江ノ島の小さな人形師

sohko3

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二日目の朝

シーグラス

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「今日も流木探し、手伝わなくていいの?」

「都会暮らしで今まで、あんまり海で遊んだことないんだろ? 
今は飽きるまで、自分の好きなように探検したらいいと思って」

 流木が不足しているわけでもなさそうだし、お言葉に甘えてそうさせてもらうことにした。

 せっかくサンダルを履いているのだし、砂の上でそれを脱いで素足で砂浜に立ってみる。

 今日みたいな曇りの日だからそうやって素足になって歩きやすいんだよ、と葉織が教えてくれる。

 真夏の砂浜は直射日光で熱々になる。

 葉織にとってだけでなく大半の日本人にとって常識の範疇だが、羽香奈にとってはまだ未知の情報だ。

 波打ち際まで歩いていって、打ち寄せる海水を待ち伏せする。

 今日は波も穏やかで、寄せてきた波は羽香奈の足首あたりまで生暖かい水を被せる。

 茶色がかった砂まじりで、泡立つような塩で濁って、綺麗な水質とまでは言えないのだが。

 足を撫でまわす砂の感触と、波が引くとかかとが水を含んだ砂浜に沈んでいく感覚にぞわぞわする。

 ひとしきりその感触を楽しんでから羽香奈は歩き出し、砂浜に落ちているものの観察を始める。

 流木未満の木屑、細長い葉っぱ、海藻……

それ以外にも何とも形容のしがたい謎の物体があちらこちらに散乱している。

 家庭ごみ、海遊びで置き去りにされたと思わしきゴミも多く、案外、絵に描いたような美しい砂浜ってわけでもないみたい? と羽香奈は感じた。


 その黒々とした漂着物の中に、ところどころ見える貝殻。

 白かったり、茶色がかっていたり、見ようによっては紫がかっていて色とりどりで品種も様々だ。

 特に、貝殻が好きだとか興味があるとかでもないのだが、なんとなく拾い集めてみた。

 袋を持ってきたわけでもなし、小さな手のひら、それも片手だけに載せられる範囲だから厳選せざるを得ない。

 ちょっとでも形の崩れているものは無視して、完全な形を保っていて色の気に入ったものだけを拾っていた。

 すると、貝殻以外にも気になる物体が落ちているのを見つけた。

 空色だったり緑色だったり、透明な、さらさらした手触りの小石みたいなものがいくつも落ちている。

「葉織くーん、これ、なにー?」

 少し離れた場所にいた葉織に呼びかけて、来てもらう。

「これ、割れたガラス瓶が波で削られてって、こんな感じになるんだって」

 俗にいうシーグラスだが、葉織はそのように呼ばれていると知らなかった。
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