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1巻
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「ユリシーズ・リンプトン! ライオネル殿下と二人きりで馬車に乗るとはどういうことだ! それが許されるのはお前ではない!」
ある日の放課後。学園の車寄せで、ライオネルと一緒に馬車に乗り込もうとするあいつを呼び止めた。いくらアルノルト様が「構わない」と言っていたとはいえ、こいつには自分の立場というものをわからせる必要がある。
「……ライ様っ、怖いっ……!」
俺に怒鳴られたユリシーズは、隣に立つライオネルの腕へさっと縋りつく。するとライオネルは王子様然とした態度でユリシーズを俺から隠すように一歩前へ出た。
「またお前か! 他でもない僕がそれを許しているのだからお前がとやかく言うことではない! 同じことを何度も言わせるな!」
ライオネルは胸を張って正々堂々と声を上げた。見目麗しき王子様がか弱く震える美少年を背に庇い、ニタァと悪役らしい笑みを浮かべる俺を睨みつける。その姿はまさに、悪党からお姫様を守る騎士のような構図だ。何も知らない人が見れば、ライオネルを勇敢だと褒め称えるだろう。
だがお前がそうやって身を挺して守るべきはそいつじゃなくて、婚約者であるアルノルト様だろうが!
「ライオネル殿下こそ、私に同じことを何度も言わせないでください。あなたの婚約者はそいつではなく、アルノルト・ブレイズフォード様です。あなたが気にかけて大切にすべき人は、ユリシーズ・リンプトンではありません!」
「それがどうした! お前に関係ないだろう!」
「ええ、確かに関係ありませんよ。ですが王太子であるあなたのその行動が、アルノルト様の心を傷つけているんです。私の友人であるアルノルト様を傷つけることは、王太子殿下であっても許しません」
ただの伯爵家の息子が王太子に向かって言うべきことではない。ライオネルはより激しく俺を睨みつけ、その視線だけでも殺されそうな雰囲気を醸し出している。普通、王太子にここまで睨まれれば『俺の命はない!』とビビッて逃げ出すだろう。
だが俺は『悪役令息』に成り代わった。ビビるどころか、こいつを馬鹿にするように更に悪役じみた笑みを浮かべてやった。するとライオネルは俺のやっすい挑発に乗り、顔を真っ赤にさせてぎりぎりと拳を握り締める。
「貴様っ……! またあのような目に遭わないとわから――」
「エルバート、ここにいたんだね」
「んえ!? アルたん!?」
ライオネルとバチバチと緊張感のあるにらめっこをしていたら、俺の肩がぽんと叩かれのんびりとしたアルノルト様の声が割って入った。俺と目が合うとにっこりと嬉しそうに微笑んでくれる。
はぁ♡ その微笑み国宝級♡ 荒んだ心が浄化される♡
って、そうじゃない。今俺は悪役令息として立派に立ち回っているところだし、そんなところにアルノルト様が現れちゃ駄目だから!
