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《シャーロットが帝王となった場合のifルート》第2部 8歳〜アストレカ大陸編【ガーランド法王国
シャーロット、フレヤにお仕置きされる
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現在、私達は全ての仕事を終わらせ、ギルド憩いの場にてホッと一息付いている。
「シャーロット、フレヤ、お疲れ様。冷たくて甘~いお飲物をどうぞ」
「フェアリさん、ありがとうございます」
私達がお礼を言い、甘く爽やかなジュースを飲んでいると、1人の男性がこちらにやって来た。髪がボサボサ、無精髭が生えていて、何故か白衣を着ていた。風貌から、何処かのマッドサイエンティストのようにも見える。
歳は、フェアリさんと同じ25歳前後かな?
「聖女よ、自己紹介が遅れてすまない。私は、冒険者ギルド本部のギルドマスター、ユレアム・テルサドスだ」
この人がギルドマスター!?
若いよ!
これまで出会ってきた人達と、タイプが全然違う!
「エルバラン公爵家長女、シャーロット・エルバランです。フェアリさんにも言いましたが、敬語とか不要です。いつも通りに、話してください」
「フェアリリーヌから聞いてはいたが……了解した。というか、始めから普段通りの喋り方だ」
患者を治療中、数多くの視線に晒されていたけど、その中に私の全動作を静かに見つめるねっとりとした2つの視線を常に感じていた。1つは、ユレアムさんだったのか。
「ところで、聖女よ。この女性の名前はフェアリリーヌだ。以後、そう呼ぶように」
ユレアムさんがそう言った途端、側にいたフェアリさんがきつい目付きとなり、彼を見た。
「フェアリでいいのよ! シャーロット、私はこの名前と容姿のせいで、頻繁に貴族令嬢と間違われてきたの。だから、フェアリと呼んでね。あ、ちなみにこの男は、私の夫よ」
夫~~~~!?
ユレアムさんの見た目がマッドサイエンティスト、フェアリさんの見た目が気品溢れる貴族令嬢だ。
お似合いの夫婦……という感じがしない!
「フェアリリーヌの方が、呼びやすくていいと思うのだが? な、フェアリリーヌ!」
「ユレアム~、あんたはわかってて連呼しているでしょ?」
あ、でも相性は良さそうだ。
2人のやりとりが、夫婦漫才のように感じる。
「まあ、そんなことは、どうでもいい。聖女よ、怪我人を治療して頂き感謝する。診断速度、治療速度、8歳児とは思えないほどのレベルの高さだったぞ」
「あのね……まあいいわ。ユレアムとあなたの治療をずっと見ていたけど、フレヤの時以上に、怪我人に対しての接し方は見事だったわ。私とユレアムは、今回の重篤患者と重症患者についての情報を、前もって医者から聞いていたの。特に、4人の重篤患者については、魔法でも薬でも手の施しようがないレベルと診断されていた。それなのに、あなたは4人を同時に診察し、病名を的確に当てた。ううん、それだけじゃない。私達やフレヤですら把握していなかった身体中に散らばる病変部位全てを正確に認識し、最上位魔法【マックスヒール】を病変部位だけに集中させ、回復能力を最大限に高めて治療を成功させた。おそらく、あなた独自のユニークスキル、基本スキル、魔法全てを併用させることで、4人同時に治療できたのね。凄い技術力だわ。それも、ハーモニック大陸の魔人族達に教わったの?」
そこまで見抜いているとは……
フェアリさんの観察力が半端ないんですけど!!
「はい。ダークエルフの村が転移場所の近くにありましたから、そこで技術面を多く学ばせてもらいました。あとはフェアリさんの言う通り、ユニークスキルの力も大きく影響しています」
「ふふ、私の推理、当たっていたようね。あなたの持つ様々なスキルと回復魔法の相乗効果で、あの正確無比な診断と治療速度を生み出したわけか。惜しいな~、ノーマルスキルなら教えてほしかったけど、ユニークスキルなら習得できないわね」
すいません。
私と同等速度は無理でも、ある程度近づけることは可能なんです。
「フェアリよ、私の見立てでは、診断速度に関しては聖女に追いつけんだろうが、回復速度に関しては、追いつける見込みありとみた」
嘘、わかるの!
「ホント! ユレアム、後で教えなさいよ!」
「ああ、俺の仮説を教える。あとで検証しよう」
この人達の話し方、研究者と似ている。もしかしたら魔力波に気づいて、スキルを入手するかもしれない。ギルドマスターだから、習得しても悪用することはないと思うけど、一応気にかけておこう。
2人が話し合っていることだし、私達は休憩させてもらおう。
「ふう~フレヤ~、仕事を終わらせた後の冷たい飲み物は、格別に美味しいね~」
「はい。今回の仕事で、シャーロット様の持つ魔力量と魔法技術が、非常に高いレベルであることを、皆にわかってもらえました。そのおかげもあって、ギルド職員も冒険者達もここに訪れた人達も、シャーロット様を【真の聖女】として認めてくれました。私の目的も達成できて良かったです」
【聖女シャーロット・エルバラン】、この名前だけは大陸中に広まっている。しかし、皆は、私自身の力がどこまで強いのかを知らない。フレヤもここにきた当初、かなり懐疑的に見られていたらしい。でも、彼女の患者に対する姿勢が評価され、【聖女代理】として認められた。今回、私は【真の聖女】として、国民からも認められたんだね。
まったりと休んでいると、話し終えたユレアムさんが、またこっちに来た。
「そうだ。まだ、言いたいことがあった。フレアの魔力量にも驚いたが、本物の聖女であるシャーロットの魔力量は凄まじいな。あれだけの人数を治療しても、汗1つかかんとは」
あ…魔力量か~、正確な数値を言ってもさすがに信じてもらえないだろうから、適当に誤魔化そう。
