推しに告白(嘘)されまして。

朝比奈未涼

文字の大きさ
16 / 108

16.同じにしたい。side千晴

しおりを挟む



side千晴



太陽が沈み、パーク内が電飾の海に包まれる。
その中で俺の隣を歩く小さな存在に、俺はじんわりと心が暖かくなった。

意志の強そうな瞳に、小さな口。
綺麗だが、可愛い要素もある、美人な柚子先輩の横顔は、いつまでも見ていられる。
先輩を見て俺は改めて、好きだな、と思った。

複数の事業を展開する、日本有数のグループ、華守グループの跡取り息子である俺は、生まれた時から特別で、何をしても許される存在だった。

周りの大人たちによって勝手に決められたつまらない道に、俺に頭が上がらない全ての人間たち。
俺を取り巻く全てがつまらない。
そう思って生きてきたが、先輩と出会って全てが変わった。

先輩は時に強く、時に優しい人だ。
それは誰に対しても同じで、俺に対してもそうだった。
そんな先輩が俺は好きだ。

今日の先輩も本当によかった。
強いところも優しいところも見れたし、何よりも私服の先輩はいつも見る制服の先輩とはまた雰囲気が違い、カジュアルでとても可愛いかった。

だが、そんな大好きな先輩に〝彼氏〟ができてしまった。その枠はいずれ俺のものになるはずだったのに。

最初、先輩に彼氏ができたと知った時、はらわたが煮えくり返った。
心が、体が、不快と怒りに支配され、どうしようもない不快感が俺を襲った。

しかし、今はもう落ち着いている。
何故なら先輩が彼氏に選んだ相手が、ただの先輩の推しだったからだ。

先輩は別にアイツのことを異性として好きではない。
ただの推しとして推しているだけだ。
先輩からアイツの話を聞くたびに、そこに俺と同じ熱を一切感じなかったので、すぐにそうだとわかった。
まあ、だからといって、先輩の口から他の男の話なんて聞きたくないが。

だから一刻も早く俺を好きになってもらわなければならない。
そうでなければ、この不快な状況がずっと続いてしまう。



「うわぁ…」



俺の隣にいた先輩がある場所を見て感嘆の声をあげる。
先輩の視線の先には、このパークのシンボル、大きな西洋式のお城があった。
先ほど先輩と共に軽食を食べた場所だ。

ライトアップされているそれは昼間のものとはまた違うものに見えた。
一般的な感想を述べるなら、あれは綺麗なのだろう。
俺にはただ光っているな、という感想しかないが。

けれど、そんなただ光っているだけの建物でも、先輩越しに見れば、何故かとても輝いて見えた。
先輩と共に見る景色はどんなものでも美しいと思えた。



「ねぇ、先輩」

「ん?」



俺に呼ばれてこちらに振り向いた先輩は相変わらず可愛らしくて。
どうしたの?と目で聞いてくる先輩に心臓を鷲掴みにされる。



「一緒に写真撮ろ、先輩」

「写真?うん。いいよ。撮ろ」



俺の提案に先輩は当然のように快く頷いてくれた。
なので、俺は早速自分のスマホを出し、撮影の準備を始めた。

まずは内カメにし、そしてそのままスマホを縦に持つ。それから画角に先輩と一緒に入れるようにスマホを持つ右手を伸ばした。

先輩が俺の近くに寄る。
スマホの画面には光り輝くパークを背景に微笑む2人。
お揃いのバケハをかぶっており、先輩は胸元、俺は顔にこれまたお揃いのサングラスがある。
どこからどう見ても恋人にしか見えない2人だ。

俺はちょうどいいところでシャッターを押した。



「先輩どう?」



それから俺はすぐに写真を先輩に見せた。



「ん?うん。めっちゃいい写真じゃん。綺麗」



俺に見せられた写真を見て、先輩が嬉しそうに笑う。
愛らしいそんな先輩に俺はまた先輩への愛しさで胸がいっぱいになった。

傍から見て俺とアイツ、どちらが先輩と恋人同士に見えるのか。
それは間違いなく、俺の方だろう。
先輩のスマホのロック画面になっているアイツとの写真よりも、ずっと今撮った写真の方が恋人らしい。

アイツよりも俺の方が先輩と恋人のような関係なのだと、周りに、そしてアイツにじわじわと思い知らせてやる。
その為にも、アイツにお土産を買う先輩を後押しした。
お土産を渡せば、自然と今日の話になるからだ。
今日、お前ではなく、俺と共に過ごした柚子先輩という存在をアイツも知ればいい。

