247 / 277
10歳〜アストレカ大陸編【旅芸人と負の遺産】
一難去ってまた一難
しおりを挟む
○○○ フレヤ視点
オトギさんの生首が、彼らを威圧している。フェルボーニは真っ青となり小刻みに震え、先程まで私に与えていた勇猛な強さを微塵も感じられない。
「ほぼ…同時期に…騒動を起こす? あ…あ…ありえないわ。私達とあなたは…全くの…無関係だもの」
《ほぼ同時期に騒動を起こす》という行為は、偶然にしては出来過ぎているわ。何か裏があるのかしら?
「ほう……俺から見れば、タイミングがあまりにも合致しているんだが?」
「私達は…デュラハン騒動を利用しただけ。あなたが元凶とは…知らなかったのよ」
フェルボーニの言葉から、嘘を感じ取れないわ。
フェルボーニ達の目的は《私》、オトギさんの目的は《シャーロット》。
どうして、こうもタイミングが……
「あ、春蘭祭!?」
私がつい叫んだせいか、全員が私を見る。
「フレヤ、どういうことだ?」
「オトギさんは旅芸人でもあるから、春蘭祭のイベントに参加するため、ここへ来たんでしょ?」
「ま…そうだな」
生首のままで答えてほしくないわ。身体は、何処にあるの?
そもそも、何故生首だけで登場する必要性があるのかしら?
「フェルボーニさん達は、春蘭祭開催中に私の誘拐をも企んでいたのでは?」
「ええ…そうね」
「「あ!?」」
2人も察したようだ。
ミーシャ
1) シャーロットに強さの秘密を聞き出すため、学園へ入学。
オトギさん
1) シャーロットに用事あり。
2) 春蘭祭もあることから、早めに王都へ到着。
3) ミーシャとの再会は偶然。
4) この再会がキッカケとなり、デュラハン騒動が起きる。
フェルボーニ達
1)帰還したシャーロットの情報を2年かけて収集する。
2)春蘭祭でお祭り騒ぎの中、私を誘拐するため動く。
3)デュラハン騒動を利用して、王都北と南に魔物を大量召喚させる。これにより、冒険者や騎士達が王都外へと追いやられ、王都内の警備が薄まる。
4)デッドスクリームの警戒は、騒動のせいもあって魔物に集中している。だから、今回のような小さな罠に対しては反応が鈍る。
両者のタイミングが春蘭祭と重なっていたからこそ、こんな事象が発生したんだわ。
「ち、そういうことかよ。本当に偶然なんだな」
オトギさんから感じる雰囲気が柔らかくなった。
威圧を解いてくれたんだわ。
とりあえず、これで落ち着けるけど、これからどうなるの?
「あの…オトギさん…ですよね?」
「フレヤ、こんな姿ですまん。身体も、もうすぐここに到着する」
《もうすぐ到着》って、首が空を飛んでいるのだから、身体も空を飛んで何処かに浮いているわよね?
すぐ、来れるんじゃないの?
オトギさんって、不思議すぎるわ。
「今の状態が、まるで《デュラハン》のように感じます。それって、《スキル》なんですか?」
「この姿を見られたから言うが、《ユニークスキル》だよ」
やっぱり、《ユニークスキル》なのね。ノーマルスキルだったら、首と身体を分離させた人々が大勢いるはずだもの。そんな人々、見たこともないわ。
「あと…《蒼青の悪魔》って……」
う、彼の目が鋭くなった。
なんか、気まずいわ。
「その二つ名は……」
オトギさんの口から真実を語られると思った瞬間、突然地面じゃなくて、スカイドラゴンの背中が動いた。
『グギャ、ギャワグワ~~~デ。グワアアア~~~~』
(もう、ここにいたくなーーーーーい。お家に帰る~~~~~~)
「あ、こら! 暴れるなっす!」
突然何なの!?
「きゃああ~~~揺れる~~~~~」
う…吐きそう。
《バキバキバキバキ》
え、なんの音!
あれ?
なんか浮遊感が?
「あ、フレヤ様! ヤバイっす! 固定具が壊れたっす! 急いで竿に移行させないと! こら、暴れるなっす!」
カビバラのスカイドラゴンが威圧を解かれた影響で、この緊張状態に耐えられなくなったの!?
