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第2章 王都と学園
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「イリス!大丈夫か」
休息室で薬草の入ったお茶を飲んでいるとクリストファーが駆け込んで来た。
「突然倒れたと…」
「倒れていないわ。レナルドが大袈裟なの」
口を尖らせるとイリスは兄を見上げた。
「大袈裟ではない。現に熱を出しただろう」
「少しだけよ、もう何ともないもの」
「謎の光には襲われるし…」
「光?」
「…もう本当に大丈夫よ。帰りましょうお兄様」
立ち上がるとイリスはレナルドに向いた。
「それじゃあレナルド。今日はありがとう。明後日は入学前試験があるのよね」
「明日見舞いに行くよ」
「もう、本当に何ともないの。大丈夫だから…」
「イリスに会いたいから、明日行くよ」
イリスの手を取り抱き寄せると、レナルドはその頬に口付けた。
「…それじゃあ、明日ね」
レナルドの背中に手を回して軽く抱きしめると強く抱きしめ返された。
「それで何があったんだ」
屋敷に戻り、イリスと向き合ってソファーに腰を下ろすとクリストファーは尋ねた。
「———声を聞いたの」
「声?」
「大神ユーピテルよ」
クリストファーは目を見開いた。
「何故…」
「私に話があるって」
イリスは大神殿での出来事をクリストファーに話した。
聞き終えるとクリストファーは長い息を吐いた。
「…神の声が聞こえた事を、他の者に知られた可能性は?」
「分からないわ…でも加護の光に包まれてしまったから、疑われてはいるかも」
「———大神殿に行くべきではなかったな」
「でも行かなければ分からなかったわ、女神があれ以来眠り続けているなんて…」
「…百年の眠りか」
女神は疲れたのだ、とユーピテルは言った。
それはかの国の王に失望したからなのか、それとも…自分達にも伝わっていない、何かがあったのだろうか。
レナルドは物見塔から城下を見下ろしていた。
夜の闇の中で小さな灯りが無数に煌めくその光景は、レナルドのお気に入りだった。
———イリスにも見せたいな。
昼間、ここから目を輝かせて眺めていた姿を思い出す。
イリスが王都に来るのを待ち望んでいた。
この五年間、そのために頑張ってきた。
将来は騎士になり王を支えるのだと事あるごとに周囲に伝えてきた。
イリスを伴侶に望むのも、彼女が好きという理由だけでなく、王妃とするには身分も後ろ盾も弱い相手を選ぶ事で王位争いには関わらないという意思表示の意味もある。
取り巻きも作らなかったが、伯父の助言を聞いてクリストファーとは関わりを持つようにしてきた。
伯父のオドラン家と、イリスのオービニエ家。
二つの伯爵家だけが付いているレナルドは王にはなれないだろうと、貴族達には認識されているはずだ。
そのクリストファーには未だ剣で勝てていないが、卒業するまでに勝てればいいと思っているから焦ってはいない。
イリスとの関係も良好に築けている。
ここまで予定通りのはずなのに。
———なぜ心の奥に不安感がくすぶっているのだろう。
その不安を探ろうとすると、イリスの瞳が脳裏に浮かんだ。
青空のような、キラキラした澄んだ瞳に———ここから大神殿を見下ろしていた時に浮かんでいた、あの色は何を意味していたのだろう。
それにその大神殿での出来事。
突然光に包まれたイリス。
光が消えた直後、覗き込んだイリスの瞳には幾つもの色が混ざり合っていた。
すぐに元の青い瞳に戻ったけれど…あの瞳を見た瞬間、ひどく不安な気持ちに襲われたのだ。
この不安は…そうだ、きっと、自分が知らないイリスの姿を見せられたからだ。
「イリス…君の全てが知りたいんだ」
呟かれた言葉は夜の闇に溶けていった。
休息室で薬草の入ったお茶を飲んでいるとクリストファーが駆け込んで来た。
「突然倒れたと…」
「倒れていないわ。レナルドが大袈裟なの」
口を尖らせるとイリスは兄を見上げた。
「大袈裟ではない。現に熱を出しただろう」
「少しだけよ、もう何ともないもの」
「謎の光には襲われるし…」
「光?」
「…もう本当に大丈夫よ。帰りましょうお兄様」
立ち上がるとイリスはレナルドに向いた。
「それじゃあレナルド。今日はありがとう。明後日は入学前試験があるのよね」
「明日見舞いに行くよ」
「もう、本当に何ともないの。大丈夫だから…」
「イリスに会いたいから、明日行くよ」
イリスの手を取り抱き寄せると、レナルドはその頬に口付けた。
「…それじゃあ、明日ね」
レナルドの背中に手を回して軽く抱きしめると強く抱きしめ返された。
「それで何があったんだ」
屋敷に戻り、イリスと向き合ってソファーに腰を下ろすとクリストファーは尋ねた。
「———声を聞いたの」
「声?」
「大神ユーピテルよ」
クリストファーは目を見開いた。
「何故…」
「私に話があるって」
イリスは大神殿での出来事をクリストファーに話した。
聞き終えるとクリストファーは長い息を吐いた。
「…神の声が聞こえた事を、他の者に知られた可能性は?」
「分からないわ…でも加護の光に包まれてしまったから、疑われてはいるかも」
「———大神殿に行くべきではなかったな」
「でも行かなければ分からなかったわ、女神があれ以来眠り続けているなんて…」
「…百年の眠りか」
女神は疲れたのだ、とユーピテルは言った。
それはかの国の王に失望したからなのか、それとも…自分達にも伝わっていない、何かがあったのだろうか。
レナルドは物見塔から城下を見下ろしていた。
夜の闇の中で小さな灯りが無数に煌めくその光景は、レナルドのお気に入りだった。
———イリスにも見せたいな。
昼間、ここから目を輝かせて眺めていた姿を思い出す。
イリスが王都に来るのを待ち望んでいた。
この五年間、そのために頑張ってきた。
将来は騎士になり王を支えるのだと事あるごとに周囲に伝えてきた。
イリスを伴侶に望むのも、彼女が好きという理由だけでなく、王妃とするには身分も後ろ盾も弱い相手を選ぶ事で王位争いには関わらないという意思表示の意味もある。
取り巻きも作らなかったが、伯父の助言を聞いてクリストファーとは関わりを持つようにしてきた。
伯父のオドラン家と、イリスのオービニエ家。
二つの伯爵家だけが付いているレナルドは王にはなれないだろうと、貴族達には認識されているはずだ。
そのクリストファーには未だ剣で勝てていないが、卒業するまでに勝てればいいと思っているから焦ってはいない。
イリスとの関係も良好に築けている。
ここまで予定通りのはずなのに。
———なぜ心の奥に不安感がくすぶっているのだろう。
その不安を探ろうとすると、イリスの瞳が脳裏に浮かんだ。
青空のような、キラキラした澄んだ瞳に———ここから大神殿を見下ろしていた時に浮かんでいた、あの色は何を意味していたのだろう。
それにその大神殿での出来事。
突然光に包まれたイリス。
光が消えた直後、覗き込んだイリスの瞳には幾つもの色が混ざり合っていた。
すぐに元の青い瞳に戻ったけれど…あの瞳を見た瞬間、ひどく不安な気持ちに襲われたのだ。
この不安は…そうだ、きっと、自分が知らないイリスの姿を見せられたからだ。
「イリス…君の全てが知りたいんだ」
呟かれた言葉は夜の闇に溶けていった。
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