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あなたは僕の憧れの人
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「すごいな……」
養成所でのレッスン以上の演技だった。きっと養成所に通わなくなった後も、自分で演技の練習をしていたに違いない。自然と称賛の声が漏れた。
彼は絶対俳優としても成功する。これからオファーが殺到するに違いない。俺はそう確信した。
そしてチャットアプリを開き、約束通り彼に感想を送る。素直に感じたことを、そのまま書いて送信した。
すると一時間後、彼からの返信が来た。
『本当ですか!? 嬉しいです! 他でもない佐藤さんにそう言って貰えて本当に嬉しいです!』
と感動して涙を流している可愛いスタンプと共に、喜びの内容が送られてきた。
可愛いな、と思った。こんなに喜んでくれたのなら、感想を送って良かったと思った。
これで彼とのやりとりも終わるのかと思いきや、今度は来週放送のドラマにも出演するから見て欲しいと連絡が来た。その日はちょうど仕事でリアルタイムは難しそうだが、録画してちゃんと見ることを約束した。
するとまた『嬉しいです! よろしくお願いします!』と返事が来る。最初は売れない俺が感想を送っても、なんて思ったりもしたが、こうやって言われると悪い気はしない。
そしてそのドラマも見た後に感想を送る。すると『やった! 褒めて貰えてモチベーションが上がりました!』と返事が返ってくる。素直な彼が非常に可愛い。俺も大概単純だ。
そしてまたピロンと通知がなり、彼からのチャットが届く。だが今回の内容はちょっと違っていた。
『来月またドラマの出演が決まったんですけど、恋愛ドラマで告白のシーンがあるんです。僕、自分から告白したことがなくてどうやってもいいイメージが湧かなくて……そこで佐藤さんに演技指導をしてもらいたいんですけど、どうでしょうか?』
嫌味か? 最初に出てきた言葉はそれだった。いかんいかん。久しく出てこなかった劣等感が顔を出している。それをぎゅぎゅっと押し込めて、もう一度彼のチャットを読んでみた。
告白のシーンか。自分から告白したことがないなんて嫌味ともとれる言葉だけど、実際彼ほどのイケメンなら勝手に周りから告白されるんだろうと思う。経験があることの方が演技もしやすいが、経験がないと想像だけが頼りになる。
真面目に俳優として活動している彼なら、どんなシーンであっても完璧にやりたいと思うのだろう。彼の演技も回数を重ねるごとによくなっているし、彼の応援をしたい。
素直にそう思った俺は、演技指導の件を了承した。すると彼からは『また教えていただけるなんて夢のようです! それじゃあ三日後の水曜日はどうですか?』と早速日時の伺いがやって来た。
その日は問題なかったため、了承の返事を出す。『楽しみにしています!』という言葉と共に、万歳をする可愛いスタンプが届いた。
養成所でのレッスン以上の演技だった。きっと養成所に通わなくなった後も、自分で演技の練習をしていたに違いない。自然と称賛の声が漏れた。
彼は絶対俳優としても成功する。これからオファーが殺到するに違いない。俺はそう確信した。
そしてチャットアプリを開き、約束通り彼に感想を送る。素直に感じたことを、そのまま書いて送信した。
すると一時間後、彼からの返信が来た。
『本当ですか!? 嬉しいです! 他でもない佐藤さんにそう言って貰えて本当に嬉しいです!』
と感動して涙を流している可愛いスタンプと共に、喜びの内容が送られてきた。
可愛いな、と思った。こんなに喜んでくれたのなら、感想を送って良かったと思った。
これで彼とのやりとりも終わるのかと思いきや、今度は来週放送のドラマにも出演するから見て欲しいと連絡が来た。その日はちょうど仕事でリアルタイムは難しそうだが、録画してちゃんと見ることを約束した。
するとまた『嬉しいです! よろしくお願いします!』と返事が来る。最初は売れない俺が感想を送っても、なんて思ったりもしたが、こうやって言われると悪い気はしない。
そしてそのドラマも見た後に感想を送る。すると『やった! 褒めて貰えてモチベーションが上がりました!』と返事が返ってくる。素直な彼が非常に可愛い。俺も大概単純だ。
そしてまたピロンと通知がなり、彼からのチャットが届く。だが今回の内容はちょっと違っていた。
『来月またドラマの出演が決まったんですけど、恋愛ドラマで告白のシーンがあるんです。僕、自分から告白したことがなくてどうやってもいいイメージが湧かなくて……そこで佐藤さんに演技指導をしてもらいたいんですけど、どうでしょうか?』
嫌味か? 最初に出てきた言葉はそれだった。いかんいかん。久しく出てこなかった劣等感が顔を出している。それをぎゅぎゅっと押し込めて、もう一度彼のチャットを読んでみた。
告白のシーンか。自分から告白したことがないなんて嫌味ともとれる言葉だけど、実際彼ほどのイケメンなら勝手に周りから告白されるんだろうと思う。経験があることの方が演技もしやすいが、経験がないと想像だけが頼りになる。
真面目に俳優として活動している彼なら、どんなシーンであっても完璧にやりたいと思うのだろう。彼の演技も回数を重ねるごとによくなっているし、彼の応援をしたい。
素直にそう思った俺は、演技指導の件を了承した。すると彼からは『また教えていただけるなんて夢のようです! それじゃあ三日後の水曜日はどうですか?』と早速日時の伺いがやって来た。
その日は問題なかったため、了承の返事を出す。『楽しみにしています!』という言葉と共に、万歳をする可愛いスタンプが届いた。
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