「きゃああぁぁ~~~転がる~~~目が~~~~」
もしかして……この後は……
「いや~~~~~~落ちる~~~~」
強烈な浮遊感に襲われ転がされたと思ったら、私は地上へと落下していく。
オトギさん(首)もフェルボーニさんも、突然のことで立ち止まったままだわ。
「グアアアア~~~~(お家に帰る~~~)」
「帰るな~~~~私を助けろ~~~~!!!」
あのドラゴン、許すまじ!
みんなが、どんどん小さくなっていく!
「いや~~~オトギさ~~~~ん、助けて~~~~~」
オトギさん達が遠ざかり、地上がどんどん近くなっていく。
でも、何故か恐怖心が芽生えてこない。
どうして?
今のこの状況、本来ならば風圧・酸素濃度・音・高度・迫り来る地上、死の恐怖、様々なものが私に襲ってくる。でも、魔導具の影響で感じるのは《音》と《高度》だけ、まさか恐怖心がそのせいで薄れている?
この感覚……覚えがある。
前世、私が4日間の有給休暇をもぎ取って、1人でU○Jに遊びに行き、体感アトラクションに乗った時の感覚とそっくりだわ。あれは、映画の世界を一時的に体験できるもので、《揺れ》や《風》などがあっても決して本物ではない。
今のこの状況は、《体感アトラクション》や《ゲーム》でもない。
紛れもなく現実に起きている出来事!
このまま落下して地上に激突すれば、私は間違いなく……死ぬ。
そう、死ぬのよ!
感覚を研ぎ澄ませろ!
意識を覚醒させろ!
「【グラビトン《ゼロ》】!」
え……何も起きない?
あ、そうか!
今の私は、魔法もスキルも封印されているわ。
これじゃあ、何も対処できない。
私……死ぬの?
イザベルに転生して、マリルさんのおかげで自分を取り戻せた。フレヤになって以降、聖女代理として一生懸命働いていたこともあって、多くの人達が私に対して、優しく接してくれたわ。回復魔法で治療した後の患者さんの笑顔を、今でも忘れられない。
シャーロット、リーラ、オーキス、4人で共同訓練し互いに強くなり、模擬戦で敗北して泣いたり、勝利して笑ったりもした。4人で談笑し、リーラの話が可笑しくてお腹が痛くなる程笑いあったりもした。
前世の時に味わったものとは、全然違う。
《これが【生きている】という証なんだ》と、初めて実感できた。
楽しかった…この生涯を失いたくない。
シャーロット…リーラ…オーキス…ミーシャ…クラスメイトのみんなと、もっと話し合いたい。
もっと笑い合いたい!
嫌だ、死にたくない!
こんなところで死にたくないわ!
「こんな魔導具、ぶっ壊してやる!」
私は自分の真下にある魔導具を掴み、殴る…殴る…殴る!
自分の手が壊れようとも関係ない。
私は、最後まで諦めない!
「うわあああ~~~死んでたまるか~~壊れろ~~~!!!」
あ…そうか。
私は、シャーロットを高度12000mへ転移させた。
彼女も、こんな思いで【死】に立ち向かったんだ。
今になって、あの時の彼女の気持ちを真に理解するなんて。
「私も生き残る! これからの人生を幸せにするんだ!」
お願い!
壊れて…壊れて…壊れて!
《バゴ》
壊れた!
やったわ!
「え…きゃあ!!! 風圧が……」
魔導具が壊れた影響で、風が一気に押し寄せてきた!
凄い風圧だわ!
「グラ…」
え、地上が……もう…目の前!?
ああ…間に合わない。
このまま衝突したら、私は…嫌だ…死にたくない…もう…ダメ!
私は死を覚悟して、目を閉じた。
「グラビトン《ゼロ》!」
《どーーーーーーーーん》
あれ?
いつまでたっても浮遊感は消えないわ。
え!?
誰かが、そっと私を抱き上げた!
「ふう~~~ギリギリだぜ」
この声は、まさか!?
私はゆっくりと目を開けると、そこには……首と身体を結合させたオトギさんがいた。
「フレヤ、すまない」
「オトギさん!!!」
あの状況下で、首と身体を結合させて私を助けてくれたの!?
