Over the Forty ー夢を見れないお年頃ー

真田 真幸

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逃亡編 

恋からの逃亡者

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 合コンの翌々日から3日間、出張に出ていた私が早めに出社すると、玄関フロアで受付嬢業務前の菜々美が待っていた。

「理彩姉、おはようございます!」

過密ハードスケジュールの出張だった為、準備にもバタタつき、まだ合コンの後のことをちゃんと菜々美に話していなかった。

「おはよう、菜々美。今日一緒にランチしない?お土産も渡したいし。」

「はい!」

菜々美はいつも通りの笑顔で、返事をしてくれた。

後ろめたいことは、何もない。

何もないけど…。

菜々美の眩しい笑顔が、私の胸に突き刺さる。

不可抗力とはいえ、私が菜々美の想い人を奪ったと言われても仕方ない状況…。

せめて、誠意を持ってちゃんと話さなければ…。

菜々美に見送られ、私は足早にエレベーターに乗り、自分の仕事場である第2企画部へ私は向かった。

「おはようございます。」

そう挨拶を交わしながら、窓近くの自分のデスクに着いて、郵便物のチェックをしながら鞄を置いて、椅子に座ろうとした時だった。

「結城課長、外線2番にKコーポレーションの上原さんからお電話です。」

「は?」

聞こえてきた名前に私は、一瞬思考がフリーズした。

私は、あの合コンの日から、彼からのメールも電話も一切無視していた。

本当の連絡先を教えたからと言って、連絡を取り合う約束はしていない。

4日も音信不通な状態、いくらなんでも諦めるだろうと鷹を括っていた。

会社で周りに迷惑をかけられるのも嫌だったので、教えて欲しい連絡先をプライベートに限定した彼の発言を逆手にとって、名刺を含む会社での所属や連絡先を教えることも拒否した。

故に…まさか会社に電話してくるとは、夢にも思わなかったのだ。

気分的には隠れ家がバレた逃亡者だ。

「課長?」

長考に入ってしまい、なかなか返事をしない私を心配そうに見つめる部下の視線にハッと気が付く。

大丈夫だと目線を送って、深い溜め息と共に席に座り、仕方なく受話器を取った。

「はい、お電話代わりました。第2企画部課長の結城です。」

「やっと捕まえた、理彩さん。」

「…その節はお世話になりました。」

安堵の溜め息を吐く彼とは裏腹に、私は憮然としたビジネストーンの会話で対応する。

「メールも電話も無しの礫だった理由を、説明して欲しい。」

「その件につきましては、交渉の際に御説明させて頂きました通りです。」

「つまり、俺は正しい理彩さんの連絡先を教えて貰っているのは間違いない訳ですね?」

「その通りです。あとはこちらの一存で処遇を決めさせて頂けると、交渉時に私は理解してますが…。」

「せめて、デートが終わるまでその処遇の改善をお願いしたい。ちゃんと理彩さんを知りたいし、楽しいデートにしたいから…。それに…終業時間に会社の前で待たれるのは理彩さんも嫌でしょ?」

はぁ…そう来たか…。

ただでさえ目立つルックスの彼が、忠犬ハチ公よろしく私を待っている絵面は超絶に目立つし、どうやって避けたい。

それに役職上、残業することは少ないが、1時間も2時間も会社の前で私を待つ、その彼の行動は端から見れば、社会人としてあまり良い印象にならないのは確かだ。

入社3年目でキャリア組では筆頭出世頭ともくされていると菜々美から聞いた覚えがある。

彼には確かに迷惑しているが、別に彼の将来を潰してまで排除し拒否するほどではない。

「…分かりました。善処しましょう。」

「じゃあ、この4日の間、理彩さんと連絡が取れなかったので、その穴埋めとして今夜、一緒に食事に行きましょう。」

「…仰っている意味が分かりませんが?」

「17時に会社まで理彩さんを迎えに行きます。」

「ちょっ、ちょっと!待っ…」

そう言って、私の返事を待たずに彼は一方的に電話を切った。

(…あのっ、バカ!)

舌打ちして、急いで彼にメールを送った。

“合コンの女の子メンバーが、我が社の受付嬢たちなの忘れていませんか?
場所を指定してくれれば行くので、君は迎えに来なくて結構!!
あんまり余計な波風立てんでくれたまえ!”

送って1分もしないうちに、驚きの早さで返信が来た。

“俺としては理彩さんところの男性社員にアピールしておきたかったんだけど…。”

“何のアピールだ!?何の!?”

“理彩さんは俺の女だ!!って”

“私は断じて君の女ではない!
そろそろ仕事に戻るから返信は不要!”

“まだ今はね。後でまたメールします!”

(なんて奴だ…打たれ強すぎるだろ!!)

私は思考を切り替えるために、一発机に頭を打ちつけてから仕事に戻った。

周囲はその音にビクッとして好奇の目で私を見ていたものの、それぐらいやらないと私は切り替えられなかった。



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