35 / 84
4 魔王様は、お年頃
4ー5 アルゼンテの魔石
しおりを挟むハヅキ兄さんが2人の側へと歩み寄ると声をかけた。
「失礼ですが、お話、聞いてしまいまして。もしよければ、我々と相部屋ですが、ホテルに宿泊されますか?」
「ほんまに?」
少女が泣き止んで顔をあげた。
しかし、彼氏らしい金髪の若者は、慌てて言った。
「しかし、見ず知らずの方にご迷惑をおかけするわけには」
「私たちなら、大丈夫です。お気遣いなく」
ハヅキ兄さんの言葉に、少女がぱぁっと微笑んだ。
そういうわけで、僕らは、この奇妙なカップルと相部屋になることとなった。
「うちは、アルゼンテ・アノニマス。ま」
「ああっ!」
突然、連れの若者がアルゼンテの口をふさいで大声を出した。
「わ、わたしは、ルヒテル。ルヒテル・ノースダウンといいます!」
「ぷはぁっ!」
アルゼンテが、ようやくルヒテルの手から逃れて息をついた。
「何するんや!」
「だって」
ルヒテルが何やら耳打ちすると、アルゼンテは、溜め息をついた。
「わかった、わかったって。うちが悪かった。気をつけるさかいに堪忍な」
「わかればいいんです。わかれば」
ルヒテルがちらっと僕たちの方をうかがった。
うん。
この人たち、なんか、ありそうだな。
夕方まで楽しんでから僕らは、『カピパランド』を後にしてカンパニュラの街のホテルへと向かった。
ホテルの前まで来るとアルゼンテがはっとして言った。
「こりゃ、あかん」
「何が?」
オルガがきくと、青ざめたアルゼンテが弱々しく言った。
「こんなお高そうな宿屋、いくら相部屋やいうても、うちら、金が払えへんわ」
うん。
確かに、僕らが泊まるこのホテル『かわうそ』は、このカンパニュラの街でも最高級のホテルだった。
僕は、アルゼンテに言った。
「大丈夫。宿代は、僕らがもつから」
「ほんまに?」
アルゼンテは、少し迷っている様子だったが、ルヒテルは、キッパリと言った。
「やっぱり、我々は、遠慮させていただきます。さっ、帰りますよ、まお・・アルゼンテ」
アルゼンテが項垂れてルヒテルと共に去ろうとしているのを見て、僕は、言った。
「君の、そのネックレスの魔石と交換ではダメかな?」
「えっ?」
アルゼンテが僕の方を振り返った。
アルゼンテは、小さいけれど美しい輝きの魔石が嵌め込まれたネックレスを身につけていた。
「こ、これは」
「これが欲しいんか?」
アルゼンテは、ルヒテルを遮ってきいた。僕は、頷いた。
「うん。とってもきれいな魔石だね」
「ほんまに?」
アルゼンテは、ちょっと悩んでから答えた。
「ええよ」
「ま、まお・・アルゼンテ!」
ルヒテルが慌ててアルゼンテに向かって言った。
「なりません、アルゼンテ!」
「ええやないか、ルヒテル」
アルゼンテは、ルヒテルを制してネックレスを外すと僕に手渡した。
「ほな、これ、な。ちゃんと受け取ってや。えっと・・」
「ユヅキ、だよ」
僕は、答えた。
「ユヅキ」
「うん。ユヅキはん」
アルゼンテがペコリと頭を下げた。
「それじゃ、これからよろしゅう頼みます、ユヅキはん」
「こちらこそ」
僕は、にっこり笑って応じた。
「よろしくお願いします」
その瞬間。
僕の手の中の魔石が鈍く輝くと僕とアルゼンテの首もとに光るわっかが現れ、そこから光の糸が延びて僕らを繋いだ。
5
あなたにおすすめの小説
屑スキルが覚醒したら追放されたので、手伝い屋を営みながら、のんびりしてたのに~なんか色々たいへんです(完結)
わたなべ ゆたか
ファンタジー
タムール大陸の南よりにあるインムナーマ王国。王都タイミョンの軍事訓練場で、ランド・コールは軍に入るための最終試験に挑む。対戦相手は、《ダブルスキル》の異名を持つゴガルン。
対するランドの持つ《スキル》は、左手から棘が一本出るだけのもの。
剣技だけならゴガルン以上を自負するランドだったが、ゴガルンの《スキル》である〈筋力増強〉と〈遠当て〉に翻弄されてしまう。敗北する寸前にランドの《スキル》が真の力を発揮し、ゴガルンに勝つことができた。だが、それが原因で、ランドは王都を追い出されてしまった。移住した村で、〝手伝い屋〟として、のんびりとした生活を送っていた。だが、村に来た領地の騎士団に所属する騎馬が、ランドの生活が一変する切っ掛けとなる――。チート系スキル持ちの主人公のファンタジーです。楽しんで頂けたら、幸いです。
よろしくお願いします!
(7/15追記
一晩でお気に入りが一気に増えておりました。24Hポイントが2683! ありがとうございます!
(9/9追記
三部の一章-6、ルビ修正しました。スイマセン
(11/13追記 一章-7 神様の名前修正しました。
追記 異能(イレギュラー)タグを追加しました。これで検索しやすくなるかな……。
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
『冒険者をやめて田舎で隠居します 〜気づいたら最強の村になってました〜』
チャチャ
ファンタジー
> 世界には4つの大陸がある。東に魔神族、西に人族、北に獣人とドワーフ、南にエルフと妖精族——種族ごとの国が、それぞれの文化と価値観で生きていた。
その世界で唯一のSSランク冒険者・ジーク。英雄と呼ばれ続けることに疲れた彼は、突如冒険者を引退し、田舎へと姿を消した。
「もう戦いたくない、静かに暮らしたいんだ」
そう願ったはずなのに、彼の周りにはドラゴンやフェンリル、魔神族にエルフ、ドワーフ……あらゆる種族が集まり、最強の村が出来上がっていく!?
のんびりしたいだけの元英雄の周囲が、どんどんカオスになっていく異世界ほのぼの(?)ファンタジー。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~
空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。
もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。
【お知らせ】6/22 完結しました!
【完結】転生したら最強の魔法使いでした~元ブラック企業OLの異世界無双~
きゅちゃん
ファンタジー
過労死寸前のブラック企業OL・田中美咲(28歳)が、残業中に倒れて異世界に転生。転生先では「セリア・アルクライト」という名前で、なんと世界最強クラスの魔法使いとして生まれ変わる。
前世で我慢し続けた鬱憤を晴らすかのように、理不尽な権力者たちを魔法でバッサバッサと成敗し、困っている人々を助けていく。持ち前の社会人経験と常識、そして圧倒的な魔法力で、この世界の様々な問題を解決していく痛快ストーリー。
神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~
あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。
それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。
彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。
シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。
それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。
すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。
〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟
そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。
同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。
※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。
異世界帰りの勇者、今度は現代世界でスキル、魔法を使って、無双するスローライフを送ります!?〜ついでに世界も救います!?〜
沢田美
ファンタジー
かつて“異世界”で魔王を討伐し、八年にわたる冒険を終えた青年・ユキヒロ。
数々の死線を乗り越え、勇者として讃えられた彼が帰ってきたのは、元の日本――高校卒業すらしていない、現実世界だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる