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10 夏の夜の夢

10ー9 戦う!

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 10ー9 戦う!

 気がつくともうすでに俺たちは、異世界にいた。
 「な、なんだ?」
 ラキアスが何が何やら理解できないという様子で俺に訊ねた。
 「何が起きたんだ?」
 俺たちは、クルクスの家の俺の部屋にいた。
 突然、部屋の扉が開いてルゥが現れた。
 「ご主人様!」
 「事態はどんな具合だ?」
 俺は、ルゥにきいた。
 ルゥは、すぐに答えた。
 「カルリオスの神、海の女神 アイラがカルリオスの軍を率いてこのクルクスの街を攻めてきています。今は、この街は、カルリオスの軍隊によって閉鎖されています」
 「奴らの目的は?」
 俺が訊ねるとルゥは、少し顔をこわばらせた。
 「たぶん、ご主人様、です」
 ルゥが言うには、敵は、ミミアスたち3神を返すことと、その神々に危害を加えた者を差し出すことを要求しているのだとか。
 「ああ」
 俺は、頷いた。
 「それなら俺だわな」
 「どうされますか?」
 ルゥが俺に訊ねた。
 「逃げますか?」
 「はぁっ?」
 俺は、ルゥに告げた。
 「仕方がないだろう。投降するさ」
 「えっ?」
 ルゥが驚いた様子で俺をまじまじと見た。
 「投降するんですか?」
 「もちろん」
 俺は、はぁっと吐息をついた。
 「仕方ない。それ以外にいい方法はあるのか?」
 「ご主人様が敵と戦うとか」
 ルゥが言い出したので俺は、すごい勢いで首を横に振った。
 「ダメダメ!戦争なんて、ダメだから!」
 「でも、捕まれば必ず殺されますよ?」
 ルゥの言葉に俺は、心底びびっていた。
 マジか?
 無抵抗で降伏すれば特別に許してもらえるとか、なかったっけ?
 俺は、考え込んだ。
 黒江が半笑いで言う。
 「お前、自分が持ってる力を忘れてるんじゃね?」
 「ああ?」
 俺は、はっと気づいた。
 そうだ!
 俺は、力を得ていたのだ!
 俺は、にやりと笑った。
 「アイラの奴、吠え面かかしてやるぜ!」
 「いっとくが、アイラは、我々幼い神々の中では、最強だぞ」
 ラキアスが俺に言い放つ。
 「悪いことはいわない。さっさと投降しろ」
 俺は、一瞬だけ躊躇した。
 だが、俺の気持ちは、決まっていた。
 このクルクスの街の未来を守る!
 将来、俺と親しくなるかもしれない連中のために俺は、戦う!
 そう決めたのだ。
 俺は、ルゥに告げた。
 「行くぞ!」
 「は、はいっ!」
 ルゥが返事をした。
 俺は、街を囲んでいる城壁へと向かって歩き出した。
 見ていろよ、アイラとやら!
 目にもの見せてやる!
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