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第一章 不遇からの脱出
八話 仕組まれた罠
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試験の合図が聞こえ、全員が動揺している間に、キューブは元の状態がわからないほど完全にバラけていた。外の絵だけに囚われていたら、九十分以内に揃えることは困難でしょうね。
私が考え事をしていると、私の足に温かい何かが触れた。
「熱‼︎ これってまさか温水!? 何処からか、流れてきているの? でも、シールドがあるから侵入できないはず……まさか、部屋の床全体から滲み出てきているの?」
多分、お湯の温度は四十五度くらいかしら?
ただでさえ室内がスチームサウナ状態なのに、ここにきて下からお湯が襲ってくるとは思わなかった。まずいわ…長引けば、脱水症状や熱中症になってしまう。それに、このお湯自体も無害とは限らない。下手に飲んでしまえば、腹を下す可能性だってある。
「熱‼︎ 下からお湯だと!?」
「ウィンドル様、早い段階で揃えましょう。そうしないと、魔法で身体を冷やしているとはいえ、魔力に限界が来てしまいます」
「わ、わかっている!!」
ミルフィア様が心配して声をかけているのに、兄はぶっきらぼうに返事をしている。
まあ、何も文句を言わないだけマシなんだけど。
私の場合、九十分どころか、多分三十分も怪しい。
この気温さえ低下してくれれば……待てよ……そもそも今の湿度は100%に近いし、気温も四十度近い。湿度の基になっている大気中の水分の分子運動を減少させれば、フロア全体は無理でも、シールドに覆われている範囲内であれば、私の拙い技術でもなんとかできるかもしれない。
よし、シールドの特性を逆に利用してやる‼︎
このままじゃあ、脱水症状となる可能性が極めて高い。
一か八かやってみよう。
魔法を使用したことはないけど、その分私には知識がある。まずは、無属性の魔力を水蒸気へと変換させる。分子運動の詳細に関してはよくわからないから、鈍く動いているイメージにすればいいかな。私の魔力は目覚めたばかりだから、まだ属性だってあやふやなはずよ。イメージを強くすれば、必ず水に変換できる。目覚めたばかりだと魔力の総量だって少ないだろうけど、私の周囲にだけ拡散させるだけであれば、ある程度保つはず。
「お願い…上手くいって‼︎」
私は目を閉じ、今思いついた構想を実現させるため、イメージを強く持ち、魔力を拡散させる。すると、私を中心にひんやりしたものが拡散されていき、周囲の温度が急激に低下していく。
「よし‼︎ あとは、この冷気を少しずつ拡散させ、風で私の周囲を対流させればいい」
《風》と《水》、二つの属性の同時行使、目覚めたばかりの私では厳しいかもと思っていたけど、力も安定している。これまで知識ばかりを集めていた甲斐があった。
あとは……私はキューブの置かれていた台座を見つめる。お湯の温度が熱いし、私は裸足だから、今の段階で身体に影響が出てきている。他の皆は靴を履いているだろうから、影響も出にくいだろうけど、時間の問題ね。
「台座に乗って組み上げていくしかない」
私は、台座の上に乗る。魔力がない分、身体を常に鍛えておいたし、体幹も強くなっているから、ここでも十分対応できる。今の時点で十分はロスしているから、急いで組み上げていこう。
私は目を閉じ、冷気を循環させながらキューブ内部へ魔力を流し、中の状況を探る。かなりバラバラとなっているけど、これを少しずつ組み立てていけばいい。ただ、私のように環境に適応できさえすれば、パズルを九十分以内に組み上げることは可能だと思うけど、帰還者がゼロである以上、誰も成功していないということになる。
「何か…起こるかもしれない。とにかく、今はパズルの事だけを考えましょう」
私は集中して黙々と作業を続けていく。ルー○ッ○キューブに関しては、地球でも遊んだことがある。ネットで攻略法を見て勉強したこともあるから、一般人よりもかなり速く組み上げることもできるけど、このキューブに関してはかなり特殊だから、何処まで通用するのかわからない。
【十五分経過。パズルをバラす】
「「「「え!?」」」」
あ、キューブが勝手に浮き上がり、せっかく組み上げてきたものが、より複雑にばらされていく!!