私は、オトギさんにお姫様抱っこされているわ!
「あれ? クレーターが地面に出来てる? どうして?」
「ああ、俺が着地したからだ。俺は風魔法を使えない。だから、身体を結合させた後、スキル【空走】を使って急降下し着地した。その後、【グラビトン】を使って君を助けたんだ」
あの高度から急降下して着地した?
いくらオトギさんが強くても、身体が耐えられるはずがない!
それに首だけの状態の時、彼は浮いていたわ!
「フレヤ…落ち着け。今は、余計なことを考えなくていい。心を落ち着かせろ」
私の様子がおかしい事に気づいたのか、オトギさんは優しく微笑んでくれた。
その微笑みから、何の下心もないことがわかるわ。
高ぶる私の心が、急速に落ち着いていくのを感じる。
「私……生きているんですよね?」
「ああ、生きてる」
生きてる…助かった…あ…手が震えてる。今になって、落下している時の恐怖が…地面と衝突するという恐怖が……ふつふつと込み上がってくる。
「生きてる…う…う……うわあああぁぁぁ~~怖かった~~いぎでてよがった~~~」
「ああ…怖がらせてごめんな」
「シャーロット~~、ごめんね~~~ごめんね~~~転移させてごめんね~~~」
身体全体が震えている。魔導具を破壊した瞬間に見たあの地面の近さ、私はあの恐怖をシャーロットに経験させた。《死の恐怖》《親友シャーロットに経験させた苦しみ》、それらの思いが頭の中で共鳴し、私はその場にいないシャーロットに悔いた。
オトギさんは何も言わず、私を抱きしめてくれた。
「フレヤ、今助けるから~ってあれ? フレヤ? オトギさん?」
「「え?」」
私の正面3m程前方に、突然シャーロットが現れた。
余りにも唐突に出現したため、私もオトギさんも固まったまま。
もしかして、シャーロットも私の危機に気づいて駆けつけてくれたの?
え? 何故、私とオトギさんを見て、顔を真っ青にしているの?
「フレヤが号泣している…両手が血塗れ…オトギさんの服も血だらけ……」
え? え?
シャーロットの身体からドス黒い魔力が漏れてきた。
彼女の表情が、《驚き》から《憤怒》へと変化していく。
「フレヤを虐めたのね。やっぱり、あなたが誘拐犯で全ての黒幕…許せない!」
その言葉を呟いた瞬間、シャーロットの身体からドス黒い魔力が吹き荒れた!
あ!
突然転移魔法で現れたシャーロット、そこで目に映ったのは……
《両手を血だらけにして、オトギさんに抱きつき号泣する私》
《服が血だらけとなっているオトギさん》
勘違いする条件が整い過ぎているわ!
これは……まずい!
オトギさんの生首が、彼らを威圧している。フェルボーニは真っ青となり小刻みに震え、先程まで私に与えていた勇猛な強さを微塵も感じられない。
「ほぼ…同時期に…騒動を起こす? あ…あ…ありえないわ。私達とあなたは…全くの…無関係だもの」
《ほぼ同時期に騒動を起こす》という行為は、偶然にしては出来過ぎているわ。何か裏があるのかしら?
「ほう……俺から見れば、タイミングがあまりにも合致しているんだが?」
「私達は…デュラハン騒動を利用しただけ。あなたが元凶とは…知らなかったのよ」
フェルボーニの言葉から、嘘を感じ取れないわ。
フェルボーニ達の目的は《私》、オトギさんの目的は《シャーロット》。
どうして、こうもタイミングが……
「あ、春蘭祭!?」
私がつい叫んだせいか、全員が私を見る。
「フレヤ、どういうことだ?」
「オトギさんは旅芸人でもあるから、春蘭祭のイベントに参加するため、ここへ来たんでしょ?」
「ま…そうだな」
生首のままで答えてほしくないわ。身体は、何処にあるの?
そもそも、何故生首だけで登場する必要性があるのかしら?
