19 / 38
19 淫夢と呪いの紋様
しおりを挟む
利欲の魔王 ミハイルの事件から3ヶ月。
俺たちは、戦いの刻の最中にも関わらず、平和な時を過ごしていた。
イグドールが言うには、このヴィスクール王国内にあるダンジョンは、4つ。
それは、俺とイグドールとシェイルとミハイルの4人の魔王のものだった。
つまり、もうこの辺りには、敵対する魔王はいないわけだ。
ミハイルのダンジョンには、奴の手下たちが残されていたが、その連中のことは、イグドールが引き受けてくれた。
ミハイルのダンジョンのコアも、イグドールが破壊してくれたため、今では、この国にあるダンジョンの数は、3つだけだった。
そうそう、インダラーク伯爵の力添えでスライムによる通信システムも普及しつつある。
俺たちは、通信会社『魔王の杜』を設立した。
今は、まだ、町と町の連絡網的なものでしかないが、そのうちには、もっと国の細部にまで通信網を行き渡らせたいと俺たちは、計画している。
『魔王の杜』ダンジョンも繁盛しているし、街は、大きくなる一方だった。
一見するといいことばかりのようなのだが、俺には、悩みがあった。
それは。
「ええっ?スケベな夢を見るって?」
「しぃっ!声が大きいよ!」
ダンジョンの2層目にあるルファスの研究室で、俺は、ルファスと話していた。ルファスは、俺に相談されて半笑いで答えた。
「たまってるんじゃないのか?ハジメ。最近、抜いてるのか?」
「いや」
俺は、小声でごにょごにょと言った。
「ちょっと、してないけど」
「だからだって。なんなら、私がここで抜いてやろうか?」
「い、いいよ!」
俺は、ルファスの申し出を断った。
「けど、すごく生々しい夢を見るんだよ」
「どんな?」
ルファスに聞かれて、俺は、夢の話をした。
その夢は、いつも、誰かの手で俺がいかされてるという夢だった。
相手が誰なのかはわからないけど、いつも、たぶん、同一人物だと思われる。
俺は、夢の中ですごく気持ちよくって。
そして。
「夢精しちゃうんだよ」
「マジか?」
ルファスが吹き出して笑い転げるので、俺は、腹が立ってルファスに言った。
「何、笑ってるんだよ!元々は、お前の体じゃないか!」
「すまん、ハジメ」
ルファスは、涙を拭きながら謝った。
「それってやっぱり、たまってるんだって。誰か適当な相手を見つけて抜いてもらえばいいじゃないか」
「適当な相手って?」
俺がきくと、ルファスは、にやっと笑った。
「イオルグは、上手だぞ」
「い・・嫌だよ」
俺が言うと、ルファスは、言った。
「じゃあ、ヴィスコンティは?」
俺は、どきんと心臓が跳ねるのを感じていた。
「ヴィ、ヴィスコンティにそんなこと頼めないよ」
「なら、もう、侑真しかいないけど、侑真は、貸さないぞ」
ルファスは、俺をじろっと睨んだ。俺は、慌てて言った。
「侑真になんて頼めないって」
「じゃあ、自分でやるしかないな」
ルファスに言われて、俺は、唸った。
「なんか、その、オカズがないとできないよ」
「オカズ?」
ルファスが聞いたので、俺は、小声で言った。
「その、そういうことするネタ、というか」
「ああ、なるほど」
ルファスが笑った。
「なら、いいものをやろう」
ルファスは、部屋の奥の方の棚から一冊の本を取り出すと俺に渡した。
「これ、なかなかいいから、試してみろ」
ルファスが俺に渡したのは、なんだか、いかがわしい男女の描かれた本だった。
「こんなもの、いらないよ」
俺が返そうとすると、ルファスは、微笑んだ。
「まあ、いいからいいから」
というわけで、俺は、ルファスに渡された本を自分の執務室兼研究室へと持ち帰っていた。
俺は、それを書類の置かれた机の引き出しの中にしまっていたのだが、なんか気になって集中できない。
「ちょっとだけ、な」
俺は、そっと引き出しを開けると本を取り出してページをめくった。
そこには、裸で絡み合う男女の姿が描かれていた。
すごいな、これ。
俺は、けっこう夢中になってページをめくっていた。
もともと、俺は、性欲が弱くって、あまり、こういうものに興味がなかった。
なのに、なぜ、あんな夢ばかり見るんだろう。
俺は、はたと、ページをめくる手を止めた。
そのページには、裸で抱き合う3人の男女の姿が描かれていたのだが、その内の1人の男の姿がヴィスコンティに少し似ているような気がしたのだ。
ヴィスコンティも、こんなことをしているのかな。
俺の脳裏に、前にイオルグに抱かれていたヴィスコンティの姿が思い出されていた。
「えっ?」
俺は、中心が固くなってくるのを感じていた。
えっ?
