魔王に転生したら、イケメンたちから溺愛されてます

トモモト ヨシユキ

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34 秘密

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    「思い出せ、ハジメ」
     ミハイルは、俺にずいっと接近してきた。
    「私と共にあった日々のことを」
     って言われても、俺、まったく記憶にないし。
    俺は、黙ったまま後ろずさった。そんな俺の腕をミハイルが掴んで俺を引き寄せた。ミハイルは、俺を抱き上げると言った。
    「思い出せないなら、思い出させてやる」
    「やっ!・・おろして!」
     ミハイルは、腕の中で暴れる俺をベッドまで運ぶとそこへ下ろした。
      ええっ?
    俺は、ベッドの上でミハイルを見上げていた。
   「な、何をするつもり?」
    「ああ?」
     ミハイルが俺の上に覆い被さりながら俺に囁いた。
   「お前が思い出すまで抱いてやる。お前が孕むまでも、な」
    マジですか?
   俺は、ひきつった笑いを浮かべた。
   「俺、男、だし。孕んだりできないって」
    「できるさ。お前は、その力を持っている。望めば女にだってなれるんだからな」
   それは、そうだけど!
   俺は、ミハイルの体を押し退けようとしてもがいた。
   「無理、だって!無理!やめてっ!」
    そのとき、ドアが開いてイオルグが顔を出した。
   俺は、イオルグと目があって、叫んだ。
  「イオルグ!助けて!」
    「邪魔するな。死にたくなければな」
    ミハイルがイオルグを睨み付ける。
   イオルグは、俺を見て、ミハイル(クローゼ)を見て、再び、俺を見た。そして、はっとした表情を浮かべると、そのまま、黙ってドアを閉めた。
    ええっ?
   俺は、叫んだ。
   「イオルグ!」
   マジか!
   あいつ、後で、酷い目にあわせてやるからな!
  「話のわかる部下だな、ハジメ」
    ミハイルがにやりっと笑った。
   「さあ、始めるぞ。もっと、集中しろ、ハジメ」
   ええっ?
   俺は、ミハイルに抗いながら言った。
   「や、やめて!ミハイル」
    「やめない」
     ミハイルが俺の両手を頭上で押さえつけて俺を覗き込んだ。
   「お前が悪い。私のことを忘れてしまった、お前の罪、だ」
    「俺・・の?」
       ミハイルが俺にキスしてきた。慈しむような口づけに、俺は、なぜか、涙が溢れた。
   なんで?
   俺は、ミハイルから顔をそむけた。
   俺、なんで、泣いてるの?
   ミハイルが舌で俺の涙を舐めとり、俺の目元へと口づけた。
   「愛している」
    俺は、目を閉じた。
   誰か!
   このままじゃ、俺、ミハイルに・・
   誰か、助けて!
   閉じた瞳の奥で何かが蠢いた。
   あれは?
   それは、小さな光だった。
   な、に?
   光は、俺の中でだんだんと大きくなっていった。まるで、巨大な翼を広げるように光は、拡がっていく。
    それは、暖かくって。
   俺の中にじんわりと拡がっていく。
   光の中心に誰かいる。
   それは、俺自身だった。
   ルファスではない。
   本当の俺の姿。
  「ハジメ」
    俺自身は、両手を広げて俺をそっと抱き締めた。
   「少しだけ、体を貸して」
    ええっ?
   俺自身は、俺と重なっていく。
   俺は、深い、深い眠りへと落ちていった。