「おや、ライオネル殿下もいらっしゃったのですか。どうぞお気を付けてお帰りください。それでは失礼いたします」
「えっ!? ちょ、まっ……!」
アルノルト様は今気が付きましたといわんばかりの態度で、ライオネルに向かって綺麗な所作で優雅なお辞儀をすると、俺の腕を掴んで強制的にその場から連れ出した。俺は悪役令息としての仕事の真っ最中だったのに! 後ろから「逃げるな!」とライオネルの声が聞こえたが、アルノルト様は聞こえないふりをして歩む足を止めることはない。
そのままアルノルト様は、少し離れた東屋へとやってきた。周りの花々は今日も元気に咲いている。天気もいいし、ここは開放的で気持ちがいい場所だ。なのにあまり人が来ることはなく、放課後ということもあって他の生徒の姿はない。
「エルバート、また君は危ないことをして……」
「……ごめんなさい」
俺をエスコートするようにベンチに座らせると、その前に逃がさんとばかりに陣取る。怒っているというより心配していることがわかるから俺は何も言えない。アルノルト様の顔を見ることが出来ずただ足元をじっと見つめていた。
俯く俺の頬にアルノルト様の両手が添えられた。そのままくいっと上へと向けられ視線が絡む。アルノルト様の眉尻は下がっていて、少し悲しげに微笑んでいた。
うぐっ……! その表情もとてもとっても素敵なのだけど、悲しませてる原因が俺ってわかってるから罪悪感が凄いっ……! 顔を掴まれていなかったらすぐに五体投地で全力で謝罪するところだ。
なのに上からアルノルト様に覗き込まれるようにされて、胸がきゅんきゅんとときめいてしまっている……今頃俺の顔は真っ赤になっていることだろう。美の化身たるこのご尊顔が近くにあったらきっと誰でもそうなると思う。
「エルバート、君の気持ちはわかってる。だけどもし君に何かあったらと思うと心配なんだ」
「……はい」
アルノルト様のその気持ちは理解しているし、そう言ってくれることはとってもありがたい。俺の推しであり命であり神であるアルノルト様が、こんなモブの俺をここまで気にかけてくれることは奇跡だとわかっている。
でも俺はアルノルト様の言う通りにすることは出来ないんだ。俺が悪役令息であり続けなければ、俺の大切な大切なアルノルト様が断罪されてしまう。それを回避するために俺はどうしてもやり続けなければいけないから。
俺が「はい」と返事をしていても、結局それを止めることは出来ないと知っているアルノルト様の表情は変わらない。それどころかますます悲しげな顔になって微笑みすらも消えてしまった。あああ……胸が痛い……
「僕はね、本当に君のことが大切なんだ。君が思っているよりもずっと。どうしたらわかってくれる?」
ぐうっ……! 俺だって大事な大事なアルノルト様のご要望であればなんだって聞きたい! 今すぐ死ね、と言われたら喜んで命だって差し出せる。こんなの、普通ならおかしいことだと思う。でも俺のアルノルト様への気持ちは、それくらい大きなものなんだ。
これほどまでの気持ちを抱えていながら、俺はアルノルト様のそのご要望だけはどうしても叶えることは出来ない。だってそれは悪役令息をやめることになってしまうから。
「これ以上僕を不安にさせないで。お願いだよ、エルバート」
「ぬあっ!?」
んなぁぁぁぁぁ!? ア、アルたんの形の美しいおでこが、俺のきったねぇおでことこっつんこしてるぅぅぅぅぅ!? 超ドアップのアルたんの表情は少し悲しげに眉尻が下がり、アクアマリンの綺麗な目は閉じられている。それは哀愁を帯びたとんでもない色気を纏っていて、しかも今にも唇が触れそうなほどの距離感。おまけにいい匂いもするから俺は正気でいられるわけがないッ!
ひぃぃぃぃぃ! い、今すぐ離れなきゃ! 推しであり命であり神であるアルたんが穢れてしまうッ! だけど俺の頬に添えられたアルたんの白魚のようなおててを振り払うなんて、そんな乱暴なこと出来るわけがないじゃないか! でもそのおててまで穢れてしまうのであれば振り払うのも致し方あるまい! ってやっぱりそんなの俺には難易度が高いです無理ですごめんなさい!
「エルバート、大丈夫!?」
「……ふえ?」
俺の様子がおかしいと気が付いたアルノルト様はそっと顔を離すと驚愕の表情を浮かべ、急ぎポケットからハンカチを取り出して俺の鼻へと当てた。うわぁぁぁぁぁ! またアルたんの前で鼻血出してたぁぁぁぁぁ! なんか、たらーって垂れてるなぁとは思ってたけど! しかもアルノルト様の貴いハンカチを俺の汚い血で汚してしまうという許されざる所業まで!
「ごめん、僕のせいだね……」
「違いますッ! これはアルたんのせいではなくて不甲斐ない俺のせいですからお気になさらずッ!」
アルノルト様に間違ったことなど何一つあるわけがない。アルノルト様は海よりも深い慈悲の心で俺を心配してくださっただけだ。それを受けて勝手に舞い上がりこんな汚いものを見せてしまった俺の失態でしかない。なのにアルノルト様は「ごめんね……」と言って俺の頭を優しく撫でる。あああああ、嬉しいと申し訳ないの相反する気持ちがせめぎ合っている……
っていうか俺、なんでアルノルト様との距離感こんなにバグってるんだろ。俺は皆に嫌われるはずの悪役令息だぞ。それに途中までは凄く上手くいっていたんだ。俺が悪役らしく振舞えば振舞うほど、攻略対象者達からもユリシーズからも全校生徒からもヘイトを買って、嫌がらせだって受けていた。なのにここ最近アルノルト様が俺を構うようになって、こんなことまでするようになるなんて……
お茶会に呼ばれることもあるが参加者は俺達二人のみ。周りに人の目がなければ手を繋がれることもある。「エルバートは可愛いね」なんて絶対にありえない褒め言葉もいただいた。おかしい。俺は平凡モブのブサイクだぞ。医者を勧めた方がいいのだろうか。
「少しは落ち着いてきた?」
「……はい。お手数おかけして申し訳ありません」
「ふふ。よかった。もう少し休んだら寮まで送るよ」
こんな俺のことなど捨て置いてくれてもいいのだが……アルノルト様は、毎朝寮まで迎えに来るので一緒に登校している。帰りはアルノルト様の都合にもよるが、時間がある時は寮まで送ってくれることもある。
アルノルト様は俺の前世からの一番の推し。アルノルト様の断罪を回避して幸せになってくれることだけを考えてきた。自分がモブだということも理解しているし、決して推しとこんな風に仲良くなりたいと思ったわけじゃない。なのに俺を見つめるアルノルト様の瞳はびっくりするほど優しくて喜色を浮かべている。なんでだ。
「ここは景色もいいし、通り抜ける風も気持ちがいいね」
しかもアルノルト様は微笑みながらゆったりと俺の隣に腰かけて、その直後、とんでもない行動に出る。
「エルバートとずっとこうしていられたらいいのに……」
「ぐっ、ぐひっ……! ごぉっ……!」
ぎゃぁぁぁぁぁッ! ア、アルたんの頭が俺の肩にぃぃぃぃぃ!? 寄り添って肩に頭を乗せるなんてまるで恋人同士がやるようなラブラブシチュじゃないですかって、俺が恋人になれるとかなりたいとか推し様に対して思うことは絶対にないけどこの状況はどう考えたってそうとしか思えないし見た人が絶対に勘違いするような危険な行動であるからして俺の心臓はもう破裂寸前というか塵となって消えそうというかそれだけ頭がパニック状態なんですがどうすればいいですかね!?
「ぐふっ……!」
「エルバート!?」
キャパオーバーとなった俺の意識はここで途絶えた。しょうがないだろう。推し様であるアルノルト様とおでことおでこを触れさせただけじゃなく、こんな風に寄り添って肩に頭を乗せられてみろ。誰だって気絶するに決まってる。
どうしてこんなことになったんだ……俺は悪役令息として嫌われるよう立ち回っていたはずなのに。アルノルト様からの好感度が高すぎると勘違いしてしまうほどの扱いを受けるなんて! 一体どうしてこうなった!?
◇
「暇……」
「暇だって言うなら勉強でもしたらどうだ?」
「絶っ対に嫌!」
今日も今日とて代わり映えのない日常。朝は従者であるペレスに叩き起こされ、面倒くさいのを我慢して渋々顔を洗い身支度を整えた。そして食堂へ行き腹が破裂するんじゃないかというくらい朝飯を食う。それが終われば昼食までやることがない。
ペレスは「勉強しろ」と言うが、俺はまったくヤル気がない。なんであんな面倒くさいことやらなきゃいけないんだ。俺はまだ八歳だぞ。学園に入学するまで時間はたっぷりある。今急いでやる必要がどこにあるんだ。
定位置である自室のソファーでごろんと横になる。お腹が苦しいからいつもこうやって食休みをして過ごすのだが、やることがないというのも暇でしょうがない。昨日は何をやって時間を潰してたっけ。
ぼーっと天井を見上げる俺を余所に、ペレスは俺の部屋の掃除に精を出している。朝っぱらからよくそんなに動けるな。俺には絶対無理だわ。甲斐甲斐しく働くペレスを見て、心の中で「頑張れー」と声援を送ってやった。
ベッドシーツの交換を終わらせたペレスは両手いっぱいに洗濯物を抱え込んだ。それを視線で追いかけていると、ペレスはすたすたと部屋を出ていく。ぱたんと扉が閉まり、室内は途端に静かになった。
それに少し寂しさを覚えて小さなため息が漏れる。俺の部屋へ出入りする使用人はペレスだけだ。あいつがいなくなれば俺は一人になる。たとえ短くてもこの時間はあまり好きじゃない。だからといって他の使用人が部屋に入ってくるのも好きじゃないけど。
ソファーの上でごろりと重たい体の向きを変える。そうやって部屋を見回すと、俺の脱ぎ散らかした寝間着も、家庭教師との授業で使ってそのまま放置していた勉強道具も、何もかもが綺麗に整頓されていた。今ここにペレスはいないけど、ペレスの存在を感じることが出来る。そうすると俺は一人じゃないって思えるんだ。
父上も母上も今はまだ寝ているんじゃないだろうか。それか趣味に没頭しすぎて徹夜しているか。食堂で姿を見かけなかったからそのどちらかだろう。兄上は学園で家にいないし。
って、そういや父上達と一緒に食事をしたのっていつだっけ? もうかれこれ何日も姿を見ていないことに気が付いた。同じ家に家族がいるのに、これじゃあいないのと同じだよな。毎月お小遣いを貰っているけど、そのほとんどは手つかずのままだ。正直そんなものより、違うものが欲しい。なんて恥ずかしいから絶対言わないけど。
「あー……それにしても暇」
今日の午後も家庭教師が来るんだっけ。あー……嫌だなぁ。面倒くさい。なんで勉強なんてやんなきゃいけないんだよ。昨日は歴史の授業だったけど意味がわからない話ばっかりでつまらなかったし、途中で居眠りしたんだよな。どうせ今日もそんな面白味のない話ばっかりするんだろうな。はぁ……考えただけで憂鬱すぎる。
それに家庭教師だってヤル気なさそうだし、俺が寝てても何も言わない。恐らく今日もそうなるだろう。あの兄上だって学園に行けてるんだし大丈夫だ。兄上も家にいる時はずっとダラダラしてたもんな。それでも学園には入れたし、あと一年で卒業して帰ってくるはずだ。高等部なんかに行くつもりはないだろうし。
それにしてもペレスの奴戻ってくるの遅くないか? あいつ、どこで油売ってるんだか。俺を一人でほったらかしにするなんて、帰ってきたらお仕置きしてやる。
そうやってぼーっとしていたらやっとペレスが帰ってきた。遅いぞ、という意味を込めてじろりと睨みつけたのにあいつはまったく気付いていない。どうせ気付いたとしても「はいはい。いつものことだろ」と気にも留めないが。
「まったく。いつまでごろごろしてるんだよ。また太るぞ。いいのか?」
「うるさいなぁ。お腹が苦しくて動けないんだから仕方ないだろ。っていうか戻ってくるの遅いぞ!」
「そこまで遅くはないだろうが。それよりたまには新聞でも読め。どうせ暇なんだろ? 一ヵ月分の新聞、ここに置いとくから」
ペレスはやれやれと肩をすくめ、ばさりと紙の束をテーブルの上に置いた。新聞なんて一体どこから持ってきたんだ。父上は「金の無駄だ」と言って取り寄せてなかったはずだぞ。
不思議がる俺の顔を見たペレスが「自分の家から持ってきた」と説明した。こいつ、新聞なんて読んでやがるのか。信じられない思いでペレスを見つめていたら頬をぽりぽりと掻きながら理由を教えてくれた。どうやら俺の世話をするようになって字が読めるようになったことが嬉しくて、新聞を取り寄せるようになったらしい。
平民で字が読めない書けないというのは珍しくない。ペレスもそうだったのだが、俺の授業中も一緒にいることでこっそり勉強して、わからなければ家庭教師に聞いていたんだそう。俺に隠れてそんなことやってたのか。卑怯な奴め。
「新聞って面白いぞ。俺のは平民向けのものだから大した内容じゃないけど、いろんな噂話とか書かれているからな」
ペレスは新聞で知った内容を勝手にぺらぺらと話し出した。「エルバート様は知らないだろうけどぉ」といちいち付けて話すのがムカつく。俺がイライラしているのをわかっているくせに、こいつは俺を小馬鹿にしたように話を止めない。おまけに「いつも勉強サボってばっかりのエルバート様じゃ、読んでも理解出来ないよなぁ~」なんて言いやがった! 平民向けの新聞くらい読めるし理解出来るに決まってるだろうが!
あまりにも腹が立ってソファーから体を起こすと、勢いよくテーブルに向かった。ドカッと椅子に座り置かれた新聞の束を手に取る。
「お、読む気になったか?」
「勘違いするなよ! 暇だからだ! 暇だから仕方なく読むだけだからな!」
くっそぉ……ペレスのにやにや顔がむかつく! それを無視して新聞に目を通す。つっかえながら……じゃない、ゆっくりじっくり新聞を読んでいくと、内容が実にくだらなくてため息が出た。『〇〇さん家の牛が子牛を出産!』とか、『〇〇さんが六十歳を迎えてめでたい!』とかどうでもいいことばっかりだ。一生懸命読んだ自分が馬鹿みたいじゃないか……
だけど中には王都のどこぞの『貴族が不正で失脚』したとか、『王都で開催された剣術大会の優勝者は〇〇!』だとか、本当かどうかはわからないが領地のこと以外の話題もあってそれはなかなか面白いと思った。
最後に目にしたのも王都での内容だった。日付を見てみると今から一ヵ月前のものらしい。
「『ライオネル・ウォールダム王太子殿下と、ブレイズフォード公爵家第一子、アルノルト・ブレイズフォード様の婚約成立!』ねぇ……ふ~ん――って、アルノルト・ブレイズフォード!?」
その名前を見た瞬間、俺はビリビリと電流が体に走ったかのような衝撃を受け、絶叫するとその勢いで椅子から転げ落ちた。巨体なため、ドスン! と派手な音が鳴る。思いっ切り床に打ち付けたせいで体が痛みを訴えているが、俺は今それどころではない。
――思い出した! アルノルト・ブレイズフォードって俺の推し様、アルたんじゃんッ!!
そこからは怒涛の記憶の渦が俺の頭の中を襲った。とある男の人生が目まぐるしく走馬灯のように駆け巡る。
小、中、高と平凡な人生を歩んでいたが、大学で二次元に目覚めてしまう。アニメにゲームにとことん嵌り、社会人となってからもそれは変わらなかった。仕事が忙しく自由な時間が限られてしまっても、それが唯一の癒しと言っていいほど俺の中では重要だったんだ。その中でも一番特別な、俺の全てと言っても過言ではないものが存在した。
それがBLゲーム『Fascinating♡love~ときめく恋は学園で~』、略して『ファシラブ』だ。
段々思い出してきたぞ。俺は金も時間も使いまくったこのスマホBLゲームのアルノルト・ブレイズフォードが推しだったんだよ!
推し様は輝く白髪にアイスブルーの瞳を持つとてつもない美形だ。だが切れ長のつり目かつ、常に無表情であるためかなり冷たい印象を与える。それで『無情の貴公子』、または『氷の貴公子』ともあだ名され、ゲームのファンから『アルノルト様』と呼ばれていた。
だが俺は一番の推しであり命であり神である彼のことが大好きすぎて、親しみを込めて『アルたん』と呼んでいたのだ。同じアルノルト様推しのオフ会で、俺が『アルたん』とぽろっと口に出したら一斉に皆の目が据わったことがある。空気も一気に悪いものに変わってしまい、その時は非常に怖かった。そしてその時怒られたのだ。気高いアルノルト様を軽々しくアルたんなんてふざけた名前で呼ぶんじゃねぇ、と。
腐女子のお姉様方のお怒りはもの凄く、小心者である俺は必死に了承の旨を伝えることしか出来なかった。ああ、懐かしいな。怒られた時は怖かったけど、いい人ばっかりだったんだ。こんな俺とも仲良くしてくれて、皆で通話アプリを使って長時間話してはよく寝不足になったもんだ。
そんな俺がまさか新聞でアルノルト様の婚約発表の記事を見ることになるとは――ってちょっと待て。今の俺は誰だ? 蘇った記憶の中の俺は日本人だった。でも今は日本どころか地球に存在しない国にいる。名前も『エルバート・ヘイクラフト』という日本人とはかけ離れた名前だ。
顔だって日本人だった時とは全然違う。というより、俺は今八歳の子供だ。日本にいた俺はれっきとした社会人だった。
そして今の家は伯爵家でいわゆる貴族というやつだ。貴族なんて俺がいた時代の日本には存在しなかった。しかも今の俺には従者という付き人のような存在もいる。
もしや、さっき蘇ったあの記憶はいわゆる『前世』というものなのではないだろうか。そして俺は生まれ変わって今を生きている。
ということは俺は転生しているということだ。しかも『ファシラブ』の、アルノルト様がいる世界に転生しているってことになるのでは!? なんという奇跡!!
だがしかしッ! 今になってそれに気が付いたということは、推しであり命であり神であるアルたんを今の今まで忘れていたってことだろう!?
「な、なんてことだ! この俺がアルたんの存在をさっぱり忘れていたなんてぇぇぇぇぇ! 万死に値するッ!!」
こんなことが許されると? 許されるはずがないだろうッ! あまりにも不甲斐ない自分に腹が立って仕方がない。その怒りを発散させるかのように俺は床を力いっぱい殴っていた。手の痛みなど、アルノルト様を忘れていた愚かな自分にとっては罰にもならない。
「……エルバート様? 大丈夫か?」
「大丈夫じゃない! 非常事態だ!」
なんてことだ……この俺が命よりも大切なアルノルト様のことを忘れていたなんて一生の不覚ッ! たとえ生まれ変わっていようとも、前世の記憶がなかろうとも! アルたんのことだけは忘れちゃ駄目だろうがぁぁぁぁぁ!
「俺はなんて薄情な人間なんだ……こんな俺が生きてていいはずがない……」
俺はゆらりと立ち上がると、護身用にと部屋に置いてあるナイフを手に取った。それをゆっくり首元へと持っていく。このまま引いてしまえば今世の俺の命は終わるはずだ。アルノルト様のことを忘れていた愚かな俺は、死をもってその罪を償う!
「ちょ、何馬鹿なことやってんだあんたは!? ナイフを置け!」
「嫌だ! 放せ! 俺は俺が許せないんだ! って、あ! 返せ!」
「これは没収だ! というか落ち着け! 一体何があったっていうんだ!?」
戒めに自死しようと思ったのに、従者であるペレスにナイフを取り上げられてしまう。
何があったかなんて、信じられないことに俺は推し様であるアルノルト様を忘れて……って――
「あー!! そういうことか!!」
「今度はなんなんだよ!?」
従者であるペレスは、突然奇行に走る俺を気持ち悪いものでも見るような目で見ているが、今はそれに構っている余裕はない。アルノルト様を忘れていた己に腹を立てていたが、よくよく考えてみれば俺は推しであり命であり神であるアルノルト様と同じ世界に転生しているのだ。
ということは、だ。俺は前世で叶えられなかった、『アルノルト様を救う』という使命を果たすことが出来る!
