4 / 25
1 転生者は、隠されたい。
1ー4 旅立ち
しおりを挟む
1ー4 旅立ち
僕たちは、その夜、酔っぱらっていた。
なれない酒に溺れていたんだ。
ロイドは、もう一度僕のメガネをそっと奪うとそれをテーブルに置いた。
「きれいだ」
ロイドの言葉に僕は、心臓が早鐘を打つのを感じた。
きっと、僕たちは、その夜、おかしかったんだ。
どちらからともなく僕たちは、唇を重ねた。
お互いの熱を感じて。
すぐに唇を離すと僕たちは、一瞬の沈黙のあと照れ隠しみたいに笑った。
何事もなかったかのように。
それだけ。
それだけのことだ。
僕たちは、翌朝がきてもただの友達同士だったし。
卒業式の後、ロイドが僕にそっと呟いたのは、昔の話。
かつて貴族学園の生徒であった彼の父が王都で出会った女性の話。
「父の初恋だったらしい」
それは、僕と同じストロベリーブロンドのこの世のものとも思えないほどの美しい人だった。
「君を初めて見たとき、その父の話を思い出した」
ロイドがいつものようにちょっと肩をすくめる。
「もしかしたら俺もその人に恋したのかもしれないな」
卒業後、僕は、王宮の官吏になる予定だった。
それは、そんなにわりはよくはないけど確実に家の助けになる筈だった。
だけど。
僕は、それを直前でキャンセルして家庭教師になることにした。
それは、ロイドの頼みだったから。
ロイドの従姉妹の嫁ぎ先で家庭教師を探しているとのことだった。
「従姉妹は、3年前に死んだんだ」
ロイドが僕に話す。
「その後、残された子供たちの家庭教師に困っているらしくて」
ロイドは、うかがうように僕を見つめた。
「官吏になるよりは給料もいいと思うんだがどうかな?」
僕には、ロイドのいいたいことがわかったような気がした。
ロイドは、僕との繋がりを保ちたいのかもしれない。
それは僕も同じで。
僕は、ロイドとの縁を失いたくはなかった。
給料も官吏になるよりいいみたいだし。
僕は、ロイドの誘いを受けることにした。
子供たちは、名門伯爵家の子女だということだし、そんなに困ることもないだろう。
それに。
何より、時々、ロイドに会えるかもしれないし。
こうして僕は、貴族学園卒業後、家庭教師になることに決めた。
伯爵家の子供たちは、王都から離れた伯爵領で暮らしているとのことで僕は、生まれて初めて王都を出ることになった。
ロイドの父上の書いてくれた紹介状を持って鞄一つで僕は、王都を後にした。
父と兄は、僕が騙されているんじゃないかと心配してくれたけど、僕は、ロイドを信じていた。
「手紙を書くように」
父は、僕に言った。
「それから休暇の時は、必ず帰ってくるように」
僕は、頷いた。
「約束するよ、父さん」
僕たちは、その夜、酔っぱらっていた。
なれない酒に溺れていたんだ。
ロイドは、もう一度僕のメガネをそっと奪うとそれをテーブルに置いた。
「きれいだ」
ロイドの言葉に僕は、心臓が早鐘を打つのを感じた。
きっと、僕たちは、その夜、おかしかったんだ。
どちらからともなく僕たちは、唇を重ねた。
お互いの熱を感じて。
すぐに唇を離すと僕たちは、一瞬の沈黙のあと照れ隠しみたいに笑った。
何事もなかったかのように。
それだけ。
それだけのことだ。
僕たちは、翌朝がきてもただの友達同士だったし。
卒業式の後、ロイドが僕にそっと呟いたのは、昔の話。
かつて貴族学園の生徒であった彼の父が王都で出会った女性の話。
「父の初恋だったらしい」
それは、僕と同じストロベリーブロンドのこの世のものとも思えないほどの美しい人だった。
「君を初めて見たとき、その父の話を思い出した」
ロイドがいつものようにちょっと肩をすくめる。
「もしかしたら俺もその人に恋したのかもしれないな」
卒業後、僕は、王宮の官吏になる予定だった。
それは、そんなにわりはよくはないけど確実に家の助けになる筈だった。
だけど。
僕は、それを直前でキャンセルして家庭教師になることにした。
それは、ロイドの頼みだったから。
ロイドの従姉妹の嫁ぎ先で家庭教師を探しているとのことだった。
「従姉妹は、3年前に死んだんだ」
ロイドが僕に話す。
「その後、残された子供たちの家庭教師に困っているらしくて」
ロイドは、うかがうように僕を見つめた。
「官吏になるよりは給料もいいと思うんだがどうかな?」
僕には、ロイドのいいたいことがわかったような気がした。
ロイドは、僕との繋がりを保ちたいのかもしれない。
それは僕も同じで。
僕は、ロイドとの縁を失いたくはなかった。
給料も官吏になるよりいいみたいだし。
僕は、ロイドの誘いを受けることにした。
子供たちは、名門伯爵家の子女だということだし、そんなに困ることもないだろう。
それに。
何より、時々、ロイドに会えるかもしれないし。
こうして僕は、貴族学園卒業後、家庭教師になることに決めた。
伯爵家の子供たちは、王都から離れた伯爵領で暮らしているとのことで僕は、生まれて初めて王都を出ることになった。
ロイドの父上の書いてくれた紹介状を持って鞄一つで僕は、王都を後にした。
父と兄は、僕が騙されているんじゃないかと心配してくれたけど、僕は、ロイドを信じていた。
「手紙を書くように」
父は、僕に言った。
「それから休暇の時は、必ず帰ってくるように」
僕は、頷いた。
「約束するよ、父さん」
30
あなたにおすすめの小説
お兄ちゃんができた!!