「それは私も思ったわ。普通、あれだけの人数を治療すると、精神的疲労で回復魔法にも乱れが生じるもの。にも関わらず、一切の乱れもなく、淡々と作業をこなしていった。……それだけハーモニック大陸での冒険が過酷だったことを意味するわね」
あはは、私の魔力量は膨大にありますからね。今日の人数くらいなら、使ったうちに入りませんよ。既に、MP自動回復スキルで満タンになったしね。
「かなり過酷な旅でしたが、全ては魔人族のおかげです。彼らの協力がなければ、私は間違いなく死んでいました」
「魔人族…か。これまでに見たことはないが、今後出会う可能性もある。応対には気をつけよう」
「そうね。もしかしたら、ランダルキア大陸を経由して、この大陸に隠れ住んでいるのかもしれない。各街の冒険者ギルドに、友好的に応対するよう通達しておきましょう」
「ありうるな、通達の方は任せたぞ」
ユレアムとフェアリさん、観察力や考察力などの力が一級品だ。ただ、隠れ魔人族達は、おそらく変異しているだろうから、冒険者達が出会っても気づかないかもしれない。
「フレヤ~シャーロット~、やっと仕事を終えたんだね。もう待ちくたびれたよ。2人が仕事している間、女性陣が僕を見るやいなや、抱きついてくるんだ。僕がシャーロットの従魔であることを教えると、みんながシャーロットを羨ましがっていたよ」
あ、そういえば仕事に夢中になっていて、カムイのことをすっかり忘れていた。
「カムイが可愛いから、抱きついてくるんだよ」
「そこにいるフェアリにも、ユレアムにも抱きつかれたよ」
フェアリさんが、じっとユレアムさんを見た。
「な…なんだ? 何故、私を見る?」
ユレアムさんが、ドギマギした表情となっている。男性陣にも、カムイを抱きしめたいと思う人はいるだろうけど、まさかギルドマスターであるユレアムさんが、既に実行していたとは驚きだ。
ハーモニック大陸では、カムイにそこまでの感情を抱く人はいなかった。アッシュさんに理由を聞いたら…
『ドラゴンは、仲間意識が非常に強いんだ。仲間の1人が危険に陥った場合、理由はわからないけど、遠く離れたところでも必ず助けにやってくる。もし、その仲間が死んでいた場合、討伐した人物の臭いを嗅ぎ分けて、ドラゴンが討伐者に対し、大軍で襲いかかってくる場合もある。だから、ライトニングドラゴンの幼生体であっても、たとえ抱きしめたいくらい可愛くても、怒らせてはいけないから迂闊に触れないんだよ』
と教えてくれた。カムイの場合、生まれてくる時点で危険だったけど、遠く離れすぎていたせいもあって、親も気づかなかったと考えるべきかな。
ここエルディア王国では、ドラゴン自体をまずお目にかかれない。王都においても、従魔となっているライダードラゴンくらいを見かける程度だ。野生のドラゴンは、アストレカ大陸内に勿論いるけど、皆賢く、滅多に人に迷惑をかけないし、人里に下りてくることもない。そのため、ドラゴン系の魔物は討伐対象に入っていない。というか力量が違いすぎて、討伐対象に入れた瞬間、ドラゴンの軍勢が襲ってくるかもという恐怖から、どの国もドラゴンの棲む山一帯に手を加えていない。一応、ワイバーンもドラゴンの部類に入るのだけど、【性格が乱暴、人々に迷惑をかける】という条件に合致する場合のみ、人間はワイバーンを討伐対象に入れている。
ハーモニック大陸と違って、ここではドラゴンの生態について、あまり調査されていない。そのため、仲間意識が強いとか一切知らない。だから、人々はライトニングドラゴンの可愛い幼生体でもあるカムイを抱きしめたいがために、集まってくるんだね。
「あんた、まさかとは思うけど、可愛いものには手当たり次第に抱きついていないわよね?」
「それは犯罪だろ! そんなことをするか! 私に、そんな趣味はない! 皆がカムイを抱きしめているから、私も気になっただけだ」
もしかして、ユレアムさんも可愛いものが好きなのかな?
「シャーロット、フレヤ、これからどうするの?」
時間は夕方4時か。もう少し、ここで寛ぎたいな。
「カムイ、掲示板を見ようか? ここでの討伐依頼が、どんなものかを知っておきたい」
「いいね! ハーモニック大陸のジストニス王国にも、冒険者ギルドがあったもんね。僕も違いを知りたいよ! フェアリ、見てもいいかな?」
「それは構わないけど、見るだけよ?」
フェアリさん、聖女が単独で魔物討伐なんかしませんよ……みんなが見ていない場所で、勝手にするかもだけど。
私達がフェアリさんとユレアムさんと共に、大きな掲示板に到着すると、F~Aランクに別れて、依頼が張り出されていた。ただ、Aランクのところは何も張り出されていないけど、【マリル・クレイトン専用】となっていた。
「マリル専用? まさか、Aランクはマリルだけ?」
「聖女よ、人間の能力限界は250だ。Aランクの指標でもある能力平均値400を超えている者は、この国には現状【マリル・クレイトン】しかいない。この私ですら、340前後だ」
エルディア王国のAランク冒険者はマリルだけか。能力限界値のことを考慮すると、アストレカ大陸内にいるAランク以上の冒険者は、10人もいないかもしれない。
「あれ? シャーロット、あっちにも掲示板があるよ。各領地の被害状況だって」
「カムイよ、ここはギルド本部だからな。各領地において、大きな事件が発生した場合、情報を共有すべく、ああやって貼り出しているのだ」
エルバラン領となる区画には、何も貼り出されていなかった。大きな事件が起こっていないということだ。あれ? リーラの住むマクレン領には、一枚の大きな紙が貼り出されていた。日付は、昨日のものだ。記事の一部を読むと……
【人や魔物が海中から多数出現し、船を襲っている。魔物達は砂浜や岩場などから上陸し、街にいる人達を手当たり次第に襲っているため、怪我人が続出している。幸いF~Eランクであるため、街にいる冒険者だけで撃破可能となっている。大きな被害は出ていないものの、何故人が海から現れるのかは不明】
この事件、リーラから聞いていたものと同じ内容だ!