一旦ここで状況を整理しよう。すーはーと深呼吸して、俺は転げ落ちた椅子に座り直した。ペレスに紙とペンを用意させ、それに今思い出したことをつらつらと書き連ねていく。
まずは今俺が生きているこの世界が、前世で金も時間もつぎ込んだスマホBLゲーム『Fascinating♡love~ときめく恋は学園で~』の世界であること。王太子とアルたんの婚約発表の記事が載っている新聞と、俺の今までの記憶を繋ぎ合わせればこれは間違いない。
しかも新聞には王太子とアルノルト様の写真が載っている。ゲームよりも幼い姿ではあるが、この俺がアルノルト様を見間違えるはずがない。はぁはぁ……ショタアルたんかわゆす! って今はアルノルト様の可愛さに浸っている場合ではないな。それは後でたっぷりと味わうことにする。
このゲームは俺の推しであるアルノルト様こと、アルノルト・ブレイズフォードが悪役令息で、最後は断罪され王都追放処分となる。
ゲームの内容は、アルノルト様の婚約者である王太子ライオネル・ウォールダムをはじめとする様々な攻略対象者達と、ヒロインが恋に落ちるという学園ラブストーリー。RPG要素が含まれていて、攻略対象者達と魔物討伐に出かけて経験値やお金を稼いだり、各キャラのカードを育成してステータスを上げたり、プレゼントをあげて好感度を上げたりするゲームだ。
ゲームのメインストーリーは、まず最初に五人いる攻略対象者から一人を選択する。そしてその選んだ攻略対象者の好感度をMAXにし、ストーリー分岐で出てくる選択肢から正しいものを選び、最終的にトゥルーエンドを迎えることを目指す。
五人全ての攻略対象者のストーリーでトゥルーエンドを見ると、隠し要素であるエクストラモードが解禁される仕組みだ。
俺はこのゲームをネットの広告で知った。そこにはゲームのイメージ画像が表示されており、攻略対象者達のイラストが載っていた。その時に目にしたアルノルト様に一目惚れしてしまった俺はすぐさまゲームをダウンロード。わくわくしながらプレイし始めるも、攻略対象者の中にアルノルト様の姿がない。
どういうことかと不思議に思いつつも、とにかくプレイを続けてみた。するとなんとアルノルト様は攻略対象者ではなく悪役令息だったではないか! 俺は悔しくて悲しくて信じたくなくて、ゲームの公式サイトで調べることにした。
するとそこには俺の願いむなしく、『悪役令息』としっかり紹介文に書かれたアルノルト様の姿が。よくよく調べてみても、アルノルト様が攻略対象として書かれているページは一つもなかった。
だがここで『エクストラモード』という文字を見つける。『全員のトゥルーエンドを見ると解禁される特別モード♡ どういった内容かはぜひ自分の目で確かめてくださいね!』と書かれており、それ以上の情報はなかった。
当時はこのゲームがリリースされてから一月ほどしか経っておらず、まだプレイヤーの誰もエクストラモードへ到達した者はいないようで、ネットでどれだけ検索してもエクストラモードについての情報は得られなかった。
もしかすると、悪役令息であるアルノルト様が攻略対象者になる特別ストーリーが出てくるのでは!?
