シスコン姉君、進軍す

蕾々虎々

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めでたき日の裏側

あっと言わせるくらい -エリー-

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 「うわぁお」

 思わず変な声がれた。

 ねずみを見つけてリリねえ、後のことはお願い!(心中のイメージ)と、その始末しょりをいつものごとく丸投げしちゃったわけだけど、いやいや何というかあっさりと。いや、ド派手に?
 ともあれいつも以上に手早く、そして荒々しく片付けてしまった長姉リリねえ

 (リリ姉も進学式とかいう退屈極まりないつまんない儀式見せられて、イライラしてたのかな?)

 そんなことを考えてみたけど、まぁそれに関しては確かめようもないよね。
 真実ホントはどうだったにせよ、その犠牲ぎせいになったあわれな鼠さんはといえば、息も絶え絶えでピクリともせず、如何いかにも虫の息といった感じ。

 (良く生きてるよねぇ、あの人達あれ。私だったら首げてると思うんだけど)

 その生命力しぶとさについつい感心かんしんしてしまう。そして正直、同情どうじょうもする。
 リリ姉に並ぶ強い人は何人かいるけど、その中で一番の鬼門はずれは間違いなくリリ姉だから。

 (だって、他の人だったら無力化うごけなくしたりとか昏倒きぜつさせたりとかそういう器用なことも出来るけど、リリ姉に関してはどう頑張っても蹴りが殴りに変わるくらいだからね……)

 その腕っ節うでっぷし(ケンカっ早いとかそういうわけじゃ全然無いけど)で最高位うえのぼり詰めた切っての武闘派ぶとうはである姉は、応用性というか汎用性というか、そういった器用きような力の使い方がまるで出来ないのだ。

 ――その適性と、せずしてめぐまれてしまった、身に余る才能ちからによって。

 (って、私もえらそうに言うほどくわしくないんだけど……)

 今回みたいにその暴威ちからあたりにする機会は多いけど、あくまで正体の分からない連絡役で通してるし、リリ姉は姉妹しまいの誰とも進んでかかわりたがらない。
 リリ姉と家族らしい会話が出来るのは、今も昔もママだけだった。

 ちなみに、家族以外だったらキニャがダントツ。会話はまだしも、リリ姉と喧嘩が出来るのはまずもってキニャくらい。
 ……からかうキニャに対して一方的にリリ姉が怒るだけだけど。キニャはそんな時でも飄々のらりくらりかわしてるし。

 あのリリ姉にあれだけ気安く絡めるなんて図太いというか何というか……少し、うらやましい。しょっちゅう頭を叩かれてる所は流石に真似したくないから、本当に少しだけだけど!

 さてさて、考え事してる間に人が集まり始めちゃった。
 さっさとあの三人回収してつれてって貰わないとね。

 さっきと同じように虚空そらに向かって声を出して、それを風に乗せてえーい、と。

 そうすると、そんなに時間を置かずかからず見慣れた顔?がやってきた。

 (いつ見てもあやしさ満点だよねぇ……)

 そこに現れたのは、頭から足先まで全身黒づくめの装束ふくに身を包んだ、如何いかにも怪しさの極みといった回収役ふしんしゃ

 そのとても怪しい黒装束は、相変わらず気を失ったままの三人を容赦無くてぎわよく引きずって一箇所にまとめると、それぞれの手首に手錠をかけていった。

 それが終わったと思ったら、この昼日中じかんにおいて激しい存在感をかもし出していた純黒の身体が、見る見る内に背景へと溶け込むように消えていった。その足元に折り重なっていた、哀れな三人組と一緒に。

 (どうやってんだろね、あれ。それと、姿消した後どうやって運んでるのかな?実は見えない所でヒィヒィ言いながら背中に担いで頑張って運んでたりして)

 何はともあれ、それを見届けた所でようやく、本当の本当にお仕事完・了!
 疲れたーーーーーー!って程何もしてないけど、まぁ気分的にね。

 さっきまであそこに居たリリ姉もいつの間にやらどっか行っちゃったし、私もそろそろ戻ろっと。

 最後にもう一度、心地良い風に別れを告げるようにぐーっと伸びをしてから、風に乗りつつ屋根や窓の縁をポンポンと蹴って高台から下りる。

 そして、がらでも無い真面目な勤労おしごとで溜まった疲労つかれを洗い流すかのように心地の良い日差しを存分に味わいながら、ゆっくりとさっきの噴水の所まで歩いて戻りました、っと。

 「えー姉、かえってきた」

 そう小さくのどを鳴らしたナナがトテトテと歩いてきて、私の腰辺りにぽふん、と抱き着いてきた。
 その軽い体躯からだは大した力も感じさせず、そのまますんなりと私に密着したはりついた

 「ただいまー。突然居なくなってごめんねー、ナナ。良い子で待ってたかなー?」
 「ふぁなと、しりとりして、た」

 抱き着いてきた可愛い妹の後ろに目をやると、そっと頭を下げるファナ。
 その表情かおからは何も読み取れないけど、いつもより深めのお辞儀からその心を察することが出来た。

 (ナナがちょっぴり駄々だだこねて戻らずに待ってたのかな。まぁつまんなくて出てきたんだし、そりゃそうだよね)

 しょうがないなぁって気持ちと悪いことしちゃったったって気持ちが半々くらい。
 元はといえばナナを連れ出したのは私なんだし、その責任を取って一丁お姫様のご機嫌きげん取りといきますか!

 抱き着かれた状態から、その肩に手を伸ばしてふんわりとその身体を少しだけ引き離す。
 それから身体を屈ませて、顔と顔を突き合わせるように目線を合わせた。

 「そんじゃー、ナナ。ディー姉の出てる式は後三十分くらいで終わるけど、どうする?戻りたい?」
 「や……。よくわかんないし、つまんない」
 「そっかそっか。じゃあお姉ちゃんと一緒に待ってよっか」
 「うん」
 「待ってる間なにがしたい~?しりとりの続きでもいいし、別の遊びでもいいし、今日だけ大サービス!何でも付き合っちゃうぞ~」
 「んー……」
 「そ~だ!ナナはディー姉のおいわいしたいんだよね。じゃあ、お祝いをもっとお祝いする為にディー姉にプレゼント用意してあげるとか!」
 「でぃー姉、いっぱい、おいわいしたい」
 「お、ナナやる気満々だねー!じゃあすっごいの用意しちゃってディー姉をあっと言わせちゃおうか!」
 「うん。あっと、いわせる」
 「よしよし。じゃあどんなのにするか、一緒に作戦会議そうだんしよっか!」

 (ナナがいつになく乗り気だー!こりゃ、本当にリディ姉をあっと言わせるくらい頑張らなくちゃね!)

 頭に思い浮かぶのは、あのからかい甲斐がいのある姉がサプライズプレゼントに驚く顔。そして、嬉しくないような素振りふりをしながら喜びを隠し切れない、あの顔。

 そんな未来を想像していたら、俄然とってもやる気が湧いてきた。
 何せ、リディ姉にちょっかい掛けるのも驚かせるのも大好きだもん!

 ーーあの隠そうとしても隠し切れずに感情がにじみ出てしまう不器用さや、コロコロ変わる表情を見るのが、とても楽しいから!

 「よーし、ナナ!どんなのがいい?例えば……」

 取っておきの贈り物サプライズ用意してあげる!
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