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117.丞相の追求
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「一応尋ねますが、その乳母はどのような沙汰が?」
「……何も。
侍女と会っていたとはいえ、既に僧侶でもないただの平民です。
それに無体を働こうとしたのは間違いなく、駆けつけた兵士が現れた途端の出来事でした。
遺体も既に検分し終わっています。
宇家から大尉を介し、直々の指示により正当防衛で早々に処理されています」
やはりそうでしたか。
「兵士が都合良く現れる場所だったのでしょうか?」
「たまたま付近を定期巡回する未明の時間で、場所もこの寺に参拝する者が時折通る道近くの雑木林でした。
悲鳴を聞いて駆けつけてきたので、兵士が示し合わせた訳では無さそうです」
「隷属紋を壊されたかの確認は?」
「…………何も」
「その乳母に異常は?」
「……ありませんでした」
高僧達には隷属の紋が施されていて、それを壊されて廃人となったのだと思いますが、そもそもそんな紋を僧侶に施してある事が問題です。
恐らくその乳母はその紋がある事を知っていて、魔力を強制的に送って壊した。
その上で異常無しとなれば、それなりに高い魔力を有している方ですが、紋を壊されてしまえば描いた紋は消えてしまいます。
その跡を見つけるのは、それこそその道の専門家でもなければ難しい。
「高僧達に何をさせたかったのでしょうか?」
「滴雫貴妃の悪評を流したかったのは間違いまりません。
しかしあの高僧達に隷属の紋を施したのは、貴女が入宮するより以前だったと推察しています」
丞相が話に割って入ると、大雪に目配せして下がらせました。
「陵墓の倒壊を招いた貴方なら、何か察したのではありませんか?」
「まあ、倒壊を招いただなんて」
顔は紗に隠れていますが、おすまし顔にしておきます。
そもそも私のせいではありませんし。
「ご謙遜を」
「何も謙遜などしておりませんし、そもそもこのか弱い腕でどうやって倒壊させるのです?」
「それを聞いているのですが?
貴女が夜の散歩とやらで行方をくらませている間に、元高僧達が貴女だと勘違いした侍女の殺害を未遂とはいえ実行したとの一文だけでも十分に驚き、何故そうなったのか疑問が残っています」
「そうですね、自業自得でそうなったとはいえ、そこから殺害を企てるに至るのは極端だとは思っていますが、他ならぬ犯人が亡き者になりましたからね。
動機は闇に葬られましたね」
「法印大僧正が騒ぎを聞きつけ、他の僧侶と共に駆けつけた後、更に貴女が居ない事を知ってあの方は何故か貴女の安否を口にしながら陵墓に向かったとありますが、何故陵墓だと判断したのでしょうね?」
「それは私ではなく、ご本人にお聞きになられるできでは?」
困り顔を作る丞相ですが、目は興味津々ではありませんか?
紗に隠れた私の目を見えているかの如く捕らえてきます。
「【高祖望まぬ者、雨濡れに立ち入らば冥府に向かう】という言い伝えを信じて、法印大僧正1人で陵墓の中に入り、その後何故か貴女の護衛に担がれて笑いながら出てきた後、陵墓の出入口から火が吹いたそうですが、彼は何をしていたのでしょう?
何故かの方は笑っていたのでしょうね?
火が吹いたのは何故だと思いますか?」
「大僧正を目撃した私の護衛が心配して後を追ったのに他の僧侶達が気づかなかったようですね。
仕方ありません。
うちの護衛は気配を殺すのも夜闇に紛れるのも、とっても上手ですから。
しかし大僧正が何故笑っていたのかも、火が吹いたのも、私のは知りませんよ」
恐らく場所が地下なので、雨の日に湧き上がる地下水と共にそういう類の、神経性のガスが上がってくる仕組みではないかと推察しています。
火の玉説や、その後の発火はそのガスに引火したか、忍びこもうとした者が原因ではないでしょうか?
忍びこんだ者は大体が灯りを持っているはずですし、今回に至っては私が火を点けて弔ったのが引き金だったような気がしないでもありません。
「その後陵墓の出入口となる建物が倒壊し、地面に埋没し、笑いが治まった大僧正が貴女の名を叫びながら僧侶達に助けろ、掘り起こせと言い出したそうです。
貴女も中に居たと考えるのが自然ではありませんか?」
「実際私はその後、そんな彼らの背後から現れましたから、不自然としか言えませんね」
もちろん、いけしゃあしゃあと答えます。
一々真実を報告する方が色々と面倒な事になりそうですし。
「……何も。
侍女と会っていたとはいえ、既に僧侶でもないただの平民です。
それに無体を働こうとしたのは間違いなく、駆けつけた兵士が現れた途端の出来事でした。
遺体も既に検分し終わっています。
宇家から大尉を介し、直々の指示により正当防衛で早々に処理されています」
やはりそうでしたか。
「兵士が都合良く現れる場所だったのでしょうか?」
「たまたま付近を定期巡回する未明の時間で、場所もこの寺に参拝する者が時折通る道近くの雑木林でした。
悲鳴を聞いて駆けつけてきたので、兵士が示し合わせた訳では無さそうです」
「隷属紋を壊されたかの確認は?」
「…………何も」
「その乳母に異常は?」
「……ありませんでした」
高僧達には隷属の紋が施されていて、それを壊されて廃人となったのだと思いますが、そもそもそんな紋を僧侶に施してある事が問題です。
恐らくその乳母はその紋がある事を知っていて、魔力を強制的に送って壊した。
その上で異常無しとなれば、それなりに高い魔力を有している方ですが、紋を壊されてしまえば描いた紋は消えてしまいます。
その跡を見つけるのは、それこそその道の専門家でもなければ難しい。
「高僧達に何をさせたかったのでしょうか?」
「滴雫貴妃の悪評を流したかったのは間違いまりません。
しかしあの高僧達に隷属の紋を施したのは、貴女が入宮するより以前だったと推察しています」
丞相が話に割って入ると、大雪に目配せして下がらせました。
「陵墓の倒壊を招いた貴方なら、何か察したのではありませんか?」
「まあ、倒壊を招いただなんて」
顔は紗に隠れていますが、おすまし顔にしておきます。
そもそも私のせいではありませんし。
「ご謙遜を」
「何も謙遜などしておりませんし、そもそもこのか弱い腕でどうやって倒壊させるのです?」
「それを聞いているのですが?
貴女が夜の散歩とやらで行方をくらませている間に、元高僧達が貴女だと勘違いした侍女の殺害を未遂とはいえ実行したとの一文だけでも十分に驚き、何故そうなったのか疑問が残っています」
「そうですね、自業自得でそうなったとはいえ、そこから殺害を企てるに至るのは極端だとは思っていますが、他ならぬ犯人が亡き者になりましたからね。
動機は闇に葬られましたね」
「法印大僧正が騒ぎを聞きつけ、他の僧侶と共に駆けつけた後、更に貴女が居ない事を知ってあの方は何故か貴女の安否を口にしながら陵墓に向かったとありますが、何故陵墓だと判断したのでしょうね?」
「それは私ではなく、ご本人にお聞きになられるできでは?」
困り顔を作る丞相ですが、目は興味津々ではありませんか?
紗に隠れた私の目を見えているかの如く捕らえてきます。
「【高祖望まぬ者、雨濡れに立ち入らば冥府に向かう】という言い伝えを信じて、法印大僧正1人で陵墓の中に入り、その後何故か貴女の護衛に担がれて笑いながら出てきた後、陵墓の出入口から火が吹いたそうですが、彼は何をしていたのでしょう?
何故かの方は笑っていたのでしょうね?
火が吹いたのは何故だと思いますか?」
「大僧正を目撃した私の護衛が心配して後を追ったのに他の僧侶達が気づかなかったようですね。
仕方ありません。
うちの護衛は気配を殺すのも夜闇に紛れるのも、とっても上手ですから。
しかし大僧正が何故笑っていたのかも、火が吹いたのも、私のは知りませんよ」
恐らく場所が地下なので、雨の日に湧き上がる地下水と共にそういう類の、神経性のガスが上がってくる仕組みではないかと推察しています。
火の玉説や、その後の発火はそのガスに引火したか、忍びこもうとした者が原因ではないでしょうか?
忍びこんだ者は大体が灯りを持っているはずですし、今回に至っては私が火を点けて弔ったのが引き金だったような気がしないでもありません。
「その後陵墓の出入口となる建物が倒壊し、地面に埋没し、笑いが治まった大僧正が貴女の名を叫びながら僧侶達に助けろ、掘り起こせと言い出したそうです。
貴女も中に居たと考えるのが自然ではありませんか?」
「実際私はその後、そんな彼らの背後から現れましたから、不自然としか言えませんね」
もちろん、いけしゃあしゃあと答えます。
一々真実を報告する方が色々と面倒な事になりそうですし。
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