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2 転生者は、愛されたい。
2ー9 描きたい
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2ー9 描きたい
目のやり場に困っている僕を見てロイドがくすっと笑った。
「ほんとに君は、可愛らしいな」
ロイドが体を拭き終わるのを待って僕は、彼にシャツを渡す。
それを羽織ながら彼は、そっと僕の耳元で呟く。
「あまりかわいくて我慢ができなくなりそうだよ、ダニー」
「はひっ!?」
思わず変な声を出してしまった僕にロイドがクスクス笑った。
夕食前に一度自分の部屋へと戻った僕をフェリオス様が待ち構えていた。
最近、フェリオス様は、僕の部屋で絵を描いていることがよくある。
別に誰がフェリオス様が絵を描くことに反対しているということもないのだが、彼は、僕の他の者には絵を描いていることを隠したがっているようだ。
それで、今まで拾った木炭で紙にスケッチしていたらしい。
でも、僕が色鮮やかな絵の具や絵の道具をプレゼントした。
ちょっとお高かったけど、僕は、それをどうしてもフェリオス様に贈りたかったんだ。
僕には、絵のことなんてよくはわからない。
けれど、フェリオス様の描く絵は確かに煌めいていた。
才能、とでもいうのだろうか。
フェリオス様には、絵の才能がある。
きっと名のある者に弟子入りすれば後世に残る絵師になれるだろう。
しかし、それは許されない。
フェリオス様は、このポリドール伯爵家の嫡男なのだから。
絵師になることはできなくても趣味で絵を描くことは許される。
だから、僕は、フェリオス様に絵を描き続けて欲しいと思っている。
僕は、フェリオス様の作品が飾られた部屋をぐるりと見回した。
風景画が多いが何枚かは静物画もあった。
「フェリオス様は、人物画は描かないのですか?」
ふと僕が訊ねるとフェリオス様がびくっと体を震わせた。
「人間は、嫌いだ」
フェリオス様は、絵から顔を上げることなく呟く。
「人間は、嘘をつく」
僕は。
8歳の子供の言葉に胸が締め付けられるような気がした。
この敏いお子は、どれだけ傷ついてきたのか。
守って差し上げたい。
僕は、そう、思った。
「なら、人間を信じなくてもいいのでは?」
僕は、床の上に道具を広げて絵を描いているフェリオス様の前に跪く。
「人間を信じる必要はありません。必要なことは、あなたが幸福であることですから。ただ、あなたを心から愛し気を配っている人たちがいることだけは忘れないで」
フェリオス様は、応えなかった。
僕たちは、しばらく静寂の中にいた。
お互いの鼓動、呼吸音。
それ以外は何も感じることはできなかった。
しばらくして。
「・・・お前のことは、描きたいと思った」
フェリオス様が顔を上げて僕のことを見つめた。
「ダニー。お前のことが描きたい」
目のやり場に困っている僕を見てロイドがくすっと笑った。
「ほんとに君は、可愛らしいな」
ロイドが体を拭き終わるのを待って僕は、彼にシャツを渡す。
それを羽織ながら彼は、そっと僕の耳元で呟く。
「あまりかわいくて我慢ができなくなりそうだよ、ダニー」
「はひっ!?」
思わず変な声を出してしまった僕にロイドがクスクス笑った。
夕食前に一度自分の部屋へと戻った僕をフェリオス様が待ち構えていた。
最近、フェリオス様は、僕の部屋で絵を描いていることがよくある。
別に誰がフェリオス様が絵を描くことに反対しているということもないのだが、彼は、僕の他の者には絵を描いていることを隠したがっているようだ。
それで、今まで拾った木炭で紙にスケッチしていたらしい。
でも、僕が色鮮やかな絵の具や絵の道具をプレゼントした。
ちょっとお高かったけど、僕は、それをどうしてもフェリオス様に贈りたかったんだ。
僕には、絵のことなんてよくはわからない。
けれど、フェリオス様の描く絵は確かに煌めいていた。
才能、とでもいうのだろうか。
フェリオス様には、絵の才能がある。
きっと名のある者に弟子入りすれば後世に残る絵師になれるだろう。
しかし、それは許されない。
フェリオス様は、このポリドール伯爵家の嫡男なのだから。
絵師になることはできなくても趣味で絵を描くことは許される。
だから、僕は、フェリオス様に絵を描き続けて欲しいと思っている。
僕は、フェリオス様の作品が飾られた部屋をぐるりと見回した。
風景画が多いが何枚かは静物画もあった。
「フェリオス様は、人物画は描かないのですか?」
ふと僕が訊ねるとフェリオス様がびくっと体を震わせた。
「人間は、嫌いだ」
フェリオス様は、絵から顔を上げることなく呟く。
「人間は、嘘をつく」
僕は。
8歳の子供の言葉に胸が締め付けられるような気がした。
この敏いお子は、どれだけ傷ついてきたのか。
守って差し上げたい。
僕は、そう、思った。
「なら、人間を信じなくてもいいのでは?」
僕は、床の上に道具を広げて絵を描いているフェリオス様の前に跪く。
「人間を信じる必要はありません。必要なことは、あなたが幸福であることですから。ただ、あなたを心から愛し気を配っている人たちがいることだけは忘れないで」
フェリオス様は、応えなかった。
僕たちは、しばらく静寂の中にいた。
お互いの鼓動、呼吸音。
それ以外は何も感じることはできなかった。
しばらくして。
「・・・お前のことは、描きたいと思った」
フェリオス様が顔を上げて僕のことを見つめた。
「ダニー。お前のことが描きたい」
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