婚約破棄を卒論に組み込んだら悪魔に魅入られてしまい国から追放されました

犬社護

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第二章 波乱の魔導具品評会

十六話 悪魔からの贈り物

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 この世界に、スキルやステータスという概念は存在しない。
 あるのは、《魔法》《ギフト》《プライズ》という三つの名称。

《魔法》
人が文明を高度化させるため開発したもの。自らの魔力を練り込み、詠唱でイメージを増幅形成させ、外へと顕現させる。基本属性は火・水・風・地の四つ、そこから上位に炎・氷・嵐・大地の四属性がある。これらを基に派生した複合属性や、希少属性と呼ばれるものもあるけど、多くの人々が扱えるのはこの基本属性やその上位ね。

《ギフト》
神々からの贈り物と言われ、その効果も千差万別ある。この力を得たものは巨万の富を築けると言われているが、一度その力が王族貴族に知られてしまうと搾取される傾向があり、持ち主は皆その力をひた隠しにして生きている。集められた数少ない情報によると、ギフトは善良な人々に与えられると推測されている。

《プライズ》
悪魔から勝ち取った景品と呼ばれており、主にキューブから得た力を指す。その力は、戦闘系もあれば薬剤系、商売系、建築系といった具合で多種多様にある。こちらも効果次第で、搾取される傾向があるものの、ギフトと違い、野心家で強欲、支配欲の強い者が力を得る場合もあるため、自らが王族貴族に接触して、搾取されるどころか、搾取する側になる場合もあるという。何故、こんな物がこの世に存在しているのか、その理由は未だに不明である。

 自分のステータスを数値化して見ることができないから、私の持つ魔力量がどの程度あるのかは感覚で、どの属性を所持しているのかは、魔導具か魔法で把握するしかない。

 ただし、例外もある。

 ギフトやプライズの効果次第で、ステータスのような画面が現れるらしい。私は私室にて、王城にある資料室から借りてきた資料を読みながら、こうした知識をどんどん深めていく。

「ティアナ様、風邪が治ったばかりなんですから、あまり無理をなさってはいけませんよ。こちらを飲んで休憩なさって下さい」

 資料を読む私の隣に、ルミアが温かいカモミールティーを置いてくれた。私は資料から目を離し、それを一口だけ飲み、ここまで起きた出来事を振り返る。

 あのデモンズキューブ事件から三日が経過し、私は王城の私室にて静養したこともあり、体調は万全となる。昨日、お父様が私の部屋へ訪れた時は驚いたけど、父の真の姿があんな親バカだと思わなかったわ。

 六歳までの記憶はあやふやだから、私も殆ど覚えていないけど、十五歳になって高い高いされるとは思わなかった。あの後きちんと話し合ったことで、正式に和解して、お母様やクエンタとも話し合い、久しぶりに家族との会話を楽しめた。

 ウィンドルお兄様たちは、昨日から学園に復帰している。ミルフィア様やクリス様はいいとして、兄はキューブの件で自尊心を激しく傷つけられたはずだけど、もう復帰しているのだから凄い。

・私とミルフィア様を生贄にして、キューブを解放した。キューブの発言により、元々お兄様自身も生贄に含まれていた事を知り、願い自体がなんの意味も為していなかった。この解放の件を、私からの願いで四人だけの秘密とした。

・自分だけ九十分以上かかり、私によって生かされた、この経緯が彼の自尊心を大きく壊した。

 お父様たちからは、ウィンドルお兄様とも和解するよう勧められたけど、正直厳しいと思う。私からはいつでも話を進めることは可能だけど、お兄様の方が問題よね。機会を窺って、私から話しかけてみよう。

 デモンズキューブの件に関しては現在も会議中で、今は周辺諸国にどう説明するかを議論し合っている段階だ。それも最終段階となっているので、今後は国際会議にて、正式に発表する予定となっている。当初、私の病気の件もあって慌ただしい状態が続いたものの、病気の治療方法と今回実施された試験方法と結果を詳細に説明したことで、皆も納得し、私への評価もどん底から這い上がりつつある。

 継承者(仮)に関しては秘密だけど、悪魔に気に入られた以上、皆が私とどう接したらいいのか困っているらしく、そこはお父様がカバーしてくれた。

『私を含め、普段から娘を陰で罵っている者に関しては、悪魔から鉄槌が振り下ろされるかもしれん。それを恐怖しているのなら、今後二度と陰で虐げないことだ。娘自身も、罰を下すつもりは毛頭ないと宣言しているから問題ないだろう』
 
 事件以降、お父様は人が変わったかのように、諸侯たちに私への溺愛をアピールしている。正直、少し恥ずかしいくらいに。その変わり身の速さでも、悪魔が何も言わないので、皆が私を見ても怖がらなくなった。