  「ぅんっ・・」
    俺は、なんだか、幸せな夢から覚めるような気持ちで、ゆっくりと目覚めていく。
   ああ。
   目を開くと見慣れた天井があった。
   「んっ・・」
   体が重かった。
   けだるい。
   誰かの腕が俺の体を抱いているのに気づいて、俺は、微笑んだ。
   「ヴィスコンティ?」
    「ごめんね」
    俺の目の前でクローゼが優しく微笑んでいた。
   「君の想い人じゃなくて」
    「はい?」
    俺は、すぐに飛び起きた。
   はらりと掛布が落ちて、俺の体が露出された。
  俺は、裸で、体のあちこちには情事の跡が残されていた。
    マジか?
   呆然としている俺に、クローゼが呟いた。
  「いってしまったね、彼等」
   「えっ?」
    俺は、自身の胸に手を押し当てた。
    なんだか。
  ぽっかりと穴が開いてしまったような気分だった。
   そうして、俺は、頷いた。
   「うん・・」
    俺は、なぜか、涙が溢れて止めることができなかった。
   泣いている俺をクローゼがそっと抱き締める。
   俺は、クローゼに抱かれて号泣していた。
  いってしまった。
   俺の魂の一部だったものが、遠くへいってしまった。
      クローゼは、俺が泣き止むまで俺を抱いていてくれた。
    彼の温もりが嬉しかった。
   やがて、俺は泣き止むと、クローゼの腕の中から離れ、立ち上がろうとした。
   だけど。
   俺は、立ち上がることができず、ずるっと滑り落ちて床の上に座り込んでしまった。
   ええっ?
   「無理はしない方がいい」
    クローゼが俺を抱き上げてベッドへと寝かせた。
   「なにしろ、私たちは、もう少なくとも3日3晩は、やり続けていたんだからね」
   マジか?
   俺の体のあちこちが悲鳴をあげているのに気づいて、俺は、羞恥のあまり頬が熱くなった。
   「とにかく、少し、休んだ方がいい」
   それから、クローゼは、俺にすべてを話してくれた。
   「ミハイルと、君は、邪神と光の神の一部だったんだ。ミハイルは、闇の中の光であり、ハジメ、君は、光の中の闇だったんだ」
   クローゼは、俺をあやすように俺の髪を撫でながら話続けた。
   「彼等は、昔、遥かな時の向こうで、それぞれが邪神と光の神から別れ出た。長いときを共に過ごしたが、君であったものは、人の魂の中へと消えていった。ミハイルは、それを探し続けていた。そして、君をみつけた」
   「俺を?」
    「そうだ、ハジメ、君を、だ」
    クローゼの響きのいい言葉が俺の心を落ち着かせていく。
   「そして、君を手に入れるために人間たちを操って、異世界召喚を行った。だけど、君の人間の肉体は、すぐに滅んでしまう。だから、魔王の魂と君の魂を入れ換えた」
    俺は、眠くって。
   もう、目を開けていることができなかった。
   クローゼに抱かれたまま俺は、眠り込んでしまった。
   眠りながら、俺は、クローゼの声をきいていたような気がする。
   「すべては、君への愛ゆえに」

       「ハジメ?」
    目覚めると目の前にヴィスコンティの姿があった。
   ええっと?
   俺は、慌てて飛び起きると体を確かめた。
   大丈夫。
   俺は、夜着を着て、ベッドに1人で横たわっていた。
   「大丈夫ですか?ハジメ」
   ヴィスコンティが心配そうにきく。
   「もう、丸1日眠っていたってイオルグが言ってましたが」
   「イオルグが?」
    俺が聞くと、ヴィスコンティが俺の腕を掴んできいた。
   「腕輪、は?どうしたんですか?ハジメ」
    「それは・・」
     俺は、ヴィスコンティにすべてを話すことにした。
   ミハイルと俺が、邪神と光の神の一部だったこと。
   ミハイルが俺をずっと探していたこと。
  そして。
  ミハイルと俺の中の光が共に去っていったこと。
   俺は、すべてを話した。
   ただ。
   ミハイルたちが俺とクローゼの体を使ってしたことだけは言えなかった。
   このことは絶対に言えない。
   俺の、というか、俺とクローゼだけの秘密、だ。
   「そうだったんですか」
    ヴィスコンティは、俺をそっと抱き締め囁いた。
   「私は、ハジメが何者であれ、愛しています」
   「う、うん・・」
   俺の胸がずきんと痛んだ。
   「俺も」
   俺は、ヴィスコンティの腕の中で囁いた。
   「ヴィスだけを愛している」
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