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最終章【ハーゴンズパレス−試される7日間】
《とある未来で起こる殺人事件》 謎解き編-1
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試験2日目の朝が来た。
私達はリビングへと移動して、朝食をとる。
ネルマが【ヒール】を使用し料理自体を浄化したことで、無事に食べ終えることが出来たのだけど、肝心の彼女がMP枯渇でテーブルに突っ伏しグッタリしている。試験中なのだから体力を回復させても、これでは意味がない。
こうなる事がわかっていたからこそ、昨日私が率先して夕食を食べ、毒の有無を確認したのだ。ネルマに頼って毒を無効化するのもアリだけど、それだと私自身が何の努力もしていないと捉えられるからね。
「ネルマ様、お疲れ様でした。こちらはマジックポーションです。毒などは盛っておりませんので、どうぞお飲みください」
ルクスさんは気を利かしてか、MP回復薬を持ってきてくれたけど………怪し過ぎる。ネルマはゆっくりと身体を起こし、彼女を見る。
「あなたの施しはいりません。シャーロット様の仰ったこととはいえ、昨日のようなやり方だと、私の精神が保ちませんから実行したまでです。ほっといて下さい」
ルクスさんの持つマジックポーションが毒の可能性もあるから、警戒心を捨ててはいけない。
「この後、ここで《とある映像》を見てもらいます。思考力が低下している今のままだと、冷静な判断を下せません。私の誇りに誓って言いましょう。これは、マジックポーションです」
ルクスさんの目は、真剣さを物語っている。ネルマもその迫力に押され、かなり怪しみながら渋々薬を飲んでいく。
「ネルマ、身体の調子はどう?」
「あ…回復しました。本物の回復薬だっようです…ルクス…さん…ありがとうございます」
顔色が良くなっている。
本物の回復薬を提供してくれたんだ。
「体調も復帰したようですね。それでは、今から『とある未来の映像』を見てもらいます」
とある未来?
「映像?」
そうか、ネルマはサーベント王国でのクイズイベントを知らないから、言葉自体がわからないよね。首を横にコテンと傾け、意味がわかっていないようだ。
「ネルマ様、《映像》という意味は、後程すぐにわかります。本来、スキル《未来視》の所持者だけが、未来の世界を一瞬だけ垣間見ることを可能にしています。今回、その力を他者に見せられるようにしたのです」
「おお! なんとなくですけど、わかりました!」
質問したいことが山程あるのだけど、多分教えてくれないだろう。
それなら、基本的なことを質問しよう。
「過去ではなく未来ですか?」
「はい、未来です。私達のいる《ここ》が現在、未来はその先に無数にあります。あの方は、無数ある未来から《とあるイベント》を偶々見つけ出したことで、試験に利用することにしたのです」
遺跡の主人は、【未来視】のスキルを持っているの?
でも、頭の中で見た映像をどうやって録画したのだろうか?
そもそも、厄浄禍津金剛のハッキング事件もあって、【未来視】の力は弱体化しているはず。
「私とネルマは、何をすればいいのでしょうか?」
「とあるイベントというのは、 《殺人事件》を指します。あなた方は、壁に投影される映像から犯人を見つけ出してください」
つまり、私達はテレビドラマでいうところの視聴者となり、映像だけで情報を得て犯人を推理するわけね。
「映像時間は、30分となります」
「30分!? いくらなんでも短すぎるのでは!?」
テレビドラマでも、普通1時間はあるよ。
そんな短い時間で、犯人を推理しないといけないの?
「あの方の力であっても、未来の世界を映像としてお見せ出来るのは、30分が限度なのです。なお、この殺人事件は無数ある未来の1つですから、犯人が誰であったとしても、その人物の印象を変えないように」
まるで、私達の知り合いが登場するかのような言い方だな。
「映像を見て、殺人事件の犯人を推理する……未来だから、まだ誰も死んでいないし言ってもいいですよね? 面白そう! シャーロット様、頑張りましょう!」
まだ誰も死んでいないし、とある未来の話だから不謹慎………とは言えないのかな?
「そうだね、頑張ろう」
昨日の試験のテーマは、《警戒心》だった。
今回の試験のテーマは、《思考力と洞察力》かな?
構造解析ばかり使用し物事を解決させているから、そういった力を試されているとみて間違いない。内容としては比較的楽そうだけど、果たしてどんな映像なのだろうか?
○○○
ルクスさんが、リビングの窓全てをカーテンで覆っていく。
部屋全体もそれに合わせて、どんどん暗くなっていく。
ほぼ真っ暗状態となった時、映像が私達の真正面に位置する白い壁全体に現れる。
この場所は、エルディア王国の王都だよね?
ドローンで、高所から都市を撮ったかのような視点となっている。
『《人》が未来へ向かうにあたって、様々な選択肢が常に用意されています。どの選択肢を選ぶのかは自分次第、正しいものもあれば誤った道へと進ませるものもあります。この映像は、今から10年後に起こりえる未来の話。誤った選択肢を選び続けた悲しい人の物語』
声だけが聴こえてくる。
ナレーションを担当する女性は誰なのだろう?
10年後だと、私は20歳か。
瘴気王の件も解決しているから、悠々自適な生活を満喫していると思う。
この映像を見た限り、王都自体は今と大差ない。
選択肢なんて無数にあるのだから、どれが正しいのか間違っているのかなんて、普通わからないよ。まあ、選択する内容にもよるけどね。
あ、映像が切り替わった!
上空からの映像でも、ここが墓場だとすぐにわかる。
湯煙のようなものが画面中央に現れ、少しずつ何かを形成していく。
『聖女代理殺人事件~悲しき恋の結末~』
シャーロットとネルマ
「「え~~~~~~!!!」」
ルクス
「え~~~(さっき確認した時、こんな文字は出なかったのに!? どういうこと!)」
しかも、サスペンスドラマの音楽がタイトルと同時に流れ込んできた!
誰よ、こんな編集をしたのは!?
タイトルだけで、誰が死んだか丸わかりじゃん!
フレヤが、誰かに殺されるの?
というか、ルクスさんも私達と同時に叫ばなかった?
あなたは、事前に見ているはずだよね?
画面が切り替わり、今度は大きな石碑が正面に現れる。
石碑中央には、【聖女代理フレヤ・トワイライト、此処に眠る】と刻まれている。
「シャーロット様、わ…わ…私がいます。しかも、めっちゃ可愛く綺麗な女性になっています」
それを自分で言うか。
「…いるね。その横にいる男性は、アーバンだね」
ネルマは18歳、アーバンは20歳、なんか逆の言い方になるけど、2人とも面影が残っており、立派に成長している。《フレヤ》の葬儀が執り行われているからか、黒服を着用しており、沈痛な面持ちで石碑の近くに立っている。
「これ…本当に未来の映像なんですね。フレヤ様…誰に殺されたのかな?」
「副題が【悲しき恋の結末】である以上、多分彼女と親しい者の犯行だと思う」
あ、ネルマの近くに、私もいた。
うわあ~綺麗だな~ちゃんと聖女としての役目を全うできているのだろうか?
画面が切り替わり、石碑の周囲にいる人物達が正面から見れるようになった。
私・ネルマ・アーバンだけでなく、お父様達・教会関係者・オーキス・リーラ・ミーシャ・オトギさん・トキワさん・コウヤ先生・アッシュさん・リリヤさん、そして見知らぬ大勢の人々、これだけの大人数の中に………フレヤだけがいない。
10年後の話だけど、私の中に大きな喪失感を感じる。
石碑正面にいるヘンデル教皇が語り出す。
『これより、フレヤ・トワイライトの遺灰を石碑の中に埋葬する儀式を行う。全員、黙祷!』
やはり、フレヤが何者かに殺された。
一体、誰が殺したの?
ヘンデル教皇や教会関係者に合わせて、皆も黙祷する。
そして、ヘンデル教皇の指揮で、儀式が健やかに遂行されていく。
全てが終了し、先程まで感じた重苦しい雰囲気が消失した途端、オトギさんが憎しみの篭った目で皆を睨む。
『俺の愛しく大切な【フレヤ】が死んだ。フレヤがいない以上、俺はこの国を去る。だから、ここで言わせてもらおう。シャーロットや貴族や教会連中もいるが、正直知ったことか。誰がフレヤを殺した?』
冷たく重い言葉が、周囲に響く。オトギさんの言葉に、誰も答えようとしない。
皆を代表してか、20歳の私が前に出てきた。
『オトギさん、フレヤ自身も犯人の顔を見ていませんから、私の構造解析でもわかりません。ですから、皆が懸命に今も犯人を探しています』
『シャーロット、お前の言いたいこともわかる。だがな、はっきり言わせてもらおう。フレヤを殺した犯人は、この中にいる。俺は彼女の過去を全て知っている。フレヤと初めて会ってから10年、彼女は強くなったし、誰よりも強い警戒心を持っていた。だから、犯人の顔を見ることもなく、簡単にナイフで殺されたりはしないんだよ。しかも、正面から心臓を刺されている以上、かなりの手練れだ』
フレヤは、オトギさんを惚れさせることに成功したのか。彼の言葉は重く、冷徹な目をしている。犯人が判明した途端、多分即座に殺すだろう。
『私のスキルの効果を知っているものが……フレヤを殺したと?』
『そうだ。シャーロットの構造解析スキルの効果は絶大だが、穴もある。例えば…相手が何の意志も殺意もなく遠距離から時間差攻撃を仕掛けた時、【時間差】とは犯人自身が忘れるくらいの事を指すんだが、その場合犯人自身もフレヤを殺したと把握していないだろ?』
その理論だと、此処にいるメンバーの中でフレヤを殺せる人物は……
「私じゃない!」『私じゃありません!!』
現在と未来のネルマが、同時に語り出す。
「ネルマ、今は映像を見よう。多分、葬儀列席者全員が容疑者だから」
「…はい」
あんな言い方をされたら、ネルマを疑ってしまうよ。
『あくまで、例え話だ。俺が独自で調査した限り、フレヤを殺した犯人は【オーキス】【シャーロット】【リーラ】【ミーシャ】【アーバン】【ネルマ】【アッシュ】【リリヤ】【コウヤ】の誰かだろう。このメンバーなら、フレヤに警戒心を抱かせないからな』
この10年で、アッシュさんやリリヤさんも、フレヤと仲を深めていたのか。名を呼ばれた2人は、堂々と前に出てきた。
うわあ~、アッシュさんは清々しい程の好青年だし、リリヤさんも凛々しく成長している。彼女の顔、現在の穏やかなリリヤさんとプライドの高い白狐童子が1つになったかのような表情をしている。2人の左手薬指には、指輪が嵌められていることから察すると結婚しているのか。
「オトギさん、あなたが俺達を疑うのもわかります」
「でも、私達はフレヤを殺していません。むしろ、フレヤやオーキスから恋愛相談を受けていたくらいですから」
多分、フレヤはオトギさんとの進展について、オーキスは…誰かを好きなっていたのかな?
30分しかない以上、犯人はこの映像に映し出された人物の誰かだと思う。
そうなると、オトギさんの言ったメンバー達の誰かになるのかな?
ルクスさんの反応が気になるところだけど、私達は雑念を一切捨てて、犯人を探し出そう!
私達はリビングへと移動して、朝食をとる。
ネルマが【ヒール】を使用し料理自体を浄化したことで、無事に食べ終えることが出来たのだけど、肝心の彼女がMP枯渇でテーブルに突っ伏しグッタリしている。試験中なのだから体力を回復させても、これでは意味がない。
こうなる事がわかっていたからこそ、昨日私が率先して夕食を食べ、毒の有無を確認したのだ。ネルマに頼って毒を無効化するのもアリだけど、それだと私自身が何の努力もしていないと捉えられるからね。
「ネルマ様、お疲れ様でした。こちらはマジックポーションです。毒などは盛っておりませんので、どうぞお飲みください」
ルクスさんは気を利かしてか、MP回復薬を持ってきてくれたけど………怪し過ぎる。ネルマはゆっくりと身体を起こし、彼女を見る。
「あなたの施しはいりません。シャーロット様の仰ったこととはいえ、昨日のようなやり方だと、私の精神が保ちませんから実行したまでです。ほっといて下さい」
ルクスさんの持つマジックポーションが毒の可能性もあるから、警戒心を捨ててはいけない。
「この後、ここで《とある映像》を見てもらいます。思考力が低下している今のままだと、冷静な判断を下せません。私の誇りに誓って言いましょう。これは、マジックポーションです」
ルクスさんの目は、真剣さを物語っている。ネルマもその迫力に押され、かなり怪しみながら渋々薬を飲んでいく。
「ネルマ、身体の調子はどう?」
「あ…回復しました。本物の回復薬だっようです…ルクス…さん…ありがとうございます」
顔色が良くなっている。
本物の回復薬を提供してくれたんだ。
「体調も復帰したようですね。それでは、今から『とある未来の映像』を見てもらいます」
とある未来?
「映像?」
そうか、ネルマはサーベント王国でのクイズイベントを知らないから、言葉自体がわからないよね。首を横にコテンと傾け、意味がわかっていないようだ。
「ネルマ様、《映像》という意味は、後程すぐにわかります。本来、スキル《未来視》の所持者だけが、未来の世界を一瞬だけ垣間見ることを可能にしています。今回、その力を他者に見せられるようにしたのです」
「おお! なんとなくですけど、わかりました!」
質問したいことが山程あるのだけど、多分教えてくれないだろう。
それなら、基本的なことを質問しよう。
「過去ではなく未来ですか?」
「はい、未来です。私達のいる《ここ》が現在、未来はその先に無数にあります。あの方は、無数ある未来から《とあるイベント》を偶々見つけ出したことで、試験に利用することにしたのです」
遺跡の主人は、【未来視】のスキルを持っているの?
でも、頭の中で見た映像をどうやって録画したのだろうか?
そもそも、厄浄禍津金剛のハッキング事件もあって、【未来視】の力は弱体化しているはず。
「私とネルマは、何をすればいいのでしょうか?」
「とあるイベントというのは、 《殺人事件》を指します。あなた方は、壁に投影される映像から犯人を見つけ出してください」
つまり、私達はテレビドラマでいうところの視聴者となり、映像だけで情報を得て犯人を推理するわけね。
「映像時間は、30分となります」
「30分!? いくらなんでも短すぎるのでは!?」
テレビドラマでも、普通1時間はあるよ。
そんな短い時間で、犯人を推理しないといけないの?
「あの方の力であっても、未来の世界を映像としてお見せ出来るのは、30分が限度なのです。なお、この殺人事件は無数ある未来の1つですから、犯人が誰であったとしても、その人物の印象を変えないように」
まるで、私達の知り合いが登場するかのような言い方だな。
「映像を見て、殺人事件の犯人を推理する……未来だから、まだ誰も死んでいないし言ってもいいですよね? 面白そう! シャーロット様、頑張りましょう!」
まだ誰も死んでいないし、とある未来の話だから不謹慎………とは言えないのかな?
「そうだね、頑張ろう」
昨日の試験のテーマは、《警戒心》だった。
今回の試験のテーマは、《思考力と洞察力》かな?
構造解析ばかり使用し物事を解決させているから、そういった力を試されているとみて間違いない。内容としては比較的楽そうだけど、果たしてどんな映像なのだろうか?
○○○
ルクスさんが、リビングの窓全てをカーテンで覆っていく。
部屋全体もそれに合わせて、どんどん暗くなっていく。
ほぼ真っ暗状態となった時、映像が私達の真正面に位置する白い壁全体に現れる。
この場所は、エルディア王国の王都だよね?
ドローンで、高所から都市を撮ったかのような視点となっている。
『《人》が未来へ向かうにあたって、様々な選択肢が常に用意されています。どの選択肢を選ぶのかは自分次第、正しいものもあれば誤った道へと進ませるものもあります。この映像は、今から10年後に起こりえる未来の話。誤った選択肢を選び続けた悲しい人の物語』
声だけが聴こえてくる。
ナレーションを担当する女性は誰なのだろう?
10年後だと、私は20歳か。
瘴気王の件も解決しているから、悠々自適な生活を満喫していると思う。
この映像を見た限り、王都自体は今と大差ない。
選択肢なんて無数にあるのだから、どれが正しいのか間違っているのかなんて、普通わからないよ。まあ、選択する内容にもよるけどね。
あ、映像が切り替わった!
上空からの映像でも、ここが墓場だとすぐにわかる。
湯煙のようなものが画面中央に現れ、少しずつ何かを形成していく。
『聖女代理殺人事件~悲しき恋の結末~』
シャーロットとネルマ
「「え~~~~~~!!!」」
ルクス
「え~~~(さっき確認した時、こんな文字は出なかったのに!? どういうこと!)」
しかも、サスペンスドラマの音楽がタイトルと同時に流れ込んできた!
誰よ、こんな編集をしたのは!?
タイトルだけで、誰が死んだか丸わかりじゃん!
フレヤが、誰かに殺されるの?
というか、ルクスさんも私達と同時に叫ばなかった?
あなたは、事前に見ているはずだよね?
画面が切り替わり、今度は大きな石碑が正面に現れる。
石碑中央には、【聖女代理フレヤ・トワイライト、此処に眠る】と刻まれている。
「シャーロット様、わ…わ…私がいます。しかも、めっちゃ可愛く綺麗な女性になっています」
それを自分で言うか。
「…いるね。その横にいる男性は、アーバンだね」
ネルマは18歳、アーバンは20歳、なんか逆の言い方になるけど、2人とも面影が残っており、立派に成長している。《フレヤ》の葬儀が執り行われているからか、黒服を着用しており、沈痛な面持ちで石碑の近くに立っている。
「これ…本当に未来の映像なんですね。フレヤ様…誰に殺されたのかな?」
「副題が【悲しき恋の結末】である以上、多分彼女と親しい者の犯行だと思う」
あ、ネルマの近くに、私もいた。
うわあ~綺麗だな~ちゃんと聖女としての役目を全うできているのだろうか?