 こうして落ち着きを取り戻し、平穏な日常を迎えられそうと思った矢先、事件から三日後の早朝、すなわち今日目覚めた瞬間に、あのデモンズキューブの声が聞こえた。

【たった今、ティアナに力を与えた。プライズの名称は《次元設計士》、その力で魔物を創り、世界を支配するもよし、人々に混乱を与え、全世界を戦火に落とすもよし、貴様の少ない魔力で好きにするといい。一年間、我の継承者として相応しい行動をとれば、(仮)を外し、より強大な力を与えよう】

 その言葉の後、私の目の前に《プライズメニュー》という大きな画面が出現する。そこには、悪魔から譲渡されたプライズの名称と説明が表記されていた。

プライズ【次元設計士】
画面上で、自分の望むものを設計図として詳細に描きあげることが出来れば、それを顕現させるための必要な材料が提示される。その材料を画面内のプライズホールへ放り込み、必要な魔力量を充填することで、理論上所持者の求める全てのものを創作することが可能となる。
*現在、(仮)のため、キューブからの魔力供給は遮断されている。

 私は、急ぎお父様とお母様のもとへ向かい、人払いをしてもらい、この力の名称と効果について説明した。あの画面には、私の現在の魔力量も記載されており、数値は《126》となっていたので、それが多いのか少ないのかを知るため、自分の属性や魔力量を測定する魔導具をルミネに持って来てもらい、その場で測定を行った。

 すると、属性は《風・水・空間》の三つ、魔力量に関しては十歳児並みということが判明する。属性は通常個人に一つと言われており、私のような複数の属性持ちは極めて珍しい。特に、レア属性の一つとされている《空間》を持つ者は非常に少なく、収納魔法を習得できることから、かなり重宝されている。デモンズキューブの件もあるため、ほとぼりが冷めるまでは、《空間》を秘匿扱いにすることが決定した。

 そして、王族以外の《見張り》《護衛》《協力者》という三つの役割を兼ね備えた者が、私に就くこととなる。その人物とは、私のメイド《ルミネ》である。王族を除けば、心の底から信頼の置ける人物、護衛としての実力を持つ者は彼女一人しかいない。元々、私付きの護衛兼メイドでもあるため、私的には非常に助かる。私の力を説明する際、お父様とお母様だけでなく、彼女にも同席してもらっている。

 こうして物思いに耽ることで改めてわかるけど、本来なら《目覚めた魔力で多くの魔法を習得したい‼︎》と意気込むところを、継承者(仮)の誓約のせいで、プライズの方を先に使いこなさないといけない。

 今後、誘拐される危険性もあるし、少ない魔力量で何を創造できるのかを試したい。悪魔の言う通りに動くのは癪だけど、これで一年間何も動かなければ、器としての適正なしとみなされ、多分私は悪魔に食われてしまうのだから。

「はあ~次元設計士か~」

 何だか憂鬱になってきたので、私は深い溜息を吐く。

「扱いづらいプライズなのですか?」

 私の様子が気になったのか、ルミネが心配してくれている。
 そういえば、試験の際に行使した魔法のことを説明したら、彼女に怒られてしまった。

『今のティアナ様の魔力器官は、六歳の頃と同じですから、当面の間、複数属性の同時行使だけは絶対禁止です。最悪…魔力が暴走して死にますよ』

 私自身、それを深く理解しているのだけど、あの状況ではそうせざるをえなかったのよね。ただ、彼女がここまで親身になって言うのだから、私も素直に反省した。

「いいえ、使い方を読んだ限り、非常に扱いやすいプライズよ。所持者のやり方次第で、平凡にもなるし、脅威にもなる代物ね。でもさ、あの悪魔が私に取り憑いている以上、こいつの気に入りそうな何かを創造しないと、私は一年後に食われるのよ」

 悪魔が気にいる行為って、相場が決まっているのよね。
 それを察したのか、ルミネの顔が曇る。

「一応、卒業論文を完成させ、私の評価を上げ、周囲を笑わせ、悪魔が気に入りそうな《策》を一つ思い付いてはいるんだけど……」

「え‼︎ そんな名案があるのに、何か問題があるのですか?」

 この策を実行すると、一人の人物の人生が大きく左右される。その者の行動次第で、その後どうなるのかも大きく変化する。それが未知数である以上、私としても躊躇してしまう。それに今の段階では、色々と嫌な思い出こそあるけれど、その人のことをそこまで嫌っていない。

 明日から学園に復帰するし、私の注目度もどれだけ上がっているのかも気にかかる。その人物も私に接触して、何か仕掛けてくるかもしれない。
今は、様子を見よう。
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