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第九章
『勝利の第一報』
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王都へ伺うとの先触れの使者を出した辺りで、海側の報告が入った。
包囲網を打ち崩されて散々な目にあったが、幸いにも島の様に巨大な魚の魔を討伐できたらしい。どうやら包囲網を最初から見透かされて居たことが大損害の原因であり、水上歩行の呪文が普通に効いたことが勝利の要因であったとか。要するに、水棲種族たちは急ぎ過ぎたのだ。
これまでどうやっても倒せなかった巨大な魔物を討伐する機会を得たから仕方が無いが、じっくりと釣りをする心算で時間を掛ければ損害はもっと少なかったのではないだろうか? まあ、その間に巨大な魚がどれほどの水産資源を食い荒らすか、水棲種族を食い殺すかを考えれば仕方が無い事かもしれない。
「その魚自体は食べられなくもないが、食べたいほどの味ではないので、ゴルビーに進呈するとの事です。報酬の一部として受け取って欲しいと言われました」
「鮫の肉みたいなものかな? 実に即物的な回答だな。その分信用は置けるが」
一足先に飛んで来たホーセンスの報告に苦笑するしかない。
確かに肥料として撒くから食べないなら欲しいとは言ったが、優先順位は低かった。それなのに『じゃあ報酬にするね』と伝えてきたのは実に卒ない。やはり水棲種族は価値観が違うだけで、別に愚かでも無欲でもないのだろう。
念のために手紙を見ると、勇者たちが魔物の目玉や肝を喰らった後、残りの部分を裁断して徐々に送って来るとあった。そのほかの部位に関しても自分達が欲しい部分はとりわけしていると思われる。
「それでですね……」
「判ってる。お前さんには二つの選択肢をやろう。どちらを選んでも、途中で見つけたという遺跡に関する調査隊のチームリーダーとして派遣することには変わりない」
こちらを伺うホーセンスの顔に安堵の色が浮かんだ。
研究者の道へ進みたがっている彼は、途中で遺跡を見つけたら調べたがっていた。フィールドワークの論文でも書いて魔法大学へ進学するための切符にしたいのだろう。そして、今回の巨大な魔物に関する報告で飛行する間に、手つかずの遺跡を見つけたらしい。幾つか選択肢がある中で、どちらを選んでも彼の希望を汲んでやると伝えたので気が楽になったのだろう。
ここで俺は二枚の書類を用意した。一枚は遺跡探索に関する依頼書であり、もう一枚は二つの選択肢に関する内容である。
「まず、遺跡に関しては周辺調査とお前さんの奉仕義務後に調査を始める」
「周囲に亜人の集落や無名の都市国家があるかも判らんのに調査は出来ん」
「奉仕義務はお前さんを助ける代わりに飛行呪文の付与実験を決めた件な」
「その間に他のメンバーは周辺に亜人の集落が無いか、あるいは無名の都市国家が領有していないかを確認する。遺跡その物に関しては手を付けさせんから安心しとけ。そして、お前さんの選択肢ってのは、あくまでフリーランスの魔術師として調査隊を指揮するのか、ゴルビーお抱えの魔術師として各種援助と報酬を受けながら行うのかの二択だな」
最初に基本事項を確定させていく。ここは双方に損の無い部分だ。
安全でもない遺跡に手を出して、次から次へと亜人の軍団と戦い続ける未来など勘弁してもらいたい。俺が遺跡探索をするわけじゃないが、無責任に冒険者を送るつもりはないからな。また、知られて居ない都市国家が近くにあって、その遺跡に居る魔物を食料なり資源にして居たら困るから、これも確認しないといけない。つか、都市国家があるなら周辺の土地を領有なんか出来ないからな。
そして彼に与える選択肢は当然ながら、どんな立場で調査するかの差である。
「ええと……約束しましたし呪文の付与は良いんですけど……。貴方に仕えたらいただける援助ってどんなものでしょう? あ、俸給や立場の保証以外にです」
「最終的に導師になりたい物として、そのために必要な知識と経験だな」
呪文の付与とその間の事前調査は問題ない様だった。
フリーランスの魔術師として雇う場合は、他の冒険者や傭兵を雇用する費用込みで前金を支払う。そこからどの程度のスケジュールなのか、何人雇うのかはホーセンス次第だ。そこは以前から傭兵契約で存在する流れなので、ここも彼は疑問を覚えていない。遺跡だったり重要そうなbン物がゴルビーに所属し、彼に誰かが居蒸建てたら返却するし、その間に研究し放題なのも当然のことだ。