俺、ヴィスコンティでたっちゃったの?
原因は、ともかく、これをどうにかしなくては。
俺は、ズボンと下着を下ろして、とにかく、抜くことにした。
俺は、芯を持った自分のものを右手で擦り始めたけど、なかなかいけなかった。
どうしても頭の中にヴィスコンティのことが思い浮かんでしまって、俺は、困惑していた。
ヴィスコンティのこと、そんなことに使えないよ。
俺は、思っていた。
けど、ふと、思ってしまった。
この手がヴィスコンティの手なら、と。
この世界にきた最初の日、俺は、ヴィスコンティの手で何度もいかされたことがあった。
あのとき。
ヴィスコンティの息づかい。
俺に触れた彼の温もり。
そんなことを考えながら、俺は、いってしまった。
終わった後で、俺は、自己嫌悪に陥った。
ヴィスコンティで抜いてしまった。
俺って。
俺は、溜め息を漏らした。
ヴィスコンティのこと、好きなのかな。
その夜、また夢を見た。
いつもと同じ夢。
誰か。
顔の見えない相手の手で、俺は、弄られ、喘がされ、何度もいかされた。
俺は、その相手の顔を見ようとするのだが、誰なのかはわからない。
「ヴィスコンティ?」
俺は、見えない誰かにそう、呼び掛けた。
すると。
「私のことを忘れたのか?ハジメ」
その声は、ヴィスコンティのものではなかった。
「言った筈だ。お前は、私のものだと」
俺は、悪夢から飛び起きた。
荒い呼吸を繰り返しながら、俺は、立ち上がるとシーツを生活魔法できれいにした。そして、夜着を脱ぐと浴室へと向かった。
冷たい水を頭から浴びる。
なんで、あんな夢を?
俺は、水を浴びながら思っていた。
そのとき俺は、気づいた。
全身に朱色の紋様が浮かび上がっていることに。
俺は、浴室の姿見に写る自分の裸体に浮かび上がった紋様を見つめて呟いた。
「どういうこと?」
俺は、翌朝、ヴィスコンティに昨夜のことを話した。
夢のこととか、そういうのは、なしだ。
全身に浮かんだ紋様のことだけを、俺は、ヴィスコンティに話した。
「紋様が?」
ヴィスコンティは、俺にきいた。
「今、見せてもらっても、いいですか?ハジメ」
俺は、恥ずかしかったが、ヴィスコンティの前で上半身裸になって肌を見せた。
だが。
あの紋様は、消えていた。
「ハジメ。あなたの体は、染み一つない、美しい体です」
ヴィスコンティは、言った。俺は、それでも、ヴィスコンティに訴えた。
「確かに、昨日の夜は、全身に紋様が浮かび上がっていたんだ」
俺は、ヴィスコンティにミハイルに刻まれた紋様の話をした。ヴィスコンティは、黙って聞いてくれていたが、しばらくして俺に訊ねた。
「昨日のその紋様は、そのときの紋様と同じものだったのですか?」
「いや」
俺は、答えた。
「なんとなく違う感じがするんだけど」
「なるほど」
ヴィスコンティは、少し考えていたが、やがて、俺に言った。
「呪いのことについては、ビザークが詳しいので、ちょっとビザークに相談してみます。あなたは、あまり、心配しないで。ハジメ」
「うん」
俺は、頷いた。
その日の夕方ごろのことだった。
俺が執務室兼研究室で書類に目を通しているところに、ビザークが駆け込んできた。
「お前、呪われているって本当か?」
「ええっ?」
俺は、ビザークにヴィスコンティに話したのと同じことを話た。ビザークは、ふんふん、と熱心に俺の話をきいていたが、やがて、俺に言った。
「お前は、淫魔に取り憑かれている」
マジか?