「フェルボーニさん達は、春蘭祭開催中に私の誘拐をも企んでいたのでは?」
「ええ…そうね」
「「あ!?」」
2人も察したようだ。
ミーシャ
1) シャーロットに強さの秘密を聞き出すため、学園へ入学。
オトギさん
1) シャーロットに用事あり。
2) 春蘭祭もあることから、早めに王都へ到着。
3) ミーシャとの再会は偶然。
4) この再会がキッカケとなり、デュラハン騒動が起きる。
フェルボーニ達
1)帰還したシャーロットの情報を2年かけて収集する。
2)春蘭祭でお祭り騒ぎの中、私を誘拐するため動く。
3)デュラハン騒動を利用して、王都北と南に魔物を大量召喚させる。これにより、冒険者や騎士達が王都外へと追いやられ、王都内の警備が薄まる。
4)デッドスクリームの警戒は、騒動のせいもあって魔物に集中している。だから、今回のような小さな罠に対しては反応が鈍る。
両者のタイミングが春蘭祭と重なっていたからこそ、こんな事象が発生したんだわ。
「ち、そういうことかよ。本当に偶然なんだな」
オトギさんから感じる雰囲気が柔らかくなった。
威圧を解いてくれたんだわ。
とりあえず、これで落ち着けるけど、これからどうなるの?
「あの…オトギさん…ですよね?」
「フレヤ、こんな姿ですまん。身体も、もうすぐここに到着する」
《もうすぐ到着》って、首が空を飛んでいるのだから、身体も空を飛んで何処かに浮いているわよね?
すぐ、来れるんじゃないの?
オトギさんって、不思議すぎるわ。
「今の状態が、まるで《デュラハン》のように感じます。それって、《スキル》なんですか?」
「この姿を見られたから言うが、《ユニークスキル》だよ」
やっぱり、《ユニークスキル》なのね。ノーマルスキルだったら、首と身体を分離させた人々が大勢いるはずだもの。そんな人々、見たこともないわ。
「あと…《蒼青の悪魔》って……」
う、彼の目が鋭くなった。
なんか、気まずいわ。
「その二つ名は……」
オトギさんの口から真実を語られると思った瞬間、突然地面じゃなくて、スカイドラゴンの背中が動いた。
『グギャ、ギャワグワ~~~デ。グワアアア~~~~』
(もう、ここにいたくなーーーーーい。お家に帰る~~~~~~)
「あ、こら! 暴れるなっす!」
突然何なの!?
「きゃああ~~~揺れる~~~~~」
う…吐きそう。
《バキバキバキバキ》
え、なんの音!
あれ?
なんか浮遊感が?
「あ、フレヤ様! ヤバイっす! 固定具が壊れたっす! 急いで竿に移行させないと! こら、暴れるなっす!」
カビバラのスカイドラゴンが威圧を解かれた影響で、この緊張状態に耐えられなくなったの!?
「きゃああぁぁ~~~転がる~~~目が~~~~」
もしかして……この後は……
「いや~~~~~~落ちる~~~~」
強烈な浮遊感に襲われ転がされたと思ったら、私は地上へと落下していく。
オトギさん(首)もフェルボーニさんも、突然のことで立ち止まったままだわ。
「グアアアア~~~~(お家に帰る~~~)」
「帰るな~~~~私を助けろ~~~~!!!」
あのドラゴン、許すまじ!
みんなが、どんどん小さくなっていく!
「いや~~~オトギさ~~~~ん、助けて~~~~~」
オトギさん達が遠ざかり、地上がどんどん近くなっていく。
でも、何故か恐怖心が芽生えてこない。
どうして?
今のこの状況、本来ならば風圧・酸素濃度・音・高度・迫り来る地上、死の恐怖、様々なものが私に襲ってくる。でも、魔導具の影響で感じるのは《音》と《高度》だけ、まさか恐怖心がそのせいで薄れている?
この感覚……覚えがある。
前世、私が4日間の有給休暇をもぎ取って、1人でU○Jに遊びに行き、体感アトラクションに乗った時の感覚とそっくりだわ。あれは、映画の世界を一時的に体験できるもので、《揺れ》や《風》などがあっても決して本物ではない。
今のこの状況は、《体感アトラクション》や《ゲーム》でもない。
紛れもなく現実に起きている出来事!
このまま落下して地上に激突すれば、私は間違いなく……死ぬ。
そう、死ぬのよ!
感覚を研ぎ澄ませろ!
意識を覚醒させろ!
