10歳で記憶喪失になったけど、チート従魔たちと異世界ライフを楽しみます(リメイク版)

犬社護

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5章 猫の恩返し

51話 気品あるデザート  *光希視点

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【光希へ】

今日は、色々と大変だったの。
産業スパイが街に入り込んでいて、どこに潜伏しているのかわからないから、猫たちに探してもらうことになったんだ。

その後、なんと私の元婚約者[アレス]と再会したの‼︎
私にとっては初めての出会いだけど、一応再会なのかな?

私自身は何一つ覚えていないから、彼はかなり落ち込んでいたわ。互いの情報を交換したことで、私の現世の家族の状況が悲惨な事態になっていたわ。父方の祖父母は母親に殺されて、その母親が使用人に殺されていたの。唯一無事なのが兄2人、今は平民になって生活しているんだって。

現世の家族に関しては殺されたと聞いても、私の心に全然響かないのが不思議だわ。むしろ、心が少しホッとした感覚があるの。[もう、これで2度と関わることはない]と思ったせいなのか、私の中にいるリリアーナが完全に吹っ切れたのかもしれないわ。

今の私にとって、アレスの方が重要だよ。

彼は王都の民を夢中にさせる気品ある料理をフェスタ中に探し出してこいって、父親から言われたらしいの。とりあえず、リットのいる定食屋[ガブリ]に行ったのだけど、提供されている料理自体が、全て王都にもあって、彼を満足させることはできなかった。アレスから味の意見を聞いたリットもかなりご立腹だったけど、店の味に関しては褒められているから怒るに怒れなかったわ。

彼自身は、気品あるデザートを求めているようだけど、私の思いつくものといえば、[たこ焼き][たい焼き][クレープ][ベビーカステラ][りんご飴][チョコバナナ][綿菓子][冷やしパイン]くらいなんだ。光希の方で、露店でも調理しやすいデザート類を探してくれないかな。できれば、レシピも教えてほしい。

【咲耶】


○○○


「なに~~~姉さんに婚約者だと~~~」
「まだ、10歳なんだぞ‼︎」

今日の夕方、お姉ちゃんから連絡が来たのだけど、お母さんに伝えた時は、「あらあらまあまあ、咲耶は元伯爵令嬢だから、もしかしたらと思っていたけど、本当にいたのね~。どんな子なのかしら~~~」と言って喜んでいたのに、夕食後に内容をお父さんとお兄ちゃんに伝えると、お母さんとは正反対の大声を出し、怒りを露わにしている。

どうして、そんなに怒るの?

お母さんから[婚約者]の意味を教えてもらったけど、将来の結婚相手なんだよね。日本では考えられないらしいけど、異世界では10歳で結婚相手を決められるんだ。親同士で決められることもあれば、きちんと自分たちで話し合って決めることもできるんだね。

「もうお父さん、お兄ちゃん、私の話をちゃんと聞いて‼︎ お姉ちゃんは平民という身分になったから、[元]婚約者と再会したんだよ」

「「あ…」」

フードフェスタに関しては前の連絡で聞いていたけど、今日届いた内容は色々と衝撃的だった。

① お姉ちゃんの家族の現状
② 野良猫の力を借りて、産業スパイを見つけ出す
③ [アレス]という元婚約者と再会した
④ お友達となったアレス君の力になってあげたい。差し当たっては、彼の求める料理を探し出すか、作り出す

お姉ちゃんも、お人好しだな~。
アレス君の課題なんだから、そんなの放っておけば良いのに。
それに、日本の猫たちと違って、異世界の猫は賢いな~。
どうやって広い街の中から、スパイを見つけ出すのかな?

「姉さんの元婚約者、どんな男なのか気になるな。添付ファイルは…ないのか」
「光希…」
「絶対に嫌‼」︎  

お兄ちゃんとお父さんから何を言われるのかわかったから、私はそっぽを向いた。どんな男の子か気になるから、写真を撮って送ってくれって言うつもりなんだ。

それって、失礼な行為だよ‼︎
お姉ちゃんに嫌われたくない‼︎

「まずは、アレス君とお友達から始めていくようね。仲が深まれば、写真も届くかもしれないわ。気長に待ちましょう。それはそうと、彼の求めるデザート類、何が良いかしら?」

お母さん、問題はそこだよ‼︎
比較的安価、気品あるデザート、露店で作れるもの。

お姉ちゃんの思いついた料理は、[たこ焼き][たい焼き][クレープ][ベビーカステラ][りんご飴][チョコバナナ][綿菓子][冷やしパイン]で、私でも知っているありふれたものばかりだった。

そもそも、これらは全部美味しいけど、気品あるものかな?

「お母さん、貴族の人って[たこ焼き][たい焼き]なんて食べるかな?」

「庶民の料理だけど、あれらに気品があるのかと問われると困るわね。そもそも、デザートかどうかも怪しいわ」

だよね。高級レストランとかで提供されているデザートって、見ただけで気品あるものと私でもわかるけど、露店で出されるものなのに、それを必要とする意味がわからないよ。貴族って、変な人が多いのかな?

「姉さん、思いついた8品を書いたようだけど、肝心のことを2つ見落としている」
「お兄ちゃん、肝心なことって?」

何を見落としているのかわからないので、私は首をコテンと傾ける。

「1つ目は、これらの料理が既にリバイブルド王国に存在しているのか?」

「あ、そうか‼︎」

あの世界にはお姉ちゃんと同じ転生者がいるのだから、既に国内で開発されているかもしれない。

「2つ目は、材料だ。リリアムの街に、たこ焼きの材料となる海の生物[蛸]を入手できるとは思えない。あの街は内陸部にあるから、海産物系はないに等しい。それは、これまでの交流で明らかだ。他にも、餡やリンゴ、バナナ、チョコを入手できるのかも問題だ」

お兄ちゃんに言われて、ハッとなった。言われてみれば、材料を調達できなければ、料理自体を作れないよ。

「う~ん、気品ある料理、比較的安価でどの街でも入手しやすく、貴族にも好まれるものとなると、この中では一つしかないな」

あ、それは私も思った。

「もしかして……」

私がその料理名を告げると、お兄ちゃんは私の頭を撫でた。

「正解だ。ただ、必要材料や調理器具類を安価で入手できるかが問題だな」

[あれ]なら、気品あるデザートになるよね。
私の大好物だ。
早速、お姉ちゃんに教えてあげよう。

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