俺たちは、戦いの刻の最中にも関わらず、平和な時を過ごしていた。
イグドールが言うには、このヴィスクール王国内にあるダンジョンは、4つ。
それは、俺とイグドールとシェイルとミハイルの4人の魔王のものだった。
つまり、もうこの辺りには、敵対する魔王はいないわけだ。
ミハイルのダンジョンには、奴の手下たちが残されていたが、その連中のことは、イグドールが引き受けてくれた。
ミハイルのダンジョンのコアも、イグドールが破壊してくれたため、今では、この国にあるダンジョンの数は、3つだけだった。
そうそう、インダラーク伯爵の力添えでスライムによる通信システムも普及しつつある。
俺たちは、通信会社『魔王の杜』を設立した。
今は、まだ、町と町の連絡網的なものでしかないが、そのうちには、もっと国の細部にまで通信網を行き渡らせたいと俺たちは、計画している。
『魔王の杜』ダンジョンも繁盛しているし、街は、大きくなる一方だった。
一見するといいことばかりのようなのだが、俺には、悩みがあった。
それは。
「ええっ?スケベな夢を見るって?」
「しぃっ!声が大きいよ!」
ダンジョンの2層目にあるルファスの研究室で、俺は、ルファスと話していた。ルファスは、俺に相談されて半笑いで答えた。
「たまってるんじゃないのか?ハジメ。最近、抜いてるのか?」
「いや」
俺は、小声でごにょごにょと言った。
「ちょっと、してないけど」
「だからだって。なんなら、私がここで抜いてやろうか?」
「い、いいよ!」
俺は、ルファスの申し出を断った。
「けど、すごく生々しい夢を見るんだよ」
「どんな?」
ルファスに聞かれて、俺は、夢の話をした。
その夢は、いつも、誰かの手で俺がいかされてるという夢だった。
相手が誰なのかはわからないけど、いつも、たぶん、同一人物だと思われる。
俺は、夢の中ですごく気持ちよくって。
そして。
「夢精しちゃうんだよ」
「マジか?」
ルファスが吹き出して笑い転げるので、俺は、腹が立ってルファスに言った。
「何、笑ってるんだよ!元々は、お前の体じゃないか!」
「すまん、ハジメ」
ルファスは、涙を拭きながら謝った。
「それってやっぱり、たまってるんだって。誰か適当な相手を見つけて抜いてもらえばいいじゃないか」
「適当な相手って?」
俺がきくと、ルファスは、にやっと笑った。
「イオルグは、上手だぞ」
「い・・嫌だよ」
俺が言うと、ルファスは、言った。
「じゃあ、ヴィスコンティは?」
俺は、どきんと心臓が跳ねるのを感じていた。
「ヴィ、ヴィスコンティにそんなこと頼めないよ」
「なら、もう、侑真しかいないけど、侑真は、貸さないぞ」
ルファスは、俺をじろっと睨んだ。俺は、慌てて言った。
「侑真になんて頼めないって」
「じゃあ、自分でやるしかないな」
ルファスに言われて、俺は、唸った。
「なんか、その、オカズがないとできないよ」
「オカズ?」
ルファスが聞いたので、俺は、小声で言った。
「その、そういうことするネタ、というか」
「ああ、なるほど」
ルファスが笑った。
「なら、いいものをやろう」
ルファスは、部屋の奥の方の棚から一冊の本を取り出すと俺に渡した。
「これ、なかなかいいから、試してみろ」
ルファスが俺に渡したのは、なんだか、いかがわしい男女の描かれた本だった。
「こんなもの、いらないよ」
俺が返そうとすると、ルファスは、微笑んだ。
「まあ、いいからいいから」
というわけで、俺は、ルファスに渡された本を自分の執務室兼研究室へと持ち帰っていた。
俺は、それを書類の置かれた机の引き出しの中にしまっていたのだが、なんか気になって集中できない。
「ちょっとだけ、な」
俺は、そっと引き出しを開けると本を取り出してページをめくった。
そこには、裸で絡み合う男女の姿が描かれていた。
すごいな、これ。
俺は、けっこう夢中になってページをめくっていた。
もともと、俺は、性欲が弱くって、あまり、こういうものに興味がなかった。
なのに、なぜ、あんな夢ばかり見るんだろう。
俺は、はたと、ページをめくる手を止めた。
そのページには、裸で抱き合う3人の男女の姿が描かれていたのだが、その内の1人の男の姿がヴィスコンティに少し似ているような気がしたのだ。
ヴィスコンティも、こんなことをしているのかな。
俺の脳裏に、前にイオルグに抱かれていたヴィスコンティの姿が思い出されていた。
「えっ?」
俺は、中心が固くなってくるのを感じていた。
えっ?
俺、ヴィスコンティでたっちゃったの?
原因は、ともかく、これをどうにかしなくては。
俺は、ズボンと下着を下ろして、とにかく、抜くことにした。
俺は、芯を持った自分のものを右手で擦り始めたけど、なかなかいけなかった。
どうしても頭の中にヴィスコンティのことが思い浮かんでしまって、俺は、困惑していた。
ヴィスコンティのこと、そんなことに使えないよ。
俺は、思っていた。
けど、ふと、思ってしまった。
この手がヴィスコンティの手なら、と。
この世界にきた最初の日、俺は、ヴィスコンティの手で何度もいかされたことがあった。
あのとき。
ヴィスコンティの息づかい。
俺に触れた彼の温もり。
そんなことを考えながら、俺は、いってしまった。
終わった後で、俺は、自己嫌悪に陥った。
ヴィスコンティで抜いてしまった。
俺って。
俺は、溜め息を漏らした。
ヴィスコンティのこと、好きなのかな。
その夜、また夢を見た。
いつもと同じ夢。
誰か。
顔の見えない相手の手で、俺は、弄られ、喘がされ、何度もいかされた。
俺は、その相手の顔を見ようとするのだが、誰なのかはわからない。
「ヴィスコンティ?」
俺は、見えない誰かにそう、呼び掛けた。
すると。
「私のことを忘れたのか?ハジメ」
その声は、ヴィスコンティのものではなかった。
「言った筈だ。お前は、私のものだと」
俺は、悪夢から飛び起きた。
荒い呼吸を繰り返しながら、俺は、立ち上がるとシーツを生活魔法できれいにした。そして、夜着を脱ぐと浴室へと向かった。
冷たい水を頭から浴びる。
なんで、あんな夢を?
俺は、水を浴びながら思っていた。
そのとき俺は、気づいた。
全身に朱色の紋様が浮かび上がっていることに。
俺は、浴室の姿見に写る自分の裸体に浮かび上がった紋様を見つめて呟いた。
「どういうこと?」
俺は、翌朝、ヴィスコンティに昨夜のことを話した。
夢のこととか、そういうのは、なしだ。
全身に浮かんだ紋様のことだけを、俺は、ヴィスコンティに話した。
「紋様が?」
ヴィスコンティは、俺にきいた。
「今、見せてもらっても、いいですか?ハジメ」
俺は、恥ずかしかったが、ヴィスコンティの前で上半身裸になって肌を見せた。
だが。
あの紋様は、消えていた。
「ハジメ。あなたの体は、染み一つない、美しい体です」
ヴィスコンティは、言った。俺は、それでも、ヴィスコンティに訴えた。
「確かに、昨日の夜は、全身に紋様が浮かび上がっていたんだ」
俺は、ヴィスコンティにミハイルに刻まれた紋様の話をした。ヴィスコンティは、黙って聞いてくれていたが、しばらくして俺に訊ねた。
「昨日のその紋様は、そのときの紋様と同じものだったのですか?」
「いや」
俺は、答えた。
「なんとなく違う感じがするんだけど」
「なるほど」
ヴィスコンティは、少し考えていたが、やがて、俺に言った。
「呪いのことについては、ビザークが詳しいので、ちょっとビザークに相談してみます。あなたは、あまり、心配しないで。ハジメ」
「うん」
俺は、頷いた。
その日の夕方ごろのことだった。
俺が執務室兼研究室で書類に目を通しているところに、ビザークが駆け込んできた。
「お前、呪われているって本当か?」
「ええっ?」
俺は、ビザークにヴィスコンティに話したのと同じことを話た。ビザークは、ふんふん、と熱心に俺の話をきいていたが、やがて、俺に言った。
「お前は、淫魔に取り憑かれている」
マジか?
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
624
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる