江ノ島の小さな人形師

sohko3

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二日目の朝

貝殻拾い

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「綺麗だね~。
いっぱい集めたいな」

「たくさん集めて工作に使う人もいるみたいだよ。
江ノ島にある土産店でもたまに売ってるの見かける」

 シーグラス自体はすでに害のない形になっているが、これがあるということはまだ削りきっていない、普通のガラス片も海岸には落ちているということだ。

 素足で歩くなら踏まないように気を付けた方がいいよ、と葉織が忠告してくれた。

 余計な怪我をして迷惑をかけたくない、気を付けよう、と羽香奈は肝に銘じる。

 この日、葉織はバケツに少しの流木を。

 羽香奈は両手のひらにこんもりと、貝殻とシーグラスをのせて持ち帰ることになった。

「その手のひらのまま家まで帰るの、手首が疲れない? 
バケツに入れようか?」

「せっかく拾ったのに、割れたりしたら嫌だもん……」

「それならいいけど。
足元、転ばないように気を付けてね」

「はぁーい」


 海岸から潮崎家への行き来は、行きは下り坂が多めだが帰りは上り坂が多めで、下道を使えば階段を上り下りしなければならない箇所は減る。

 とはいえ両手を固定したまま数十分歩き続けるのはやはり難しい。

 家に帰り着き、葉織に玄関を開けてもらって勝手口からそのまま庭へ直通し、水道の水受けの隅に貝殻とシーグラスを置いて。

「う~~んっ、大変だったぁっ」

 ようやく手が自由になると、指も手首も硬直して痛くなってしまっていた。

 ぷらぷらと手首を振って解消しようとする。

 素足で歩いていた羽香奈はもちろん、サンダル履きで砂浜にいたのだから葉織の足も少し汚れている。

 水道で貝殻を洗ってからふたりとも足を洗い、乾かしてから家に上がることにした。

 海で泳ぐとかそういった派手な遊びをしたわけではないが、早起きして午前中から遊んで歩いたので、羽香奈もちょっと疲れてしまった。

 二段ベッドの下段に横になって、飾り棚に乾かした貝殻とシーグラスを並べてひとしきり眺めた後、うとうととまどろんでいた。

 昨日と同じように流木の熱湯消毒処理をしていた葉織が、音を立てないよう気遣いつつ戸を開けて入ってくると、羽香奈はすぐ身を起こす。

「起こしちゃった? ごめん」

「ううん……」

 寝ようとしたのに物音に起こされたわけではなく、葉織が入って来たから起きようと思っただけだから、謝る必要なんてない。

 とはいえ、そこまで子細に話すわけにもいかず、羽香奈も胸の内だけでこっそり「ごめんね、気を使わせた上に謝らせちゃって」と呟いた。


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