Over the Forty ー夢を見れないお年頃ー

真田 真幸

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恋人編 初恋を追っていた頃

男同士の友情って…なんか手荒い!

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 ハーフタイムに入り、太一くんは後半戦の試合に出るために戻って行った。

コートに出られるのは1チーム7人。

今回、一哉のチームは17人が集まったこともあり、今回だけの変則ルールで前半と後半で完全入れ換えすることにしたらしい。

コートを見下ろしていると、キャプテンマークの腕章を一哉が太一くんに渡していた。

少し話したあと、二人は2階にいる私を見た。

「?」

一哉は驚いたように私を見つめ、太一くんはからかうように笑いながら一哉と私を交互に見ている。

太一くんは一哉の背中を押して、体育館から一哉を追い出した。




「ねぇ理彩、昨日の出張、誰と行ったの?」

2階に来て私の方を見て隣に横座りすると開口一番、一哉は不機嫌な態度で訊いてきた。

「え?部下の五頭ごとうくんと弁天べんてんさんと今年入った新人の2名、あとは…副社長だけど?」

“副社長…”

私の説明を聞いて、そう呟いたまま一哉は固まっていたが、私はそのまま説明を続けた。

「今回の企画は副社長も尽力して下さっていてね。丁度、弁天さんたちが新人の研修も兼ねて農家さんのお手伝いに行くことになっていたんだけど、農家さんと直接話しをしたいって希望されたので、さすがに弁天さんたちにだけ任せる訳にいかなくて、課長の私も同行することになったのよ。」

「…な、何もなかった?」

「はっ?」

「あの…だって…ほら…」

一哉の顔が不安そうに歪む。

(…何がどうしてこんなに一哉を不安にさせているのだ?)

 私は“副社長”のワードを頼りに、一哉が不安そうにしている原因を、頭の中で手繰り寄せようとした。

そして、ふと先程、別れ際に太一くんと話したことを思い出した。






『そう言えば、6年前の見合いの話って真相はどうなんですか?』

歩き出しかけた太一くんは立ち止まり、私に訊ねた。

『まぁ…そういう話があったと言えばあったんだけど、私も副社長もあの頃は独身主義だったし、結婚の意思がなかったから、副社長に頼んでお断りしたの。』

『そうだったんですか…。』

『そんな副社長も今年の結婚したんだけどね。そのせいか、更に仕事熱心に拍車がかかっちゃって、昨日の出張も同行せざる負えなくなっちゃって…お陰で幸せオーラに当てられまくりで、仕事しづらくて大変だったわ。』

『折角の休日に出張だなんて、一哉は寂しがったんじゃないですか?』

『フフフ…お想像にお任せします!』




(はぁ…太一くん、さては一哉を弄るのに出張の話をして不安を煽ったわね。)

私が横目でコートを見下ろすと、イタズラが成功したとばかりにニヤニヤ笑う太一くんがいた。

(まったく…要らないことをしてくれるんだから…。)

「一哉、朝にデザートで食べたフルーツジュレ覚えてる?」

「うん…覚えてるけど…」

“何で今、その話をするの?”

そんな表情で一哉は私を見つめる。

「あれね、副社長の“奥様 ・・”のお店のフルーツジュレなの。」

「副社長の…“奥様”!?」

今度は驚いた顔で一哉は固まった。

「今回の企画は奥様のお店のスイーツが目玉になってる企画だから、新婚だし必要以上に副社長が張り切っちゃってて、その迷惑料というか…なんというか…奥様が私たちにって下さったのよ。」

「奥様…なんだ…そうだったんだ…」

安堵の表情を見せた一哉は、私をギュッとすがる様に抱きついた。

先程までコートを駆け回っていた一哉の身体は、いつもより体温が高く、汗で濡れた髪の毛からは、一哉が愛用しているグリーンノートの爽やかな香りと合間って男の色香が漂っていた。

抱きしめ返して、一哉の背中をぽんぽんとあやす。

私はそのまま一哉の顔を見ずに話し始めた。

「…昨日ね、“無性に一哉に会いたい”ってメッセージを送ったのは、農家の御夫婦と副社長の幸せオーラに当てられちゃったからなの。ラブラブでいいなぁ…って。我ながららしくないって思ったけど…一哉に“会いたい!”って伝えたくなっちゃったの。だから…」

全てを言い終わらないうち、不意に私から身体を少し離した一哉は、真っ赤な顔で私を見つめた。

そしてねだるような表情で私の名を囁いて、そっと唇を近づけてきた。

蕩ける雰囲気の一哉とは裏腹に、私は無数の視線に気が付き、横目でコートを見た。

(…やっぱり。)

「一哉、太一くんに嵌められたわね。」

「え?」

私の言葉に唇が吸い付く寸前で、一哉の動きが止まった。

「ほら、コートを見て。」

一哉はコートの方を首だけを動かして見て、ギョッとして目を見開いてた。

太一くんをはじめとするメンバー全員がコートラインに沿って1列に並び、ある者は驚いた表情で、ある者は隣同士でニヤニヤしながら、私たちの様子を見物していたのだ。

「カズ!」

そう、太一くんが叫んだあと

「「「「「「ご馳走さまでした!!」」」」」」

仲間たちから口を揃えて発せられた言葉は、一哉をさっきとは別の意味でみるみる赤面させた。

囃し立てる声はハーフタイムが終わる少しまで続き、慌ててコートに戻った一哉は、相当仲間に弄られていた。



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