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33 アーネストside
しおりを挟むギルドマスターの協力で、すぐに転移門を潜りソルズへとやってきた。
建物の外に出ると、何頭も馬が用意されていた。
「すまない、この馬を借りる事は出来るか?」
「悪いが、これは他の街から応援に来た冒険者用の馬なんだ。今スタンピードとドラゴンで大変なことになっていてな。遊びに来たんなら悪い事は言わない。帰った方が良い。」
「いや、俺はその『応援にきた冒険者』だ。…これで信用してくれるか?」
そう言って冒険者カードを提出する。俺は未だDランクだが冒険者である事を証明することは出来る。
「…確かに冒険者カードだな。だがお前のランクは……っておい!」
「悪い!時間がないんだ!借りていく!」
ランクが低すぎて前線には送れないとでも思ったのだろう。断られる前に馬に跨って走り出す。
確か西だと言っていたな。
必死で馬を走らせ街の外へ。街のすぐ側では壮絶な戦いが繰り広げられていた。冒険者も騎士も総出で大量の魔物と戦っている。
かなりの数だと言っていたがここまでとは…。
その横を通り過ぎていく事に罪悪感を覚えながらも、前方に見えるドラゴンへと向かっていく。
アシェルが街から引き離したのだろう。氷の槍が降り注いだり、激しい光が放たれたりする光景が見えた。
アシェルだ。アシェルが戦っている。待っててくれ、すぐに行く!
もう辿り着くというところでドラゴンの爪がアシェルに迫るのが見えた。まずい!
すぐ近くで馬から飛び降り駆け出しながら剣に魔力を纏わせる。
もうアシェルに届きそうなところで、素早く剣をねじ込み弾く。
間に合った!
「っ!? アーネスト様っ!?」
「…ふぅ、間一髪だったな。無事で良かった。」
驚いた顔のアシェルの目は、俺の剣に向けられていた。
「前にアシェルが教えてくれただろう?…魔力剣、だったか?俺も出来る様になったんだ。それを伝える前にこんな事になってしまったがな。」
本当は今日のデートが終わってから言うつもりだったんだ。
「さっきはすまなかった。俺は甘ったれていた。」
「アーネスト様…。」
「っ!ドラゴンは待ってくれないみたいだ。やるぞ、アシェル!」
「はい!」
相手がドラゴンだろうとやる事は一緒だ。俺が前衛として戦い、アシェルが後衛として戦う。
前衛なしで、たった1人でここまで戦っていたアシェル。本当に君は凄い。俺も早く追いつかなければ。このドラゴンはその踏み台にさせて貰うぞ!
一気に距離を詰め魔力剣で斬りつける。硬いドラゴンでもすんなりと刃が通っていく。これは本当にすごいな。これならばやれる!
俺の存在を消そうとドラゴンが攻撃を仕掛けるその時、風の魔法が目の前で発動しドラゴンの攻撃を防いでくれる。そのまま突風で押し込まれたたらを踏んだところへ、すぐさま斬り捨てていく。
さすがアシェルだ。フォローしつつも攻撃を緩めない。
何度か斬りつけ、ドラゴンの攻撃が来る前に後ろへ退避する。その瞬間にアシェルの魔法が発動する。氷の槍が突き刺さる。深くは刺さっていないが確実にダメージは蓄積されている。本当に後衛としてこれ以上になく戦いやすい相手だ。
さて次は俺の番。と思った矢先、
「アシェル!……俺も加勢するぞ!いっけぇぇぇ!!」
そんな声と共に、竜巻が巻き起こりドラゴンを切り刻んでいく。
「っ!母さん!…父さん、ライリーも!」
「アシェル!余所見をするな!まだ終わってないんだぞ!」
アシェルの家族か!スタンピードの魔物を他のメンバーに任せ加勢に来たのか。これは心強い!
剣を持った2人が、俺と同じく魔力を纏わせた剣を持ちドラゴンへと迫っていく。なんて速さだ!
流石は親子というべきか、見事な連携と素早さで斬り捨てていく。
「アシェル、ここまでよくやったな!俺たちも加勢するから、一緒に片付けよう!」
「うん!…アーネスト様!5人でやります!絶対勝ちましょう!」
「よし!やろう!」
これで前衛3人、後衛2人のパーティーの出来上がりだ。アシェル以外は初めてのメンバーだが流石は慣れている。俺が加わっても連携は乱れる事なく確実にダメージを与えていく。
前衛の1人が危ない場面で後衛が魔法でフォロー。その隙に他の前衛が斬りつけ、更に魔法で攻撃を重ねていく。
なんて戦いやすいんだ!凄い!お互いがお互いをフォローしつつ、確実に攻撃を仕掛けていく。これが高ランク冒険者。無駄な動きが一切ない!
「ライアス!援護する!」
アシェルの母親が突風を父親に当て、そのスピードに乗りドラゴンの下へと潜り込む。そしてそのまま柔らかい腹を斬りつけ離脱。こんな連携初めてみたぞ。こんな事他の人間がやったら大怪我では済まされない。アシェルの母親もなんて精密なコントロール。
ドラゴンのブレスが放たれそうな時はアシェルの魔法がそれを止める。
初めてアシェルの家族の戦いを見たが、凄まじいとしか言えない。こんな中でアシェルは育ってきたのか。その強さに納得させられる。
俺たちの攻撃は確実にドラゴンを弱らせていた。見るからにボロボロになっている。
厄災級とここまでやれるなんて!もうあと一息だ!
