛下がすぐに連れていた配下の者達に目配せすると、人がはける。
「お前も出ておれ」
「しかし……」
「王である儂に、2度も命令をさせようと?」
「……失礼致しました」
何故か食い下がる筆頭女官が最後に出て行った。
「陛下、王妃を行かせた理由をお聞かせ願いたい」
「全てはそなたの、ひいてはこの国の為だ」
挨拶が不要ならばと、早速本題に入れば、簡潔に答えが返る。
しかし……この国の為ならともかく、私の為と仰ったか?
正直、私と母上との間には、今は亡き実弟である第2王子が亡くなってから溝ができた。
出来の良い弟は、私を庇って死んだのだから、それも当然と受け入れてきた。
もちろんそれだけで無い事は、既に理解はしている。
それは陛下に対しても同じだ。
しかし如何せん、何故王妃を行かせる事がそこに繋がるのか……いや、まさか……。
「どういう意味かお聞きしてもよろしいか?」
「王妃は全ての膿を出し切る為に赴いた。
今、あの教会の支部には教皇、側妃、第3王子が揃っている。
刺し違えても、事を終わらせるだろうよ」
「王妃を……陛下の正妻を切り捨てると?」
やはり嫌な予感が的中したらしい。
思わず顔を顰める私と違い、陛下は凪いだ顔で伝える。
「王妃がそれを望んだ。
そして長らくの楔を自ら断ち切り、儂の次の代、つまりそなたに、しがらみによって歪まぬ治世をともな」
「だから次代の王となる者の実母を犠牲にするのを受け入れろと?」
ふざけるな、と怒りが湧く。
もちろんそれを以前の、隣国へ留学してすぐの頃のようには、顔に出さない。
「そうだ。
これによって国教というものは無くなり、長らく蔓延した腐敗も、歪められた歴史もあるべき姿へと変わるだろう」
陛下もまた、特段表情を変える事なくそう告げた。
真意はどこにあるのか……探らなければ。
「はい。
教会の者が急きょ、話し合いの場に参るようにと、今朝方迎えを寄越しました。
隣国のグレインビル侯爵令嬢が、是非この国の為にも話し合いの仲介をなさりたいと仰ったと。
あちらが持参した側妃殿下からの書状にも、そのように書かれてございます」
アリー嬢が異母弟である第3王子と共に、突如我が国の教会に赴いたと聞かされた。
内々にだが、ギディアス王太子にも頼まれる形で、王城で待機して情報を収集していた矢先の、寝耳に水な話。
伝えに来たのは、母である王妃の筆頭女官だ。
留学前にいた者と替わっている。
しかし如何せん、おかしな話だ。
それに私に伝えて来るのが遅すぎる。
今朝方起こった話を、昼過ぎに私へと伝えるのは何故なのか。
だがあのアリー嬢が、そんな不用意な話を進んでするはずがない。
つくづく自他国の王族と距離を置きたがる性分だ。
余談だが、そんなアリー嬢だからこそ、互いに名前で呼び合う仲となったルドルフは、早急な臣籍降下を行った。
私にとってもアリー嬢は特別な令嬢だが、私にはできなかった。
彼女への想いは封印すると、そう誓っている。
だからこそ腑に落ちない。
特に教会と王家で内戦状態と注目を浴びているこの状況で、それはあり得ない。
絶対に裏があると確信する。
彼女は妖精姫と呼ばれるくらいには、おっとりとした外見だ。
しかし中身は血の繋がりが無くとも、グレインビル家の気質そのもの。
意に沿わない束縛や、利用しようとする者には、対応が苛烈となる。
「共は3人のみ、教会という場所柄、全て女性とせよと申したか?!
こんな一方的な話を何故受けた?!」
「しかし国王陛下も許可を与えました」
「お前は何故もっと早く伝えに来なかった」
「申し訳ございません。
王妃殿下より、王子には黙っておくよう命令されました故に」
「ならば何故、今になって伝えに来た。
お前は王妃の筆頭女官であろう。
主に同行しなかったのは、何故だ」
「それは……」
「急ぎ陛下の元へ参る」
口ごもる筆頭女官に、違和感を持ち、更なる追求をしようとすれば……。
「その必要はない」
予想外の人物の登場に面食らう。
「陛下」
「この場で心のない挨拶などいらん」
正式な礼を取ろうとすれば、国王陛下によって素気なく断られる。
陛下がすぐに連れていた配下の者達に目配せすると、人がはける。
「お前も出ておれ」
「しかし……」
「王である儂に、2度も命令をさせようと?」
「……失礼致しました」
何故か食い下がる筆頭女官が最後に出て行った。
「陛下、王妃を行かせた理由をお聞かせ願いたい」
「全てはそなたの、ひいてはこの国の為だ」
挨拶が不要ならばと、早速本題に入れば、簡潔に答えが返る。
しかし……この国の為ならともかく、私の為と仰ったか?
正直、私と母上との間には、今は亡き実弟である第2王子が亡くなってから溝ができた。
出来の良い弟は、私を庇って死んだのだから、それも当然と受け入れてきた。
もちろんそれだけで無い事は、既に理解はしている。
それは陛下に対しても同じだ。
しかし如何せん、何故王妃を行かせる事がそこに繋がるのか……いや、まさか……。
「どういう意味かお聞きしてもよろしいか?」
「王妃は全ての膿を出し切る為に赴いた。
今、あの教会の支部には教皇、側妃、第3王子が揃っている。
刺し違えても、事を終わらせるだろうよ」
「王妃を……陛下の正妻を切り捨てると?」
やはり嫌な予感が的中したらしい。
思わず顔を顰める私と違い、陛下は凪いだ顔で伝える。
「王妃がそれを望んだ。
そして長らくの楔を自ら断ち切り、儂の次の代、つまりそなたに、しがらみによって歪まぬ治世をともな」
「だから次代の王となる者の実母を犠牲にするのを受け入れろと?」
ふざけるな、と怒りが湧く。
もちろんそれを以前の、隣国へ留学してすぐの頃のようには、顔に出さない。
「そうだ。
これによって国教というものは無くなり、長らく蔓延した腐敗も、歪められた歴史もあるべき姿へと変わるだろう」
陛下もまた、特段表情を変える事なくそう告げた。
真意はどこにあるのか……探らなければ。
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