正しい子供の作り方

1 転生者は、隠されたい。

1ー7 覗き見ですか？

　１ー７　覗き見ですか？

　イケオジ執事は、名前をトレモロ・ラキアスといった。
　彼は、現在、ほぼ寝たきりのご当主様に代わって領地の運営から子育てまで忙しくたち働いているようだ。
　どことなく疲れている様子。
　「お子さまたちにはいつお会いできますか？」
　僕が問うとラキアスさんは、ちょっと困った顔をする。
　「おそらく夕食時にはご紹介できるかと思われます」
　僕は、ラキアスさんに自分の居室へと案内された。
　「夕食までごゆっくりされてくださいませ」
　案内された部屋は、使用人の部屋にしては少し広めの立派な部屋だった。
　クリーム色の壁に所々、花柄の模様が描かれているのがなんだか可愛らしい。
　大きめの窓には淡いグリーンのカーテンがつけられている。
　家具は、壁際に置かれた大きめのベッドと窓際の文机と椅子しかなかったがどれもみな、高級そうなものばかりだ。
　床にも使用人の部屋とは思えない毛足の長いモスグリーンの絨毯が敷き詰められていた。
　僕は、この部屋が気に入った。
　ベッドの上に鞄を置くと窓辺に近づき窓を押し開ける。
　ふわりと爽やかな秋の風が吹き込んで僕の髪を撫でた。
　子供たちのことは、まだよくわからないが、なかなかいい職場なのかも。
　とりあえず僕は、道中着ていた茶色の上着を脱ぐと埃を払ってから部屋の隅にあるクローゼットの中にしまった。
　白いシャツと焦げ茶のズボンを脱ぐと鞄から取り出した部屋着に着替えようと思った。
　クローゼットの横に身繕いのためのちょっとした洗面台のようなものがあり、水の入った水入れと桶が置かれていたので僕は桶に水をはりそれで布を濡らして体を拭くことにした。
　長旅の間、ほとんど風呂にも入れなかったし。
　僕は、上半身裸になると濡れた布で体を拭った。
　冷たさが心地よい。
　僕は、ふぅっと吐息をついた。
　ほんとは風呂に入りたかったが使用人には高望みだろう。
　もう一度、布を濡らすとそれを固く絞って首もとを拭う。
　不意に窓の方で大きな音が聞こえて僕は、はっと振り向いた。
　開かれた窓から外を見ると窓の下に黒髪の子供が転げていた。
　どうやら椅子の上に台を置いて僕の部屋を覗こうとしていたらしい。
　地面に尻餅をついて呻いている子供に僕は、ちょっと呆れていた。
　人の部屋を覗くなんて！
　「他人の部屋を覗こうとするからそんなことになるんだよ？」
　僕は、その子に上から声をかけた。
　黒髪の子供は、きっと鋭い眼差しで僕を睨み付ける。
　「女みたいに生っ白いくせに！偉そうに言うな！」
　少年の言葉に僕の頬がかぁっと火照った。
　こいつ、僕の裸を覗き見ていたのか！
　「覗き見するような者に言われたくないな」
　僕が言うと少年の頬が真っ赤に染まる。