【完結】平民として慎ましやかに生きていたと思っていたのは僕だけだったようだ。〜平民シリーズ②アシェル編〜

華抹茶

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あれから僕は、アーネスト様と会わないようにしていた。

でも食堂で会ってしまうから、その時はアーネスト様に話しかけられてしまう。でも僕はごめんなさいと一言言って逃げるように立ち去っている。

本当はアーネスト様に話しかけられて嬉しいし、側に居たいと思ってる。
でもダメなんだ。僕が悪いから…。僕は平民だから…。


「アシェル、どうしたんだよ。アーネストの事避けてるよな?何があった?」

「…………。」

「僕達にも言えない事~?…よく分かんないけど、僕達はアシェルのこと大好きだし味方だからね~!」

「……ごめんなさい。ありがとうございます。」

ハミッシュ様もノーマン様も、僕の事心配してくれてる。心配かけさせてしまってる。僕って、なんてダメなんだろう。


「ふん。平民のくせに図に乗るからだ。パーキンス伯爵令息に殺してやると言われたのもそのせいだ。お前なんかこの学園に相応しくない事が、これで分かっただろう。」

「おい!セイルズ!お前またそんな事言って!」

「お前達のような友達ごっこを見せられて反吐が出る!貴族は平民と違い尊い存在だ。…お前達もいい加減目を覚ました方が良い。」

「……………。」


そうだよね。ノーマン様もハミッシュ様も貴族だ。僕とは違う。一緒にいたら迷惑をかけてしまう。

僕はなんてダメな人間なんだろう…。


その日授業が終わって寮の部屋へ戻ると、引き篭もるようにして外へ出る事はしなかった。お腹も空かないから夕食も食べてない。…もうこのまま寝てしまおう。



……初めて授業休んじゃった…。これサボりっていうんだっけ。

ただただベッドの上でぼーっとして過ごす。

アーネスト様、ハミッシュ様、ノーマン様、それから、僕を助けてくれた貴族の人達皆。

皆僕に優しくてしてくれた。すごく嬉しかった。だけど…。

パーキンス様やセイルズ様の言うように、僕は優しくしてくれた事に図にのってたのかも知れない。

やっぱり学園に入った事は間違いだったのかな。平民として慎ましくいるつもりだったのに、僕はそれが出来なかったんだ…。

ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい…。


「アシェル?部屋にいるの?開けて。僕だよローレンスだ!」

…ローレンス兄上?どうしたんだろう?

扉を開けると悲しい顔のローレンス兄上がいた。あ…僕はローレンス兄上まで悲しい顔させてしまってる…。

「アシェル良かった。部屋にいてくれて。…昨日からご飯食べてないでしょ?夜ご飯持ってきたから部屋、入るね。」

そう言ってローレンス兄上は部屋へと入ってきた。
…もう夜になってたんだ。気がつかなかった。

「ねぇアシェル。何があったの?どうしたの?僕に話してくれないかな?」

「……兄上。」

「すっかり落ち込んじゃって…。こんなアシェル見たのは初めてだよ。いつもにこにこ可愛い顔が今はどこに行っちゃったの?」

そう言って僕の頭を撫でてくれた。その手が父さんや母さんを思い出して僕は泣いてしまった。

「…ひっく…兄上ぇ……ひっく…ふぇぇぇ…。」

兄上は、しばらく僕が落ち着くまで優しく抱きしめてくれた。

落ち着いてから、ポツポツと今までのことを兄上に話した。
僕が平民だから皆を不幸にさせてしまうと思っていることも。

「…アシェル。あのね、それは違うよ。アシェルは周りが貴族ばっかりの所にいるのは初めてだから、わからなくなったんだね。」

「…でも僕…。パーキンス様を追い詰めてしまって…。それにアーネスト様の事好きになってしまって…。僕は平民なのに…こんな事、しちゃダメなのに…。」

「……ねぇ、アーネスト君もノーマン君もハミッシュ君もデリックも親衛隊の皆も、そして僕も。アシェルの事を平民のくせにとかそんな事言ったことある?」

皆、僕に優しくしてくれてる。そんな事言われたことなんてない。

「確かに貴族至上主義の人達がいるのは事実だよ。だけどね、貴族皆そうじゃない。それはアシェルもわかってるよね?僕達はね、皆アシェルが大好きだよ。貴族だとか平民だとか関係なくて、アシェル自身が好きなんだ。…アシェルは皆の事好き?」

