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しおりを挟むお母さんが先生になってくれて勉強が始まった。最初は魔法について色々教えてもらってる。いきなり魔法を使ったりはしないんだって。
まずは魔法のことを勉強して、知って、それから使うって。すぐに使えるようになるかと思ってたからちょっと残念。
「アシェル、知ることはすごく大切なことなんだ。これは魔法のことだけじゃなくて、色んなことにも当てはまる。だからしっかり勉強しような。」
お母さんがそう言うから僕は一生懸命勉強した。魔法のことだけじゃなくて、この国の名前や世界のこと、算術に文字も。たくさんのことを教えてもらってる。
たまにお父さんも教えてくれる。お父さんからは剣術や体術。僕はやっぱり体を動かすことがあんまり上手じゃないからあんまり好きじゃない。
でも、体の使い方を知ることで敵が襲ってきてもどう対処すればいいかわかるから大切だって。自分を守ることも必要だからって言ってた。
そうだよね。皆を守るためには僕がちゃんとしなきゃ守れないもんね。
僕はまだ子供だから、一気にたくさんのことができない。少しずつ勉強してる。お昼寝もしなきゃだもんね。お昼寝はいつもライリーと一緒。運動した日はお昼寝しても夜もすぐ寝ちゃう。ぐっすりだ。
そんな感じで同じような毎日を過ごしていたら、ギルドマスターのデイビットさんが家に来た。
デイビットさんはたまに家に来る。お父さんあんまりギルドに行かないから、お仕事のお話がある時は家にくるんだ。
「お、アシェルにライリー。また大きくなったな!いっぱい食べていっぱい寝て、お父さんよりおっきくなれよー!」
デイビットさんはすごく優しい。僕とライリーの頭をいつも撫でてくれる。ライリーもデイビットさんの事が大好きみたいで、デイビットさんがくるときゃっきゃっとにこにこするんだ。
そして奥さんが作ってくれるお菓子も持ってきてくれる。僕もライリーもそのお菓子が大好き!優しい味でついつい食べ過ぎちゃう。
「なんだ、また仕事の話か?」
「…いや、ちょっと今日は伝言だな。」
ちらっと僕をみるデイビットさん。ん?僕なんかした?
「……アシェルにライリー。そろそろお昼寝しようか。おいで。」
お母さんに連れられて僕とライリーはお昼寝した。いつもよりちょっと時間早いけど。どうしたんだろ?でも眠かったから僕もライリーもすぐに寝た。
起きたらデイビットさんはもう居なかった。なんの話だったんだろ?
それからライリーと遊んで、少しだけ勉強してご飯を食べた。
「アシェル……アシェルは貴族になりたい?」
お母さんがそんな事を聞いてきた。きぞく?きぞくってよくわかんないけど、それになりたいと思ったらなれるのかな?
「んー…よくわかんない。」
「だよな。ごめんな、変なこと聞いて。」
「僕はきぞく?になるより、お父さんみたいな冒険者になりたい。」
僕がそう言うとお父さんは頭を撫でてくれた。お父さんの手おっきくて大好き。
「例えば、すごいお金持ちになれるとか、いっぱい贅沢できるとかだったら、貴族になりたいか?」
「んー…僕のうちもお金持ちだよね?ギルドのお兄さんやおじさんが言ってた。」
「そうだな、他の平民に比べたら裕福な方だろう。だがもっとお金持ちになれるんだ。毎日美味しいご飯やケーキも食べられるし、たくさん綺麗な服だって着れる。」
「僕も毎日美味しいご飯食べてるよ?お母さんの作るご飯も、お父さんが作るご飯も僕は大好き。服もお爺ちゃまからたくさん貰ってるし……。
それにお母さんいつも言ってるもん。平民だけどすごく恵まれてる。その事に感謝しなさいって。当たり前だと思ってはいけません。慎ましく、人にありがとうをちゃんと言える人間になりなさいって。」
僕達は平民だけど、周りと比べたらすごいんだって。生まれた時からこうだからよくわからないけど。でも慎ましく、人に感謝し、驕らない。まだよくわかってないけど、お母さんはいつもこれを僕とライリーに言うんだ。
きぞくとか平民とか、違いがよくわからないけど僕は今がすごく楽しい。
「そうか。アシェルはとってもいい子だな。」
お父さんに頭をいっぱい撫でてもらって、お母さんにぎゅってされたらライリーも「僕も!」って言うから皆でぎゅーってしたんだ。皆でぎゅーってすると嬉しい気持ちになるから、これも大好き。
頑張って勉強して、お父さんみたいな冒険者になる。きぞくより、僕はこっちになりたいな。
* * * * * *
~子供たちが寝てからの大人たちの会話~
「アシェルもライリーも寝たよ。…で、デイビットさんアシェルの事で話があって来たんだろ?」
「ああ。…とある貴族がアシェルのことを嗅ぎ回ってる。」
「…………。」
「どいつだ?」
「スタンディング辺境伯。国境付近の領地を治めてる武闘派だ。この国の騎士団にもスタンディング家の者が多い。」
「…聞いたことはある。」
「その辺境伯の使いの者がギルドにも来た。この辺じゃ銀髪はエレンとアシェルくらいしか居ないからな。エレンがここの冒険者だと情報を得て訪ねてきた。」
「…もしかしてあの子、かな。」
「あの子?」
「アシェルの魔力量を調べに教会へ行った帰りに、貴族の子供にアシェルが告白されたんだ。一目惚れみたいで。でもアシェルは速攻で断ってたけどな。」
「なるほど。それでどういう奴か調べようとしてたのか。…お前たち親子は目立つからな。血は争えんか。」
「それでなんと答えたんだ?」
「アシェルは平民なのかと確認されたんでな、その通りだと答えた。だが、銀髪や目立つ容姿が引っかかってな。貴族ではないのかとかなりしつこかった。昔のことは知らん。だが今は平民な事は間違いない。そう答えてある。」
「それで?」
「平民ならば問題はない。一言そう言って帰って行ったよ。…エレンのいう子供が関係していたのなら、婚約者として迎えられるかどうかを確認したかったんだろうな。平民で貴族との結婚はまず無理だからな。」
「…力技でどこかの養子にされるとかも考えられる。実際エレンは貴族だったからな。それも公爵家。」
「その辺を知られると厄介かもな。…ま、辺境伯側がどういう考えなのかもよく分かってはいない。こっちでも警戒はしておこう。」
「ありがとう、デイビットさん。迷惑かけてごめん。」
「気にすんな。俺たちもお前さんたちには助けられてるしな。お互い様だ。」
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