「おい、どういうことだ!!」
「そうよ!! ただでさえ蒸し暑くてぼうっとするのに、こんな姑息な罠まで用意しているのなら、前もって言ってくださいよ!!」
兄とクリス様が、揃って文句を言っている。
【私は事前に《何かを仕掛ける》と言ったはずだが? それを聞いていなかった貴様らが阿呆なだけだ】
こいつ…一言でこの空気をぶった斬ったわ。
確かに、そんな事を言っていた気もするけど、私も完全に聞き流していたわ。
《蒸し暑い部屋》
《迫り来る床からのお湯》
《試験による緊張感》
《シールドによる圧迫感》
《姑息な罠》
この試験で問われているのは、強靭な精神力と頭の柔軟性だわ。
自分の築いてきた物理や魔法の強さは通用しない。
これまでの候補者たちも感情を撹乱させられてしまい、外と内から判断力と思考力を鈍らせることで、キューブに吸収されてしまったのね。
実質十五分以内に、このパズルを完成させろということか。
あ、卑怯な仕掛けが、これだけとは思えない‼︎
「ねえ、デモンズキューブと言われる格式高い悪魔さんが、私たちに気づかれないよう、上から刃物を落としたり、1ピースを1マスずつずらしたり、完成と思った途端ばらすといった《せこい技》を仕掛けて来ないわよね? 始めから継承者なんて探す気がなく、弄ぶだけ弄んで絶望で悔しがる人間たちの表情を堪能したら、部屋全体を湯で満たして溺死させるとかは企んでないわよね?」
私の言いたいことを理解したのか、誰も喋ろうとしない。
【ふふふあははは、面白い、実に面白い。其方のように、我らに歯向かう人間は久しぶりだ。良いだろう、そういった小細工を抜きにして、湯の流出と十五分間隔にパズルをばらすギミックだけを取り入れて進めていこう。ここ以降、私は一切何もしない。その上で、九十分以内に完成させてみせろ。必ず帰還させてやる。悪魔に二言はない】
つまり、そういった小細工をやるつもりだったのね。もしかして、ただパズルを組み立てるだけでは、絶対に帰還できなかったんじゃあ……今はパズルのことだけを考えましょう。
今の発言だけで、三分をロスしたわ。
残り十二分…どうする?
今から始めても、絶対に間に合わない。
ならば、残り時間を使ってキューブ内部を徹底的に分析しよう。
前世で培った技術を完全に思い出して、次に備えよう。
こんな悪魔に負けてたまるもんですか!!
貴重な十二分を糧にして、キューブ内部の分析を行い、完成までの最短手数を計算していく。完成図のパターンはきっちりと記憶しているから、そこへ戻すようにしないといけないのだけど、その分析時間も考慮しても十五分以内に終わらせるのは至難の技だ。しかも、私の中から魔力が消費されつつあるし、今の体調を考慮すれば、次かその次あたりで完成させないと、効率性が格段に落ちていく。
時折、皆が文句を言う声も聞こえ、集中が途切れる時もあるけど、こういった雑音を全て無視しないと絶対に十五分で解けない。
となると……次が勝負ね。
私が考え事をしていると、私の足に温かい何かが触れた。
「熱‼︎ これってまさか温水!? 何処からか、流れてきているの? でも、シールドがあるから侵入できないはず……まさか、部屋の床全体から滲み出てきているの?」
多分、お湯の温度は四十五度くらいかしら?
ただでさえ室内がスチームサウナ状態なのに、ここにきて下からお湯が襲ってくるとは思わなかった。まずいわ…長引けば、脱水症状や熱中症になってしまう。それに、このお湯自体も無害とは限らない。下手に飲んでしまえば、腹を下す可能性だってある。
「熱‼︎ 下からお湯だと!?」
「ウィンドル様、早い段階で揃えましょう。そうしないと、魔法で身体を冷やしているとはいえ、魔力に限界が来てしまいます」
「わ、わかっている!!」
ミルフィア様が心配して声をかけているのに、兄はぶっきらぼうに返事をしている。
まあ、何も文句を言わないだけマシなんだけど。
私の場合、九十分どころか、多分三十分も怪しい。
この気温さえ低下してくれれば……待てよ……そもそも今の湿度は100%に近いし、気温も四十度近い。湿度の基になっている大気中の水分の分子運動を減少させれば、フロア全体は無理でも、シールドに覆われている範囲内であれば、私の拙い技術でもなんとかできるかもしれない。
よし、シールドの特性を逆に利用してやる‼︎
このままじゃあ、脱水症状となる可能性が極めて高い。
一か八かやってみよう。
魔法を使用したことはないけど、その分私には知識がある。まずは、無属性の魔力を水蒸気へと変換させる。分子運動の詳細に関してはよくわからないから、鈍く動いているイメージにすればいいかな。私の魔力は目覚めたばかりだから、まだ属性だってあやふやなはずよ。イメージを強くすれば、必ず水に変換できる。目覚めたばかりだと魔力の総量だって少ないだろうけど、私の周囲にだけ拡散させるだけであれば、ある程度保つはず。
「お願い…上手くいって‼︎」
