正しい子供の作り方

トモモト ヨシユキ

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1 転生者は、隠されたい。

1ー3 卒業前夜

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 1ー3 卒業前夜

 貴族学園は、王都にある全寮制の学園だ。
 ほんとならかなりの金がかかる。
 制服だって作らないといけないし、教科書やらなんやら。
 考えたら僕みたいな貧乏男爵家の子息なんかが通えるところじゃない。
 そこに通えるのは僕が特待生だからだ。
 もちろん学業もがんばったけど、僕の運がよかったともいえる。
 試験のときに出会った令息が有力貴族の子息だったんだ。
 たまたま試験のとき隣に座っただけだったんだけどなぜか、僕のことを気に入ってくれて。
 もちろん彼は、僕の外見にひかれて僕を気にかけてくれてるわけじゃない。
 だって、僕は、認識阻害の魔道具を身に付けてるし。
 彼は、純粋に僕自身に興味を持ってくれたわけだ。
 そして、偶然にも彼の父である辺境伯は、学園長に顔がきいた。
 入学後に確認したら彼は、自分は何もしていない、と主張した。
 僕の特待生入学は、僕自身の努力の結果だ、と。
 ともかく僕は、奮起した。
 三年間の学園生活では、ほんとにがんばって勉学に励んだ。
 以外なことに勉強ばかりの生活だった筈なのに学園生活は、楽しかった。
 それは、彼のおかげだった。
 ロイド・フェル・ライナー。
 薄い茶色の髪と水色の瞳を持つ眩しいぐらい美しい人。
 ライナー辺境伯の嫡男である彼のおかげで僕の学園生活は豊かなものになった。
 ロイドは、僕の認識阻害の魔道具にすぐに気付いたけど、そのことを追求することはなかった。
 僕は、一度だけ彼にきいたことがあった。
 なんで僕が認識阻害の魔道具を使っていることを黙っているのかってこと。
 ロイドは、肩をすくめて困ったように笑った。
 「だって、人にはいろいろあるものだから」
 きっと辺境伯家みたいな立派な家柄だと複雑な人間関係とかがあるのだろう、と僕は納得した。
 でも。
 真実を知るのは3年後のことだった。
 あっという間の3年間が過ぎて。
 僕たちが卒業する前日のこと。
 僕とロイドは、二人きりで寮の部屋でお祝いのパーティーを開いていた。
 ほんとは学園で立派な卒業パーティーが開かれているのだが、僕たちは、それには参加しなかった。
 僕は、立派な衣装も用意できないしパートナーもいないからだけど、ロイドは、違う。
 彼は、卒業式の前夜を一人寂しく過ごす僕に同情してくれたんだろう。
 寮の厨房に頼んでちょっとしたごちそうと酒を用意して二人で乾杯した。
 そのときのこと。
 お互いに酔いが回ってきて。
 僕たちは、なんでもないことで笑って、はしゃいでいた。
 ふと、ロイドが手を伸ばして僕のメガネをはずした。
 「ロイド?」
 僕は、慌ててメガネを奪い返して身に付けた。
 ロイドは、ふぅっとため息をついた。
 「これは、隠さないといけないよな」
 
 
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