Over the Forty ー夢を見れないお年頃ー

真田 真幸

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恋人編 初恋を追っていた頃

友達…なんだよね?

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 ネイビーブルーの4WD車に乗せられて地区の体育館に向かう車の中、運転席で先程から一哉は拗ねていた。

それは私の膝に乗っている大きな2個の保存容器の中身が原因である。

 一哉が自宅に戻っている間に、私はこっそりのり巻き風おにぎりを作っていた。

中身は焼肉ときんぴらごぼう、鮭とカイワレとチーズ。

しっかり保冷剤を入れて保冷バックに入れて来た。

元々まとめて炊いて、冷凍保存するつもりだった5合のご飯を利用したので、一人1個か2個あたれば良いかなぁ~ぐらいの量しか作れなかったけど…。

「アイツらに差し入れなんか要らないよ…。」

「でも、一哉も試合のあとお腹空くでしょ?一哉だけに作るのも気が引けるし…。」

「理彩、そこは俺に独占させてくれないと!」 

「これでも良い彼女アピールしようと思っての行動なんだけどなぁ~。一哉の友達なら、なるべく仲良くなりたいし、その方が一哉だって…嬉しいでしょ?」

信号待ち、一哉はハンドルに突っ伏して深い溜め息を吐いた。

「…そんな可愛いこと言われたら、もう文句言えないじゃん…。」

一哉が折れてくれたのでホッとしていると、“理彩”と名前を呼ばれた。

顔を上げると目の前に一哉の顔があり、不意打ちに唇を奪われた。

一瞬強く吸い付かれて、直ぐに離れる。

「な、何!?」

信号が変わり運転に戻った一哉はニヤリと笑っている。

「可愛いけどやっぱりムカつくから、“お仕置き”!」

「は、恥ずかしいことしないでよ!もう~対向車の人に絶対に見られたぁ~!」

顔を覆い俯いた私の頭を、交差点で一哉は嬉しそうに撫で、再び発進した車はまもなく地区の体育館に着いた。




右肩に練習着の入ったリュックをかけて、左手で私の右手をしっかり恋人繋ぎで握り、一哉は堂々と歩く。

私はと言えば、メチャクチャ緊張していた。

淡いペパーミントグリーンのボタニカ柄の2wayワンピースに、白いレースのボレロカーディガンを羽織った私の今日の格好は正解なのか否か?

なんて気にしながら一哉に着いて行き、気がつけば体育館の中に入っていた。

「あ、一哉だ!!」

誰かが上げたその一言であれよあれよと、身長175㎝オーバーの男の子たちが私たちの周りを囲み始めた。

「久しぶりだなぁ!」

「えっ!マジで彼女連れてきたの!?」

「ウッソ!?あの一哉が!?」

彼らの口から次々頭上から浴びせられる驚きの声は、157㎝の私には相当な圧迫感である。

オマケに恋人繋ぎの手を見てニマニマされ、どうすれば良いのか困っていると、一哉はその手をほどいて私の肩を抱いた。

「こちらは結城理彩さん。俺の恋人で…将来の嫁さんだ!」

一哉の言葉に、彼らは一瞬にして静かになった。

まるで一時停止ボタンを押された様に、誰もが動かない。

暫くの沈黙ののち、誰かが堪らず声を上げた。

「…今、将来の嫁って言ったか!?」

「マジか!?まるっきり女に興味なかったクセに!!」

「チックショー!オマケに年上でこんなに美人で可愛いって詐欺だろう!!」

さっき一哉のスマートフォンから聞こえた大騒ぎを、目の前で再現され何と反応すればいいのか困り、一哉を見上げれば、嬉しそうに笑っている。

私の視線に気付き、こちらを向いた一哉は目を細めたかと思えば、私の頬にチュッと唇で触れた。

そんなところを見せつければ、当たり前に更に騒ぎは大きくなる。

私は慌てて一哉を睨んだが、悪びれた様子はない。

独占欲の誇示とバカ騒ぎしている友人たちへのやっかみを煽る為に仕掛けたのだろう。

「あぁ~!本当に…初恋の彼女を捕まえたんだなぁ…カズ。」

そう言いながら、逆立てた長めのスポーツ刈りをガシガシと乱暴に掻きながら、悔しそうに男の子が体育館の奥から歩いて来た。

「ああ…」

一哉は私の肩を抱いた左手に力を込め、鋭く彼を睨み付けていた。

「そんなに睨むなよ…もう約束通り何もしないって!それより俺にも彼女を紹介してくれよ!」

「…結城理彩さん、俺の初恋の人で…ただ一人の運命の人だ。」

宇野太一 うの たいちです。先程は電話で失礼しました!カズの不埒な悪友やってます!よろしく!」

「…はい。」

太一くんはスポーツマンらしいハキハキとした挨拶をしてくれたが、私は曖昧に返事をした。

一哉の様子を見れば、友達に向ける様なレベルの警戒ではない。

一哉の友人として“よろしく”…していいのだろうか?

でも…さっきの話だと私のことを問い詰められたとはいえ、大体話した相手なんだよね?

疑問を投げ掛けようとしたところを、後ろから聞こえた可愛い女の子の声に阻まれた。

「一哉くん!」

ビクッと一哉は肩を揺らしたものの、彼女を振り向きもせず眉間に皺をよせたまま“行こう…”と私に囁いて、体育館の奥へと歩き出した。


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