マクレンの領の被害は微々たるものだけど、人が海から出現する事自体がおかしい。
「ユレハムさん、このマクレン領に記載されている魔物の出現、明らかにおかしいですよね」
「その事件は4日前に起きたばかりで、詳細なことはわかっていない。おそらく、現在も調査しているところだろう。マクレン領にいる冒険者だけで解決できない場合、救援要請が送られてくるはずだ。現状、わかっているのは魔物と人が海の中から出現し、手当たり次第に人や動物を襲っているくらいか。そのため、漁師達は海に出られん。この【人】という言葉も、その者に対して使用していいものか、激しく微妙なところだがな」
同意見です。
「人型のゾンビ? もしくは、人の姿をした新種の魔物ですか?」
「それはわからん。こういった被害は、マクレン領だけではない。国内において、計5ヶ所の領で発生している」
改めて全ての領を見渡すと、確かに5ヶ所の領内にて、山・海・森などから、凶暴な人、動物、魔物が出現し、対応に追われているようだ。マクレン領同様、まだ被害も少ない。
「こういった現象は、過去にもありましたか?」
「今回が初めてだな。自然発生なのか、人為的に齎されたものなのか、どちらにしても原因を解明せねばならん」
うーん、タイミング的に考えても、隠れ魔人族が関与していると思うけど、彼らの目的が、現状わからない。4種族全てを滅ぼすつもりならば、これは序の口だろう。他国の状況も気になるところだ。
「しばらくは、情報収集に徹するのですか?」
「ああ、我々ギルド本部が情報に踊らされてはいかん。各領の情報を収集し、共通点がないかを探し出さねば。最悪の場合、マリルやシャーロットを動かす」
私とマリルは切り札か。リーラは昨日の時点で、マクレン領に到着している。落ち着いたら別邸の大型通信機を使って、状況を聞いてみよう。
「現在、私はエルバラン家別邸に住んでいますが、近日中に教会に移動すると思います。何かあった場合、教会に連絡を入れて下さいね」
「わかった。ガーランド法王国の動向も気になるから、シャーロットとフレヤの警備態勢も強化されるだろう。2人とも、出かける際は充分用心するように」
「「はい」」
私達はギルド職員と周辺にいる冒険者の人達に、【皆さん、今後とも、宜しくお願いします】と軽い挨拶を言ってから、冒険者ギルドを出て馬車の中に入った。
「シャーロット、さっきの事件だけど、何か知ってるの?」
フレヤは私の様子を見て、何か気づいたのかな? 彼女ならば、いずれヘンデル枢機卿から、あの情報も伝わるだろうし言ってもいいと思うんだけど、私の信頼性がダウンするかもだから、それとなく匂わせておこう。
「うん、まあね。ただ、最近得たばかりの情報で、確証も得られていないから話せないんだ。もう少ししたら、ヘンデル枢機卿からフレヤに話が伝わると思う。それまで待っていてね」
「……イザベルの事件をキッカケにしたものかな?」
まあ、そう考えちゃうよね。
「それは、まだわからない。そもそも、あの事件はアストレカ大陸内の全ての国々において、大きな混乱をもたらした。その混乱に乗じて、新たな事件を起こそうとしているだけだから、フレヤは気にしちゃダメ」
「う、わかってはいるんだけど、そのせいでまた人が死ぬと思うと……」
「あまり考えすぎると、鬱病になっちゃうよ。そういう時は、私がハーモニック大陸でやらかしたことを思い出せばいいよ。私の場合、死者こそ出していないけど、3ヶ国の王族達に大迷惑をかけたからね」
私の発言に、フレヤの憂鬱そうな顔から、笑顔が零れ出た。
「あはは、それはそれでダメな気がする。……私もダメだな。精神的な意味で強くならないといけないのはわかっているんだけど……どうしても…ね」
フレヤは、あの事件をまだ引きずっている。完全に解放されるまで、もう少し日数が必要のようだ。早く吹っ切れてもらいたいけど、こればかりは彼女の心の問題だ。でも、何か……そう彼女の気を紛らわせる何かがあって欲しい。
《ピコン》
うん? 今音が鳴ったような? ステータスに変化なしか。気のせいかな?
私達は別邸に到着すると、フレヤが明日の予定を伝えてくれた。どうやら明日から、教会内での仕事も始まるようだ。住まいに関しては、私の部屋を新たに用意しているらしく、数日中には家具の手配も終わり、そこに住むことになる。フレヤと別れてから、私は別邸内に入り、お母様にギルド本部での出来事を話した。
○○○
翌日、私とカムイはフレヤに連れられ、王都にあるガーランド教会本部へとやって来た。ここに来たのは、5歳の祝福の時以来だ。私の目の前には、一際大きなゴシック様式に近い建物がある。ここから少し離れた所には、【祝福の儀式】の際に訪れた教会もある。今日から、ここが私の仕事場となるのか。馬車から下りたばかりだけど、大勢の教会関係者や信者達が、私を歓迎してくれている。私達が歩き出すと、自然と建物入口までの道が出来た。
「(イザベルも、こんな感じだったの?)」
「(似たような感じでした)」
小声でフレヤに問いただすと、すぐに返事が来た。あの時、ニナ達もいたから、ず~っと部屋で待っていたんだけど、少し離れた場所ではここまで騒々しかったのね。歩いている途中、【祝福の儀式】の時に出会ったラグト神父がいたけど、この騒がしい状況のせいで、挨拶できそうになかった。視線が合った瞬間、軽く会釈だけしておいた。彼も気づき、微笑んでくれた。建物内に入ると、今度はヘンデル枢機卿がいた。
「聖女シャーロット、教会本部へようこそ。まずは、私の執務室に来てもらおう」
私達は、ヘンデル枢機卿の案内で、3階にある彼の執務室へと入った。
「シャーロット、フレヤ、そこにかけてくれ」
中々、広い部屋だ。豪華な絵画や壺などのアンティークが飾られている。仕事用の机も、来客用に座らせるソファーやテーブルなど、全てが一級品だ。ソファーに座ってから、聖女の仕事のことを聞こう。ヘンデル様を見ると、外見は【枢機卿】という身分に相応しい姿をしているけど、内面の魔力の流れを読み取ると、かなりの淀みを感じる。何処か疲れきったような印象を受ける。
「我が教会は、あの事件の影響もあって、エルディア王国に属することになった。それは、シャーロットも同様だ。しかし、現在において、アストレカ大陸内にいる聖女はシャーロットだけだ。そのため、何処かの国で流行性の高い病気が大発生した場合、拡散を防ぐべく、聖女はその国のもとへ急行せねばならない。こういった場合、シャーロットはどう行動する?」
【聖女】の称号を持つ者は、世界にただ1人しかいないと思い込んでいた。ハーモニック大陸でも聖女と出会うことはなかったけど、もしかしたらどの大陸にも1人はいるのだろうか?
