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本編

15話 冒険者活動を開始します

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「おお~、ここが私の追放先となる鉱山の街べクルトンですか~~~」

私は狼さん一家と別れ、マイトさん、ケイナさん、ガインさんと合流しました。私の身体がボアの血で汚れていたので、途中で見つけた小川で身体と服を綺麗にし着替えてから再出発しました。

道中、私はケイナさんからここまでの経緯を聞きました。

3人は私と別れた後、護送を引き受けた連中が必ずこの街道を通って王都に戻ると踏み、街道の見える丘の上でずっと待機していたそうです。案の定、連中は翌朝になって見張り地点を通ったので、その場で私の行方を問いただした。ここからべクルトンまで馬車でどれだけ飛ばしても、最低2日はかかるので、そこを追求すると、彼らはすぐに私の居場所を吐露しました。元々、私の告げた言葉で自分たちの任務に不審を抱いていたらしく、帰還したらすぐに公爵様に問いただそうと思っていたようです。

私はそんなマイトさんたちに拾われ、ゆっくり3日かけて目的地べクルトンの街に到着しました。ケイナさんから聞いた限り、この街は周辺の鉱山で産出される鉱石から金属を精錬し、それらを様々な物に加工し販売する産業で成り立っており、加工品の評価もすこぶる高いようです。鉱山周辺では、土属性を主体とした魔物も出現するため、街内には大勢の冒険者が滞在しているようです。私の追放先を何故この街に決めたのか不明ですが、しばらくの間はここで冒険者として生計を立てていかないといけません。旦那様からお金ももらっていますが、大半は貯金しておきます。前世のご主人-安優香様も、余ったお給料は貯金していましたから。

街の中に入り、一つの大きな建物のところで荷馬車が止まりました。私が下りると、マイトさんたちもこちらにやって来ました。

「リコッタ、俺たちの護送はここまでだ。ここからは、君1人で生活しないといけないが、俺たちパーティーもこの街に3日間滞在するから、その間だけでも教育者になって冒険者としての心得を教える。俺たちがいなくなっても、何か困った事が起きたら、ここ冒険者ギルドの受付係に言うんだ。必ず動いてくれるはずだ」

マイトさんからの助言、非常に助かります。冒険者として活動したことなどないので、生活をどうやって安定させていくかが、とても不安でした。

「マイトさん、ありがとうございます!! 先輩冒険者方のことを信じ、冒険者として生活していきます」

 まずは、寝床を決めないといけません。そこで重要視されるのが、冒険者ギルドの受付係です。ランクの低い冒険者であっても、必ずその人たちに見合う宿屋や依頼内容を言ってくれるそうです。

「リコッタから聞いたスキル《絶対嗅覚》の効果は、ギルドでも重宝されるはずだ。自分の持つスキルを最大限に利用して動いていけば、今の君でもある程度の信用を得られ、路銀を稼げると思う。頑張れよ」

マイトさんは二カッと笑い、私の頭を撫でてくれました。3人と再会した際、私はチートスキル《絶対嗅覚》だけを明かしています。私としても、冒険者活動をするにあたり、このスキルの有用性を確認しておきたかったのです。

「マイトの言う通りだ、頑張れよ!! そのうち、気の合う仲間も見つかるさ!!」
「そうよ、頑張ってね」
「はいです!!」

ガインさん、ケイナさんからも励まされ、私たちはギルド入口で分かれることとなりました。本来であれば、ケイナさんの持つ依頼達成書にサインしないといけないのですが、途中で横槍が入り、ギルドにも中断されたことが伝わっているので、もう私のサインは必要ありません。ここで一緒に入ってしまうと、変に怪しまれるので、少し時間をおいてから私も入りましょう。

マクガイン公爵家が何を企んでいるのかわかりませんが、私は絶対にあんな奴らに利用されませんからね!!


○○○


この街に到着してから、はや4日が経過しました。この間に、私はFランク冒険者となり、受付係の方に宿を紹介してもらい、当面の住処を見つけ、マイトさんたちから冒険者としての心得を学びました。昨日まで、マイトさんたちが私の面倒を見てくれていたのですが、今日から私1人の単独任務が始まります。

冒険者を行うにあたって、まず知るべきことは自分自身です。

私の持つスキルや魔法が、如何にギルドに貢献できるか、これが重要なのです。だから、有用なスキルが発現した時は、ギルドに報告しないといけません。勿論、強制ではないので、全てを言う必要はありません。私の場合も、スキル《絶対嗅覚》しか言ってません。