ドラゴンの爪がアシェルに向かっている。それをアシェルが魔法で塞ごうとしている時に、見知らぬ男がアシェル目掛けて走っているのが見えた。
まずい!
急ぎ駆け出したが間に合わず、男はアシェルを突き飛ばした。いきなりの事でアシェルは魔法が展開できずドラゴンの爪へと向かっていく。
ダメだ!アシェルを守らなければ!
「アシェルーっ!!」
剣を突き刺さしながら、アシェルとの間に無理やり体を捩じ込む。
勢いを多少防げてた程度で、ドラゴンの爪は俺の腹を貫通した。
「ぐふっ!」
「!! アーネスト様ぁ!!」
そのまま俺は投げ飛ばされ地面へと叩きつけられる。
ぐぅっ…なんて痛さだっ!
これはもう、俺は助からないだろう。最後に一目アシェルの顔をと思った時、駆けつけて来たアシェルが見えた。
「ごふっ…アシェル…無事、で良か、った…。」
「なんで、なんで僕をっ…!」
「…俺も…守りたい、人が…いたから…な…。アシェル…愛し、てる……。」
最後にこれだけは伝えたかった。君の邪魔にしかならないかもしれない。こんなの俺の自己満足でしかない。でも最後にせめて俺の気持ちを知って欲しかった。
最後まで戦えずすまない。最後まで守れずにすまない。
どうか勝ち残って。この先の君の幸せを願っている。
君に会えて良かった。君を好きになって良かった。ありがとう。
そして俺の意識は闇に飲まれていった。
「ん…。ここ、は…?」
ここはどこだ?
俺は確か…ドラゴンの爪が俺の腹をぶち破り投げ飛ばされて…。
そして死んだはず。
首を動かして周りを見渡す。すると見たことのある銀色が目についた。
ゆっくりと体を起こす。俺の体はギシギシと音がなるが無視をする。
だってそこには、ベッドに顔を伏せ寝ているアシェルがいるんだ。
無事、だったのか。良かった。
徐に手を伸ばしそっとアシェルの頭を撫でる。サラサラと気持ちのいい感触が伝わって来る。アシェルの髪に初めて触れた。ずっと触れたかった綺麗な髪。
「ん…。あ、朝?…アーネスト様は…?」
撫でていたせいで起きたらしい。心地の良い声が耳をくすぐる。
まだ疲れが残っているのだろう。緩慢な動きで起き上がり、そして綺麗な青い瞳とぶつかる。
「え…?」
「…アシェル…おはよう。」
「アーネスト様…。」
「ああ。……アシェルありがとう。俺は、助かったんだな。」
「……アーネスト様ぁ!!」
みるみる目に涙を浮かべたと思ったら俺に抱きついて来た。その細い体をしっかりと受け止める。
「良かった…良かった…アーネスト様ぁっ!あのまま…目を覚さなかったらって…怖かった…良かった…。」
「…心配かけてすまない。でも俺はちゃんと君を守れたんだな。」
「助けてくださって、ありがとう、ございましたっ!…でもっでもっ!もうあんな思いをするのは、嫌です!もう絶対に、嫌です!」
「すまない。ありがとう、アシェル。」
悲しませてしまったが、俺は自分がした事に後悔はない。大切な人を守れたんだ。これでいい。
しばらくアシェルの温もりを感じていたが、ふと気になった事があってふいに口を開く。
「…アシェル、あの時俺はちゃんと言えてただろうか?」
「え?あの時?」
この様子を見るに、俺の気持ちを伝えたつもりだったが聞こえていなかったのもしれない。
「もう一度言い直させてくれ。…アシェル、愛してる。」
「…あ。………本当、ですか?」
「え…で、でもっ!アーネスト様にはパーキンス様が…。」
「…そうか。まだ言ってなかったのか。もう婚約破棄になっている。だから心配しなくてもいい。」
これもデートの後に伝えるつもりだったんだがな。
「アシェルには迷惑かもしれないが、どうしても伝えたかったんだ。…本当に愛してるんだ。」
「ぼ、僕もっ!僕も好きです、アーネスト様!」
今なんて言った?アシェルも俺の事を…?
「アシェル!」
心が打ち震えて衝動的に唇を奪う。ずっとずっとこうする事を夢見ていた。信じられない。もう2度と会う事も出来ないと思っていたのに。
何度も角度を変え、その唇を啄む。
「嘘みたいだ…。こんな事があるなんて。」
「はい。僕も、そう思います。」
信じられない。今俺の腕の中にはアシェルがいる。愛しいアシェルが。
俺たちは想いが通じ合ったのか。こんな、こんなことがあるなんて。
アシェルとの触れ合いを楽しんでいたが、体が限界だった。アシェルの微笑みを焼き付けて俺は夢の中へと旅立った。
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