私は目を閉じ、今思いついた構想を実現させるため、イメージを強く持ち、魔力を拡散させる。すると、私を中心にひんやりしたものが拡散されていき、周囲の温度が急激に低下していく。
「よし‼︎ あとは、この冷気を少しずつ拡散させ、風で私の周囲を対流させればいい」
《風》と《水》、二つの属性の同時行使、目覚めたばかりの私では厳しいかもと思っていたけど、力も安定している。これまで知識ばかりを集めていた甲斐があった。
あとは……私はキューブの置かれていた台座を見つめる。お湯の温度が熱いし、私は裸足だから、今の段階で身体に影響が出てきている。他の皆は靴を履いているだろうから、影響も出にくいだろうけど、時間の問題ね。
「台座に乗って組み上げていくしかない」
私は、台座の上に乗る。魔力がない分、身体を常に鍛えておいたし、体幹も強くなっているから、ここでも十分対応できる。今の時点で十分はロスしているから、急いで組み上げていこう。
私は目を閉じ、冷気を循環させながらキューブ内部へ魔力を流し、中の状況を探る。かなりバラバラとなっているけど、これを少しずつ組み立てていけばいい。ただ、私のように環境に適応できさえすれば、パズルを九十分以内に組み上げることは可能だと思うけど、帰還者がゼロである以上、誰も成功していないということになる。
「何か…起こるかもしれない。とにかく、今はパズルの事だけを考えましょう」
私は集中して黙々と作業を続けていく。ルー○ッ○キューブに関しては、地球でも遊んだことがある。ネットで攻略法を見て勉強したこともあるから、一般人よりもかなり速く組み上げることもできるけど、このキューブに関してはかなり特殊だから、何処まで通用するのかわからない。
【十五分経過。パズルをバラす】
「「「「え!?」」」」
あ、キューブが勝手に浮き上がり、せっかく組み上げてきたものが、より複雑にばらされていく!!
「おい、どういうことだ!!」
「そうよ!! ただでさえ蒸し暑くてぼうっとするのに、こんな姑息な罠まで用意しているのなら、前もって言ってくださいよ!!」
兄とクリス様が、揃って文句を言っている。
【私は事前に《何かを仕掛ける》と言ったはずだが? それを聞いていなかった貴様らが阿呆なだけだ】
こいつ…一言でこの空気をぶった斬ったわ。
確かに、そんな事を言っていた気もするけど、私も完全に聞き流していたわ。
《蒸し暑い部屋》
《迫り来る床からのお湯》
《試験による緊張感》
《シールドによる圧迫感》
《姑息な罠》
この試験で問われているのは、強靭な精神力と頭の柔軟性だわ。
自分の築いてきた物理や魔法の強さは通用しない。
これまでの候補者たちも感情を撹乱させられてしまい、外と内から判断力と思考力を鈍らせることで、キューブに吸収されてしまったのね。
実質十五分以内に、このパズルを完成させろということか。
あ、卑怯な仕掛けが、これだけとは思えない‼︎
「ねえ、デモンズキューブと言われる格式高い悪魔さんが、私たちに気づかれないよう、上から刃物を落としたり、1ピースを1マスずつずらしたり、完成と思った途端ばらすといった《せこい技》を仕掛けて来ないわよね? 始めから継承者なんて探す気がなく、弄ぶだけ弄んで絶望で悔しがる人間たちの表情を堪能したら、部屋全体を湯で満たして溺死させるとかは企んでないわよね?」
私の言いたいことを理解したのか、誰も喋ろうとしない。
【ふふふあははは、面白い、実に面白い。其方のように、我らに歯向かう人間は久しぶりだ。良いだろう、そういった小細工を抜きにして、湯の流出と十五分間隔にパズルをばらすギミックだけを取り入れて進めていこう。ここ以降、私は一切何もしない。その上で、九十分以内に完成させてみせろ。必ず帰還させてやる。悪魔に二言はない】
つまり、そういった小細工をやるつもりだったのね。もしかして、ただパズルを組み立てるだけでは、絶対に帰還できなかったんじゃあ……今はパズルのことだけを考えましょう。
今の発言だけで、三分をロスしたわ。
残り十二分…どうする?
今から始めても、絶対に間に合わない。
ならば、残り時間を使ってキューブ内部を徹底的に分析しよう。
前世で培った技術を完全に思い出して、次に備えよう。
こんな悪魔に負けてたまるもんですか!!
貴重な十二分を糧にして、キューブ内部の分析を行い、完成までの最短手数を計算していく。完成図のパターンはきっちりと記憶しているから、そこへ戻すようにしないといけないのだけど、その分析時間も考慮しても十五分以内に終わらせるのは至難の技だ。しかも、私の中から魔力が消費されつつあるし、今の体調を考慮すれば、次かその次あたりで完成させないと、効率性が格段に落ちていく。
時折、皆が文句を言う声も聞こえ、集中が途切れる時もあるけど、こういった雑音を全て無視しないと絶対に十五分で解けない。
となると……次が勝負ね。
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