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27 卒業したら
しおりを挟むそれから僕の周りは落ち着いた。全部じゃないけどかなりマシになった。
それはすごく嬉しい。喜ばしい。快適だ。
だけど…。
ヴィンが段々と人に囲まれるようになってきた。最初はクラスメイトの1人。友人になりたいと近寄ってきたやつだ。
それからまた1人増え、2人増え、少しずつヴィンと行動を共にする輩が増えてきた。
ヴィンも「教室に行くのが楽しい、学園で友人ができて嬉しい」と言っているから「良かったね。楽しそうで僕も嬉しい」って言ったけど、正直全く全然面白くない。
噂で聞いたのは「ヴィンセントの笑った顔が可愛い」という話。
当たり前だろ。ヴィンは可愛いんだ。やっと気づいたか馬鹿め。
でも他の人にそれを知られて僕は面白くないとも思ってる。あーもう、僕って心狭すぎ!
「は?今頃気づいたのかよ。アシェルさんの時からそうだったじゃん。」
「…アーロンうっさい。……ヴィンの魅力には僕だけが気づいていれば良かったのに。」
「今日なんて珍しく友人と勉強会だなんて言われて放っとかれてるもんなー。あー可哀想に。けけけ。」
「…ぶん殴ってやろうか?」
もうすぐ試験が始まるから皆勉強してる。そこにヴィンと仲良くなった奴らが「一緒にテスト勉強しましょう」とか言って図書室で勉強会だ。
だから僕は仕方なくアーロンと一緒にいる。
「…相手が俺で悪かったな。っていうかヴィンセントのことばっかり見てないでお前も勉強しろよ。」
僕達も図書室でヴィンの姿がちゃんと見える場所で勉強会だ。だってヴィンが心配だったから。
「そんなに心配で嫌なら断るように言えば良かったじゃん。」
「…そんな事出来るわけないよ。せっかくヴィンが楽しそうにしてるのに。」
ここからこうやって眺めてるけど、ヴィンは楽しそうににこにこしてる。質問されたら丁寧に教えてあげてて頼りにされてるのが嬉しそうなんだ。
だから僕の我儘で友達付き合いやめろなんて言えるわけない。
「ちゃんとわかってるなんて偉い偉い。ライリーの頭の中お花畑かと心配したけど杞憂だったな。」
「…ぶん殴られたいの?」
「…その口癖やめろ。怖いわ。ほらお前も筆記あるんだからちゃんと勉強やれよ。」
へいへい。仕方なく僕もペンを持ち教材に向き合う。あーめんどくさい。別に剣振ってるだけでいいじゃん。
なんてそう思っていてもやらなきゃいけないものはやらなきゃいけない。
ヴィンをちらちら見ながらノートに書き込んでいく。
「お待たせしました、ライリーさん。こちらは終わりましたよ。」
「ヴィン!」
お帰りヴィン!!寂しかったよ!!
「……俺には犬の耳と尻尾が生えてる幻覚が見えてるよ。」
なんか言った?嬉しいんだから黙ってて。
「ライリーさんも勉強中だったんですね。騎士科の筆記ってどういったことを勉強するんです?」
「見る?一応戦術とか戦略とかそういった事。昔の戦いで実際に取られた戦術とかね。」
「……これ、150年前の大戦の戦術ですね。」
「「え?」」
「昔本で読みました。懐かしい。確か一方的にやられて後がない不利な状況から機転を効かせて逆転勝利した戦いですよね。」
え、ちょっと教材見ただけでわかるなんてすごっ。
「じゃ、じゃあこれは?」
「ん?……ああ、これはヴァルーエ皇国の『嘆きの大戦』ですね。将軍の最愛の弟を人質として取られた上に、将軍はその弟と戦わなければならず最終的にその弟を殺してしまった悲劇の戦いですよね。」
「「……………。」」
「? どうしました?」
「ヴィンて昔読んだ本の内容とかほとんど覚えてるの?」
「? はい。大体のことは一度読めば覚えてしまいます。」
「「なにぃ!?」」
待って待って待って!! そんな話聞いてない!!
「…とんでもない天才じゃん。」
アーロンが呆然として溢す。
「…天才というか、特技?ですかね。」
「ヴィン!!凄い!凄い!僕の恋人が凄すぎる!!」
感極まってぎゅーっと抱きしめてしまった。僕のヴィン凄すぎる!!
