江ノ島の小さな人形師

sohko3

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江ノ島の夏休み

お姉さんを助けよう!

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「変なことっていうか、変わった経験してるかなぁとは思うけど。
葉織くんと一緒にするのなら、わたしはどんなことだって楽しいの。
だから謝らなくっていいんだよ」

 じゃあ、先に行くから葉織くんも頑張ってね、と笑顔で伝えると、葉織はちょっと安心したような顔で頷いた。

 ちょっとだけ跳ねるようなご機嫌な足取りで階段を下りながら、羽香奈は考えていた。

 きっと今までの葉織くんは、ひとりぼっちでこういうことをしなければならないの、辛いと思ってたわけじゃないんだろう。

 そうだとしても、わたしという秘密を共有出来る身近な人が出来て、ちょっとは心強いのかもしれない。

 その上、こうやってお手伝いも出来るんだからね。

 羽香奈はこの瞬間、これまでの人生で類を見ないほどの、自己肯定感を抱くことが出来たのだった。


「こんにちは、お姉さん」

 少女のすぐ傍らに立ちそう呼びかけても、羽香奈が自分を呼んでいるのだと彼女はなかなか気が付かなかった。

 そも、観光地にきて路上で他人に声掛けされるなど、想定していないのだから。

「ここから何を見ているんですか?」

 羽香奈がそう言葉を続けてようやく、彼女はこちらを見た。

 一度は無視されたものの羽香奈は一切意に介しておらず、にこにこと彼女を見つめている。

「何をって……景色っしょ。
ここ、展望台だよね」

「そうですねー。
わたし、初めて見た時、ここちょっと怖かったんで」

「高所恐怖症?」

「ここは山二つっていって、元々の地形が崩れて山が真っ二つになったんだって聞いたから。

きれいだなーって眺めていて、急に崩れちゃったら怖くないですか? 

落っこっちゃいそうで」

「そうなんだ……
確かにここくらいしか、落ちれそうなとこ、他になかったもんね」

 他に該当する場所が見つからなかったから、彼女はここに立って、考えていた。

 落ちてみようか、やめておこうか。

 直接は聞かずともそんなところかなと羽香奈は考えていた。

「お姉さん、なんだか浮かない顔ですけど……何かお悩みですか?」

「……そんなこと訊いてどうすんの?」

「わたしもちょっと前まで人生のどん底だったところを人に助けていただいたので。

その人がしてくれたみたいに、困っていそうな人がいたら力になってあげたいって思っているんです」

「どん底って……」

「聞きたいですか? 
お姉さんの悩みの内容次第ですけど、聞いたらそれも吹き飛ぶかも!」

 にこにこ笑顔で底の知れないことを言い出す羽香奈に、少女は明らかに引いていた。



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