そう思った俺はひたすらこのゲームをやり込み、自らの力でエクストラモードを解禁することにした。膨大な金と時間をつぎ込み、攻略サイトを調べまくり、ようやっと攻略対象者全員のトゥルーエンドを迎えた。そして解禁されたエクストラモード。ドキドキしていざプレイしてみると……
『ふっざけんな! ぬぁにがハーレムモードだよ! クソゲーか!』
前世の俺は、あまりの事態にスマホを壁に向かってぶん投げた。当然画面はクラッシュして、機種変更したのは言うまでもない。
俺はいろんなゲームをやっていたが、ここまでひたすらやり込んだのは初めてだった。それだけアルノルト様の姿は俺の好みドンピシャで運命だったのだ。
絹糸のように艶やかで美しい白髪に、透き通った煌めくアイスブルーの瞳。少しつり目で冷たい印象ではあるが、中性的で美しい美少年だった。あまりの神々しいまでの麗しさに俺は一瞬で心を奪われてしまった。
他の攻略対象者達のように、アルノルト様との甘々なストーリーが展開されることを夢見てここまで必死にやり込んだというのに……最後の最後で裏切られた俺の気持ちは、推しを持っている誰しもが共感してくれることだろう。
婚約者である王太子ルートだけかと思いきや、どの攻略対象者を選んでもアルノルト様が悪役令息であることは変わらなかった。ことごとくヒロインの前に立ち塞がり、悪役として登場していたのである。そして最後は断罪されてしまう。
トゥルーエンド以外にも、ノーマルエンドやバッドエンドも用意されているが、アルノルト様はどのエンドでも断罪されてしまう。ヒロインが攻略対象者と上手くいくかいかないかの違いで、ノーマルなら友情、バッドなら失恋というだけだ。
俺はアルノルト様だけが断罪されることに腹を立てていた。それももの凄く。だから俺は運営にひたすらご意見メールを送り続けていた。『アルノルト様を攻略対象にしてくれ!』と。
そしてネットで調べてみれば、アルノルト様が推しだという同志が一定数いることもわかった。俺はもう嬉しくて嬉しくて、SNSでそういう人を見つけるとすぐさまフォローしDMを送り続けた。すると皆アルノルト様が救済されるルートを望んでいたことがわかり、俺は嬉しくて泣いた。
俺は強火担だという自覚はあったが同担拒否ではない。アルノルト様を推しとする者は皆同志。仲間だという意識が強かった。そして不遇なアルノルト様を応援する同志はとても仲が良く、一緒にイベントに行ったり、オフ会を開いて『アルノルト様の心を守る会』を発足したり、アルノルト様のことを熱く熱く語るという楽しい時間を過ごした。
当然そんな俺の部屋はアルノルト様で溢れていた。一応公式が全キャラのグッズを販売していたから、俺はもうそれを買い漁った。ランダム商品が多く、アルノルト様以外のものもたくさん出たが、SNSで交換を叫べばすぐに目的のものが集まった。
アルノルト様は悪役令息ということでファンが少なかったのだ。俺はその現状にも腹を立てていたが仕方ない。推しを強制変更させるわけにはいかないからな。公式がちゃんとアルノルト様のグッズも出してくれたのはありがたかった。そこだけは公式を褒め称えてやった。
そしてゲームが一周年を迎えた時、イベントの一つでアルノルト様のカードが出ることになった。
攻略対象者達は、順番に限定カードが実装された。ガチャを回しその限定カードを手に入れると、甘々ストーリーが読めるという仕組みだ。しかも有名声優陣によるフルボイス。今までアルノルト様のカードなど一枚も出たことはなかった。だが周年記念でアルノルト様のカードが出るという。
この情報が出た時、同じアルノルト様推しの同志達は狂喜乱舞した。すぐさま音声チャットにて皆で万歳三唱し、喜びの歌を歌った。運営に『アルノルト様のカードを出せぇぇぇぇぇ!!』とご意見メールを送り続けた甲斐があったというものだ。
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ゼンはその婚約を阻止するべく、伯爵家の使用人として働いているシャノンを物語よりも早くルーカスと会わせようと試みる。
しかしなぜか、ルーカスがゼンを婚約の相手に指名してきて!?
弟loveな表向きはクール受けが、王子系攻めになぜか溺愛されちゃう、ドタバタほのぼのオメガバースBLです
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました
あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」
完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け
可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…?
攻め:ヴィクター・ローレンツ
受け:リアム・グレイソン
弟:リチャード・グレイソン
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