「【グラビトン《ゼロ》】!」
え……何も起きない?
あ、そうか!
今の私は、魔法もスキルも封印されているわ。
これじゃあ、何も対処できない。
私……死ぬの?
イザベルに転生して、マリルさんのおかげで自分を取り戻せた。フレヤになって以降、聖女代理として一生懸命働いていたこともあって、多くの人達が私に対して、優しく接してくれたわ。回復魔法で治療した後の患者さんの笑顔を、今でも忘れられない。
シャーロット、リーラ、オーキス、4人で共同訓練し互いに強くなり、模擬戦で敗北して泣いたり、勝利して笑ったりもした。4人で談笑し、リーラの話が可笑しくてお腹が痛くなる程笑いあったりもした。
前世の時に味わったものとは、全然違う。
《これが【生きている】という証なんだ》と、初めて実感できた。
楽しかった…この生涯を失いたくない。
シャーロット…リーラ…オーキス…ミーシャ…クラスメイトのみんなと、もっと話し合いたい。
もっと笑い合いたい!
嫌だ、死にたくない!
こんなところで死にたくないわ!
「こんな魔導具、ぶっ壊してやる!」
私は自分の真下にある魔導具を掴み、殴る…殴る…殴る!
自分の手が壊れようとも関係ない。
私は、最後まで諦めない!
「うわあああ~~~死んでたまるか~~壊れろ~~~!!!」
あ…そうか。
私は、シャーロットを高度12000mへ転移させた。
彼女も、こんな思いで【死】に立ち向かったんだ。
今になって、あの時の彼女の気持ちを真に理解するなんて。
「私も生き残る! これからの人生を幸せにするんだ!」
お願い!
壊れて…壊れて…壊れて!
《バゴ》
壊れた!
やったわ!
「え…きゃあ!!! 風圧が……」
魔導具が壊れた影響で、風が一気に押し寄せてきた!
凄い風圧だわ!
「グラ…」
え、地上が……もう…目の前!?
ああ…間に合わない。
このまま衝突したら、私は…嫌だ…死にたくない…もう…ダメ!
私は死を覚悟して、目を閉じた。
「グラビトン《ゼロ》!」
《どーーーーーーーーん》
あれ?
いつまでたっても浮遊感は消えないわ。
え!?
誰かが、そっと私を抱き上げた!
「ふう~~~ギリギリだぜ」
この声は、まさか!?
私はゆっくりと目を開けると、そこには……首と身体を結合させたオトギさんがいた。
「フレヤ、すまない」
「オトギさん!!!」
あの状況下で、首と身体を結合させて私を助けてくれたの!?
私は、オトギさんにお姫様抱っこされているわ!
「あれ? クレーターが地面に出来てる? どうして?」
「ああ、俺が着地したからだ。俺は風魔法を使えない。だから、身体を結合させた後、スキル【空走】を使って急降下し着地した。その後、【グラビトン】を使って君を助けたんだ」
あの高度から急降下して着地した?
いくらオトギさんが強くても、身体が耐えられるはずがない!
それに首だけの状態の時、彼は浮いていたわ!
「フレヤ…落ち着け。今は、余計なことを考えなくていい。心を落ち着かせろ」
私の様子がおかしい事に気づいたのか、オトギさんは優しく微笑んでくれた。
その微笑みから、何の下心もないことがわかるわ。
高ぶる私の心が、急速に落ち着いていくのを感じる。
「私……生きているんですよね?」
「ああ、生きてる」
生きてる…助かった…あ…手が震えてる。今になって、落下している時の恐怖が…地面と衝突するという恐怖が……ふつふつと込み上がってくる。
「生きてる…う…う……うわあああぁぁぁ~~怖かった~~いぎでてよがった~~~」
「ああ…怖がらせてごめんな」
「シャーロット~~、ごめんね~~~ごめんね~~~転移させてごめんね~~~」
身体全体が震えている。魔導具を破壊した瞬間に見たあの地面の近さ、私はあの恐怖をシャーロットに経験させた。《死の恐怖》《親友シャーロットに経験させた苦しみ》、それらの思いが頭の中で共鳴し、私はその場にいないシャーロットに悔いた。
オトギさんは何も言わず、私を抱きしめてくれた。
「フレヤ、今助けるから~ってあれ? フレヤ? オトギさん?」
「「え?」」
私の正面3m程前方に、突然シャーロットが現れた。
余りにも唐突に出現したため、私もオトギさんも固まったまま。
もしかして、シャーロットも私の危機に気づいて駆けつけてくれたの?
え? 何故、私とオトギさんを見て、顔を真っ青にしているの?
「フレヤが号泣している…両手が血塗れ…オトギさんの服も血だらけ……」
え? え?
シャーロットの身体からドス黒い魔力が漏れてきた。
彼女の表情が、《驚き》から《憤怒》へと変化していく。
「フレヤを虐めたのね。やっぱり、あなたが誘拐犯で全ての黒幕…許せない!」
その言葉を呟いた瞬間、シャーロットの身体からドス黒い魔力が吹き荒れた!
あ!
突然転移魔法で現れたシャーロット、そこで目に映ったのは……
《両手を血だらけにして、オトギさんに抱きつき号泣する私》
《服が血だらけとなっているオトギさん》
勘違いする条件が整い過ぎているわ!
これは……まずい!
11
あなたにおすすめの小説
強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
老聖女の政略結婚
那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。
六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。
しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。
相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。
子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。
穏やかな余生か、嵐の老後か――
四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。
魔法が使えない令嬢は住んでいた小屋が燃えたので家出します
怠惰るウェイブ
ファンタジー
グレイの世界は狭く暗く何よりも灰色だった。
本来なら領主令嬢となるはずの彼女は領主邸で住むことを許されず、ボロ小屋で暮らしていた。
彼女はある日、棚から落ちてきた一冊の本によって人生が変わることになる。
世界が色づき始めた頃、ある事件をきっかけに少女は旅をすることにした。
喋ることのできないグレイは旅を通して自身の世界を色付けていく。
存在感のない聖女が姿を消した後 [完]
風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは
永く仕えた国を捨てた。
何故って?
それは新たに現れた聖女が
ヒロインだったから。
ディアターナは
いつの日からか新聖女と比べられ
人々の心が離れていった事を悟った。
もう私の役目は終わったわ…
神託を受けたディアターナは
手紙を残して消えた。
残された国は天災に見舞われ
てしまった。
しかし聖女は戻る事はなかった。
ディアターナは西帝国にて
初代聖女のコリーアンナに出会い
運命を切り開いて
自分自身の幸せをみつけるのだった。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
召喚されたら聖女が二人!? 私はお呼びじゃないようなので好きに生きます
かずきりり
ファンタジー
旧題:召喚された二人の聖女~私はお呼びじゃないようなので好きに生きます~
【第14回ファンタジー小説大賞エントリー】
奨励賞受賞
●聖女編●
いきなり召喚された上に、ババァ発言。
挙句、偽聖女だと。
確かに女子高生の方が聖女らしいでしょう、そうでしょう。
だったら好きに生きさせてもらいます。
脱社畜!
ハッピースローライフ!
ご都合主義万歳!
ノリで生きて何が悪い!
●勇者編●
え?勇者?
うん?勇者?
そもそも召喚って何か知ってますか?
またやらかしたのかバカ王子ー!
●魔界編●
いきおくれって分かってるわー!
それよりも、クロを探しに魔界へ!
魔界という場所は……とてつもなかった
そしてクロはクロだった。
魔界でも見事になしてみせようスローライフ!
邪魔するなら排除します!
--------------
恋愛はスローペース
物事を組み立てる、という訓練のため三部作長編を予定しております。
異世界ママ、今日も元気に無双中!
チャチャ
ファンタジー
> 地球で5人の子どもを育てていた明るく元気な主婦・春子。
ある日、建設現場の事故で命を落としたと思ったら――なんと剣と魔法の異世界に転生!?
目が覚めたら村の片隅、魔法も戦闘知識もゼロ……でも家事スキルは超一流!
「洗濯魔法? お掃除召喚? いえいえ、ただの生活の知恵です!」
おせっかい上等! お節介で世界を変える異世界ママ、今日も笑顔で大奮闘!
魔法も剣もぶっ飛ばせ♪ ほんわかテンポの“無双系ほんわかファンタジー”開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。