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《シャーロットが帝王となった場合のifルート》第2部 8歳〜アストレカ大陸編【ガーランド法王国
聖女帰還パーティー始まる
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私は、カムイ、フレヤ、オーキスを連れて、エルバラン家別邸に戻ってきた。本来ならば王城にて、お風呂で身体を綺麗にした後、軽くお化粧を施され、パーティードレスを選んでいくことになるのだけど、私とカムイが間者や隠し通路のことを言ったせいで、王城にいるほぼ全ての人達が仕事に追われてしまったのだ。子供5人で戻るのは危険なので、お父様も一緒に来てくれたのだけど、別邸に到着し、私達が降りると同時に、そのまま王城へととんぼ帰りした。
とりあえず、私とフレヤはお風呂に入った後、マリル率いるメイド軍団達によって、着せ替え人形状態となっている。オーキスは別室にて、お着替え中である。
「はあ~~、シャーロット様もフレヤも可愛いから、どの服を着てもお似合いですよ‼︎」
マリルの一言に、周囲にいるメイド達が全員頷いている。こうなったうちのメイド達の勢いは、誰にも止められない。私もフレヤも為すがままだ。でもさ、マリルさんや、あなたは大事なことを忘れていますよ。今は、まだ言わないでおこう。フレヤを見ると軽く頷いてくれたので、私が何を言いたいのかわかっているようだ。
「シャーロットの部屋、色んな服があるよね。ファッションて言うんだっけ? そこは、大陸が違っても共通しているんだね。僕達魔物は、こんな動きにくそうな服を絶対着ないよ。ちょっとおデブなホブゴブリンや筋肉ムキムキのゴブリンナイト達も、み~んな薄い布を纏っているだけだもん」
カムイの一言に、全員が可愛いフリル付きドレスを纏った筋肉ゴブリンを想像してしまい、顔が引きつってしまった。
「カムイ、そういうことはお着替え中に言わないでね」
私の意見に、全員が激しく同意した。こういった楽しい会話を続けること1時間、私達のお着替えは終了した。私はライラック色のドレス、フレヤは薄い水色のドレスだ。どちらも、聖女と聖女代行に相応しい清楚なデザインとなっている。そして、私達は子供だけど、パーティー用のお化粧が軽く施された。軽くとはいえ、プロに任せているため、私もフレヤも、『これが本当に私か?』と思い、お互い何度も鏡を見てしまった。
「シャーロット様、フレヤ、これで終了です。パーティーまでは、まだ余裕もありますので、ゆっくりと寛いでいて下さい」
マリルは、まだわかっていないようだ。そろそろ教えてあげましょう。
「何を言ってるの? まだ、肝心な人が終わってないよ? ねえ、フレヤ?」
「はい、まだ終わっていません。皆さんも、そう思いますよね?」
マリルを除いたメイド達が満面の笑みで頷いてくれた。皆、私とフレヤの意図を察してくれたのか、全員がマリルを見た。私達からの視線を感じたマリルは……
「オーキス……は隣で準備していますし……もうこれで終わりですよ。あ…お飲物を…」
マリル、自分でもわかっているくせに、この話題から逃げようとしている。ごめんね、逃すわけにはいかないの。
「あなただよ、マリル」
「え…あ…あはは、何を仰っているんですか? 私はただのメイドですよ? フレヤは聖女代行、オーキスは勇者ですから何の問題もありませんが、私には何も……」
その時、部屋の入口が開き、お母様が入ってきた。
「あらあら、シャーロットもフレヤも可愛いわよ。ふふ、ようやくシャーロットを皆に紹介できるわ。そして、シャーロットの『専属メイド』兼『英雄』のマリルも、大勢の貴族達に紹介しないといけないわね~」
「エ、エルサ様!? 何を言っているんですか‼︎ 私は英雄なんかじゃ……」
「ふふふ、マリル、諦めも肝心よ。あなたはイザベルを捕縛した。それに、精霊様から教わった技術を冒険者達に無償で教えてあげたわ。そのおかげもあって、魔物の軍勢が王都に押し寄せることもなかった。これら以外にも、魔法やスキル関連で次々と実績をたてているわね。そして…極め付けが16日前、エルディア王国と隣国ミルバベスタ王国の国境付近に位置する山岳地帯に突如出現したネクローシスドラゴンを討伐したこと」
ネクローシスドラゴンを討伐!?