画面が切り替わり、石碑の周囲にいる人物達が正面から見れるようになった。
私・ネルマ・アーバンだけでなく、お父様達・教会関係者・オーキス・リーラ・ミーシャ・オトギさん・トキワさん・コウヤ先生・アッシュさん・リリヤさん、そして見知らぬ大勢の人々、これだけの大人数の中に………フレヤだけがいない。
10年後の話だけど、私の中に大きな喪失感を感じる。
石碑正面にいるヘンデル教皇が語り出す。
『これより、フレヤ・トワイライトの遺灰を石碑の中に埋葬する儀式を行う。全員、黙祷!』
やはり、フレヤが何者かに殺された。
一体、誰が殺したの?
ヘンデル教皇や教会関係者に合わせて、皆も黙祷する。
そして、ヘンデル教皇の指揮で、儀式が健やかに遂行されていく。
全てが終了し、先程まで感じた重苦しい雰囲気が消失した途端、オトギさんが憎しみの篭った目で皆を睨む。
『俺の愛しく大切な【フレヤ】が死んだ。フレヤがいない以上、俺はこの国を去る。だから、ここで言わせてもらおう。シャーロットや貴族や教会連中もいるが、正直知ったことか。誰がフレヤを殺した?』
冷たく重い言葉が、周囲に響く。オトギさんの言葉に、誰も答えようとしない。
皆を代表してか、20歳の私が前に出てきた。
『オトギさん、フレヤ自身も犯人の顔を見ていませんから、私の構造解析でもわかりません。ですから、皆が懸命に今も犯人を探しています』
『シャーロット、お前の言いたいこともわかる。だがな、はっきり言わせてもらおう。フレヤを殺した犯人は、この中にいる。俺は彼女の過去を全て知っている。フレヤと初めて会ってから10年、彼女は強くなったし、誰よりも強い警戒心を持っていた。だから、犯人の顔を見ることもなく、簡単にナイフで殺されたりはしないんだよ。しかも、正面から心臓を刺されている以上、かなりの手練れだ』
フレヤは、オトギさんを惚れさせることに成功したのか。彼の言葉は重く、冷徹な目をしている。犯人が判明した途端、多分即座に殺すだろう。
『私のスキルの効果を知っているものが……フレヤを殺したと?』
『そうだ。シャーロットの構造解析スキルの効果は絶大だが、穴もある。例えば…相手が何の意志も殺意もなく遠距離から時間差攻撃を仕掛けた時、【時間差】とは犯人自身が忘れるくらいの事を指すんだが、その場合犯人自身もフレヤを殺したと把握していないだろ?』
その理論だと、此処にいるメンバーの中でフレヤを殺せる人物は……
「私じゃない!」『私じゃありません!!』
現在と未来のネルマが、同時に語り出す。
「ネルマ、今は映像を見よう。多分、葬儀列席者全員が容疑者だから」
「…はい」
あんな言い方をされたら、ネルマを疑ってしまうよ。
『あくまで、例え話だ。俺が独自で調査した限り、フレヤを殺した犯人は【オーキス】【シャーロット】【リーラ】【ミーシャ】【アーバン】【ネルマ】【アッシュ】【リリヤ】【コウヤ】の誰かだろう。このメンバーなら、フレヤに警戒心を抱かせないからな』
この10年で、アッシュさんやリリヤさんも、フレヤと仲を深めていたのか。名を呼ばれた2人は、堂々と前に出てきた。
うわあ~、アッシュさんは清々しい程の好青年だし、リリヤさんも凛々しく成長している。彼女の顔、現在の穏やかなリリヤさんとプライドの高い白狐童子が1つになったかのような表情をしている。2人の左手薬指には、指輪が嵌められていることから察すると結婚しているのか。
「オトギさん、あなたが俺達を疑うのもわかります」
「でも、私達はフレヤを殺していません。むしろ、フレヤやオーキスから恋愛相談を受けていたくらいですから」
多分、フレヤはオトギさんとの進展について、オーキスは…誰かを好きなっていたのかな?
30分しかない以上、犯人はこの映像に映し出された人物の誰かだと思う。
そうなると、オトギさんの言ったメンバー達の誰かになるのかな?
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