そうして少しずつ、俺と先輩の仲をわからせていけば、アイツは先輩と別れるはずだ。
自分は相応しくない相手だった、と。

あとはアイツと別れて傷ついた先輩を俺が慰める…いや、そもそも俺を好きになれば、先輩が傷つくこともない。
やはり一刻も早く俺を好きにさせなければ。



「先輩、写真送るから、連絡先教えて」

「うん。ちょっと待ってよ…」



自然な流れで先輩の方へとスマホを向けると、先輩は頷いて、鞄に手を入れた。

こうやって、アイツのいない2人だけの時間をどんどん積み重ね、先輩の中に自然と俺を浸透させていく。
それから徐々に俺を好きにさせる。
周りにも抜かりなく手を回して、俺と先輩こそが結ばれるべきだという空気を作るのだ。

先輩が知らないうちに少しずつ囲ってやる。
だから同じになろう、柚子先輩。



「そっちが読み取る?」



QRコードを表示させたスマホをこちらに向けて、首を傾げる愛らしい存在に俺は瞳を細めた。



しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

生まれ変わったら極道の娘になっていた

白湯子
恋愛
職業専業主婦の私は、車に轢かれそうになってた子どもを守ろうとして死んでしまった。しかし、目を開けたら私は極道の娘になっていた!強面のおじさん達にビクビクしながら過ごしていたら今度は天使(義理の弟)が舞い降りた。やっふぅー!と喜んだつかの間、嫌われた。何故だ!構い倒したからだ!!そして、何だかんだで結婚に焦る今日この頃……………。 昔、なろう様で投稿したものです。

【完結】妻の日記を読んでしまった結果

たちばな立花
恋愛
政略結婚で美しい妻を貰って一年。二人の距離は縮まらない。 そんなとき、アレクトは妻の日記を読んでしまう。

英雄の番が名乗るまで

長野 雪
恋愛
突然発生した魔物の大侵攻。西の果てから始まったそれは、いくつもの集落どころか国すら飲みこみ、世界中の国々が人種・宗教を越えて協力し、とうとう終息を迎えた。魔物の駆逐・殲滅に目覚ましい活躍を見せた5人は吟遊詩人によって「五英傑」と謳われ、これから彼らの活躍は英雄譚として広く知られていくのであろう。 大侵攻の終息を祝う宴の最中、己の番《つがい》の気配を感じた五英傑の一人、竜人フィルは見つけ出した途端、気を失ってしまった彼女に対し、番の誓約を行おうとするが失敗に終わる。番と己の寿命を等しくするため、何より番を手元に置き続けるためにフィルにとっては重要な誓約がどうして失敗したのか分からないものの、とにかく庇護したいフィルと、ぐいぐい溺愛モードに入ろうとする彼に一歩距離を置いてしまう番の女性との一進一退のおはなし。 ※小説家になろうにも投稿

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

ヤンデレ旦那さまに溺愛されてるけど思い出せない

斧名田マニマニ
恋愛
待って待って、どういうこと。 襲い掛かってきた超絶美形が、これから僕たち新婚初夜だよとかいうけれど、全く覚えてない……! この人本当に旦那さま? って疑ってたら、なんか病みはじめちゃった……!

【完結】消された第二王女は隣国の王妃に熱望される

風子
恋愛
ブルボマーナ国の第二王女アリアンは絶世の美女だった。 しかし側妃の娘だと嫌われて、正妃とその娘の第一王女から虐げられていた。 そんな時、隣国から王太子がやって来た。 王太子ヴィルドルフは、アリアンの美しさに一目惚れをしてしまう。 すぐに婚約を結び、結婚の準備を進める為に帰国したヴィルドルフに、突然の婚約解消の連絡が入る。 アリアンが王宮を追放され、修道院に送られたと知らされた。 そして、新しい婚約者に第一王女のローズが決まったと聞かされるのである。 アリアンを諦めきれないヴィルドルフは、お忍びでアリアンを探しにブルボマーナに乗り込んだ。 そしてある夜、2人は運命の再会を果たすのである。

【完結】二度目の子育て~我が子を可愛がったら溺愛されました

三園 七詩
恋愛
私は一人娘の優里亜の母親だった。 優里亜は幼い頃から体が弱く病院でほとんどの時間を過ごしていた。 優里亜は本が好きでよく私にも本の話をしてくれた。 そんな優里亜の病状が悪化して幼くして亡くなってしまう。 絶望に打ちひしがれている時事件に巻き込まれ私も命を落とした。 そして気がつくと娘の優里亜が大好きだった本の世界に入り込んでいた。

一夜の過ちで懐妊したら、幼なじみの冷酷皇帝に溺愛されました

由香
恋愛
没落貴族の娘・柳月鈴は、宮廷で医官見習いとして働いていた。 ある夜、皇帝即位の宴で酒に酔い、幼なじみだった皇帝・李景珩と再会する。 遠い存在になったはずの彼。 けれど、その夜をきっかけに月鈴の運命は大きく動き出す。 冷酷と恐れられる皇帝が、なぜか彼女だけには甘すぎて――。

処理中です...