そんな話、聞いてないよ‼︎
「お母様、ネクローシスドラゴンって、Aランクの魔物ですよね!? しかも、周囲にいる者達を容赦なく腐らせていく、厄介極まりない魔物ですよ!」
凶悪な魔物全般に関しては、5歳の頃から精霊様に教わっている。
「あら、さすがはシャーロットね。マリルったら、シャーロットに話してなかったの?」
マリル~~、何故そんな大事件と大偉業を私に教えないかな~~。
「あ…いえ…シャーロット様の帰還のお祝いこそが最優先事項なので……」
マリルの現在の基本能力値はAランク下位に近い。覚えているスキルの数こそ少ないものの、基本スキルが高レベルだから、全力を出せばSランクの力量を発揮できる。それでもドラゴン相手だと、かなり厳しいと思うけど……それに突如出現したという言葉も引っ掛かる。パーティーが終わってから、詳細を聞いてみよう。
「それに、私1人では倒せませんでした。精霊様から教わった知識と両国の冒険者の方々が協力してくれたからこそ、奴を滅ぼせたのです」
「ふふふ、確かにその通りだけど、肝心のあなたがいなければ、今頃両国のどちらかが滅亡していたわよ。シャーロット、マリルはね、無属性の最上級魔法【アポトーシス】を使用して、ネクローシスドラゴンを内部から腐らせて討伐したのよ」
無属性魔法【アポトーシス】‼︎
生物の体内には、臓器が存在する、臓器は組織で構成され、組織は細胞で構成されている。この理論は、地上に棲む魔物にも通用する。ただ、人と異なり、細胞成分は魔素や瘴気で作られた器官で構成されている。この魔法は、細胞の核内にあるDNAや魔素や瘴気といったものを段階的に分解していく魔法だ。見た目は地味だが、威力は強大である。ただし、欠点がある。術者の力量によって、分解速度が大きく異なるのだ。そのため、生物が絶命するまでの時間に、差が生じてしまう。ネクローシスドラゴンが腐敗の力を持っていようとも、生物である以上、基となる場所が壊れてしまえば死んでしまう。
「マリルが、【アポトーシス】でネクローシスドラゴンを少しずつ弱らせていく。魔法の効果が得られるまで、時間がかかるだろうから、冒険者達がその間を互いにカバーし合った?」
「シャーロット、正解。昔、あなたがマリルに教えたそうね」
「はい、『力が足りない場合、強大な魔物を倒すにはどうしたらいいのか?』と精霊様に質問したところ、この魔法を教わりました」
6歳後半くらいの時かな? 原理自体は、前世の知識を駆使することで、概ね理解できた。だから、その原理ごとマリルに教えたんだよ。『扱いを間違えば、周囲の人達も巻き込むから、習得できたとしても使用禁止ね』と言った覚えがある。当時の私もマリルも、最弱に近い弱さだったから習得できなかった。今のマリルなら、習得できるし制御も可能だ。
「そのおかげで、両国とも救われた。しかも、腐ったのは肉だけで、ネクローシスドラゴンの皮や鱗や骨格はほぼ無傷、国境付近ということもあって、公平を喫するため、得られた成果は折半されたわ。マリル自身、両国の国王陛下から褒賞も頂いたわね。そして、エルディア王国ではこれまでの実績を踏まえて、マリルは【男爵】の地位を貰えたのよ~」
「男爵!? 女性で爵位を貰える人は、極僅かと聞いていますよ!」
なんというビッグニュース!?
知らぬ間に、マリルが貴族になっていたとは……彼女の場合、まだ若いし、これからどんどん実績を積み上げていくと考え、一番最下位の地位を与えたんだ。
「ふふふ、マリルは名実ともに、【英雄】になったなのよ~。そんな英雄が、聖女帰還のパーティーを欠席したら、どうなるかわかるかしら~?」
お母様の顔、微笑んではいるけど、身体全体から【参加しろ】というオーラが滲み出ている。そういえば、帰還パレードの時、マリルは護衛という形で参加していたよね。
「エルサ様、私の地位は男爵です。通常……王家主催のパーティーは伯爵家以上、もしくは招待状を貰えた者にしか、参加資格が……」
「今回は、行方不明とされていた聖女の帰還を祝うための緊急パーティーよ。聖女の専属メイドで、英雄でもあるあなたが不参加になったら、エルバラン公爵家の品位が疑われるわ。いい加減、諦めなさい」
うん、お母様、笑顔だけど、ちょっぴり怒っている。
「あ…そうか。……エルサ様、申し訳ありません。自分のことしか考えていませんでした」
この様子だと、まだマリルは貴族教育を受けていないんだね。
「マリルが貴族の仲間入り……私にそんな大事なことを言わないなんて…」
「シャーロット様……申し訳ありません。パーティーに参加致します」
やっと、観念したか。