「ヘンデル様や国王陛下の許可を貰い、準備が整い次第、私は護衛騎士団と共に、空を飛んで目的地に急行します。あ、消費する魔力に関しては、私1人で賄えますから御安心を。誰にも見えていない場所に下り、村や街に到着後、大勢の病人と話し合います。そして、病気の情報を得てから、周囲一帯をリジェネレーションで回復させます。人数次第では、マックスヒールでもいいですね。その後、同じ方法で場所を移動して、治療を繰り返していきます。最短距離で目的地に行けますから、病気もすぐに収束しますよ」
これまでの冒険で、多くの人達から色々忠告されている。聖女である以上、私1人では行動できない。護衛騎士と共に、大勢の人達を治療しないとね。しかも、ペストのような流行性の高い病は、迅速に対応しないといけない。私はきちんと答えたにも関わらず、フレヤもヘンデル様も、顔の表情筋がピクピクと痙攣している。
「シャーロットの答えは……正しい。そのやり方ならば、病を最短時間で消失できるし、周辺住民も聖女である君を敬うだろう。……が、一般常識からかけ離れている。シャーロット1人に、どれだけの負荷がかかると思っているのだ。しかも、昔と違い、護衛騎士達の中にも、ヒール系回復魔法に特化した者もいる。シャーロットとその者達とで治療した人数が、余りにもかけ離れている場合、【聖女だから】では片付けられない。護衛騎士達にも、立場というものがある」
う、差があり過ぎるのも問題か。護衛騎士達のことを、もう少し配慮すべきだったか。
「ハーモニック大陸の王族の方々や仲間達が、君に色々と忠告したことで、シャーロット自身の常識と一般常識がかなり近づいているが、まだ離れているようだ。聖女である以上、もう少し周囲の者達に気を配れるよう心掛けなさい」
配慮か……アッシュさんやリリヤさんと共に行動することが多かったけど、かなり気を遣わせていたのかな。
「もっと周囲の人達の気持ちを知らないといけませんね。ここで勉強させてもらいます」
「うむ、素直で宜しい。シャーロットには、まず【公爵令嬢としての気品】と【聖女としての嗜み】を身につけてもらおう。気品に関しては、王族の王子や姫を教育してくれた貴族様がおられるから、その方に任せる。聖女に関しては、私が君とフレヤを教育していく」
そういった教育を受けていけば、私自身ももっと成長できるかもしれない。冒険を進めていくうちに、30歳だった時の精神が、少しずつ子供の身体に引っ張られているのを深く実感する。現在の考え方は、大人と子供で入り混じっている感じかな? 今の私にとって、ここでの教育が良い方向に進みそうだ。
「わかりました。宜しくお願いします」
皆の信頼度を上げるためにも、頑張っていこう。
「差し当たって、まず行なってもらうことは、【引っ越し】だ。本来の聖女の部屋はフレヤが使用しているから、現在新たにシャーロット用の新規の部屋を改装しているところだ。1週間後には、全ての準備が整う。部屋が完成するまでの1週間、君には休息を与える。それまでに全ての準備を終わらせておきなさい。エルバラン公爵やエルサ夫人とも早々会えないだろうから、きちんと話しておくように」
ヘンデル様は、私のことを色々気遣ってくれている。
だから、きちんと言っておいた方がいい。
「あ……(これは!? え…嘘…やっていいの?)」
今、フレヤが何かを呟いたような?
「ご心配無用です。長距離転移を使用すれば、一瞬でお父様やお母様に会いに行けますから」
あ、ヘンデル様が固まった。
そして、何か冷たい風が吹いたような?
「……シャーロット様」
フレヤがふら~っと席を立ち、私の後方に移動した。
え? フレヤの両拳が私のコメカミに?
「それをする際にも、ヘンデル様の許可が必要なんです~~~~~!!!!」
「ぐええええぇぇぇぇ~~~~めっちゃ痛いんですけど~~~~~~」
これは、とあるアニメでよく使用されるグリグリ攻撃!?
なんで、私に効果あるのよ!
コメカミをグリグリされて、めっさ痛いです!
「ノオオオォォォォ~~~フレヤ~~止めて~~~」
10秒ほどで、グリグリの回転が止まった。
「あ~、痛かった~。ヘンデル様の許可前提で言ったつもりなんだけど?」
「だったら、それを言葉にして言ってください!誤解したじゃないですか!」
言葉が足りなかった? 言わなくても、通じると思ったよ。
ヘンデル様も、フレヤの一連の行為に驚いている。
「フレヤ、何故君の攻撃がシャーロットに通じる?」
それ、私も知りたいです。
「あ、先程、私のステータスが勝手に開いたんです。確認すると、シャーロット用お仕置きスキル【グリグリLv1】が追加されていて、【防御無視でシャーロットを迅速にお仕置きできる】と記載されていました。あと備考欄に、ガーランド様からのメッセージがありました。【シャーロットには、ツッコミ役兼お仕置き役が必要だ。アッシュとリリヤの代わりに、君達がその役目を全うしなさい。また、この方法で君の内に潜むものを発散しなさい】と」
またか、あの神! 言いたいこともわかるけどさ!
あと、君達って、どういうこと?
「あ……この文面は!? まさか…こんな私に神託を…ガーランド様……このヘンデル、あなた様から授かった内容、生涯忘れません」
ヘンデル様も、ガーランド様からのメッセージを受け取ったの!
初めてだからなのか、感謝の涙を流している。
「シャーロット、喜べ。フレヤと同じスキルが、私も手に入った。そして、ハーモニック大陸にいる君の仲間達や、エルバラン公爵・エルサ夫人・マリルにも備わったぞ」
素直に喜べないよ! それじゃあ、ハーモニック大陸に行って、なんかやらかしてしまった場合、クロイス女王やトキワさん達にグリグリ攻撃を浴びてしまうの!
あの神~~いつか必ずお仕置きしてやる!!!
「さっきのグリグリ攻撃は、2度と味わいたくないので、会話と行動には気をつけます」
「言葉に重みがある。相当、効いているのか。うんうん、良いことだ」
これまでの出来事を考えて、ガーランド様が手を打ったのか。
やらかし制限だけでなく、こんなスキルも製作してくるとは。
「フレヤ、ヘンデル、いいな~。僕にも、そのスキル欲しいよ~」
カムイは貰えなかったのね。
「シャーロットの引っ越しが完了すれば、全ての準備が整う。教会の敷地全体をフレヤに案内してもらったら、今日はそのまま帰りなさい。1週間後、本格始動となるから覚悟しておくように」
あれ? ヘンデル様の魔力の流れが変化した。淀みも消えており、私が来た当初よりも快活な流れとなっている。内面だけでなく、外見の雰囲気も明るくなった!?
ヘンデル様の悩みの原因は、全て私なの!
私への対処方法が完全解決し、ガーランド様から初めてのメッセージを貰ったことから、そんな満面の笑みで私を送り出そうとしているの!
凄く、複雑なんですけど!
フレヤも、あそこまで機嫌のいいヘンデル様を見るのは初めてだったらしく、ヘンデル様の部屋を退出した後、ガーランド様に感謝の念を送った。その後、私とカムイは、フレヤに教会敷地内を案内してもらい、多くの人々と挨拶を交わしていき、教会関係者と親睦を深めていった。
親睦を深めれたのは良いけど、お仕置きスキル【グリグリ】だけが余計だよ!
「シャーロット、フレヤ、お疲れ様。冷たくて甘~いお飲物をどうぞ」
「フェアリさん、ありがとうございます」
私達がお礼を言い、甘く爽やかなジュースを飲んでいると、1人の男性がこちらにやって来た。髪がボサボサ、無精髭が生えていて、何故か白衣を着ていた。風貌から、何処かのマッドサイエンティストのようにも見える。
歳は、フェアリさんと同じ25歳前後かな?
「聖女よ、自己紹介が遅れてすまない。私は、冒険者ギルド本部のギルドマスター、ユレアム・テルサドスだ」
この人がギルドマスター!?
若いよ!
これまで出会ってきた人達と、タイプが全然違う!
「エルバラン公爵家長女、シャーロット・エルバランです。フェアリさんにも言いましたが、敬語とか不要です。いつも通りに、話してください」
「フェアリリーヌから聞いてはいたが……了解した。というか、始めから普段通りの喋り方だ」
患者を治療中、数多くの視線に晒されていたけど、その中に私の全動作を静かに見つめるねっとりとした2つの視線を常に感じていた。1つは、ユレアムさんだったのか。
「ところで、聖女よ。この女性の名前はフェアリリーヌだ。以後、そう呼ぶように」
ユレアムさんがそう言った途端、側にいたフェアリさんがきつい目付きとなり、彼を見た。
「フェアリでいいのよ! シャーロット、私はこの名前と容姿のせいで、頻繁に貴族令嬢と間違われてきたの。だから、フェアリと呼んでね。あ、ちなみにこの男は、私の夫よ」
夫~~~~!?
ユレアムさんの見た目がマッドサイエンティスト、フェアリさんの見た目が気品溢れる貴族令嬢だ。
お似合いの夫婦……という感じがしない!
「フェアリリーヌの方が、呼びやすくていいと思うのだが? な、フェアリリーヌ!」
「ユレアム~、あんたはわかってて連呼しているでしょ?」
あ、でも相性は良さそうだ。
2人のやりとりが、夫婦漫才のように感じる。
「まあ、そんなことは、どうでもいい。聖女よ、怪我人を治療して頂き感謝する。診断速度、治療速度、8歳児とは思えないほどのレベルの高さだったぞ」
「あのね……まあいいわ。ユレアムとあなたの治療をずっと見ていたけど、フレヤの時以上に、怪我人に対しての接し方は見事だったわ。私とユレアムは、今回の重篤患者と重症患者についての情報を、前もって医者から聞いていたの。特に、4人の重篤患者については、魔法でも薬でも手の施しようがないレベルと診断されていた。それなのに、あなたは4人を同時に診察し、病名を的確に当てた。ううん、それだけじゃない。私達やフレヤですら把握していなかった身体中に散らばる病変部位全てを正確に認識し、最上位魔法【マックスヒール】を病変部位だけに集中させ、回復能力を最大限に高めて治療を成功させた。おそらく、あなた独自のユニークスキル、基本スキル、魔法全てを併用させることで、4人同時に治療できたのね。凄い技術力だわ。それも、ハーモニック大陸の魔人族達に教わったの?」
そこまで見抜いているとは……
フェアリさんの観察力が半端ないんですけど!!
「はい。ダークエルフの村が転移場所の近くにありましたから、そこで技術面を多く学ばせてもらいました。あとはフェアリさんの言う通り、ユニークスキルの力も大きく影響しています」
「ふふ、私の推理、当たっていたようね。あなたの持つ様々なスキルと回復魔法の相乗効果で、あの正確無比な診断と治療速度を生み出したわけか。惜しいな~、ノーマルスキルなら教えてほしかったけど、ユニークスキルなら習得できないわね」
すいません。
私と同等速度は無理でも、ある程度近づけることは可能なんです。
「フェアリよ、私の見立てでは、診断速度に関しては聖女に追いつけんだろうが、回復速度に関しては、追いつける見込みありとみた」
嘘、わかるの!
「ホント! ユレアム、後で教えなさいよ!」
「ああ、俺の仮説を教える。あとで検証しよう」
この人達の話し方、研究者と似ている。もしかしたら魔力波に気づいて、スキルを入手するかもしれない。ギルドマスターだから、習得しても悪用することはないと思うけど、一応気にかけておこう。
2人が話し合っていることだし、私達は休憩させてもらおう。
「ふう~フレヤ~、仕事を終わらせた後の冷たい飲み物は、格別に美味しいね~」
「はい。今回の仕事で、シャーロット様の持つ魔力量と魔法技術が、非常に高いレベルであることを、皆にわかってもらえました。そのおかげもあって、ギルド職員も冒険者達もここに訪れた人達も、シャーロット様を【真の聖女】として認めてくれました。私の目的も達成できて良かったです」
【聖女シャーロット・エルバラン】、この名前だけは大陸中に広まっている。しかし、皆は、私自身の力がどこまで強いのかを知らない。フレヤもここにきた当初、かなり懐疑的に見られていたらしい。でも、彼女の患者に対する姿勢が評価され、【聖女代理】として認められた。今回、私は【真の聖女】として、国民からも認められたんだね。
まったりと休んでいると、話し終えたユレアムさんが、またこっちに来た。
「そうだ。まだ、言いたいことがあった。フレアの魔力量にも驚いたが、本物の聖女であるシャーロットの魔力量は凄まじいな。あれだけの人数を治療しても、汗1つかかんとは」
あ…魔力量か~、正確な数値を言ってもさすがに信じてもらえないだろうから、適当に誤魔化そう。
「それは私も思ったわ。普通、あれだけの人数を治療すると、精神的疲労で回復魔法にも乱れが生じるもの。にも関わらず、一切の乱れもなく、淡々と作業をこなしていった。……それだけハーモニック大陸での冒険が過酷だったことを意味するわね」
