太夫→傾国の娼妓からの、やり手爺→今世は悪妃の称号ご拝命〜数打ち妃は悪女の巣窟(後宮)を謳歌する

嵐華子

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3.

56.投資と無駄金とサロン

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「それで魔力が幾らか抑えられていたのでしょう」

 それに殿方は命のやり取りをしたり疲れている時ほど夜に燃える方もおられます。
当時は今より若かったようですし。

 もちろんそこは口には出しませんよ。
まだうら若き新妻ですからね。

「陛下の事ですから狩りでは覇気を使いながら大きな熊と虎に対峙していたはずですし、徹夜が続くなど精神的な疲弊が大きくなるとそれなりに魔力量が減りますからね」

 特に苛々すると覇気やら威圧ならを無意識に放ちそうな性格……。

「何か失礼な事を考えておらぬか」
「気のせいですよ」

 本当の事しか考えておりませんでしたが、うっかりご尊顔を呆れた目で見続けたようですね。
にこりと微笑んでヨリヨリをモグモグします。

「しかしまずはこの後宮の地理的な環境を整えて、それからです。
それに今やっても下手くそな魔力の調整では皇貴妃があてられて覇気を当てた時のような変調をきたしかねませんから」
「下手くそ……」
「なるほど。
しかしこの宮だけならまだしも、他の宮まで環境を整えるとは、どうされるおつもりなのです?」

 下手くそさを指摘されて愕然とするどなたかは放っておいて、丞相の口調が気に入りませんね。

「はて?
何故そこでさも私が何かしらするのを当然とした口調でお話されるのでしょう?
そもそもこの宮以外の主は私ではありませんから、私は何もできませんし、契約にはそこまでする事は入っておりませんでしたでしょう。あくまで動くのはこの後宮の責任者方。ね、陛下?」

 後宮全体の責任者は陛下と皇貴妃です。
それにさっさと去るつもりしかないのに私が自腹でこの場所をまともに修繕するはずもありません。

 そもそもあの廃れた建物の半分は基礎の部分からやり直さねば修繕したところで建物部分が傾きかねない状況でした。
元が古い建物なのに無人となり雨ざらし状態が100年以上ですから、半分だけでも基礎が生きているだけで凄いというべきでしょうが、そんなの関係ありません。

 投資は額が大きくても許容できますが、無駄金なら別です。

 私からすれば本当に長く住まうわけでもないのですから、改修費用の他にも撤去費用が高くつく不良物件です。

 思わずムスッとして本来の責任者に丸投げの姿勢を見せれば、丞相は小さく苦笑い。

「ふぐっ。
小娘、策はないのか」
「ガウニャ~ゴ」

 あら、子猫ちゃんが割って入りましたね。

 お腹がおきてゴロゴロ喉を鳴らして私のお膝に。
可愛らしいのでモグモグしながらヨシヨシします。

 そこの殿方2人に加えて後ろの護衛も最初こそ驚いておりましたが、もはや慣れてしまったのか反応しなくなりました。

 彼にもやはり靄として見えているのでしょうか?
後で確認してみましょう。

「貴妃、私の言い方が悪かったのは謝ります。
陛下に助言して下さいませんか?」

 しれっと私に打ち返した質問を無視しようとしていれば、気配を感じた腹黒さんは謝罪しつつ下手に出てきます。

「今は何とも……ああ、それならばせっかくの四夫人が揃ったのを記念して陛下と皇貴妃とで沙龙サロンを催して下さい。
小宴ではなく、あくまでも顔合わせと談話が目的の沙龙サロンです。
出すのはお茶と茶菓子程度で……大皿に盛り、最初陛下が必ず先に食べてから適当に取り分けて下さい。
毒を入れにくくなりますから」
「毒……」

 はぁ、と陛下がため息を吐きます。
そうですね、後宮の女人は毒の混入が大好きなようですからね。

「陛下と四夫人と三嬪、各人の筆頭女官を各1名は必ず。
丞相が混ざるのなら他の三公方にもお声かけ下さい。
参加は自由でかまいませんが、それ以外の者はやめて下さい。
元々私にとっては陛下と後宮の者以外はいなくても良いので。
そうですね、内々の単なる顔合わせと談話目的ですから……来週以降3数週間以内で日時を組んで下さい。
そして陛下は必ず皇貴妃以外の全ての貴妃と嬪に私を伴って声をかけ、なるべく皇貴妃から目を離して下さい」
「それは……」

 陛下が渋るのは予測済みです。
愛妻家を前面に押し出してきた夫の立場からすれば、私を迎えた事で不仲となったように見えるのは避けたいところでしょう。

 無表情な丞相は陛下の出方を観察しているようです。
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