くものらくえん
BL
ある日お兄ちゃんができた悠は、そのかっこよさに胸を撃ち抜かれた。
お兄ちゃんは律といい、悠を過剰にかわいがる。
「悠くんはえらい子だね。」
「よしよ〜し。悠くん、いい子いい子♡」
「ふふ、かわいいね。」
律のお兄ちゃんな甘さに逃げたり、逃げられなかったりするあまあま義兄弟ラブコメ♡
「お兄ちゃん以外、見ないでね…♡」
ヤンデレ一途兄 律×人見知り純粋弟 悠の純愛ヤンデレラブ。
あなたと過ごせた日々は幸せでした
蒸しケーキ
BL
結婚から五年後、幸せな日々を過ごしていたシューン・トアは、突然義父に「息子と別れてやってくれ」と冷酷に告げられる。そんな言葉にシューンは、何一つ言い返せず、飲み込むしかなかった。そして、夫であるアインス・キールに離婚を切り出すが、アインスがそう簡単にシューンを手離す訳もなく......。
魔王の息子を育てることになった俺の話
お鮫
BL
俺が18歳の時森で少年を拾った。その子が将来魔王になることを知りながら俺は今日も息子としてこの子を育てる。そう決意してはや数年。
「今なんつった?よっぽど死にたいんだね。そんなに俺と離れたい?」
現在俺はかわいい息子に殺害予告を受けている。あれ、魔王は?旅に出なくていいの?とりあえず放してくれません?
魔王になる予定の男と育て親のヤンデレBL
BLは初めて書きます。見ずらい点多々あるかと思いますが、もしありましたら指摘くださるとありがたいです。
BL大賞エントリー中です。
博愛主義の成れの果て
135
BL
子宮持ちで子供が産める侯爵家嫡男の俺の婚約者は、博愛主義者だ。
俺と同じように子宮持ちの令息にだって優しくしてしまう男。
そんな婚約を白紙にしたところ、元婚約者がおかしくなりはじめた……。
俺がこんなにモテるのはおかしいだろ!? 〜魔法と弟を愛でたいだけなのに、なぜそんなに執着してくるんだ!!!〜
小屋瀬
BL
「兄さんは僕に守られてればいい。ずっと、僕の側にいたらいい。」
魔法高等学校入学式。自覚ありのブラコン、レイ−クレシスは、今日入学してくる大好きな弟との再会に心を踊らせていた。“これからは毎日弟を愛でながら、大好きな魔法制作に明け暮れる日々を過ごせる”そう思っていたレイに待ち受けていたのは、波乱万丈な毎日で―――
義弟からの激しい束縛、王子からの謎の執着、親友からの重い愛⋯俺はただ、普通に過ごしたいだけなのにーーー!!!
言い逃げしたら5年後捕まった件について。
なるせ
BL
「ずっと、好きだよ。」
…長年ずっと一緒にいた幼馴染に告白をした。
もちろん、アイツがオレをそういう目で見てないのは百も承知だし、返事なんて求めてない。
ただ、これからはもう一緒にいないから…想いを伝えるぐらい、許してくれ。
そう思って告白したのが高校三年生の最後の登校日。……あれから5年経ったんだけど…
なんでアイツに馬乗りにされてるわけ!?
ーーーーー
美形×平凡っていいですよね、、、、
執着
紅林
BL
聖緋帝国の華族、瀬川凛は引っ込み思案で特に目立つこともない平凡な伯爵家の三男坊。だが、彼の婚約者は違った。帝室の血を引く高貴な公爵家の生まれであり帝国陸軍の将校として目覚しい活躍をしている男だった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる