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22 アーネストside
しおりを挟む校外実習の後。アシェルと共に冒険者として活動する為に、ハミッシュとフィリップにも声をかけた。
俺には婚約者がいる。そんな俺が別の誰かと2人きりで何かをするなんて出来るわけはないからな。その為に、ハミッシュとフィリップを巻き添えにする。
2人を寮の部屋へ呼んで、アシェルと約束した事を話す。
「へぇ、アシェルと一緒に冒険者やるんだ。」
「ああ、あの校外実習でアシェルの知識や経験は、騎士となった後も役に立つと思ったからな。…それで、お前たち2人も一緒にやらないか?」
「え?俺たちも?」
これはもちろん本心だが、本当の理由はただアシェルと一緒に居たいから。でも2人にそんな事を言えるわけがない。だからもっともらしい理由を付けて2人を誘う。
「……アーネスト。正直に答えろよ。お前、アシェルの事好きだろ?」
「っ!」
「……やっぱりな。ていうか、お前バレバレだからな。」
そんな…。ハミッシュにバレていたなんて…。
「本当に。アーネストがアシェルを見る目に熱が篭ってるんだよ。自分じゃ気がついていないかもだけど。」
フィリップにもバレていたのか…。俺はなんて間抜けなんだ…。
「で、本当の理由はアシェルと一緒にいたいけど婚約者がいる手前、2人きりになんてなれないから俺らを誘った。…違う?」
「………その通りだ。」
はぁ、と一つため息をついたハミッシュ。頭をガシガシ掻いてあのなぁ、と話し出す。
「俺は正直言って、ノルベルよりアシェルの方が良いと思ってる。お前がノルベルと婚約してても、お前辛そうだったもん。たまに思い詰めた表情してさ。これでも俺、心配してたんだよ?」
…ハミッシュには何もかもバレていたのか。さすがは長年の友人といったところか。
「それに、ノルベルの噂。最近さらに酷くなってる。……それと、パーキンス伯爵家の黒い噂。」
「!? ハミッシュ、知っていたのか!?」
「ごめん、それ俺も知ってるよ。そして俺の家でもその噂について調査してる。」
フィリップまで…。
「俺の家はね、子爵家で下級貴族だけど頭の出来は良いんだよ。俺はちょっと違ったから騎士科に来ちゃったけどね。……父上は宰相補佐をやってる。だから結構国の中枢のことも詳しいわけ。それでパーキンス伯爵の噂を調べてるんだ。」
「へぇ、フィリップの父上って宰相補佐なんだ。すげぇな。」
まあね、とフィリップは自慢げだ。
「パーキンス伯爵はね、奴隷売買と違法魔法薬の販売をしてる。…それもガンドヴァ王国と。噂が噂じゃなくなったよ。これは確定だ。でも、証拠をまだ掴めてない。」
やはり、そうだったのか。
「きっとアーネストの父上もその事を知る頃じゃないかな。…俺、父上にスタンディング辺境伯に進言する様伝えてあるから。」
「「えっ!?」」
まさかフィリップがそんな事をしていたなんて…。
「アーネスト。俺ね、子爵家で本当は頭の良い家系なのに、俺は頭が悪くってさ。逆に運動がすごく得意だったんだ。だから剣術にハマったしここまでこれたんだけどね。…兄上も母上も俺のことを認めてくれなかったんだ。騎士科に入ることも本当は反対されてた。
だけど、アーネストと出会って、俺の努力を認めてくれて仲良くしてくれて、すごく嬉しかったんだよ。俺は子爵家なのに、格上の、武術の名門の辺境伯家、首席のアーネストに認めてもらえた。きっとわからないだろうけどね、俺はすごく救われたんだよ。」
フィリップ…。そんなふうに思っていたなんて…。
「だからさ、アーネストの事助けてあげたくて。余計なお世話かも知れないけど、こっちで掴んだ情報を流してあげたんだ。俺と父上は仲がいいから。」