マリルが参加したくない気持ちもわかるんだけどね。
マリルは、普通の生活を望んでいる。一般的な平民男性と知り合い、結婚して幸せな家庭を築いていくのが、夢だと言っていた。でも、貴族で英雄になった以上……絶対に無理だ。そこまでの功績をあげたら、多分……まあパーティー中にわかるだろう。
「マリル、これからは私と一緒に淑女教育を受けるべきだよ」
「はい……落ち着いたら教育を受けます」
しゅんと項垂れるマリルも可愛い。彼女は、これまで精霊様から身につけた知識を忘れないよう、基礎訓練を入念にやりながら勉強を繰り返してきた。それがこの数ヶ月で突然開花され、異常な強さを身につけ、多くの実績を打ち立ててしまった。彼女自身の感覚が、平民から抜け切れていないのも仕方のないことだ。だから、他者が無理矢理にでも、【マリルが貴族になったこと】をわからせてあげないといけない。
現在の彼女の身につけている教養、マナー、礼儀作法は、メイド教育によるものだ。でも、貴族とメイドとなると、教育概念が別物である。初めは違和感を覚えるかもしれないけど、マリルなら1ヶ月もかからず、基本をマスターするかもしれない。
「これで、マリルの覚悟も決まったね。皆さん、マリルをとことん綺麗にしてあげましょう‼︎」
マリルは戸惑いながらも、メイド達に連行されていった。パーティー中、マリルは大勢の貴族かつ未婚の男性達に声をかけられるだろう。
マリルが出て行ってから数分後、私達の部屋にオーキスとお兄様が入ってきた。お兄様は私の姿を確認すると、感動してガチ泣きしてしまった。オーキスはというと、私を見た瞬間、ガチッと固まった。ていうかさ、もう少しフレヤを見てあげてよ。お兄様の号泣を想定していたのか、メイド達はお兄様を隣の部屋へと連行し、オーキスだけが佇むことになった。その後、20分程でお兄様とも合流し、ハーモニック大陸にいるザウルス族の話で盛り上がった。そして、王城に出発する30分程前に、マリルが部屋に入ってきた。あまりのマリルの変貌ぶりに、部屋にいた私達は押し黙ってしまった。
マリルの顔には化粧が施されいるのだけど、普段の薄化粧と違い、彼女の長所を生かしまくったメークとなっていた。そして、そのメイク術と着用している白赤色のドレスのデザインが、マリルの雰囲気とあいまくっているのだ。つまり一言で言うと、【超絶美人の英雄様】が、私たちの目の前にいるのだ。マリル自身は豪華なドレスを着慣れていないためか、ソワソワしている。
……多分、パーティーの主役の座を、途中でマリルに奪われるかもしれない。
出発時間となったので、私達(お父様を除いたエルバラン一家、カムイ、オーキス、フレヤ、マリル)は2台の馬車に乗り王城へと出発した。公爵家の馬車だから、内装も豪華だ。私の馬車には、お母様とカムイがいる。
「お母様、出席者の中に、リーラはいますか?」
「ふふふ、勿論出席しているわ。あなたが帰還したその日にマーサに知らせたもの。ただ、出席するのは、リーラとマーサの二人だけよ。マクレン伯爵も来たがっていたけど、どうしても外せない用事があってね」
それは仕方ないよ。貴族の当主ともなると、1ヶ月以上先のスケジュールがびっしりと押さえられているだろう。今回のパーティー自体が緊急に催されたものだから、参加できる者は限られるはずだ。参加者が不鮮明な分、主催する王族側も大変だろう。本来ならば、こういったイベントは数ヶ月前から少しずつ動いていくものだから。
「リーラとマーサ様には会えるのですね。楽しみです‼︎」
「今回のパーティーはあなたに合わせているから、同年代の子供達も少数参加しているわ。子供達とお話しする際、ハーモニック大陸や魔人族のことばかり聞かれるだろうけど、内容をよく考えてから話すようにね。帝王や神の件は、言っちゃダメよ」
お母様の顔が真剣だ。私もやらかし回数を増やしたくないので、子供達とお話しする際は要注意だね。
「もちろん、わかっています」
「シャーロット、エルサ、間者に関しては、僕に任せてよ‼︎ こっ酷くお仕置きしてから、警備の人に引き渡しておくよ」
カムイ1人に任せていいものか心配だけど、ここはカムイを信用しよう。
さあ、パーティーイベントに挑みましょうか‼︎
○○○
現在、私達はパーティーが催される会場入口にいる。扉が閉じられているため、中にいる人達は、まだ私達を認識していない。登場順としては、勇者オーキスと聖女代行フレヤ、次に英雄マリルと聖女である私だ。お父様達は、既に会場内にいる。
「お嬢様…緊張…していませんか?」
そう言ったマリル自身が、ガチガチに緊張しているんですけど?
「私は大丈夫。ハーモニック大陸で、色々と経験済だから」
「そう…でしたね」
そろそろ、会場入りかな。既に、国王陛下達が入場し、私がハーモニック大陸でどういった経験をしてきたのかを軽く説明し、場を温めてくれている。
『……このように、聖女シャーロットは転移されたハーモニック大陸においても、種族など関係なく、聖女としての役割を果たしていたのだ。さあ、勇者オーキスや聖女代行フレヤ、英雄マリルと共に入場してもらおう』
私達の目の前の扉が開いた。扉の先には、急遽セッティングされたものとは思えない程の煌びやかな施しがされていた。天井に取り付けられた豪華なシャンデリア、壁となる内装のデザインも、落ち着いた色彩を使用している。基本、立食形式のスタイルであるものの、会場の1ヶ所には座って話せるスペースも設けてある。
私達が会場内に入ると、大勢の人達からの視線を感じた。周囲を見渡すと、大勢の貴族達が私を迎えてくれている。そこには、リーラとマーサ様の姿もあった。リーラと視線が合うと、彼女が私に手を振ろうとしていたので、マーサさんに止められた。私は、笑顔で返しておいた。こうやって貴族の視線を探ると、みんなは確かにこっちを見ているんだけど、子供達は私を、大人達の殆どは隣にいるマリルを見ている。大人達の何人かを構造解析すると……
とある伯爵家の当主(43歳、男性)→○
『まさか…磨けば宝石になると思っていたが…ここまでのレベルとは…長男も彼女を見ている。……絶対に嫁として迎え入れよう‼』
とある侯爵家の当主(50歳、男性)→○
『良い! 私のタイプだ! しかし、私には妻もいるし、公爵家を後ろ盾とする彼女を愛人にするわけにもいかん。せめて、息子達の誰かが……結婚してるし無理か。せめて…せめて…顔だけは覚えてもらおう』
とある子爵家の長男(17歳、男性)→○
『マリルさん、綺麗だ。俺は子爵令息、婚約者もいない。彼女は英雄だけど男爵……ダメ元で、話しかけてみよう』
とある侯爵家の長男(23歳、男性)→×
『いくら強かろうとも、誰かを人質にすれば、簡単に崩れる。あの女を俺の愛人にしてや……』→気絶
なんとまあ、大人達は主役そっちのけで、マリル争奪戦が水面下で進行中だよ。翌日以降、マリルの見合い話が殺到するかもしれない。不届き者が5名いたので、威圧で気絶させ、早々に退場してもらった。突然の気絶で、周囲の関係者も驚き、目を白黒させていたけど、マリルに悪さをする奴は、私が許さん‼︎
さてさて、子供達はどうかな?
とある子爵家の長男(9歳、男性)→○
『シャーロット様、可愛い。父さんは今後のためにも、彼女と親密になっておけと言っていたけど、親とか関係なく、普通に彼女とお友達になりたい』
とある伯爵家の次女(8歳、女性)→○
『あれが…聖女様。イザベルのような悪い子なのかな? シャーロット様の噂は、どれも凄いものばかりで、本当かどうか怪しい。そういえば、お父様が《人の価値を知りたい時は、噂を魔に受けるな。自分で話しかけ判断しなさい》と言っていたわ。……よし、私も勇気を出して、シャーロット様に話しかけてみよう』
とある侯爵家の三男(11歳、男性)→×
『へえ、可愛いな。今のうちに友達として付き合っておくか。何か弱みでも握れれば、公爵家の娘であっても、俺のいいなりに……』→気絶
殆どの子供達が良い子ばかりなんだけど、子供の時点でよからぬ事を考えているお馬鹿さんがいる。そういった邪な子供達とお付き合いするつもりはありません。2名の子供達には退場してもらいましょう。せっかくのパーティーを台無しにしたくないからね。多分、国王様達は気絶したメンバーを見たらその理由も把握してくれると思う。
私達は、国王陛下がおられる場所へと赴いた。すると、陛下が私に拡声魔法の付いた魔導具を渡してきた。形状が、地球のマイクとそっくりだ。私自身が、出席してくれた人々のためにも、きちんと挨拶しないといけないね。
「皆様、本日は私、シャーロット・エルバランの帰還記念パーティーにお集まり頂き、誠にありがとうございます。今回の帰還、国王陛下やお父様であるエルバラン公爵にお伝えする手段がなかったので、皆様を驚かせてしまいました。私はイザベルの手によって、ハーモニック大陸へと転移されましたが、大陸に住む魔人族の印象は、こちらで教わったことと正反対のものでした。彼らと協力し、いくつかの国を救ったことで、私は転移石を貰い、エルディア王国に戻って来れました。これからは聖女として、全ての人々を救済するべく、生きていく所存です。まだ8歳の若輩者ですが、旅の過程で、聖女としてここまで強くなれました。【リジェネレーション】」
私は、王城全体に回復魔法【リジェネレーション】を施した。これで、全員の体力が少しずつ回復していくだろう。
「パーティーを主催してくださった国王陛下、そして会場内の内装や料理を準備して下さった方々、この魔法で体力も少しずつ回復していくでしょう。皆様、今日のパーティーを楽しんで下さいね」
ふふふ、リジェネレーションの効果で、私が転移前よりも、遥かに強くなっていることを理解してもらえただろう。ただ、威圧とかは一切していないので、どの程度強いのかまではわからないだろう。それにしても、静かだ。私の挨拶、もう終わっているんですけど? あ、誰かがパチパチと拍手をしてくれた。すると、それに連動してか、拍手の音量が次第に大きくなってきた。
おお、いつの間にか会場全体が震える程の大音量の拍手が響いている。そして、拍手が次第に小さくなっていき、聖女帰還記念パーティーが始まった。
○○○
次回更新日は、8・18(土)となります。
とりあえず、私とフレヤはお風呂に入った後、マリル率いるメイド軍団達によって、着せ替え人形状態となっている。オーキスは別室にて、お着替え中である。
「はあ~~、シャーロット様もフレヤも可愛いから、どの服を着てもお似合いですよ‼︎」
マリルの一言に、周囲にいるメイド達が全員頷いている。こうなったうちのメイド達の勢いは、誰にも止められない。私もフレヤも為すがままだ。でもさ、マリルさんや、あなたは大事なことを忘れていますよ。今は、まだ言わないでおこう。フレヤを見ると軽く頷いてくれたので、私が何を言いたいのかわかっているようだ。
「シャーロットの部屋、色んな服があるよね。ファッションて言うんだっけ? そこは、大陸が違っても共通しているんだね。僕達魔物は、こんな動きにくそうな服を絶対着ないよ。ちょっとおデブなホブゴブリンや筋肉ムキムキのゴブリンナイト達も、み~んな薄い布を纏っているだけだもん」
カムイの一言に、全員が可愛いフリル付きドレスを纏った筋肉ゴブリンを想像してしまい、顔が引きつってしまった。
「カムイ、そういうことはお着替え中に言わないでね」
私の意見に、全員が激しく同意した。こういった楽しい会話を続けること1時間、私達のお着替えは終了した。私はライラック色のドレス、フレヤは薄い水色のドレスだ。どちらも、聖女と聖女代行に相応しい清楚なデザインとなっている。そして、私達は子供だけど、パーティー用のお化粧が軽く施された。軽くとはいえ、プロに任せているため、私もフレヤも、『これが本当に私か?』と思い、お互い何度も鏡を見てしまった。
「シャーロット様、フレヤ、これで終了です。パーティーまでは、まだ余裕もありますので、ゆっくりと寛いでいて下さい」
マリルは、まだわかっていないようだ。そろそろ教えてあげましょう。
「何を言ってるの? まだ、肝心な人が終わってないよ? ねえ、フレヤ?」
「はい、まだ終わっていません。皆さんも、そう思いますよね?」
マリルを除いたメイド達が満面の笑みで頷いてくれた。皆、私とフレヤの意図を察してくれたのか、全員がマリルを見た。私達からの視線を感じたマリルは……
「オーキス……は隣で準備していますし……もうこれで終わりですよ。あ…お飲物を…」
マリル、自分でもわかっているくせに、この話題から逃げようとしている。ごめんね、逃すわけにはいかないの。
「あなただよ、マリル」
「え…あ…あはは、何を仰っているんですか? 私はただのメイドですよ? フレヤは聖女代行、オーキスは勇者ですから何の問題もありませんが、私には何も……」
その時、部屋の入口が開き、お母様が入ってきた。
「あらあら、シャーロットもフレヤも可愛いわよ。ふふ、ようやくシャーロットを皆に紹介できるわ。そして、シャーロットの『専属メイド』兼『英雄』のマリルも、大勢の貴族達に紹介しないといけないわね~」
「エ、エルサ様!? 何を言っているんですか‼︎ 私は英雄なんかじゃ……」
「ふふふ、マリル、諦めも肝心よ。あなたはイザベルを捕縛した。それに、精霊様から教わった技術を冒険者達に無償で教えてあげたわ。そのおかげもあって、魔物の軍勢が王都に押し寄せることもなかった。これら以外にも、魔法やスキル関連で次々と実績をたてているわね。そして…極め付けが16日前、エルディア王国と隣国ミルバベスタ王国の国境付近に位置する山岳地帯に突如出現したネクローシスドラゴンを討伐したこと」
ネクローシスドラゴンを討伐!?
そんな話、聞いてないよ‼︎
「お母様、ネクローシスドラゴンって、Aランクの魔物ですよね!? しかも、周囲にいる者達を容赦なく腐らせていく、厄介極まりない魔物ですよ!」
凶悪な魔物全般に関しては、5歳の頃から精霊様に教わっている。
「あら、さすがはシャーロットね。マリルったら、シャーロットに話してなかったの?」
マリル~~、何故そんな大事件と大偉業を私に教えないかな~~。
「あ…いえ…シャーロット様の帰還のお祝いこそが最優先事項なので……」
マリルの現在の基本能力値はAランク下位に近い。覚えているスキルの数こそ少ないものの、基本スキルが高レベルだから、全力を出せばSランクの力量を発揮できる。それでもドラゴン相手だと、かなり厳しいと思うけど……それに突如出現したという言葉も引っ掛かる。パーティーが終わってから、詳細を聞いてみよう。
「それに、私1人では倒せませんでした。精霊様から教わった知識と両国の冒険者の方々が協力してくれたからこそ、奴を滅ぼせたのです」
「ふふふ、確かにその通りだけど、肝心のあなたがいなければ、今頃両国のどちらかが滅亡していたわよ。シャーロット、マリルはね、無属性の最上級魔法【アポトーシス】を使用して、ネクローシスドラゴンを内部から腐らせて討伐したのよ」
無属性魔法【アポトーシス】‼︎
生物の体内には、臓器が存在する、臓器は組織で構成され、組織は細胞で構成されている。この理論は、地上に棲む魔物にも通用する。ただ、人と異なり、細胞成分は魔素や瘴気で作られた器官で構成されている。この魔法は、細胞の核内にあるDNAや魔素や瘴気といったものを段階的に分解していく魔法だ。見た目は地味だが、威力は強大である。ただし、欠点がある。術者の力量によって、分解速度が大きく異なるのだ。そのため、生物が絶命するまでの時間に、差が生じてしまう。ネクローシスドラゴンが腐敗の力を持っていようとも、生物である以上、基となる場所が壊れてしまえば死んでしまう。
「マリルが、【アポトーシス】でネクローシスドラゴンを少しずつ弱らせていく。魔法の効果が得られるまで、時間がかかるだろうから、冒険者達がその間を互いにカバーし合った?」
「シャーロット、正解。昔、あなたがマリルに教えたそうね」
「はい、『力が足りない場合、強大な魔物を倒すにはどうしたらいいのか?』と精霊様に質問したところ、この魔法を教わりました」
6歳後半くらいの時かな? 原理自体は、前世の知識を駆使することで、概ね理解できた。だから、その原理ごとマリルに教えたんだよ。『扱いを間違えば、周囲の人達も巻き込むから、習得できたとしても使用禁止ね』と言った覚えがある。当時の私もマリルも、最弱に近い弱さだったから習得できなかった。今のマリルなら、習得できるし制御も可能だ。
「そのおかげで、両国とも救われた。しかも、腐ったのは肉だけで、ネクローシスドラゴンの皮や鱗や骨格はほぼ無傷、国境付近ということもあって、公平を喫するため、得られた成果は折半されたわ。マリル自身、両国の国王陛下から褒賞も頂いたわね。そして、エルディア王国ではこれまでの実績を踏まえて、マリルは【男爵】の地位を貰えたのよ~」
「男爵!? 女性で爵位を貰える人は、極僅かと聞いていますよ!」
なんというビッグニュース!?
知らぬ間に、マリルが貴族になっていたとは……彼女の場合、まだ若いし、これからどんどん実績を積み上げていくと考え、一番最下位の地位を与えたんだ。
「ふふふ、マリルは名実ともに、【英雄】になったなのよ~。そんな英雄が、聖女帰還のパーティーを欠席したら、どうなるかわかるかしら~?」
お母様の顔、微笑んではいるけど、身体全体から【参加しろ】というオーラが滲み出ている。そういえば、帰還パレードの時、マリルは護衛という形で参加していたよね。
「エルサ様、私の地位は男爵です。通常……王家主催のパーティーは伯爵家以上、もしくは招待状を貰えた者にしか、参加資格が……」
「今回は、行方不明とされていた聖女の帰還を祝うための緊急パーティーよ。聖女の専属メイドで、英雄でもあるあなたが不参加になったら、エルバラン公爵家の品位が疑われるわ。いい加減、諦めなさい」
うん、お母様、笑顔だけど、ちょっぴり怒っている。
「あ…そうか。……エルサ様、申し訳ありません。自分のことしか考えていませんでした」
この様子だと、まだマリルは貴族教育を受けていないんだね。
「マリルが貴族の仲間入り……私にそんな大事なことを言わないなんて…」
「シャーロット様……申し訳ありません。パーティーに参加致します」
やっと、観念したか。
