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118.ドッと疲れが
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「その後、貴女が夜の散歩とやらに出ているとそこの護衛から聞かされた法印大僧正は、一転して怒り狂い、貴女の姿を見つけた後は気をやる程に更なる怒りを顕にしたそうで」
おや、そこで話を区切りましたか。
その後僧侶達が殺気立っていた事までは、伝わっていなかったのでしょうか。
となると丞相の手の者はこの寺にはいないという事になります。
大雪がこの寺に着いたのは、その後。
私もあの時の僧侶達については言及せず、無かった事にしていますから。
「なのにあの方が目覚め、貴女が面会すると、吹き荒ぶ怒りは嘘のように霧散。
それどころか、今や貴女を孫のように可愛がっている。
ええ、大雪から報告を受けてもにわかには信じられませんでしたが、目の当たりにして愕然としましたよ。
一体貴女はあの晩何をしていて、法印大僧正の逆鱗に触れ、何を言って、あの方を黙らせる以上に誑しこんだのですか?」
「まあ、誑しこむだなどと。
特にこれと言って何も?
倒壊した陵墓の建物の修繕費はこれも何かの縁と思って寄付致しましたから、そのせいではありませんか?」
そう、恐らく地下の陵墓そのものは既に体を為していないでしょう。
せめて地盤を固め直し、埋没した建物を掘り起こして建て直せる程度に寄付は致しました。
一応私の行動が引き金になったような気がしないでもありませんからね。
しかし何となく、高祖にはめられたような心地がして、地味にイラッとします。
「あの方は金や権力には興味のない、ただ信心深い僧侶で有名です。
何度も話す機会がある中で、私も噂通りの御仁と見ております。
この吉香寺の法印大僧正となるべくしてなられた僧侶だとね。
それに貴女に縁のある大商会がこの山の麓に土地を購入したと聞きましたが?」
「商会が手を打ったのはつい先日の事でしたが、お早い情報収集には感心致します。
けれど別段何も?
それに商会は商会の考えがあってそうしたのであって、私の知った事ではありませんよ?」
そう、少しばかり商会に情報を流しただけです。
あの豊富な地下水とガスで、少しばかりピンときたので。
チラリと丞相の後ろを見やれば、それとなく大雪は居心地悪そうな顔。
情報源は諜報能力の高い彼で間違いなさそう。
「ああ、ただ寂れて帝国からの寄付金頼みの生活に少なからず潤いがあればと、土地の商用利用の度合いに応じた寄付金を考えているようです。
その土地の持ち主が、大僧正の個人資産であってようございましたね。
元は無闇に他人が踏み荒らさぬようにと思っての土地の買い上げだったようですが、此度倒れた事で引き継ぐ方がいない事に不安を感じたのでは?
これで寺の修繕も幾らかは、随時賄えるようになるでしょう。
高祖の陵墓も潰れてしまいましたし、手を引きたい朝廷にとっては、それこそ経費削減になってようございましたね」
「そうですね。
陵墓の体を為さなくなった以上、これまで通りの補助を国として出す事も難しくなるでしょうから、願ってもない事かもしれません。
しかし貴女の悪評がまた増えましたよ?」
おや、麗人がどことなく残念そうな表情をなさいました。
彼の私に対しての望みは、私の悪評が育つ程に、しっかりと邪魔しているようで何よりです。
「まぁ、酷い。
して、どのような?」
「貴女のせいで陵墓が倒壊した。
貴妃としての資質に帝国の始祖、天斌嵐仙高祖が物申したのだ、と。
それも思いの外急速に広まっています」
「物申されたかどうかは存じませんが、貴妃としての資質が疑わしいのは肯定しかできませんね。
ならばそのような貴妃は、今からでも追い出されればよろしいのに」
「もちろん貴女はそうされたいのでしょうが、今のところその予定はありませんよ」
何とも涼やかなきっぱり宣言です。
「それはご愁傷様でした。
お互いに」
「私は貴女こそが皇貴妃に……いえ、それは今申し上げる事ではありませんね。
ただ皇貴妃が懐妊されない時は、私は貴女が女人として陛下に仕えていただきたいと、心から願っております。
皇貴妃も貴女なら受け入れてなお、陛下の側に在り続けて頂けそうなのですがね?」
「え、嫌ですよ」
「そんな心底嫌そうな声で」
「つまらない話は嫌いです。
そろそろ疲れました。
お引取りを」
「まだ体調が回復していない上に、気分を害しましたね。
失礼しました」
丞相はそう言うとすっと立ち上がり、礼をしてから外に出ていきました。
引き際を誤らないのは良い事です。
にしてと知りたかった情報は手に入りましたが、ドッと疲れを感じましたよ。
おや、そこで話を区切りましたか。
その後僧侶達が殺気立っていた事までは、伝わっていなかったのでしょうか。
となると丞相の手の者はこの寺にはいないという事になります。
大雪がこの寺に着いたのは、その後。
私もあの時の僧侶達については言及せず、無かった事にしていますから。
「なのにあの方が目覚め、貴女が面会すると、吹き荒ぶ怒りは嘘のように霧散。
それどころか、今や貴女を孫のように可愛がっている。
ええ、大雪から報告を受けてもにわかには信じられませんでしたが、目の当たりにして愕然としましたよ。
一体貴女はあの晩何をしていて、法印大僧正の逆鱗に触れ、何を言って、あの方を黙らせる以上に誑しこんだのですか?」
「まあ、誑しこむだなどと。
特にこれと言って何も?