だから彼の疑問は当然ながら、俺に仕えたら受け取れるモノが中心になる。
「例えば導師級に及ぶまでに必要な呪文の階梯と習得し易い呪文の相談。書籍や魔法陣などの貸し出しに……ああそうそう、『沈黙』や『姿隠し』は研究を盗めるから、学院で使えるとか自分からは口にするなよ。あくまで尋ねられたら『教えてもらったリストにある』とだけ答えるんだ。でないと門前払いを喰らうとか、そういう知識だな。それと呪文の付与に関して協力したら報酬を払うのはフリーでも変わらん」
「う……結構重要そうですね」
「当たり前だ。だからこそ地方出は厳しいんだ」
「どうしよう……」
この間、ガブリールの奴と議論した呪文リストを板に書いてみた。
一レベルに伝声と送風の呪文があり、二レベルにエアカッター、三レベルに沈黙、四レベルに『電撃』、五レベルに『飛行』、六レベルに『姿隠し』と順に記載していく。その上で、沈黙と姿隠しの上にバッテンを記載して、呪文履歴としては使えないことを端的に示していく。この知見具体例であると同時に、仕えないとしても推薦人に名前を連ねるので説明はしておかないと後で困る。
そして最後に六レベルの向こう側に、八つの門派と+@を簡単に書いて行った。
「学院に所属するだけなら簡単なんだ。そこからどの門派に所属し、何を研究するかでも違って来る。金儲けとか家系を建てたいだけなら、付与魔術師になってうちに仕えれば良い。留学で送り出してやるし留学費用も出すし、単に導師資格が欲しいだけなら面倒なら王宮魔術師のガブリールを師匠に仰いだって良い。
「……考えても良いですか? 流石に今は決断できなくて」
「事前調査や付与の時間もあるし構わんぞ。俺は王都にも行くしな」
優柔不断と言うか、漠然とした望みだけを抱いていたのかもしれない。
ホーセンスが悩み始めたので書類を渡して好きなだけ悩んでもらうことにした。これからガブリールと一緒に飛行の呪文をマジックアイテム化してもらうし、俺はその間に王都へ行く用事があるからな。場合によっては向こうでの予定も長引くので、留守の間に好きなだけ考えてもらおうと思う。
そして木工職人から『何とか目途が付いた』と手紙をもらったので、冷却のアイテムを持って王都へと出発することになった。
王都へ伺うとの先触れの使者を出した辺りで、海側の報告が入った。
包囲網を打ち崩されて散々な目にあったが、幸いにも島の様に巨大な魚の魔を討伐できたらしい。どうやら包囲網を最初から見透かされて居たことが大損害の原因であり、水上歩行の呪文が普通に効いたことが勝利の要因であったとか。要するに、水棲種族たちは急ぎ過ぎたのだ。
これまでどうやっても倒せなかった巨大な魔物を討伐する機会を得たから仕方が無いが、じっくりと釣りをする心算で時間を掛ければ損害はもっと少なかったのではないだろうか? まあ、その間に巨大な魚がどれほどの水産資源を食い荒らすか、水棲種族を食い殺すかを考えれば仕方が無い事かもしれない。
「その魚自体は食べられなくもないが、食べたいほどの味ではないので、ゴルビーに進呈するとの事です。報酬の一部として受け取って欲しいと言われました」
「鮫の肉みたいなものかな? 実に即物的な回答だな。その分信用は置けるが」
一足先に飛んで来たホーセンスの報告に苦笑するしかない。
確かに肥料として撒くから食べないなら欲しいとは言ったが、優先順位は低かった。それなのに『じゃあ報酬にするね』と伝えてきたのは実に卒ない。やはり水棲種族は価値観が違うだけで、別に愚かでも無欲でもないのだろう。
念のために手紙を見ると、勇者たちが魔物の目玉や肝を喰らった後、残りの部分を裁断して徐々に送って来るとあった。そのほかの部位に関しても自分達が欲しい部分はとりわけしていると思われる。
「それでですね……」
「判ってる。お前さんには二つの選択肢をやろう。どちらを選んでも、途中で見つけたという遺跡に関する調査隊のチームリーダーとして派遣することには変わりない」
こちらを伺うホーセンスの顔に安堵の色が浮かんだ。
研究者の道へ進みたがっている彼は、途中で遺跡を見つけたら調べたがっていた。フィールドワークの論文でも書いて魔法大学へ進学するための切符にしたいのだろう。そして、今回の巨大な魔物に関する報告で飛行する間に、手つかずの遺跡を見つけたらしい。幾つか選択肢がある中で、どちらを選んでも彼の希望を汲んでやると伝えたので気が楽になったのだろう。