マリルが参加したくない気持ちもわかるんだけどね。
マリルは、普通の生活を望んでいる。一般的な平民男性と知り合い、結婚して幸せな家庭を築いていくのが、夢だと言っていた。でも、貴族で英雄になった以上……絶対に無理だ。そこまでの功績をあげたら、多分……まあパーティー中にわかるだろう。
「マリル、これからは私と一緒に淑女教育を受けるべきだよ」
「はい……落ち着いたら教育を受けます」
しゅんと項垂れるマリルも可愛い。彼女は、これまで精霊様から身につけた知識を忘れないよう、基礎訓練を入念にやりながら勉強を繰り返してきた。それがこの数ヶ月で突然開花され、異常な強さを身につけ、多くの実績を打ち立ててしまった。彼女自身の感覚が、平民から抜け切れていないのも仕方のないことだ。だから、他者が無理矢理にでも、【マリルが貴族になったこと】をわからせてあげないといけない。
現在の彼女の身につけている教養、マナー、礼儀作法は、メイド教育によるものだ。でも、貴族とメイドとなると、教育概念が別物である。初めは違和感を覚えるかもしれないけど、マリルなら1ヶ月もかからず、基本をマスターするかもしれない。
「これで、マリルの覚悟も決まったね。皆さん、マリルをとことん綺麗にしてあげましょう‼︎」
マリルは戸惑いながらも、メイド達に連行されていった。パーティー中、マリルは大勢の貴族かつ未婚の男性達に声をかけられるだろう。
マリルが出て行ってから数分後、私達の部屋にオーキスとお兄様が入ってきた。お兄様は私の姿を確認すると、感動してガチ泣きしてしまった。オーキスはというと、私を見た瞬間、ガチッと固まった。ていうかさ、もう少しフレヤを見てあげてよ。お兄様の号泣を想定していたのか、メイド達はお兄様を隣の部屋へと連行し、オーキスだけが佇むことになった。その後、20分程でお兄様とも合流し、ハーモニック大陸にいるザウルス族の話で盛り上がった。そして、王城に出発する30分程前に、マリルが部屋に入ってきた。あまりのマリルの変貌ぶりに、部屋にいた私達は押し黙ってしまった。
マリルの顔には化粧が施されいるのだけど、普段の薄化粧と違い、彼女の長所を生かしまくったメークとなっていた。そして、そのメイク術と着用している白赤色のドレスのデザインが、マリルの雰囲気とあいまくっているのだ。つまり一言で言うと、【超絶美人の英雄様】が、私たちの目の前にいるのだ。マリル自身は豪華なドレスを着慣れていないためか、ソワソワしている。
……多分、パーティーの主役の座を、途中でマリルに奪われるかもしれない。
出発時間となったので、私達(お父様を除いたエルバラン一家、カムイ、オーキス、フレヤ、マリル)は2台の馬車に乗り王城へと出発した。公爵家の馬車だから、内装も豪華だ。私の馬車には、お母様とカムイがいる。
「お母様、出席者の中に、リーラはいますか?」
「ふふふ、勿論出席しているわ。あなたが帰還したその日にマーサに知らせたもの。ただ、出席するのは、リーラとマーサの二人だけよ。マクレン伯爵も来たがっていたけど、どうしても外せない用事があってね」
それは仕方ないよ。貴族の当主ともなると、1ヶ月以上先のスケジュールがびっしりと押さえられているだろう。今回のパーティー自体が緊急に催されたものだから、参加できる者は限られるはずだ。参加者が不鮮明な分、主催する王族側も大変だろう。本来ならば、こういったイベントは数ヶ月前から少しずつ動いていくものだから。
「リーラとマーサ様には会えるのですね。楽しみです‼︎」
「今回のパーティーはあなたに合わせているから、同年代の子供達も少数参加しているわ。子供達とお話しする際、ハーモニック大陸や魔人族のことばかり聞かれるだろうけど、内容をよく考えてから話すようにね。帝王や神の件は、言っちゃダメよ」
お母様の顔が真剣だ。私もやらかし回数を増やしたくないので、子供達とお話しする際は要注意だね。
「もちろん、わかっています」
「シャーロット、エルサ、間者に関しては、僕に任せてよ‼︎ こっ酷くお仕置きしてから、警備の人に引き渡しておくよ」
カムイ1人に任せていいものか心配だけど、ここはカムイを信用しよう。
さあ、パーティーイベントに挑みましょうか‼︎
○○○
現在、私達はパーティーが催される会場入口にいる。扉が閉じられているため、中にいる人達は、まだ私達を認識していない。登場順としては、勇者オーキスと聖女代行フレヤ、次に英雄マリルと聖女である私だ。お父様達は、既に会場内にいる。
「お嬢様…緊張…していませんか?」
そう言ったマリル自身が、ガチガチに緊張しているんですけど?
