太夫→傾国の娼妓からの、やり手爺→今世は悪妃の称号ご拝命〜数打ち妃は悪女の巣窟(後宮)を謳歌する

嵐華子

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2.

16.初めてのこと〜晨光side

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『弱すぎます』
『端的すぎませんか?
もう少しつけ加えて下さい』
『貴方様は丞相であり、生家はフォン公家。
しかし残念ながら現皇帝が戴冠した際に出世を見込んで本家に養子入りさせられた分家の子供に過ぎません。
何よりフォン家は未だにご当主もご健在。
その上血の繋がりのあるご令息は3人おられ、成人して久しい上のお2人は要職についていらっしゃいます。
血の繋がったご令嬢であられる癇癪持ちの凜汐リンシー貴妃を後宮入りさせたのも、そうした背景からでしょう。
貴方様の理想とする皇帝陛下の伴侶に、かの貴妃が必要とは思えませんもの。
仮に丞相の任を解かれたらフォン家との養子縁組も解消させられる、ある意味、期間限定の関係。
油断なさらず、息災な内は問題ないでしょうが、そうでなくなった時の足元はとても不安定では?
そして私の後宮入り前の姓は貴方様の生家の権力が及ばぬフー伯家のまま。
本来ならば力のある家門、少なくとも爵位が侯以上の家門に養子縁組した上で入宮させようとなさるのが普通かと。
となれば、考えられる事など絞られましょう?』

 そこで区切って押し黙る。
微笑みを浮かべたまま、特に続けるつもりもないようだ。

『最後まで言ってくれてかまいませんよ』
『致しません』
『何故?』
『そちらの方が私には利がありそうですもの』
『なるほど。
何故そう思うのかお聞きしても?』
『貴方様は質問に質問で返されるのは嫌う方。
そして自らが常に優位に立ってお話しされるのがお好きな方。
なれど……あまりに手応えがないと興味を失う方。
手応えがあり過ぎると逆に手折りたくなる方』
『端的には?』

 興味本位からそう聞けば、実に小気味よい返事が返ってきた。

『傲慢、利己的、偏屈、加虐趣味』
『ぶふっ』

 思わず吹き出してしまったが、そんな事は一体どれくらいぶりだろうか。

『そのように仰る方は現皇帝と現皇貴妃以来ですよ』
『左様ですか。
それで、どうされます?』
『この話は無かった事にはしない方が良さそうですね。
罰についてはむしろ入宮する方が貴女には罰になりそうです』
『それは残念です。
とても……はぁ』

 大きため息と共に微笑みが剥がれた。
そうしていれば、年より幼く見え、これまでに感じていなかった些かの申し訳無さも湧いてくる。

 丞相という大役を得てこの帝国の皇帝となった幼馴染みの為に生きると決めた時から老若男女問わず、まつりごとに関わる者には私情を挟まず、ただの餌や道具としてしか見ないと決めていたのに……駄目だな。

『心底お嫌なんですね』

 思わずそんな自分に苦笑しながらそう言ってしまう。

『ええ、とっても』
『情感を込め過ぎでは?
一応はこの帝国で唯一認められた一夫多妻制の皇帝陛下の妻なのですよ?』
『生憎、顔も知らぬ女子おなごと夫を共有して喜ぶ趣味はございません。
それも名ばかりの数打ち妃ではどこにありがたみを感じろと?』
『随分はっきりと』
『それくらい嫌ですから』

 皇帝という権力に群がる女人達とは違い、小娘は女人としての感情を優先しているようだ。

 ある意味ではこの小娘を選んで正解であり、だからこそまだ14歳という若さで後宮に入れようとした事への罪悪感が増して、苦い笑みを浮かべてしまう。

『そういえば私がここに来ないとは思わなかったんですか?』

 それでも取り消すつもりはないから、話題を変える。

『拝聴致しました貴方様の性格では、興味と利があると思えば辺境の地であろうといらっしゃるのでは?
そもそもが我がフー家のうまみなど朝廷に務める重鎮方々にはないはず。
ならばむしろ期待するのはそこしかありません』

 事前の情報収集能力と判断能力はまずまずか。

『ええ、正解です。
貴女はただ好きに過ごしていただければ問題ありませんよ』

 その上長らく忘れていた感情を思い出してしまった以上は、なるべくこの幼い小娘を守ってやりたいと思ってしまう。

 皇帝が即位し、後宮に他の貴妃や嬪を迎えてからこれまでに後宮の住人を人と認識したのは初めての事だったかもしれない。
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