婚約破棄を卒論に組み込んだら悪魔に魅入られてしまい国から追放されました

犬社護

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第二章 波乱の魔導具品評会

二十四話 焦るウィンドル *ウィンドル視点

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○○○ 誘拐から翌朝、学園内の客室にて

「『お・前・は・馬・鹿・か? 魔・導・具・製・作・を・舐・め・る・な。もう容赦はしない。絶望を与えてやるから覚悟しておけ』、これが姫さんから依頼された伝言内容だ」

 馬男の放つ人を小馬鹿にする動作と言葉で、私は激昂する。

「ふ…ふ…ふざけるな~~~‼︎」

 あの女~、設計図と材料を与えているにも関わらず、なんだその言い草は!?
 そもそも、自分が描いた設計図だろうが!!
 それなら容易に製作できるだろうが!!

 二週間前、ティアナの言葉が気にかかり、クラブ部長のベイツに進捗度を問い詰めたら、魔導具製作が行き詰まり、クラブメンバー総出で取り掛かっても、完成の目処がたたない状況だと聞かされた。魔導具を組み上げても、想定内の機能が発揮しない。しかも、部員の一人が大怪我を負い、今は皆が怖がってしまい、現在動いているのはベイツを含め四人だけだ。

 だから、今になってティアナを誘拐して、魔導具を製作させようと思ったのに、あの女は怖がるどころか、この俺を脅してくるだと!? 

 キューブに気に入られているのなら、何らかの力をもらっているはずだ。それを使えば、容易に出来るだろうが!! 内容を伝えにきたSランク冒険者も、俺に素顔を見せることなく、敬意すら払っていない。それどころか、俺を馬鹿にしている節がある。

「それと、もう二点言いたいことがある。一つ目、あの廃屋をセッティングしたのは誰だ?」

 突然、何を言い出すんだ?
 
「王城を警備する三名の騎士だ。任務内容も、『倉庫から魔導具製作に関わる必要器材を持ち出し、設計図と材料の入った箱と共に、指定する廃屋の地下部屋へ保管しろ』というものだ。私が魔導具クラブのメンバーを支援することも伝えていて、そこで極秘裏に魔道具製作の実験を執り行うと言いくるめている。誘拐やその後の見張りの件にしても、君以外は仲介人を経由しているから問題ない。それがどうかしたのか?」

 下手に魔導具の知識を持っている奴に任せたら、設計図の意味を理解して、そのままトンズラする危険性もあるから、何の知識も持っていない騎士たちに任している。万が一、ということも起きないだろう

「ああ、なるほどね。(聞いた限りじゃあ、おかしな点もない。ということは、三名の騎士たちの誰かがヘマをしたってことか。面白そうだから黙っておこう)。二つ目だが、姫さん自身は、一階にいる奴らを蹴散らす力を有していないが、絶対的な強い自信を持っている。今の状況に恐れを抱くことなく、あんたをどうやって懲らしめるかだけを考えている。その証拠に、姫さんは依頼料として、これを俺に支払った」

 馬男は懐から小さな塊を取り出したが、私は何か気にかかり、それを凝視する。

「おい…それって…まさか…」
「材料の中に入っていたミスリルの塊だ。彼女は、あんたの脅しに絶対に屈しない」

 あの女~、キューブに気に入られて以降、ますます生意気になっていく。
 このままでは、ベイツたちが品評会に出席したとしても、恥を晒すだけになる。
 なんとしても、ティアナにあの魔導具を製作させないと。

 そして、中等部の奴らには恥を掻いてもらうためにも、製作中の魔導具を完成させるわけにはいかん。既に手を打ってはいるが、未だに成功の連絡が来ない。

「表情だけで何を考えているのか丸わかりだ。たった一人の妹に、いいように弄ばれるとはね。ああ~情けねえ、これが王位継承者第一位の男の本性か」

 不意に放った馬男の言葉に、私は言葉を失う。
 今、こいつは堂々と私を馬鹿にしたのか?

