350 / 375
カラSide 5-1
しおりを挟む
カラSIDE
5―1
仁斗田島の人たちの下痢が治る頃、今度は女性や小さな子供の元気が無くなっていった。虫が悪さをしなくなったはいいものの、食物を食べる力が減っていたのだ。
「去年から、キノジイと一緒にオクがキノコの栽培を始めていてよかったよ。いつもよりも余分に、干しキノコを貰ってこれた」
沼津村から是川へと、すぐに帰ったコシさんの代わりに、ジンさんがとナホさんやって来た。僕は何となくだが、ジンさんが来てくれてほっとしていた。
「オクも『自分が欲しキノコの知識があるから連れて行って』と言って来たがっていたが、急ぎの用ってこともあって置いてきた。船でここまで来るには、波や岩礁があって危ないからな」
僕たちはジンさんから干しキノコを受け取りつつ、女性がよく使う、僕には使い方のよくわからない物も受け取った。
「女性の手も必要でしょう?」
ナホさんはそう言って、手早く元気の無い女性たちの元へ駆け寄っていった。
「兄さん、何か手伝う事はあるか?」
ジンさんがザシさんに尋ね、ザシさんは「手がいくらあっても足りないさ」と苦笑しつつ、ここを仕切っているハムさんの元へと連れていった。
「何だか、ジンさんが来ると元気が出ました」
干しキノコを湯が沸いている土器の中に放り込みつつロウさんに言うと、ロウさんは「アラが泣くぞ?」と、僕をからかってきた。
「けど、何となく俺もわかるな。ジンさんが『みんなのお兄さん』って感じだったからな」
ロウさんも頷きつつ、煮立つ土器の中身を掻きまわした。
干しキノコの汁が出来たはいいが、拒否する様な顔をしている人たちがいた。以前、毒キノコにあって酷い目にあった経験があるからそうだ。
「俺が最初に飲みますので、大丈夫ですよ」
ジンさんはそう言ってから汁を飲みこんで、力こぶしが出来る様な恰好をとった。
その様子を見て、次々と汁を飲む人たちが現れ、まだ迷っている人たちにも、ジンさんは飲むように、優しく語りかけていた。ザシさんは柔らかく煮た、薄味の魚や鳥肉を配っている。
「ハムさん、少し休んでください」
僕はジンさんたちを見ている、ハムさんに言った。
「そうだな。俺の役割は終わりかな」
ハムさんは肩の荷が降りて、楽になった顔に見える反面、どこか寂しそうに見えた。
「ハムさんが強引だったから、みんな不安を感じる暇もなく行動で来たんですよ」
僕が言うと、ハムさんは少し頬をふくらました。
「お前は、じっくりと話し合った方が良いって考えじゃなかったのか?」
「はい。そう思っていましたし、今も変わりません。ですが、ハムさんの様なやり方も必要だって事もわかりました」
僕が言い終えると、ハムさんは鼻を鳴らした。
「これくらい、入江の人間なら誰でも知っているし、他人の介助も慣れているさ」
ハムさんは背中を向け、ぶっきらぼうに言った。僕は年上の人に失礼かもしれないが、その背中に抱き付いた。
「ハムさんはこんなに温かい人です。例え、誰かがハムさんの悪口を言ったりしたら、僕はとても怒るでしょう」
僕がそう言うと、ハムさんは僕を振り払う様に「お前は、俺を休ませないつもりか?」と言い、背中に抱きついている僕の手を、いとも簡単に外した。
「レイの介助や小さな子供の相手は、お前より慣れているからな」
ハムさんはそう言って、ジンさんの持ってきた敷物の上で横になった。
「カラ、あれが『責任』を持つ大人だ。来年から、お前もそうなるんだ」
ロウさんが僕の肩を叩き、僕は力強く頷いた。
5―1
仁斗田島の人たちの下痢が治る頃、今度は女性や小さな子供の元気が無くなっていった。虫が悪さをしなくなったはいいものの、食物を食べる力が減っていたのだ。
「去年から、キノジイと一緒にオクがキノコの栽培を始めていてよかったよ。いつもよりも余分に、干しキノコを貰ってこれた」
沼津村から是川へと、すぐに帰ったコシさんの代わりに、ジンさんがとナホさんやって来た。僕は何となくだが、ジンさんが来てくれてほっとしていた。
「オクも『自分が欲しキノコの知識があるから連れて行って』と言って来たがっていたが、急ぎの用ってこともあって置いてきた。船でここまで来るには、波や岩礁があって危ないからな」
僕たちはジンさんから干しキノコを受け取りつつ、女性がよく使う、僕には使い方のよくわからない物も受け取った。
「女性の手も必要でしょう?」
ナホさんはそう言って、手早く元気の無い女性たちの元へ駆け寄っていった。
「兄さん、何か手伝う事はあるか?」
ジンさんがザシさんに尋ね、ザシさんは「手がいくらあっても足りないさ」と苦笑しつつ、ここを仕切っているハムさんの元へと連れていった。
「何だか、ジンさんが来ると元気が出ました」
干しキノコを湯が沸いている土器の中に放り込みつつロウさんに言うと、ロウさんは「アラが泣くぞ?」と、僕をからかってきた。
「けど、何となく俺もわかるな。ジンさんが『みんなのお兄さん』って感じだったからな」
ロウさんも頷きつつ、煮立つ土器の中身を掻きまわした。
干しキノコの汁が出来たはいいが、拒否する様な顔をしている人たちがいた。以前、毒キノコにあって酷い目にあった経験があるからそうだ。
「俺が最初に飲みますので、大丈夫ですよ」
ジンさんはそう言ってから汁を飲みこんで、力こぶしが出来る様な恰好をとった。
その様子を見て、次々と汁を飲む人たちが現れ、まだ迷っている人たちにも、ジンさんは飲むように、優しく語りかけていた。ザシさんは柔らかく煮た、薄味の魚や鳥肉を配っている。
「ハムさん、少し休んでください」
僕はジンさんたちを見ている、ハムさんに言った。
「そうだな。俺の役割は終わりかな」
ハムさんは肩の荷が降りて、楽になった顔に見える反面、どこか寂しそうに見えた。
「ハムさんが強引だったから、みんな不安を感じる暇もなく行動で来たんですよ」
僕が言うと、ハムさんは少し頬をふくらました。
「お前は、じっくりと話し合った方が良いって考えじゃなかったのか?」
「はい。そう思っていましたし、今も変わりません。ですが、ハムさんの様なやり方も必要だって事もわかりました」
僕が言い終えると、ハムさんは鼻を鳴らした。
「これくらい、入江の人間なら誰でも知っているし、他人の介助も慣れているさ」
ハムさんは背中を向け、ぶっきらぼうに言った。僕は年上の人に失礼かもしれないが、その背中に抱き付いた。
「ハムさんはこんなに温かい人です。例え、誰かがハムさんの悪口を言ったりしたら、僕はとても怒るでしょう」
僕がそう言うと、ハムさんは僕を振り払う様に「お前は、俺を休ませないつもりか?」と言い、背中に抱きついている僕の手を、いとも簡単に外した。
「レイの介助や小さな子供の相手は、お前より慣れているからな」
ハムさんはそう言って、ジンさんの持ってきた敷物の上で横になった。
「カラ、あれが『責任』を持つ大人だ。来年から、お前もそうなるんだ」
ロウさんが僕の肩を叩き、僕は力強く頷いた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
母娘の影 (母娘丼) 二重の螺旋
MisakiNonagase
恋愛
「愛した女は、恋人の母親だった」
大学4年生の山本哲兵(22歳)。
どこか冷めた日常を送っていた彼が出会ったのは、太陽のように眩しい同級生・天草汐里。
そして、バイト先で出会った、慎ましくも色香を纏う49歳の主婦・天草美樹。
光のような純愛を注いでくれる娘、汐里。
闇の中で少女のように甘え、背徳の悦びに溺れる母、美樹。
「天草」という同じ名字を持つ二人の女。別々の場所で始まった二つの恋は、哲兵の家賃5万のワンルームで、そして娘の「お下がり」のブーツを通じて、音もなく混ざり合っていく。
それが最悪の結末へのカウントダウンだとも知らずに。
ついに訪れた「聖域」への招待状。汐里に連れられ、初めて訪れた彼女の自宅。そこでエプロン姿で出迎えたのは、昨夜まで哲兵の腕の中でその名を呼ばれていた、あの美樹だった。
逃げ場のないリビングで、母と娘、そして一人の男を巡る、美しくも残酷な地獄が幕を上げる。
女神の白刃
玉椿 沢
ファンタジー
どこかの世界の、いつかの時代。
その世界の戦争は、ある遺跡群から出現した剣により、大きく姿を変えた。
女の身体を鞘とする剣は、魔力を収束、発振する兵器。
剣は瞬く間に戦を大戦へ進歩させた。数々の大戦を経た世界は、権威を西の皇帝が、権力を東の大帝が握る世になり、終息した。
大戦より数年後、まだ治まったとはいえない世界で、未だ剣士は剣を求め、奪い合っていた。
魔物が出ようと、町も村も知った事かと剣を求める愚かな世界で、赤茶けた大地を畑や町に、煤けた顔を笑顔に変えたいという脳天気な一団が現れる。
*表紙絵は五月七日ヤマネコさん(@yamanekolynx_2)の作品です*
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
ラストアタック!〜御者のオッサン、棚ぼたで最強になる〜
KeyBow
ファンタジー
第18回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞
ディノッゾ、36歳。職業、馬車の御者。
諸国を旅するのを生き甲斐としながらも、その実態は、酒と女が好きで、いつかは楽して暮らしたいと願う、どこにでもいる平凡なオッサンだ。
そんな男が、ある日、傲慢なSランクパーティーが挑むドラゴンの討伐に、くじ引きによって理不尽な捨て駒として巻き込まれる。
捨て駒として先行させられたディノッゾの馬車。竜との遭遇地点として聞かされていた場所より、遥か手前でそれは起こった。天を覆う巨大な影―――ドラゴンの襲撃。馬車は木っ端微塵に砕け散り、ディノッゾは、同乗していたメイドの少女リリアと共に、死の淵へと叩き落された―――はずだった。
腕には、守るべきメイドの少女。
眼下には、Sランクパーティーさえも圧倒する、伝説のドラゴン。
―――それは、ただの不運な落下のはずだった。
崩れ落ちる崖から転落する際、杖代わりにしていただけの槍が、本当に、ただ偶然にも、ドラゴンのたった一つの弱点である『逆鱗』を貫いた。
その、あまりにも幸運な事故こそが、竜の命を絶つ『最後の一撃(ラストアタック)』となったことを、彼はまだ知らない。
死の淵から生還した彼が手に入れたのは、神の如き規格外の力と、彼を「師」と慕う、新たな仲間たちだった。
だが、その力の代償は、あまりにも大きい。
彼が何よりも愛していた“酒と女と気楽な旅”――
つまり平和で自堕落な生活そのものだった。
これは、英雄になるつもりのなかった「ただのオッサン」が、
守るべき者たちのため、そして亡き友との誓いのために、
いつしか、世界を救う伝説へと祭り上げられていく物語。
―――その勘違いと優しさが、やがて世界を揺るがす。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる