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変わる世界。
しおりを挟むデビュー前、最初で最後の握手会が終わり、俺は見事、デビューを勝ち取った。
そこからは毎日が嵐のようで、忙しい日々を送った。
デビューがゴールではない。
デビューはスタートだ。
romanceとしてデビューした俺たちは、トップアイドルになるために、さらなる努力と活動を続けた。
シングルの発売による、たくさんの準備。
MV撮影、ジャケット撮影。
番宣に地上波に出て、雑誌に載って。
romanceのアカウントで、ライブ配信をできるだけ毎日し、個人アカでも配信、投稿をした。
モデルの仕事、CMの仕事、歌、ドラマ、バラエティ。
俺たちはとにかく引っ張りだこで、その中でも群を抜いて、俺にはいろいろなところからオファーがきた。
その合間を縫うように、ファンに会うイベントも行われる。
このファンに会える時間が、俺にとって特別で大切なものだった。
ライブ配信でも、SNSでも、いつもねねさんに会えるけど、直接会えるのは、イベントでだけだ。
やはり、ねねさんとは直接会って話がしたい。
ねねさんはどんな現場でも、必ず俺に会いに来てくれた。
ライブ、地方のイベント、握手会、サイン会。
ラジオの収録に、ゲリライベント。
その中で俺はいつもねねさんを探して、その姿を見つけては嬉しくなっていた。
ねねさんは俺を輝かせる太陽であり、俺の神様だ。
ねねさんさえいれば、どんなに辛くても大変でも、頑張ろうと思える。
輝こうと立ち上がれる。
忙しい毎日に、失われた日常に、有名になればなるほど増えるアンチに、いつだって心が曇らされる。
けれど、神様の言葉一つで、俺はその曇りを晴らせた。
romanceとして、デビューして2年。
romanceはスター街道を駆け上がり、ついには誰もが知る、スーパーアイドルへと成長した。
歌を出せば、必ずバズり、誰しもが口ずさむ。
romanceが使っていた、となると、あれよあれよと売れてしまい、品切れに。
雑誌に登場した日には、その雑誌は入手困難となり、ライブのチケットはとんでもない倍率で、現場に行けれないファンが続出していた。
ねねさんはいつも、俺に言ってくれる。
『翡翠は私の一番星だよ』と。
光り輝き続ける俺を、ねねさんは自分のことのように、喜んでくれていた。
2年経っても、それは変わらなかった。
ねねさんからもらったファンレターは、全てファイル入れて丁寧に保存している。
ねねさんからのプレゼントも全部大切に使っている。
ねねさんのSNSの言葉は、お気に入りのものをスクショで保存してデータに残し、飾っているものまである。
2年間、潰れず頑張って来れたのは、全てねねさんのおかげなのだ。
…が、その日は突然やってきた。
都内でゲリラライブをした日。
シングルの宣伝のためにしたライブはゲリラにも関わらず好調で、とても盛り上がった。
時間が経てば経つほど、その情報は流れ、ファンを集めた。
歌い踊りながら、いつものようにねねさんの姿を探す。
彼女はどんな現場にでも必ず駆けつけてくれる。
だから今日も情報を聞きつけて、いの一番に俺に会いに来てくれるはずだ。
そう思って、ずっと探しているのに、彼女の姿はない。
…あれ?
気がつけばねねさんの姿を見ないまま、ライブは終わってしまった。
*****
「いやぁ、ゲリラにしてはすごい人だったな!」
メンバーの1人、裕也が楽屋で嬉しそうに声を上げる。
「今回の曲もヒット間違いなしじゃない?」
「レコード大賞も夢じゃないな!」
それから智司、圭介も明るい声で話し始めた。
だが、和気あいあいとしている楽屋内で、俺の表情だけは曇っていた。
ねねさん、どうしたんだろう。
必ず駆けつけてくれていたねねさんが、今日はいなかった。
ライブに来るまでに事故にでもあったのだろうか。
トラブルにでも巻き込まれたのだろうか。
ねねさんのことが心配で、スマホをじっと見つめる。
とりあえず都内で何か事件が起こっていないか、SNSを調べるが、そのような情報はない。
大きな事故には巻き込まれていない…。
じゃあ、何故?
そう思って、今度はねねさんをフォローしているアカウントでねねさんを見るが、ねねさんに動きはない。
romanceが…、ねねさんの一番星である翡翠が、ゲリラライブをしていたというのに、どうして無反応なのか。
2年間一度もなかったねねさんの沈黙に、不安が募った。
何か悪いことがねねさんに起きているのではないか。
〝ねね〟では、ねねさんのプライベートまではわからない。
俺は急いで〝天音〟の方のアカウントを見た。
『今日は仕事、早く終わった!』
〝天音〟が1時間前に、そう言っている。
1時間前といえば、俺たちがライブをしていた時間だ。
ねねさんには何も起きていない。仕事も終わっていた。
それなのにどうしてライブに来なかったのか。
『夜ご飯作ったぁ』
少し〝天音〟を見ていると、シュッとねねさんの言葉が現れた。
きちんと並べられた夜ご飯の写真と共に。
どうして。どうして?
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