倒壊した陵墓の建物の修繕費はこれも何かの縁と思って寄付致しましたから、そのせいではありませんか?」
そう、恐らく地下の陵墓そのものは既に体を為していないでしょう。
せめて地盤を固め直し、埋没した建物を掘り起こして建て直せる程度に寄付は致しました。
一応私の行動が引き金になったような気がしないでもありませんからね。
しかし何となく、高祖にはめられたような心地がして、地味にイラッとします。
「あの方は金や権力には興味のない、ただ信心深い僧侶で有名です。
何度も話す機会がある中で、私も噂通りの御仁と見ております。
この吉香寺の法印大僧正となるべくしてなられた僧侶だとね。
それに貴女に縁のある大商会がこの山の麓に土地を購入したと聞きましたが?」
「商会が手を打ったのはつい先日の事でしたが、お早い情報収集には感心致します。
けれど別段何も?
それに商会は商会の考えがあってそうしたのであって、私の知った事ではありませんよ?」
そう、少しばかり商会に情報を流しただけです。
あの豊富な地下水とガスで、少しばかりピンときたので。
チラリと丞相の後ろを見やれば、それとなく大雪は居心地悪そうな顔。
情報源は諜報能力の高い彼で間違いなさそう。
「ああ、ただ寂れて帝国からの寄付金頼みの生活に少なからず潤いがあればと、土地の商用利用の度合いに応じた寄付金を考えているようです。
その土地の持ち主が、大僧正の個人資産であってようございましたね。
元は無闇に他人が踏み荒らさぬようにと思っての土地の買い上げだったようですが、此度倒れた事で引き継ぐ方がいない事に不安を感じたのでは?
これで寺の修繕も幾らかは、随時賄えるようになるでしょう。
高祖の陵墓も潰れてしまいましたし、手を引きたい朝廷にとっては、それこそ経費削減になってようございましたね」
「そうですね。
陵墓の体を為さなくなった以上、これまで通りの補助を国として出す事も難しくなるでしょうから、願ってもない事かもしれません。
しかし貴女の悪評がまた増えましたよ?」
おや、麗人がどことなく残念そうな表情をなさいました。
彼の私に対しての望みは、私の悪評が育つ程に、しっかりと邪魔しているようで何よりです。
「まぁ、酷い。
して、どのような?」
「貴女のせいで陵墓が倒壊した。
貴妃としての資質に帝国の始祖、天斌嵐仙高祖が物申したのだ、と。
それも思いの外急速に広まっています」
「物申されたかどうかは存じませんが、貴妃としての資質が疑わしいのは肯定しかできませんね。
ならばそのような貴妃は、今からでも追い出されればよろしいのに」
「もちろん貴女はそうされたいのでしょうが、今のところその予定はありませんよ」
何とも涼やかなきっぱり宣言です。
「それはご愁傷様でした。
お互いに」
「私は貴女こそが皇貴妃に……いえ、それは今申し上げる事ではありませんね。
ただ皇貴妃が懐妊されない時は、私は貴女が女人として陛下に仕えていただきたいと、心から願っております。
皇貴妃も貴女なら受け入れてなお、陛下の側に在り続けて頂けそうなのですがね?」
「え、嫌ですよ」
「そんな心底嫌そうな声で」
「つまらない話は嫌いです。
そろそろ疲れました。
お引取りを」
「まだ体調が回復していない上に、気分を害しましたね。
失礼しました」
丞相はそう言うとすっと立ち上がり、礼をしてから外に出ていきました。
引き際を誤らないのは良い事です。
にしてと知りたかった情報は手に入りましたが、ドッと疲れを感じましたよ。
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