受付係の方々は、この3日間で私のスキル《絶対嗅覚》を信じてくれました。私は始めにFランク定番の《薬草採取依頼》を受け、街近辺にある数少ない森へ行き、3日間全てにおいて採取したものが、《劣悪品》《良品》《優秀品》《最優秀品》の中でも、全てが《最優秀品》でした。事前に4種類の薬草の匂いを嗅ぎ、全て覚え、見つけるのにかなり時間を要しましたが、森の中でも最優秀だけを選び抜くことができたのです。

冒険者活動を行うにあたり、ただ掲示板に貼られている依頼を遂行していくだけでは、普通の人々と同じ活動のため、信頼もすぐに築けません。だから、私はスキルの一つを開示して、これに特化した依頼を遂行していったのです。そのおかげで、一分野だけですが、ギルドの信頼を勝ち取ることに成功しました。

今日からは、匂いに関わる本格的な依頼を言われるはずです。
ふふふ、元警察犬としての腕の見せ所なのです。

私は覚悟を決めて、冒険者ギルドへと入り、受付係のリットさんのもとへ向かいます。彼女は私と同じ獣人族で23歳の女性、明るく優しく、人情味もあるので、接しやすいお姉さんなのです。

「リットさん、おはようございます」
「おはよう、リコッタ。尻尾もフリフリね」
「今日からは単独任務なのです。何か、私の出来そうな依頼はありますか?」

 私はこの3日間で、マイトさんたちからも、皆さんに冒険者として認められました。勿論、戦力的な意味合いではなく、サポートメンバーとしてですが。現状、スキル《身体硬健》を使用する機会も訪れていませんので、私の強さの評価は最低レベルです。

「これまでの任務で、あなたの能力を理解できたわ。あなたにしか出来ない任務が一つだけあります。依頼内容は、鉱山の敷地内にある錬成所での品質管理よ。期間は明日から7日間」

和かな顔で聞き慣れない言葉を言ったリットさん。

「錬成所? 品質管理? それって何ですか?」

「今から説明するわね。鉱山から、《鉱物》というものが産出されるわ。錬金術を用いることで、その鉱物から金属だけを錬成することができるの。あなたの任務は、錬成された金属の純度をスキルで……」

「《錬金術》? 《錬成》? 《純度》? 意味がわかりません」

あれ? 何故か、リットさんが笑顔のまま黙ってしまいました。聞き慣れない単語を聞いて、質問しただけなのですが?

「そうね。あなたは8歳なんだから、専門用語を言ってもわからないわよね。簡単に言うと、錬成所に保管されている……金属の分別作業をあなたにやってもらいたいの。アイテムバッグに入れて分別することも可能なんだけど、それは種類だけであって、《質》自体を分類できないの。薬草の《劣悪品》と《最優秀品》をバッグ内で分別できないのと同じことよ」

ああ、そういうことですか。
薬草採取時に、私も試したことがあります。

薬草をバッグの中に入れると、《ヨモギ草》という名称だけが表示されるだけで、それ以外は何も表示されませんでした。

今回の任務は、一つの金属から優秀なものを選び抜くのですね。

「サンプルがあれば、分類は可能です」
「大丈夫、先方には既に伝えてあるから用意してくれているはずよ」

今日からは私1人で作業をしないといけませんから、依頼主様にご迷惑をかけないよう依頼を遂行していきましょう。

「気をつけるべき点はありますか?」

 鉱山関係とかなら、魔物との戦闘もありえます。

「そうね……今回の場所は鉱山から近い場所にあって、魔物も出現するわ。目的地までは、護衛の冒険者もいるから大丈夫だけど、鉱山内や建物の一部には犯罪奴隷もいるから、そういった場所に近づかないこと」

奴隷ですか、私自身王都で一度見かけたことがあります。あの時は、奴隷の乗る馬車が近くを通ったのです。絶望という匂いを漂わせ、表情も暗く、目に力がありませんでした。旦那様から、《犯罪を犯した者》、《生活のため家族に売られた者》、《誰かに嵌められ貴族から転落した者》など様々な理由で、奴隷に転落するケースがあるとお聞きしています。

「ああ、それともう一つ」

もう一つ? なんだかリットさんから、嫌な臭いを少し感じます。
これは……憎悪? 
それとも嫌悪? 

「街内にいる《ゴルド》という獣人冒険者には気をつけて。彼の言葉を、絶対信じちゃダメよ」

ゴルド?
臭いから察するに、リットさんはその方を相当嫌っているようです。

「わかりました」

ゴルドという人物と、犯罪奴隷たちとは、極力関わらないようにしましょう。
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