あはは、私の魔力量は膨大にありますからね。今日の人数くらいなら、使ったうちに入りませんよ。既に、MP自動回復スキルで満タンになったしね。
「かなり過酷な旅でしたが、全ては魔人族のおかげです。彼らの協力がなければ、私は間違いなく死んでいました」
「魔人族…か。これまでに見たことはないが、今後出会う可能性もある。応対には気をつけよう」
「そうね。もしかしたら、ランダルキア大陸を経由して、この大陸に隠れ住んでいるのかもしれない。各街の冒険者ギルドに、友好的に応対するよう通達しておきましょう」
「ありうるな、通達の方は任せたぞ」
ユレアムとフェアリさん、観察力や考察力などの力が一級品だ。ただ、隠れ魔人族達は、おそらく変異しているだろうから、冒険者達が出会っても気づかないかもしれない。
「フレヤ~シャーロット~、やっと仕事を終えたんだね。もう待ちくたびれたよ。2人が仕事している間、女性陣が僕を見るやいなや、抱きついてくるんだ。僕がシャーロットの従魔であることを教えると、みんながシャーロットを羨ましがっていたよ」
あ、そういえば仕事に夢中になっていて、カムイのことをすっかり忘れていた。
「カムイが可愛いから、抱きついてくるんだよ」
「そこにいるフェアリにも、ユレアムにも抱きつかれたよ」
フェアリさんが、じっとユレアムさんを見た。
「な…なんだ? 何故、私を見る?」
ユレアムさんが、ドギマギした表情となっている。男性陣にも、カムイを抱きしめたいと思う人はいるだろうけど、まさかギルドマスターであるユレアムさんが、既に実行していたとは驚きだ。
ハーモニック大陸では、カムイにそこまでの感情を抱く人はいなかった。アッシュさんに理由を聞いたら…
『ドラゴンは、仲間意識が非常に強いんだ。仲間の1人が危険に陥った場合、理由はわからないけど、遠く離れたところでも必ず助けにやってくる。もし、その仲間が死んでいた場合、討伐した人物の臭いを嗅ぎ分けて、ドラゴンが討伐者に対し、大軍で襲いかかってくる場合もある。だから、ライトニングドラゴンの幼生体であっても、たとえ抱きしめたいくらい可愛くても、怒らせてはいけないから迂闊に触れないんだよ』
と教えてくれた。カムイの場合、生まれてくる時点で危険だったけど、遠く離れすぎていたせいもあって、親も気づかなかったと考えるべきかな。
ここエルディア王国では、ドラゴン自体をまずお目にかかれない。王都においても、従魔となっているライダードラゴンくらいを見かける程度だ。野生のドラゴンは、アストレカ大陸内に勿論いるけど、皆賢く、滅多に人に迷惑をかけないし、人里に下りてくることもない。そのため、ドラゴン系の魔物は討伐対象に入っていない。というか力量が違いすぎて、討伐対象に入れた瞬間、ドラゴンの軍勢が襲ってくるかもという恐怖から、どの国もドラゴンの棲む山一帯に手を加えていない。一応、ワイバーンもドラゴンの部類に入るのだけど、【性格が乱暴、人々に迷惑をかける】という条件に合致する場合のみ、人間はワイバーンを討伐対象に入れている。
ハーモニック大陸と違って、ここではドラゴンの生態について、あまり調査されていない。そのため、仲間意識が強いとか一切知らない。だから、人々はライトニングドラゴンの可愛い幼生体でもあるカムイを抱きしめたいがために、集まってくるんだね。
「あんた、まさかとは思うけど、可愛いものには手当たり次第に抱きついていないわよね?」
「それは犯罪だろ! そんなことをするか! 私に、そんな趣味はない! 皆がカムイを抱きしめているから、私も気になっただけだ」
もしかして、ユレアムさんも可愛いものが好きなのかな?
「シャーロット、フレヤ、これからどうするの?」
時間は夕方4時か。もう少し、ここで寛ぎたいな。
「カムイ、掲示板を見ようか? ここでの討伐依頼が、どんなものかを知っておきたい」
「いいね! ハーモニック大陸のジストニス王国にも、冒険者ギルドがあったもんね。僕も違いを知りたいよ! フェアリ、見てもいいかな?」
「それは構わないけど、見るだけよ?」
フェアリさん、聖女が単独で魔物討伐なんかしませんよ……みんなが見ていない場所で、勝手にするかもだけど。
私達がフェアリさんとユレアムさんと共に、大きな掲示板に到着すると、F~Aランクに別れて、依頼が張り出されていた。ただ、Aランクのところは何も張り出されていないけど、【マリル・クレイトン専用】となっていた。
「マリル専用? まさか、Aランクはマリルだけ?」
「聖女よ、人間の能力限界は250だ。Aランクの指標でもある能力平均値400を超えている者は、この国には現状【マリル・クレイトン】しかいない。この私ですら、340前後だ」
エルディア王国のAランク冒険者はマリルだけか。能力限界値のことを考慮すると、アストレカ大陸内にいるAランク以上の冒険者は、10人もいないかもしれない。
「あれ? シャーロット、あっちにも掲示板があるよ。各領地の被害状況だって」
「カムイよ、ここはギルド本部だからな。各領地において、大きな事件が発生した場合、情報を共有すべく、ああやって貼り出しているのだ」
エルバラン領となる区画には、何も貼り出されていなかった。大きな事件が起こっていないということだ。あれ? リーラの住むマクレン領には、一枚の大きな紙が貼り出されていた。日付は、昨日のものだ。記事の一部を読むと……
【人や魔物が海中から多数出現し、船を襲っている。魔物達は砂浜や岩場などから上陸し、街にいる人達を手当たり次第に襲っているため、怪我人が続出している。幸いF~Eランクであるため、街にいる冒険者だけで撃破可能となっている。大きな被害は出ていないものの、何故人が海から現れるのかは不明】
この事件、リーラから聞いていたものと同じ内容だ!