「そこうるさい!!騒がしくするなら出て行きなさい!!」
「「「……ごめんなさい。」」」
僕もヴィンに勉強を見てもらうことになって、おかげで筆記は今までで1番良い点数を取ることが出来た。
実技に関してはいつも満点以上取るんだけど、筆記はどうしても苦手で苦労してた。
それが今回は1番いい点を取れたんだ!全部ヴィンのおかげだ!
「ヴィンの目が『不幸を呼ぶ』なんて言われてたけど全くの逆だね。本当は『幸運を呼ぶ』凄い目だったんだよ。」
「そうなのでしょうか…。」
「そうだよ!だって実際僕はヴィンと出会って幸せだもの!」
こんなヴィンを虐待した挙句、ぽいっと捨てたトルバート家のなんて哀れなことか。
これからヴィンは王宮で活躍するだろうしそうなった時が見ものだな。
それからの日々で、ヴィンに対する悪評は無くなることはなかったけど、かなり少なくなってヴィンも楽しく学園生活を送れるようになった。
実はヴィンは僕と出会ってから少し肉付きが良くなった。と言っても全然細いけど。
抱きつぶす事が多くて、回復のためにポーションを飲ませてたら内臓が強くなったみたいで食べられる量が増えたんだ。
「恐らくですが、子供の時からの食事情で発育不良が起こっていたのかもしれません。それをポーションを少しずつ飲むことによって良くなったのかと。」
とヴィンは推測した。まさかこんな副産物が得られるなんて。
今のヴィンは体もしっかりしてもっと綺麗になった。
僕とよく出歩くようになった事で体力も付いたし。
「ねぇヴィン。卒業したら結婚しない?」
「え…?」
だから僕は凄く不安になってヴィンにプロポーズする事にした。ヴィンの事だから大丈夫だと思うけど、人と関わる事が増えて目移りされたらって怖かったんだ。
「嫌?まだ結婚とか考えられない?」
「…いいえ。私もライリーさんと結婚したいです。でも本当に?本当にいいんですか?」
いいに決まってる。だって僕が言い出したんだよ?なのにやっぱりダメなんてどの口が言うの。
「じゃあ今度ピアス贈らせて。僕の色のピアス。……僕ね、最近怖いんだ。ヴィンが他の誰かのところに行ったらどうしようって。
だってヴィンは最近もっともっと綺麗になったんだよ。友達だって増えて毎日楽しそうで。それは凄く嬉しい事なんだけど、僕が居なくてもいいのかなって。でも僕はヴィンを離せないし誰かにあげるつもりもない。だから僕とずっと一緒にいる約束が欲しかったんだ。」
カッコ悪いかな。こんな事言って。
でも本心なんだ。誰にも渡したくない。僕だけのヴィン。
「ライリーさん…。ライリーさんでもそう思うんですね。意外です。」
そんな事ない。ヴィンが綺麗だから。だから僕は不安になる。
「私も不安でした。私とは違ってライリーさんは凄く人気者で。私よりも綺麗な方や素晴らしい方は沢山います。私よりも他の人を好きになってもおかしくない。…私も不安だらけです。」
ヴィンも?ヴィンも同じ事思ってたの?
「約束、しましょう。私もライリーさんと離れたくありませんし誰にも渡したくありません。」
そう言ってヴィンは僕に抱きついた。僕もその柔らかくなった体を抱きしめる。
「うん。約束しよう。」
ヴィンの顔をそっと持ち上げてキスをする。
この約束は絶対に破らないよ。僕だけのヴィン。そして僕はヴィンだけのもの。その証を贈らせて。
その日の夜はまためちゃくちゃにヴィンを抱いた。「もうこれ以上は死んでしまいます…。」って言われるまで抱き潰した。
大丈夫。またポーション飲ませてあげるから。
僕はヴィンが好きすぎて止められないんだ。
それにヴィンだって上に乗って腰振ってくれたでしょ。だから僕は獣になったんだ。仕方ないよね。
それとヴィンは秘密にしてるけど、母さんから『避妊の魔法薬』が贈られてきてるの僕知ってるからね。
ヴィンだって気持ちいい事好きだもんね。だからもう少しだけ抱いてもいい?
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