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江ノ島の夏休み
葉織の現実
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少女が羽香奈にくぎ付けとなっている隙を突いて、葉織は後ろから彼女の頭にくっついていた靄を引きはがすような動きをした。
本人に見られてしまえば不審者めいた葉織の行動も、直接に体に触れているわけではないから、他に注意をひきつけていられれば問題にならない。
羽香奈は一連の流れをその目で確かめて、胸中でひっそり一息ついた。
葉織はいつも通り、手のひらに不可視の何かを乗せるようなポーズで階段を下りていく。
羽香奈達から離れすぎず、かつ少女から見えない場所を選んで階段に腰を下ろしたようだった。
「なんだかな~。
あんたって変な子だけど、話してたらちょっとすっきりしたっていうか。
悩んでるのもあほらしって思っちゃった」
それは羽香奈と話したおかげではなく、葉織の力で解消したからだろう。
もちろんそれを教えてあげるわけにはいかないが、羽香奈は内心で得意満面だった。
やっぱり葉織くんはすごいや! なんて。
「あたしってさ……めちゃめちゃ頭が悪くって。
人よりいっぱい勉強してもちっとも理解出来ないままで……
このままだったらみんなと同じ、高校生にもなれないんじゃないかって……」
最終学歴が中卒もしんどいし、こんな馬鹿が大人になってどうやって食っていけばいいの?
生きていけるの?
そう考えたらつい、どこかから身を投げることまで検討し始めていた。
「お姉ちゃん、勉強出来ないのに学校行くのって、辛くない?」
葉織は背中側に腕を回して完成した人形を隠しながら階段を上がり、羽香奈の隣に並んで少女に問いかけた。
「えー?
勉強は出来ないけど、友達いるし。
部活も委員会も楽しいから辛くないよ。
授業とテストは嫌で嫌でたまらないけど」
「オレなんて、学校にすら行けてないから……
楽しいって思いながら学校行けてるだけでじゅうぶんだと思うよ」
葉織の発言に少女は口を噤み、目をぱちぱちと瞬きさせていた。
ついさっきまで、計画が大成功して上機嫌だった羽香奈は思わぬ事実を突きつけられて、思わず時を止めていた。
葉織くん、今、なんて?
「担任の先生が言ってた。
学校にすら通えない心の弱い奴は、大人になって社会で生きていけないって。
お姉ちゃんは学校行って、みんなが嫌がるような仕事も委員会で頑張ってて、周りの友達にも気が遣える人で……
こんだけ出来てるんならもし勉強が難しいんだとしても、大人になって出来る仕事が何かしらあるんじゃないかな」
本人に見られてしまえば不審者めいた葉織の行動も、直接に体に触れているわけではないから、他に注意をひきつけていられれば問題にならない。
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葉織はいつも通り、手のひらに不可視の何かを乗せるようなポーズで階段を下りていく。
羽香奈達から離れすぎず、かつ少女から見えない場所を選んで階段に腰を下ろしたようだった。
「なんだかな~。
あんたって変な子だけど、話してたらちょっとすっきりしたっていうか。
悩んでるのもあほらしって思っちゃった」
それは羽香奈と話したおかげではなく、葉織の力で解消したからだろう。
もちろんそれを教えてあげるわけにはいかないが、羽香奈は内心で得意満面だった。
やっぱり葉織くんはすごいや! なんて。
「あたしってさ……めちゃめちゃ頭が悪くって。
人よりいっぱい勉強してもちっとも理解出来ないままで……
このままだったらみんなと同じ、高校生にもなれないんじゃないかって……」
最終学歴が中卒もしんどいし、こんな馬鹿が大人になってどうやって食っていけばいいの?
生きていけるの?
そう考えたらつい、どこかから身を投げることまで検討し始めていた。
「お姉ちゃん、勉強出来ないのに学校行くのって、辛くない?」
葉織は背中側に腕を回して完成した人形を隠しながら階段を上がり、羽香奈の隣に並んで少女に問いかけた。
「えー?
勉強は出来ないけど、友達いるし。
部活も委員会も楽しいから辛くないよ。
授業とテストは嫌で嫌でたまらないけど」
「オレなんて、学校にすら行けてないから……
楽しいって思いながら学校行けてるだけでじゅうぶんだと思うよ」
葉織の発言に少女は口を噤み、目をぱちぱちと瞬きさせていた。
ついさっきまで、計画が大成功して上機嫌だった羽香奈は思わぬ事実を突きつけられて、思わず時を止めていた。
葉織くん、今、なんて?
「担任の先生が言ってた。
学校にすら通えない心の弱い奴は、大人になって社会で生きていけないって。
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