ここで俺は二枚の書類を用意した。一枚は遺跡探索に関する依頼書であり、もう一枚は二つの選択肢に関する内容である。
「まず、遺跡に関しては周辺調査とお前さんの奉仕義務後に調査を始める」
「周囲に亜人の集落や無名の都市国家があるかも判らんのに調査は出来ん」
「奉仕義務はお前さんを助ける代わりに飛行呪文の付与実験を決めた件な」
「その間に他のメンバーは周辺に亜人の集落が無いか、あるいは無名の都市国家が領有していないかを確認する。遺跡その物に関しては手を付けさせんから安心しとけ。そして、お前さんの選択肢ってのは、あくまでフリーランスの魔術師として調査隊を指揮するのか、ゴルビーお抱えの魔術師として各種援助と報酬を受けながら行うのかの二択だな」
最初に基本事項を確定させていく。ここは双方に損の無い部分だ。
安全でもない遺跡に手を出して、次から次へと亜人の軍団と戦い続ける未来など勘弁してもらいたい。俺が遺跡探索をするわけじゃないが、無責任に冒険者を送るつもりはないからな。また、知られて居ない都市国家が近くにあって、その遺跡に居る魔物を食料なり資源にして居たら困るから、これも確認しないといけない。つか、都市国家があるなら周辺の土地を領有なんか出来ないからな。
そして彼に与える選択肢は当然ながら、どんな立場で調査するかの差である。
「ええと……約束しましたし呪文の付与は良いんですけど……。貴方に仕えたらいただける援助ってどんなものでしょう? あ、俸給や立場の保証以外にです」
「最終的に導師になりたい物として、そのために必要な知識と経験だな」
呪文の付与とその間の事前調査は問題ない様だった。
フリーランスの魔術師として雇う場合は、他の冒険者や傭兵を雇用する費用込みで前金を支払う。そこからどの程度のスケジュールなのか、何人雇うのかはホーセンス次第だ。そこは以前から傭兵契約で存在する流れなので、ここも彼は疑問を覚えていない。遺跡だったり重要そうなbン物がゴルビーに所属し、彼に誰かが居蒸建てたら返却するし、その間に研究し放題なのも当然のことだ。
だから彼の疑問は当然ながら、俺に仕えたら受け取れるモノが中心になる。
「例えば導師級に及ぶまでに必要な呪文の階梯と習得し易い呪文の相談。書籍や魔法陣などの貸し出しに……ああそうそう、『沈黙』や『姿隠し』は研究を盗めるから、学院で使えるとか自分からは口にするなよ。あくまで尋ねられたら『教えてもらったリストにある』とだけ答えるんだ。でないと門前払いを喰らうとか、そういう知識だな。それと呪文の付与に関して協力したら報酬を払うのはフリーでも変わらん」
「う……結構重要そうですね」
「当たり前だ。だからこそ地方出は厳しいんだ」
「どうしよう……」
この間、ガブリールの奴と議論した呪文リストを板に書いてみた。
一レベルに伝声と送風の呪文があり、二レベルにエアカッター、三レベルに沈黙、四レベルに『電撃』、五レベルに『飛行』、六レベルに『姿隠し』と順に記載していく。その上で、沈黙と姿隠しの上にバッテンを記載して、呪文履歴としては使えないことを端的に示していく。この知見具体例であると同時に、仕えないとしても推薦人に名前を連ねるので説明はしておかないと後で困る。
そして最後に六レベルの向こう側に、八つの門派と+@を簡単に書いて行った。
「学院に所属するだけなら簡単なんだ。そこからどの門派に所属し、何を研究するかでも違って来る。金儲けとか家系を建てたいだけなら、付与魔術師になってうちに仕えれば良い。留学で送り出してやるし留学費用も出すし、単に導師資格が欲しいだけなら面倒なら王宮魔術師のガブリールを師匠に仰いだって良い。
「……考えても良いですか? 流石に今は決断できなくて」
「事前調査や付与の時間もあるし構わんぞ。俺は王都にも行くしな」
優柔不断と言うか、漠然とした望みだけを抱いていたのかもしれない。
ホーセンスが悩み始めたので書類を渡して好きなだけ悩んでもらうことにした。これからガブリールと一緒に飛行の呪文をマジックアイテム化してもらうし、俺はその間に王都へ行く用事があるからな。場合によっては向こうでの予定も長引くので、留守の間に好きなだけ考えてもらおうと思う。
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