「…はい。皆、皆大好きです。」

「それは貴族だから?貴族だから好きなの?」

「違います!貴族なんて関係なくてっ!」

「うん、そうだよね。皆も同じだよ。」

…皆も僕と同じ?

「アシェルって思い込むとこうなっちゃうんだね。僕知らなかったなぁ。…あのねアシェル。平民だから悪いなんて思わないで。人の良し悪しに身分なんて関係ないよ。アシェルにも嫌いな人や苦手な人、居るでしょ?それと同じで、アシェルの事を好きな人も嫌いな人もいる。だけどアシェルの事を嫌いな人の話ばっかり聞いて、好きな人の話を聞かないなんてそんな悲しい事しないで。僕達の事信じて。……アシェル、大好きだよ。」

「兄上…。ごめんなさい。」

「うん。アシェルはいい子だね。……あとパーキンス伯爵令息の事だけど、アシェルが追い詰めたんじゃないよ。どうも伯爵家が出してる薬の影響らしいんだ。僕もそこまで詳しくないけど、それは間違いないみたいだよ。だからアシェルのせいじゃない。安心して。」

え…薬の影響?僕が追い詰めたんじゃないの?薬のせいなの?…そっか。そうなんだ…。


じゃあ僕、また皆と一緒にいていいの?皆の事避けてたのに、一緒にいてもいいの?

「もちろん!きっと皆もまたアシェルと一緒にいたいと思ってくれてるよ。……よし。少し元気になったかな?じゃあ持ってきた食事、食べてくれる?冷めちゃったけど。」

あははって兄上が笑ってる。兄上が笑ってくれて僕の心はまたあったかくなった。

それから兄上が持ってきてくれたご飯を食べて、食器を返しに行って、そのまま兄上の部屋に行った。

そしたらデリック様も来て「明日学園は休みだから朝まで喋るぞ!」って言って3人で騒いだ。僕はいつの間にか寝ちゃったけど。


翌日、3人でいつものように寮の食堂へ行った。そこで食事をしていたらアーネスト様に声をかけられた。

あ…どうしよう。アーネスト様、怒ってないのかな。

「…じゃあ僕とデリックは席を外すね。」

そう言って、僕とアーネスト様が残された。

「…アシェル、昨日は学園を休んだと聞いた。大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。ご心配をおかけしました。すみません。……あと、避けてしまってごめんなさい。」

「いや、大丈夫だ。気にしないでくれ。……そうだ、来週の休みに街へ一緒に行こう。」

「え?…ギルドですか?」

「違う。冒険者の師になってくれたお礼。まだしてなかっただろう?」

あ、そんな事言ってたっけ。そんな事気にしなくてもいいのに…。

「じゃあ、来週いつもの時間に。」


そう言うとアーネスト様は席を立った。

来週、アーネスト様と一緒に街へ行ける。うわぁ…どうしよう。嬉しい…。アーネスト様、怒ってなかった。どうしよう、ドキドキしてる。うわぁ。




* * * * * *

~食堂でアシェルを見守っていたローレンスとデリックの会話~

「ローレンス、あいつと2人にして大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。………あ、アーネスト君、デートに誘った。」

「うわ、本当だ。おい、本当に大丈夫か?」

「ふふ。大丈夫。…見てアシェルの顔。真っ赤になっちゃって可愛い。」

「……なぁ、もしかしてアシェルって。」

「ふふ。そうみたい。…相思相愛だね。羨ましいなぁ。僕も恋したいなぁ。」

「………意外と近くにいるかもよ。」

「ん?なんか言った?」

「…何も。」
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