マクレンの領の被害は微々たるものだけど、人が海から出現する事自体がおかしい。
「ユレハムさん、このマクレン領に記載されている魔物の出現、明らかにおかしいですよね」
「その事件は4日前に起きたばかりで、詳細なことはわかっていない。おそらく、現在も調査しているところだろう。マクレン領にいる冒険者だけで解決できない場合、救援要請が送られてくるはずだ。現状、わかっているのは魔物と人が海の中から出現し、手当たり次第に人や動物を襲っているくらいか。そのため、漁師達は海に出られん。この【人】という言葉も、その者に対して使用していいものか、激しく微妙なところだがな」
同意見です。
「人型のゾンビ? もしくは、人の姿をした新種の魔物ですか?」
「それはわからん。こういった被害は、マクレン領だけではない。国内において、計5ヶ所の領で発生している」
改めて全ての領を見渡すと、確かに5ヶ所の領内にて、山・海・森などから、凶暴な人、動物、魔物が出現し、対応に追われているようだ。マクレン領同様、まだ被害も少ない。
「こういった現象は、過去にもありましたか?」
「今回が初めてだな。自然発生なのか、人為的に齎されたものなのか、どちらにしても原因を解明せねばならん」
うーん、タイミング的に考えても、隠れ魔人族が関与していると思うけど、彼らの目的が、現状わからない。4種族全てを滅ぼすつもりならば、これは序の口だろう。他国の状況も気になるところだ。
「しばらくは、情報収集に徹するのですか?」
「ああ、我々ギルド本部が情報に踊らされてはいかん。各領の情報を収集し、共通点がないかを探し出さねば。最悪の場合、マリルやシャーロットを動かす」
私とマリルは切り札か。リーラは昨日の時点で、マクレン領に到着している。落ち着いたら別邸の大型通信機を使って、状況を聞いてみよう。
「現在、私はエルバラン家別邸に住んでいますが、近日中に教会に移動すると思います。何かあった場合、教会に連絡を入れて下さいね」
「わかった。ガーランド法王国の動向も気になるから、シャーロットとフレヤの警備態勢も強化されるだろう。2人とも、出かける際は充分用心するように」
「「はい」」
私達はギルド職員と周辺にいる冒険者の人達に、【皆さん、今後とも、宜しくお願いします】と軽い挨拶を言ってから、冒険者ギルドを出て馬車の中に入った。
「シャーロット、さっきの事件だけど、何か知ってるの?」
フレヤは私の様子を見て、何か気づいたのかな? 彼女ならば、いずれヘンデル枢機卿から、あの情報も伝わるだろうし言ってもいいと思うんだけど、私の信頼性がダウンするかもだから、それとなく匂わせておこう。
「うん、まあね。ただ、最近得たばかりの情報で、確証も得られていないから話せないんだ。もう少ししたら、ヘンデル枢機卿からフレヤに話が伝わると思う。それまで待っていてね」
「……イザベルの事件をキッカケにしたものかな?」
まあ、そう考えちゃうよね。
「それは、まだわからない。そもそも、あの事件はアストレカ大陸内の全ての国々において、大きな混乱をもたらした。その混乱に乗じて、新たな事件を起こそうとしているだけだから、フレヤは気にしちゃダメ」
「う、わかってはいるんだけど、そのせいでまた人が死ぬと思うと……」
「あまり考えすぎると、鬱病になっちゃうよ。そういう時は、私がハーモニック大陸でやらかしたことを思い出せばいいよ。私の場合、死者こそ出していないけど、3ヶ国の王族達に大迷惑をかけたからね」
私の発言に、フレヤの憂鬱そうな顔から、笑顔が零れ出た。
「あはは、それはそれでダメな気がする。……私もダメだな。精神的な意味で強くならないといけないのはわかっているんだけど……どうしても…ね」
フレヤは、あの事件をまだ引きずっている。完全に解放されるまで、もう少し日数が必要のようだ。早く吹っ切れてもらいたいけど、こればかりは彼女の心の問題だ。でも、何か……そう彼女の気を紛らわせる何かがあって欲しい。
《ピコン》
うん? 今音が鳴ったような? ステータスに変化なしか。気のせいかな?
私達は別邸に到着すると、フレヤが明日の予定を伝えてくれた。どうやら明日から、教会内での仕事も始まるようだ。住まいに関しては、私の部屋を新たに用意しているらしく、数日中には家具の手配も終わり、そこに住むことになる。フレヤと別れてから、私は別邸内に入り、お母様にギルド本部での出来事を話した。
○○○
翌日、私とカムイはフレヤに連れられ、王都にあるガーランド教会本部へとやって来た。ここに来たのは、5歳の祝福の時以来だ。私の目の前には、一際大きなゴシック様式に近い建物がある。ここから少し離れた所には、【祝福の儀式】の際に訪れた教会もある。今日から、ここが私の仕事場となるのか。馬車から下りたばかりだけど、大勢の教会関係者や信者達が、私を歓迎してくれている。私達が歩き出すと、自然と建物入口までの道が出来た。
「(イザベルも、こんな感じだったの?)」
「(似たような感じでした)」
小声でフレヤに問いただすと、すぐに返事が来た。あの時、ニナ達もいたから、ず~っと部屋で待っていたんだけど、少し離れた場所ではここまで騒々しかったのね。歩いている途中、【祝福の儀式】の時に出会ったラグト神父がいたけど、この騒がしい状況のせいで、挨拶できそうになかった。視線が合った瞬間、軽く会釈だけしておいた。彼も気づき、微笑んでくれた。建物内に入ると、今度はヘンデル枢機卿がいた。
「聖女シャーロット、教会本部へようこそ。まずは、私の執務室に来てもらおう」
私達は、ヘンデル枢機卿の案内で、3階にある彼の執務室へと入った。
「シャーロット、フレヤ、そこにかけてくれ」
中々、広い部屋だ。豪華な絵画や壺などのアンティークが飾られている。仕事用の机も、来客用に座らせるソファーやテーブルなど、全てが一級品だ。ソファーに座ってから、聖女の仕事のことを聞こう。ヘンデル様を見ると、外見は【枢機卿】という身分に相応しい姿をしているけど、内面の魔力の流れを読み取ると、かなりの淀みを感じる。何処か疲れきったような印象を受ける。
「我が教会は、あの事件の影響もあって、エルディア王国に属することになった。それは、シャーロットも同様だ。しかし、現在において、アストレカ大陸内にいる聖女はシャーロットだけだ。そのため、何処かの国で流行性の高い病気が大発生した場合、拡散を防ぐべく、聖女はその国のもとへ急行せねばならない。こういった場合、シャーロットはどう行動する?」
【聖女】の称号を持つ者は、世界にただ1人しかいないと思い込んでいた。ハーモニック大陸でも聖女と出会うことはなかったけど、もしかしたらどの大陸にも1人はいるのだろうか?
「ヘンデル様や国王陛下の許可を貰い、準備が整い次第、私は護衛騎士団と共に、空を飛んで目的地に急行します。あ、消費する魔力に関しては、私1人で賄えますから御安心を。誰にも見えていない場所に下り、村や街に到着後、大勢の病人と話し合います。そして、病気の情報を得てから、周囲一帯をリジェネレーションで回復させます。人数次第では、マックスヒールでもいいですね。その後、同じ方法で場所を移動して、治療を繰り返していきます。最短距離で目的地に行けますから、病気もすぐに収束しますよ」
これまでの冒険で、多くの人達から色々忠告されている。聖女である以上、私1人では行動できない。護衛騎士と共に、大勢の人達を治療しないとね。しかも、ペストのような流行性の高い病は、迅速に対応しないといけない。私はきちんと答えたにも関わらず、フレヤもヘンデル様も、顔の表情筋がピクピクと痙攣している。
「シャーロットの答えは……正しい。そのやり方ならば、病を最短時間で消失できるし、周辺住民も聖女である君を敬うだろう。……が、一般常識からかけ離れている。シャーロット1人に、どれだけの負荷がかかると思っているのだ。しかも、昔と違い、護衛騎士達の中にも、ヒール系回復魔法に特化した者もいる。シャーロットとその者達とで治療した人数が、余りにもかけ離れている場合、【聖女だから】では片付けられない。護衛騎士達にも、立場というものがある」
う、差があり過ぎるのも問題か。護衛騎士達のことを、もう少し配慮すべきだったか。
「ハーモニック大陸の王族の方々や仲間達が、君に色々と忠告したことで、シャーロット自身の常識と一般常識がかなり近づいているが、まだ離れているようだ。聖女である以上、もう少し周囲の者達に気を配れるよう心掛けなさい」
配慮か……アッシュさんやリリヤさんと共に行動することが多かったけど、かなり気を遣わせていたのかな。
「もっと周囲の人達の気持ちを知らないといけませんね。ここで勉強させてもらいます」
「うむ、素直で宜しい。シャーロットには、まず【公爵令嬢としての気品】と【聖女としての嗜み】を身につけてもらおう。気品に関しては、王族の王子や姫を教育してくれた貴族様がおられるから、その方に任せる。聖女に関しては、私が君とフレヤを教育していく」
そういった教育を受けていけば、私自身ももっと成長できるかもしれない。冒険を進めていくうちに、30歳だった時の精神が、少しずつ子供の身体に引っ張られているのを深く実感する。現在の考え方は、大人と子供で入り混じっている感じかな? 今の私にとって、ここでの教育が良い方向に進みそうだ。
「わかりました。宜しくお願いします」
皆の信頼度を上げるためにも、頑張っていこう。
「差し当たって、まず行なってもらうことは、【引っ越し】だ。本来の聖女の部屋はフレヤが使用しているから、現在新たにシャーロット用の新規の部屋を改装しているところだ。1週間後には、全ての準備が整う。部屋が完成するまでの1週間、君には休息を与える。それまでに全ての準備を終わらせておきなさい。エルバラン公爵やエルサ夫人とも早々会えないだろうから、きちんと話しておくように」
ヘンデル様は、私のことを色々気遣ってくれている。
だから、きちんと言っておいた方がいい。
「あ……(これは!? え…嘘…やっていいの?)」
今、フレヤが何かを呟いたような?
「ご心配無用です。長距離転移を使用すれば、一瞬でお父様やお母様に会いに行けますから」
あ、ヘンデル様が固まった。
そして、何か冷たい風が吹いたような?
「……シャーロット様」
フレヤがふら~っと席を立ち、私の後方に移動した。
え? フレヤの両拳が私のコメカミに?
「それをする際にも、ヘンデル様の許可が必要なんです~~~~~!!!!」
「ぐええええぇぇぇぇ~~~~めっちゃ痛いんですけど~~~~~~」
これは、とあるアニメでよく使用されるグリグリ攻撃!?
なんで、私に効果あるのよ!
コメカミをグリグリされて、めっさ痛いです!
「ノオオオォォォォ~~~フレヤ~~止めて~~~」
10秒ほどで、グリグリの回転が止まった。
「あ~、痛かった~。ヘンデル様の許可前提で言ったつもりなんだけど?」
「だったら、それを言葉にして言ってください!誤解したじゃないですか!」
言葉が足りなかった? 言わなくても、通じると思ったよ。
ヘンデル様も、フレヤの一連の行為に驚いている。
「フレヤ、何故君の攻撃がシャーロットに通じる?」
それ、私も知りたいです。
「あ、先程、私のステータスが勝手に開いたんです。確認すると、シャーロット用お仕置きスキル【グリグリLv1】が追加されていて、【防御無視でシャーロットを迅速にお仕置きできる】と記載されていました。あと備考欄に、ガーランド様からのメッセージがありました。【シャーロットには、ツッコミ役兼お仕置き役が必要だ。アッシュとリリヤの代わりに、君達がその役目を全うしなさい。また、この方法で君の内に潜むものを発散しなさい】と」
またか、あの神! 言いたいこともわかるけどさ!
あと、君達って、どういうこと?
「あ……この文面は!? まさか…こんな私に神託を…ガーランド様……このヘンデル、あなた様から授かった内容、生涯忘れません」
ヘンデル様も、ガーランド様からのメッセージを受け取ったの!
初めてだからなのか、感謝の涙を流している。
「シャーロット、喜べ。フレヤと同じスキルが、私も手に入った。そして、ハーモニック大陸にいる君の仲間達や、エルバラン公爵・エルサ夫人・マリルにも備わったぞ」
素直に喜べないよ! それじゃあ、ハーモニック大陸に行って、なんかやらかしてしまった場合、クロイス女王やトキワさん達にグリグリ攻撃を浴びてしまうの!
あの神~~いつか必ずお仕置きしてやる!!!
「さっきのグリグリ攻撃は、2度と味わいたくないので、会話と行動には気をつけます」
「言葉に重みがある。相当、効いているのか。うんうん、良いことだ」
これまでの出来事を考えて、ガーランド様が手を打ったのか。
やらかし制限だけでなく、こんなスキルも製作してくるとは。
「フレヤ、ヘンデル、いいな~。僕にも、そのスキル欲しいよ~」
カムイは貰えなかったのね。
「シャーロットの引っ越しが完了すれば、全ての準備が整う。教会の敷地全体をフレヤに案内してもらったら、今日はそのまま帰りなさい。1週間後、本格始動となるから覚悟しておくように」
あれ? ヘンデル様の魔力の流れが変化した。淀みも消えており、私が来た当初よりも快活な流れとなっている。内面だけでなく、外見の雰囲気も明るくなった!?
ヘンデル様の悩みの原因は、全て私なの!
私への対処方法が完全解決し、ガーランド様から初めてのメッセージを貰ったことから、そんな満面の笑みで私を送り出そうとしているの!
凄く、複雑なんですけど!
フレヤも、あそこまで機嫌のいいヘンデル様を見るのは初めてだったらしく、ヘンデル様の部屋を退出した後、ガーランド様に感謝の念を送った。その後、私とカムイは、フレヤに教会敷地内を案内してもらい、多くの人々と挨拶を交わしていき、教会関係者と親睦を深めていった。
親睦を深めれたのは良いけど、お仕置きスキル【グリグリ】だけが余計だよ!
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