3 / 34
逃亡編
恋からの逃亡者
しおりを挟む
合コンの翌々日から3日間、出張に出ていた私が早めに出社すると、玄関フロアで受付嬢業務前の菜々美が待っていた。
「理彩姉、おはようございます!」
過密ハードスケジュールの出張だった為、準備にもバタタつき、まだ合コンの後のことをちゃんと菜々美に話していなかった。
「おはよう、菜々美。今日一緒にランチしない?お土産も渡したいし。」
「はい!」
菜々美はいつも通りの笑顔で、返事をしてくれた。
後ろめたいことは、何もない。
何もないけど…。
菜々美の眩しい笑顔が、私の胸に突き刺さる。
不可抗力とはいえ、私が菜々美の想い人を奪ったと言われても仕方ない状況…。
せめて、誠意を持ってちゃんと話さなければ…。
菜々美に見送られ、私は足早にエレベーターに乗り、自分の仕事場である第2企画部へ私は向かった。
「おはようございます。」
そう挨拶を交わしながら、窓近くの自分のデスクに着いて、郵便物のチェックをしながら鞄を置いて、椅子に座ろうとした時だった。
「結城課長、外線2番にKコーポレーションの上原さんからお電話です。」
「は?」
聞こえてきた名前に私は、一瞬思考がフリーズした。
私は、あの合コンの日から、彼からのメールも電話も一切無視していた。
本当の連絡先を教えたからと言って、連絡を取り合う約束はしていない。
4日も音信不通な状態、いくらなんでも諦めるだろうと鷹を括っていた。
会社で周りに迷惑をかけられるのも嫌だったので、教えて欲しい連絡先をプライベートに限定した彼の発言を逆手にとって、名刺を含む会社での所属や連絡先を教えることも拒否した。
故に…まさか会社に電話してくるとは、夢にも思わなかったのだ。
気分的には隠れ家がバレた逃亡者だ。
「課長?」
長考に入ってしまい、なかなか返事をしない私を心配そうに見つめる部下の視線にハッと気が付く。
大丈夫だと目線を送って、深い溜め息と共に席に座り、仕方なく受話器を取った。
「はい、お電話代わりました。第2企画部課長の結城です。」
「やっと捕まえた、理彩さん。」
「…その節はお世話になりました。」
安堵の溜め息を吐く彼とは裏腹に、私は憮然としたビジネストーンの会話で対応する。
「メールも電話も無しの礫だった理由を、説明して欲しい。」
「その件につきましては、交渉の際に御説明させて頂きました通りです。」
「つまり、俺は正しい理彩さんの連絡先を教えて貰っているのは間違いない訳ですね?」
「その通りです。あとはこちらの一存で処遇を決めさせて頂けると、交渉時に私は理解してますが…。」
「せめて、デートが終わるまでその処遇の改善をお願いしたい。ちゃんと理彩さんを知りたいし、楽しいデートにしたいから…。それに…終業時間に会社の前で待たれるのは理彩さんも嫌でしょ?」
はぁ…そう来たか…。
ただでさえ目立つルックスの彼が、忠犬ハチ公よろしく私を待っている絵面は超絶に目立つし、どうやって避けたい。
それに役職上、残業することは少ないが、1時間も2時間も会社の前で私を待つ、その彼の行動は端から見れば、社会人としてあまり良い印象にならないのは確かだ。
入社3年目でキャリア組では筆頭出世頭と目されていると菜々美から聞いた覚えがある。
彼には確かに迷惑しているが、別に彼の将来を潰してまで排除し拒否するほどではない。
「…分かりました。善処しましょう。」
「じゃあ、この4日の間、理彩さんと連絡が取れなかったので、その穴埋めとして今夜、一緒に食事に行きましょう。」
「…仰っている意味が分かりませんが?」
「17時に会社まで理彩さんを迎えに行きます。」
「ちょっ、ちょっと!待っ…」
そう言って、私の返事を待たずに彼は一方的に電話を切った。
(…あのっ、バカ!)
舌打ちして、急いで彼にメールを送った。
“合コンの女の子メンバーが、我が社の受付嬢たちなの忘れていませんか?
場所を指定してくれれば行くので、君は迎えに来なくて結構!!
あんまり余計な波風立てんでくれたまえ!”
送って1分もしないうちに、驚きの早さで返信が来た。
“俺としては理彩さんところの男性社員にアピールしておきたかったんだけど…。”
“何のアピールだ!?何の!?”
“理彩さんは俺の女だ!!って”
“私は断じて君の女ではない!
そろそろ仕事に戻るから返信は不要!”
“まだ今はね。後でまたメールします!”
(なんて奴だ…打たれ強すぎるだろ!!)
私は思考を切り替えるために、一発机に頭を打ちつけてから仕事に戻った。
周囲はその音にビクッとして好奇の目で私を見ていたものの、それぐらいやらないと私は切り替えられなかった。
「理彩姉、おはようございます!」
過密ハードスケジュールの出張だった為、準備にもバタタつき、まだ合コンの後のことをちゃんと菜々美に話していなかった。
「おはよう、菜々美。今日一緒にランチしない?お土産も渡したいし。」
「はい!」
菜々美はいつも通りの笑顔で、返事をしてくれた。
後ろめたいことは、何もない。
何もないけど…。
菜々美の眩しい笑顔が、私の胸に突き刺さる。
不可抗力とはいえ、私が菜々美の想い人を奪ったと言われても仕方ない状況…。
せめて、誠意を持ってちゃんと話さなければ…。
菜々美に見送られ、私は足早にエレベーターに乗り、自分の仕事場である第2企画部へ私は向かった。
「おはようございます。」
そう挨拶を交わしながら、窓近くの自分のデスクに着いて、郵便物のチェックをしながら鞄を置いて、椅子に座ろうとした時だった。
「結城課長、外線2番にKコーポレーションの上原さんからお電話です。」
「は?」
聞こえてきた名前に私は、一瞬思考がフリーズした。
私は、あの合コンの日から、彼からのメールも電話も一切無視していた。
本当の連絡先を教えたからと言って、連絡を取り合う約束はしていない。
4日も音信不通な状態、いくらなんでも諦めるだろうと鷹を括っていた。
会社で周りに迷惑をかけられるのも嫌だったので、教えて欲しい連絡先をプライベートに限定した彼の発言を逆手にとって、名刺を含む会社での所属や連絡先を教えることも拒否した。
故に…まさか会社に電話してくるとは、夢にも思わなかったのだ。
気分的には隠れ家がバレた逃亡者だ。
「課長?」
長考に入ってしまい、なかなか返事をしない私を心配そうに見つめる部下の視線にハッと気が付く。
大丈夫だと目線を送って、深い溜め息と共に席に座り、仕方なく受話器を取った。
「はい、お電話代わりました。第2企画部課長の結城です。」
「やっと捕まえた、理彩さん。」
「…その節はお世話になりました。」
安堵の溜め息を吐く彼とは裏腹に、私は憮然としたビジネストーンの会話で対応する。
「メールも電話も無しの礫だった理由を、説明して欲しい。」
「その件につきましては、交渉の際に御説明させて頂きました通りです。」
「つまり、俺は正しい理彩さんの連絡先を教えて貰っているのは間違いない訳ですね?」
「その通りです。あとはこちらの一存で処遇を決めさせて頂けると、交渉時に私は理解してますが…。」
「せめて、デートが終わるまでその処遇の改善をお願いしたい。ちゃんと理彩さんを知りたいし、楽しいデートにしたいから…。それに…終業時間に会社の前で待たれるのは理彩さんも嫌でしょ?」
はぁ…そう来たか…。
ただでさえ目立つルックスの彼が、忠犬ハチ公よろしく私を待っている絵面は超絶に目立つし、どうやって避けたい。
それに役職上、残業することは少ないが、1時間も2時間も会社の前で私を待つ、その彼の行動は端から見れば、社会人としてあまり良い印象にならないのは確かだ。
入社3年目でキャリア組では筆頭出世頭と目されていると菜々美から聞いた覚えがある。
彼には確かに迷惑しているが、別に彼の将来を潰してまで排除し拒否するほどではない。
「…分かりました。善処しましょう。」
「じゃあ、この4日の間、理彩さんと連絡が取れなかったので、その穴埋めとして今夜、一緒に食事に行きましょう。」
「…仰っている意味が分かりませんが?」
「17時に会社まで理彩さんを迎えに行きます。」
「ちょっ、ちょっと!待っ…」
そう言って、私の返事を待たずに彼は一方的に電話を切った。
(…あのっ、バカ!)
舌打ちして、急いで彼にメールを送った。
“合コンの女の子メンバーが、我が社の受付嬢たちなの忘れていませんか?
場所を指定してくれれば行くので、君は迎えに来なくて結構!!
あんまり余計な波風立てんでくれたまえ!”
送って1分もしないうちに、驚きの早さで返信が来た。
“俺としては理彩さんところの男性社員にアピールしておきたかったんだけど…。”
“何のアピールだ!?何の!?”
“理彩さんは俺の女だ!!って”
“私は断じて君の女ではない!
そろそろ仕事に戻るから返信は不要!”
“まだ今はね。後でまたメールします!”
(なんて奴だ…打たれ強すぎるだろ!!)
私は思考を切り替えるために、一発机に頭を打ちつけてから仕事に戻った。
周囲はその音にビクッとして好奇の目で私を見ていたものの、それぐらいやらないと私は切り替えられなかった。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
17歳男子高生と32歳主婦の境界線
MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。
「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…
なお、スピンオフもございます。
再婚相手の連れ子は、僕が恋したレンタル彼女。――完璧な義妹は、深夜の自室で「練習」を強いてくる
まさき
恋愛
「初めまして、お兄さん。これからよろしくお願いしますね」
父の再婚によって現れた義理の妹・水瀬 凛(みなせ りん)。
清楚なワンピースを纏い、非の打ち所がない笑顔で挨拶をする彼女を見て、僕は息が止まるかと思った。
なぜなら彼女は、僕が貯金を叩いて一度だけレンタルし、その圧倒的なプロ意識と可憐さに――本気で恋をしてしまった人気No.1レンタル彼女だったから。
学校では誰もが憧れる高嶺の花。
家では親も感心するほど「理想の妹」を演じる彼女。
しかし、二人きりになった深夜のキッチンで、彼女は冷たい瞳で僕を射抜く。
「……私の仕事のこと、親に言ったらタダじゃおかないから」
秘密を共有したことで始まった、一つ屋根の下の奇妙な生活。
彼女は「さらなるスキルアップ」を名目に、僕の部屋を訪れるようになる。
「ねえ、もっと本気で抱きしめて。……そんなんじゃ、次のデートの練習にならないでしょ?」
これは、仕事(レンタル)か、演技(家族)か、それとも――。
完璧すぎる義妹に翻弄され、理性が溶けていく10日間の物語。
『著者より』
もしこの話が合えば、マイページに他の作品も置いてあります。
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/658724858
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる