元構造解析研究者の異世界冒険譚

犬社護

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最終章【ハーゴンズパレス−試される7日間】

事情聴取 謎解き編-2

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フレヤが何者かに殺された。
彼女の遺灰を埋葬後、オトギさんがアッシュさんとリリヤさんを問い詰めているものの、当然2人は反論する。

「オトギさん、俺やリリヤだけでなくシャーロット達も騎士達に尋問され、全てを正直に答えています。あなたの気持ちもわかりますが…」

「アッシュ、はっきり言うぞ。彼女が殺されてから今日で3日目、騎士団や教会関係者だけでなく、コウヤやシャーロットの力を借りても、何の手掛かりも得ていない。どう考えてもおかしいだろ!」

オトギさんが皆に向けて激昂する。
私の力を借りても、犯人の手掛かりがないのはおかしくない?
私には、【簡易神人化】や【簡易神具】スキルがある。

それらを使えば、犯人を容易に見つけ出せるはず。
もしかして、《瘴気王》などの事件の影響で、それらが使用不可になったのかな?

10年後となると、ガーランド様も帰還しているはず、この2つのスキルに関しては世界バランスを壊す危険性もあるから封印したとも考えられる。


「それは……」
アッシュさんも違和感を感じているのか、押し黙ってしまう。

「犯人が知人の中に潜んでいる以上、情報がどこで捻じ曲がるかわからん。だから、俺自らが動く!」

オトギさんの目、あれは本気だ。
犯人は、この中に紛れ込んでいると本気で思っている。

「アッシュ、お前達は恋愛相談を受けていたと言ったな? 内容をこの場で教えろ」

さすがに、大勢の人達の前で恋愛事を暴露するのはダメでしょ?

「アッシュさん、僕は構いませんよ」

オーキス……見た目だけでなく精神的な意味合いでも、今とは比べられない程に大きく成長している。声変わりをしているせいもあるけど、風貌や声の感じから百戦錬磨の強さを窺える。

「わかった。オーキスは自分の婚約者と…フレヤのことで悩んでいました」

アッシュさんはオーキスの真剣さを感じ取ったのか、彼の悩みを語り出す。

「婚約者とフレヤ?」
瘴気王を倒した勇者なんだから、婚約者がいて当然か。
ていうか、婚約者ってリーラかな?

「お前とシャーロットの仲は、誰が見ても良好だろ?」

え、私なの!?
勇者と聖女の婚約…《政略》、《恋愛》どちらなのかな?

オーキスを見ると、全てを話す覚悟ができたのか、オトギさんをじっと見つめている。

「確かに、僕とシャーロットは互いの事を知り尽くしている間柄で、関係も良好です。でも、僕自身は彼女のことで《大きな悩み》を抱えていました」

私との関係で悩み…か。
私とオーキスの関係は、外見だけのハリボテだったのだろうか?

「悩みね。察しはつくが、お前の口から聞きたい」
「僕は【勇者】、シャーロットは【聖女】……勇者は皆を全人類を守る存在です……しかし、実際は逆だ。僕は未だに彼女に護られている」

え、それって子供の頃から把握していることでしょ?
大人になって、なんで悩む必要があるの?

「僕はシャーロットに少しでも近づけるよう、子供の頃から強くなるようガムシャラに努力してきた。しかし…強くなればなるほど、シャーロットとの差が…嫌でもわかるようになるんですよ! 男として愛する女性を守りたいと思う気持ちは、オトギさんもわかるはずだ」

「その気持ちは痛い程わかる。俺は愛する女性を守れなかったがな」

オーキスの語気が、どんどん強くなる。彼が苦渋に満ちた表情を浮かべながら、自分の悩みを吐き出していく。私の強さのことで、そこまで深く悩んでいたとは。成長するにつれて、私との隔たりが果てしなく大きいことを強く実感し、男としてのプライドに悩まされていたのか。

「僕はこの苦しみを誰かに聞いてほしかった。成人する前、リーラに打ち明けたけど、彼女の返答は《男で守られる側なのが、そんなに嫌なの? 別に、シャーロットより弱くてもいいじゃない。もっと前向きに考えなよ。》といった軽いもので、僕の心を満たすものじゃなかった」

あ、その言葉を聞いた瞬間、リーラが俯き…え…泣いているの?

「フレヤだけが…フレヤだけが僕の心を満たす言葉を言ってくれたんです。その日以降、僕の心はシャーロットだけでなく、フレヤにも惹かれ始めた。気づけば、彼女のことも好きになっていたんです」

真っ先に相談するくらいだから、成人前のオーキスにとって、リーラの存在はそれだけ大きかったはずだ。でも、彼女は彼の抱える闇を軽く受け取ってしまい、前向きな言葉しか言わなかった。その件もあって、リーラとの関係は《幼馴染》以上に進展しなかったの?