「余計なお世話どころか…とても有難い。感謝する。ありがとう、フィリップ。フィリップの父上にもよろしく伝えてくれ。全てが落ち着いたら、礼をさせてほしい。」
お礼なんていいよ、と朗らかに笑うフィリップ。俺は友人にとても恵まれている。有難い事だ。
「…実は俺も、婚約者のパリスにノルベルの事探らせてる。」
「は?なんだと!? ハミッシュ、大丈夫なのかそんなことをして!」
「大丈夫大丈夫!パリスもさ、ノルベルと同じ教養科で同じクラスなんだよ。それにパリスの家は間諜の家だ。俺がお願いしたらさ、『まっかせて!楽しみ~!いっぱい暴いてきちゃうから!』って喜んでやってる。」
ははは!すげぇだろ?と実に楽しそうだ。
「助かる。…俺はノルベルに探りを入れてみたが上手くいかなくて…。何も掴めなかったんだ。」
「お前は真面目で馬鹿正直だからな。向いてないって。だからさ、お前も何でもかんでも1人で抱え込むなよ。俺たち友達だろ?俺ら、結構お前のこと気に入ってるんだぜ~?知らなかっただろ~?あはははは!」
俺は一生、この2人の友人を大切にしよう。困った時は助けてやろう。こんな素晴らしい友人に出会えた事を神に感謝しなければ。
「……ありがとう。2人とも…本当に。」
「そんで、パリスの情報だと今度の長期休暇に何か動きがあるらしい。何があるのかは詳しくわからなかったみたいだが、場所はガンドヴァとの国境付近。…お前の領地だよ。」
「っ!?」
「昨日パリスが知らせてくれてな。新鮮な情報だ。感謝しろよ~!」
「ああ、すぐに父上に知らせる。もしかしたら、この長期休暇で何か掴めるかも知れない。」
すごい、こんな一度に進展するなんて。この2人は俺よりもずっとすごい奴らだ。
「で、アシェルとの事、頑張れよ。俺達応援してるから。…アシェルは本当にいい奴だよ。平民だけど、そんな事どうでもいい。俺はアシェルと友達になれて本当に良かったと思ってる。」
「うん、俺もそう。校外実習本当に楽しかったし、また色々教えてほしいと思ってる。だから、冒険者の話、俺やるよ!よろしく!」
「俺も俺も!また4人でバッタバッタ魔物狩ろうぜ!」
2人の協力を取り付けた俺は、寮の食堂でアシェルに来週の休みの日にギルドへ行こうと声をかけた。
ハミッシュとフィリップも一緒だと言うと、すごく驚いていてとても可愛いと思った。
アシェルと一緒にいた、2学年の2人には警戒されていたがな。さらっと用件だけ告げてその場を後にした。
約束の日、4人でギルドへと向かった。初めて訪れたギルドに興味津々でハミッシュのテンションはかなり高かった。
登録を済ませて早速依頼へと出かける。依頼内容は簡単な物だが、アシェルに色々と説明してもらいながらゆっくりとこなしていく。
魔物討伐だけじゃなく、薬草の種類や用途、あると便利な物や解体の仕方、とにかくたくさんのことを教えてもらった。
一度では全部のことを知れるわけではないから、何度も一緒に冒険者として活動をした。
その度にアシェルはすごいと感心するし、なによりも楽しい。
たくさんの知識を得て、経験して。それも大切な友人と愛しい想い人と一緒の時間を過ごせて。俺は幸せに浸っていた。
こんな時間がずっと続くように、俺はパーキンス家と決着をつける。
決意を新たにして、長期休暇へ入った。
* * * * * *
お知らせです☆
読んでくださってる皆様、いつもありがとうございます!
やっと最終話まで執筆が終わりました!今日から1日3話更新にしようと思います。
6:00、12:00、18:00の3回に変更しますので、最後までお付き合い頂けると嬉しいです。
(本日はこの後12:00と18:00に更新されます。)
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