「貴様……う!!」

 なんだ、この重苦しい雰囲気は? 
 私だけでなく、後方に控える私の護衛も動けず、身体を震わせている。
 これが、強者だけが放てる【威圧】というものか。

 不思議だ…威圧されたせいか、怒りに激っていた私の身体が急速に冷やされていく。靄のかかった視界が急速に晴れ渡るような感覚、冷静さを取り戻すと同時に、あの威圧が消える。

「俺なりに調べさせてもらったよ。姫さんがデモンズキューブに気に入られ、あんたも焦っているんだろう? 魔導具盗難事件に直接関与こそしていないようだが、あんたはそれを利用して、姫さんの名誉を打ち砕こうと企んでいる。盗難するだけならいいが、そこに高等部の連中を巻き込むな。今なら、まだ間に合うぞ」

 こいつも、ティアナと同じ事を言う。
 もう遅い…もう遅いんだよ。

 私が品評会の審査員達に中等部の状況をそれとなく伝えることで、焦りを生じさせた。これにより奴らは、厳重保管されている設計図を盗み出し、それを無記名で高等部の魔導具クラブへ寄贈させた。ベイツ達はあの魔導具の虜となり、意地でも完成作用と躍起になっている。

 私にも責任があるから、少しでも彼らの力になろうと思い、ティアナ誘拐を企んだ。
 もう……引き返せない。
 ここまで来たら、必ず成功させる。

「悪いな、それはできない相談だ」

 馬男はそう返事するとわかっていたのか、深いため息を吐く。

「互いに話し合って、和解しろよ。世界で確立されている貴族の魔力至上主義、平民の俺らから言わせて貰えば、人の優劣を魔力だけで判断するのもどうかと思うぞ?」

 そんな事は、私自身が一番理解している。だが、その主義自体が世界中に蔓延している以上、王族の俺からそれをぶち壊す言葉など言えん。

 それにティアナと和解しろだって?
 今更、そんなことできるわけないだろ?
 俺は弟のクエンタと違って、あいつをずっと本気で精神的に虐げてきた。

 課題を解決させようと躍起になっても、あいつはケロッとした顔ですぐに最善策を思いつき、その都度私は敗北感を味わう。

 キューブ事件では、俺との差が如実に現れた。
 あいつは、間違いなく俺より優秀だ。
 だが、俺にだって、これまで築いてきた実績と誇りがある。
 父上や母上、臣下の者たちも、俺の中にある王の器を認めてくれている。
 だからこそ、継承権争いにだけは負けたくない。

 今の俺の頭の中にあるのは、彼女に負けたくないという思いのみ。
 どんな事をしてでも、必ず勝つ‼︎
 国王になるのは、この私だ‼︎

「頑固だね~。それじゃあ、俺からも一つだけ忠告しておこう。ウィンドル・アレイザード、あんたは王として相応しい器を持っているが、たった一つの弱点がある。それは、《精神的脆さ》だ。他者を慈しむ心を持っていても、自分自身をしっかり制御できなければ、いずれ利用され、傀儡の王となるだろう。【自分に対する煽り耐性を身につけろ】【視野を広げろ】。それが出来れば、王としての器がより大きく成長するだろう」

 私は、この国の第一王子だ。 
 誰もが私を敬い、次代国王として推してくれている。
 この男、馬のマスクのせいで表情はわからないが、私を王族としてではなく、一人の人間として接してくれている。たとえ、Sランクという強者であっても、王族を怒らせたら、冒険者としての業務に支障を及ぼす。

 それを恐れる事なく、私に助言を与える。
 この男は信用できる。
 私は試されているのか?

《精神的脆さ》《煽り耐性》《視野の広さ》、そこまではっきりと言われたことはなかった。

 それを克服すれば、私も次代国王として成長するということか。
 精神面を鍛えれば、ティアナにも勝てるのだろうか?

 だが、品評会に関しては、もう引くに引けない状況だ。
 ベイツたちには、なんとしても魔導具を完成させてもらいたい。

 そして、誘拐したティアナの方も、魔導具の一部だけでも製作させる。
 多少手荒い手段を用いてでもだ‼︎
 
 う…頭が!?

 く……だが馬男の言う通り、私は自分の欲望に、側近でもない無関係の友人たちを巻き込んでいる。

 これは事実だ。
 その代償だけは、支払わねばならない。
 その機会は、品評会当日に必ず訪れるだろう。
 
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