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第2章 王都と学園
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王立アランブール学園は貴族の子女が通う学園である。
ほとんどの貴族の子供達、特に女子は家の中だけで育てられる事が多いため、十五歳から三年間、多くの仲間と過ごすこの学園では学問だけでなく社交を学び、人脈を築いて社交界に出て行く準備をするのだ。
車止めには多くの馬車が止まっていた。
大勢の生徒達がほぼ同じ時間に登園するため、大混雑になる。
その混乱や諍いを減らすため、親の爵位によって馬車を止められる位置は決められていた。
入り口に一番近い、王族とそれに準じる地位の者のみが使えるその場所に、一台の馬車が止まった。
紋章はないけれど一目で最高級品だと分かるその馬車から降り立った黒髪の少女に、周囲にいた生徒達の間から騒めきが広がった。
……やっぱり目立っているわ。
周囲からの好奇と警戒のこもった視線を感じ、イリスは思わずため息をついた。
レナルドが、防犯の為に王家の馬車を使うよう言ってきたのだ。
いくら親しくしているとはいえ、イリスは伯爵の娘。婚約者でもないのにそんな特別扱いはいらないと断ったのだが。
———それならばと、イリスがレナルドの婚約者となってしまったのが三日前の事だった。
クリストファーは反対したのだが、王宮内を始め周囲からはレナルドとイリスが将来結婚する事は決定事項だと思われており、そのイリスに婚約者の肩書きがなければ今後の学園生活で嫌がらせなどが起きるかもしれないから必要なのだと言われ。
それにレナルドから、卒業までにクリストファーに剣で勝てなければ婚約を解消してもいいと宣言されてしまったので、それ以上反対は出来なくなってしまったのだ。
「あの小僧…どこまで根回しすれば気が済むんだ」
帰りの馬車の中でポツリと呟かれたクリストファーの言葉を、イリスはそっと聞かなかった事にした。
「イリス様」
声を掛けられ、振り返ると一人の少女が立っていた。
ウェーブを描いた豊かな金色の髪。
華やかな美しさを持った顔の中でも特に印象的な、ややつり上がった青い瞳は高い気品を湛えている。
「フランソワーズ様…御機嫌よう」
「先日はご挨拶しか出来ませんでしたわね。お会いできるのを楽しみにしていましたのよ」
十五歳ながら既に淑女として完成された優美な表情と仕草で少女は微笑んだ。
フランソワーズ・バルビエ。
侯爵令嬢であり、正妃の息子アルセーヌ王子の婚約者である。
二人の婚約は幼い頃より決まっていたが五年前、政権争いが起きた時に一旦白紙となっていた。
それが情勢も落ち着いたとして改めて婚約したのが一年前。
王位はアルセーヌが継ぐ事がほぼ決まりだと、フランソワーズも既に王妃教育を受けていると聞いていた。
イリスがフランソワーズと会ったのは十日前に行われた入学前試験と三日前のレナルドとの婚約式の二回で、どちらも会話をする機会はほとんどなかった。
「ご一緒してもよろしいかしら」
「ええ」
並んで歩き出し、中へと入ろうとすると、背後から黄色い歓声が聞こえてきた。
ほとんどの貴族の子供達、特に女子は家の中だけで育てられる事が多いため、十五歳から三年間、多くの仲間と過ごすこの学園では学問だけでなく社交を学び、人脈を築いて社交界に出て行く準備をするのだ。
車止めには多くの馬車が止まっていた。
大勢の生徒達がほぼ同じ時間に登園するため、大混雑になる。
その混乱や諍いを減らすため、親の爵位によって馬車を止められる位置は決められていた。
入り口に一番近い、王族とそれに準じる地位の者のみが使えるその場所に、一台の馬車が止まった。
紋章はないけれど一目で最高級品だと分かるその馬車から降り立った黒髪の少女に、周囲にいた生徒達の間から騒めきが広がった。
……やっぱり目立っているわ。
周囲からの好奇と警戒のこもった視線を感じ、イリスは思わずため息をついた。
レナルドが、防犯の為に王家の馬車を使うよう言ってきたのだ。
いくら親しくしているとはいえ、イリスは伯爵の娘。婚約者でもないのにそんな特別扱いはいらないと断ったのだが。
———それならばと、イリスがレナルドの婚約者となってしまったのが三日前の事だった。
クリストファーは反対したのだが、王宮内を始め周囲からはレナルドとイリスが将来結婚する事は決定事項だと思われており、そのイリスに婚約者の肩書きがなければ今後の学園生活で嫌がらせなどが起きるかもしれないから必要なのだと言われ。
それにレナルドから、卒業までにクリストファーに剣で勝てなければ婚約を解消してもいいと宣言されてしまったので、それ以上反対は出来なくなってしまったのだ。
「あの小僧…どこまで根回しすれば気が済むんだ」
帰りの馬車の中でポツリと呟かれたクリストファーの言葉を、イリスはそっと聞かなかった事にした。
「イリス様」
声を掛けられ、振り返ると一人の少女が立っていた。
ウェーブを描いた豊かな金色の髪。
華やかな美しさを持った顔の中でも特に印象的な、ややつり上がった青い瞳は高い気品を湛えている。
「フランソワーズ様…御機嫌よう」
「先日はご挨拶しか出来ませんでしたわね。お会いできるのを楽しみにしていましたのよ」
十五歳ながら既に淑女として完成された優美な表情と仕草で少女は微笑んだ。
フランソワーズ・バルビエ。
侯爵令嬢であり、正妃の息子アルセーヌ王子の婚約者である。
二人の婚約は幼い頃より決まっていたが五年前、政権争いが起きた時に一旦白紙となっていた。
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王位はアルセーヌが継ぐ事がほぼ決まりだと、フランソワーズも既に王妃教育を受けていると聞いていた。
イリスがフランソワーズと会ったのは十日前に行われた入学前試験と三日前のレナルドとの婚約式の二回で、どちらも会話をする機会はほとんどなかった。
「ご一緒してもよろしいかしら」
「ええ」
並んで歩き出し、中へと入ろうとすると、背後から黄色い歓声が聞こえてきた。
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