「軽くなんて…言ってないよ。…私なりに真剣に考え答えたのに…そんな言い方…」

リーラは下に俯き涙を零しながら、ぶつぶつ小声で言葉を発している。
多分、彼女もオーキスの言葉を真剣に聞き入れ、彼女なりの答えを言ったんだ。

リリヤさんが、悲しみに暮れる彼女を抱きしめ慰めている。

オーキス自身も自分の言葉の言い方が悪いと思ったのか、リーラに何か言いたそうにしていたけど、何故か誰もいない方向を見てから《ハッ!》となり、オトギさんの方へ再度向き直す。

「彼女はオトギさんにゾッコンだから振り向くことはないと知っていても、この揺れ動く心に関してはどうしようもなかった。そして、こんな情けない自分をシャーロットに見せたくなかった。だから心を落ち着かせるため、ここ最近は1人で王都を散策したり、ダンジョンに引き籠もり瞑想で心を落ち着かせようと……」

オーキスは情けなくなったのか、急に口籠る。
彼は、私とフレヤで大きく揺れ動いていた。
【未来の私】は、この悩みを元々知っていたのかな?

構造解析スキルを使えば、オーキスの気持ちを簡単に察することもできると思うけど、彼の様子がおかしいと気づいていても…多分使わないだろう。
                                                  
自分を見ると、顔を地面に向けており、この視点からは表情を窺えないけど、身体が少し震えている。この様子だと、オーキスの悩みに気づいている?

「なるほど。……で、フレヤが死んだ以上、お前はシャーロット一筋になるわけだな」

オトギさんは、オーキスを疑っている?
《こんなに悩むくらいなら、一層の事フレヤを殺せば僕も楽になれる》…とでも?

「僕は犯人じゃありません!」
「口だけなら、何とでも言えるな。俺にとって、アリバイなどどうでもいい。魔法やスキルでいくらでも誤魔化せる。オーキス、《フレヤを殺していない》という明確な証拠を示せるのか?」

《自分は犯人じゃない》という証拠なんて、どうやって証明するのよ。

「僕は、2人の女性を愛してしまった。でも!悩みに悩んで、シャーロット1人を生涯愛し抜くと心に決めたんです!フレヤが殺される前日のお昼頃、僕はこの思いを伝えるため、エルバラン家別邸に行きました」

私を生涯愛し抜く…か。
未来の私は、どんな返答をしたのだろうか?

「ただ、僕の様子がおかしいことに、シャーロットも1週間程前から気づいていたんです。ここ最近は会っても口を殆ど聞いてくれませんでした。だから、僕は彼女の部屋入口まで行き、ドア越しからですが自分の思いを全て伝えました」

あれ?
この時点で、私とリーラの様子がおかしい。
2人とも青ざめているし、明らかに動揺している。

「それで、どうなった?」
リーラはリリヤさんに抱きしめられている分、私よりもわかりやすい。
多分、みんなも気づいている。

「『あなたの気持ちはわかったわ。考える時間をちょうだい』と言われ、僕はエルバラン家を離れました」

彼自身も悩んでいたとはいえ、その思いを全部私に告げるとは……未来の私は、どんな気持ちだったのだろう?

今の時点では、オーキスに対して恋愛感情を持っていない。
だからなのか、未来の私の気持ちがわからない。

そもそも、二股をかけていたわけではないのだから、正直に私に言うこともない。だけど、【構造解析】スキルを持っている以上、自分の気持ちは筒抜けだろうと思い、正直に告白したというところか。


そして、私を選んでくれたのだから、《嬉しい》………はず………だよね?


「シャーロット、オーキスの言ったことは事実か?」
私は、どう返答する?

「「あ!!」」
突然、映像が止まった!

「ルクスさん、どうして止めるんですか?」
「そうですよ。もう少しで、犯人がわかるところなのに!」

突然のこともあって、私もネルマも猛抗議する。
映像を見た限り、ここはドラマのクライマックス場面だ。

多分、犯人自身が自首してくるパターンだと思う。
もう少しで犯人もわかるのに、ここで中断されては困る。

「お気持ちもわかりますが、これは試験なんですよ? 『その犯人』をあなた方に突き止めてほしいのですが?」

「「…………」」

そうでした。
ドラマのような展開だったから、ついつい魅入ってしまった。

「止めた理由はもう一つあるのですが、ここでは控えさせてもらいます。さあ、これまでの映像から、犯人を推理してください。ヒントは…ありません」
「「は!?」」

30分程の映像だけで、犯人を当てろと!?
ここまでの映像から、犯人を突き止めることが可能ということなの?

犯人を突き止めるための情報量が、少なすぎる!
一応推理こそ出来るけど、的外れとなる危険性も大いにありうる。

これが試験なのだから、ここまでの情報を整理して推理するしかない。

フレヤを殺した犯人は誰か?

最後の会話内容だけで判断すると、容疑者は『私』『リーラ』『オーキス』に限定されてしまう。
途中、オーキスの視線が誰もいないところを指していたのも気にかかる。

疑問符が、いくつも思い浮かぶ。
ネルマと相談して、犯人を探し出していくしかない。
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