「私は大丈夫。ハーモニック大陸で、色々と経験済だから」
「そう…でしたね」
そろそろ、会場入りかな。既に、国王陛下達が入場し、私がハーモニック大陸でどういった経験をしてきたのかを軽く説明し、場を温めてくれている。
『……このように、聖女シャーロットは転移されたハーモニック大陸においても、種族など関係なく、聖女としての役割を果たしていたのだ。さあ、勇者オーキスや聖女代行フレヤ、英雄マリルと共に入場してもらおう』
私達の目の前の扉が開いた。扉の先には、急遽セッティングされたものとは思えない程の煌びやかな施しがされていた。天井に取り付けられた豪華なシャンデリア、壁となる内装のデザインも、落ち着いた色彩を使用している。基本、立食形式のスタイルであるものの、会場の1ヶ所には座って話せるスペースも設けてある。
私達が会場内に入ると、大勢の人達からの視線を感じた。周囲を見渡すと、大勢の貴族達が私を迎えてくれている。そこには、リーラとマーサ様の姿もあった。リーラと視線が合うと、彼女が私に手を振ろうとしていたので、マーサさんに止められた。私は、笑顔で返しておいた。こうやって貴族の視線を探ると、みんなは確かにこっちを見ているんだけど、子供達は私を、大人達の殆どは隣にいるマリルを見ている。大人達の何人かを構造解析すると……
とある伯爵家の当主(43歳、男性)→○
『まさか…磨けば宝石になると思っていたが…ここまでのレベルとは…長男も彼女を見ている。……絶対に嫁として迎え入れよう‼』
とある侯爵家の当主(50歳、男性)→○
『良い! 私のタイプだ! しかし、私には妻もいるし、公爵家を後ろ盾とする彼女を愛人にするわけにもいかん。せめて、息子達の誰かが……結婚してるし無理か。せめて…せめて…顔だけは覚えてもらおう』
とある子爵家の長男(17歳、男性)→○
『マリルさん、綺麗だ。俺は子爵令息、婚約者もいない。彼女は英雄だけど男爵……ダメ元で、話しかけてみよう』
とある侯爵家の長男(23歳、男性)→×
『いくら強かろうとも、誰かを人質にすれば、簡単に崩れる。あの女を俺の愛人にしてや……』→気絶
なんとまあ、大人達は主役そっちのけで、マリル争奪戦が水面下で進行中だよ。翌日以降、マリルの見合い話が殺到するかもしれない。不届き者が5名いたので、威圧で気絶させ、早々に退場してもらった。突然の気絶で、周囲の関係者も驚き、目を白黒させていたけど、マリルに悪さをする奴は、私が許さん‼︎
さてさて、子供達はどうかな?
とある子爵家の長男(9歳、男性)→○
『シャーロット様、可愛い。父さんは今後のためにも、彼女と親密になっておけと言っていたけど、親とか関係なく、普通に彼女とお友達になりたい』
とある伯爵家の次女(8歳、女性)→○
『あれが…聖女様。イザベルのような悪い子なのかな? シャーロット様の噂は、どれも凄いものばかりで、本当かどうか怪しい。そういえば、お父様が《人の価値を知りたい時は、噂を魔に受けるな。自分で話しかけ判断しなさい》と言っていたわ。……よし、私も勇気を出して、シャーロット様に話しかけてみよう』
とある侯爵家の三男(11歳、男性)→×
『へえ、可愛いな。今のうちに友達として付き合っておくか。何か弱みでも握れれば、公爵家の娘であっても、俺のいいなりに……』→気絶
殆どの子供達が良い子ばかりなんだけど、子供の時点でよからぬ事を考えているお馬鹿さんがいる。そういった邪な子供達とお付き合いするつもりはありません。2名の子供達には退場してもらいましょう。せっかくのパーティーを台無しにしたくないからね。多分、国王様達は気絶したメンバーを見たらその理由も把握してくれると思う。
私達は、国王陛下がおられる場所へと赴いた。すると、陛下が私に拡声魔法の付いた魔導具を渡してきた。形状が、地球のマイクとそっくりだ。私自身が、出席してくれた人々のためにも、きちんと挨拶しないといけないね。
「皆様、本日は私、シャーロット・エルバランの帰還記念パーティーにお集まり頂き、誠にありがとうございます。今回の帰還、国王陛下やお父様であるエルバラン公爵にお伝えする手段がなかったので、皆様を驚かせてしまいました。私はイザベルの手によって、ハーモニック大陸へと転移されましたが、大陸に住む魔人族の印象は、こちらで教わったことと正反対のものでした。彼らと協力し、いくつかの国を救ったことで、私は転移石を貰い、エルディア王国に戻って来れました。これからは聖女として、全ての人々を救済するべく、生きていく所存です。まだ8歳の若輩者ですが、旅の過程で、聖女としてここまで強くなれました。【リジェネレーション】」
私は、王城全体に回復魔法【リジェネレーション】を施した。これで、全員の体力が少しずつ回復していくだろう。
「パーティーを主催してくださった国王陛下、そして会場内の内装や料理を準備して下さった方々、この魔法で体力も少しずつ回復していくでしょう。皆様、今日のパーティーを楽しんで下さいね」
ふふふ、リジェネレーションの効果で、私が転移前よりも、遥かに強くなっていることを理解してもらえただろう。ただ、威圧とかは一切していないので、どの程度強いのかまではわからないだろう。それにしても、静かだ。私の挨拶、もう終わっているんですけど? あ、誰かがパチパチと拍手をしてくれた。すると、それに連動してか、拍手の音量が次第に大きくなってきた。
おお、いつの間にか会場全体が震える程の大音量の拍手が響いている。そして、拍手が次第に小さくなっていき、聖女帰還記念パーティーが始まった。
○○○
次回更新日は、8・18(土)となります。
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