11 / 30
11話 カード戦士、《聖獣パピヨン種フィリアナ》を蘇生させる
しおりを挟む
《フィリアナ視点》
ここは何処じゃ?
白い空間じゃが、地面だけが黒い海と化している。
水深が五センチ程と浅いこともあって、妾のような小型種であってもなんら問題無いレベルじゃが、周囲には誰もおらん。
「む、獣人化できん。水深が浅いとはいえ、あまり濡れたくないのに…どういうことじゃ?全く濡れておらん? これは、黒い水のはず?」
まあ、濡れないしいいかの。
それにしても、妾は獣化した状態で、魔物に見つからぬよう《潜伏》や《隠蔽》スキルを行使し、日向ごっこをしていたはずじゃ。
あの時……そうじゃ!
王都ブルセイドへ向かっている途中、少し疲れたこともあって、森の中に入り木の上を登って、聖獣形態で日向ごっこをしていたんじゃ。しばらくすると、やや遠方で、濃密な魔物の気配を感じた。魔物ランクでいえば三等星、その近辺に人の気配をいくつも感じたから、討伐を彼らに任せ、妾はそのまま昼寝を続行したのじゃ。
しかし、五分程経過すると、普段とは異なる不穏な風の流れを感知したから、何事かと思いキョロキョロと周囲を観察すると、突然火の玉が上空に現れ、妾目掛けて落下してきて直撃した。
木から落ち、全身火に包まれ、あまりの熱さと痛さのせいで地面を転げ回った。突然の急襲、一刻も早くその場から逃れようと思い、《獣人化》や《回復魔法》を使おうとしたが、あまりの激痛のせいで集中できなかったんじゃ。仕方ないから、聖獣形態のままで逃げようとしたところ、おかしな女が現れた。
「見つけたわ、聖獣フィリアナちゃん!」
女は焼け爛れた妾を見て、一目で聖獣と見抜いた。
しかも、名前まで当てよった!
母上のような《天眼》スキルがあれば女の記憶を覗けたが、今の妾にはそこまでの力がない。痛みの中、なんとか《透視》スキルで女のステータスを見たが、鑑定スキルのようなものは持っておらんかった。
普段の妾なら、そういったスキルを持っていなくとも聖獣と見抜けるじゃろうが、焼けただれた姿を見て、何の迷いもなく聖獣と言ってのける女に恐怖したんじゃ。火魔法による攻撃、その後すぐに女が現れたこと、タイミングが合いすぎていたからこそ、この女が犯人だと思った。決定的なことは、あの女が放った言葉じゃ!
「フィリアナ、私は光魔法の使い手なの。あなたを治療するから、従魔契約の方、宜しくね♡♡♡」
あの女の薄気味悪い笑顔とあの言葉を聞いた瞬間、背筋がゾクッとした。じゃから、妾は咄嗟に聖魔法《ミストフォッグ》を使って、あの女から逃げたんじゃ。後方から追いかけてくる女、我が身に疼く熱さと激痛、内と外の恐怖に耐えながら森を走りまわり、この事態を引き起こしたあの女を強く憎悪しながら、途中で力尽きたんじゃ。
「妾は死んだ…のか?」
こんな死に方…あんまりじゃろ?
妾を産んでくれた母上に、申し訳ない。
「妾の人生……ここが終着点なのか?」
これまでの生き様が、頭に想い浮かんでくる。
通常、聖獣種はビーストウォーリアーといった戦士職を女神から貰い受けるのじゃが、聖獣の中でも超小型のパピヨン種に入る妾の職業だけは、《アニマルセラピー》という特殊なものじゃった。力がない反面、回復系のスキルや魔法に特化している職業じゃ。この力のおかげで、時折里に訪れる呪いや病気で苦しむ人達を魔法で解放してあげたのじゃが、それが仇となったのか、妾は三十五歳の時に誘拐され、その際、隷属用の首輪を嵌められ、スキルも魔法も封印されてしもうた。
狭い檻に何ヶ月も閉じ込められ、行き着いた先は岩壁だらけの広い部屋じゃった。檻から解放されると、獣人化だけは何故か使用できるようになっていたから、棚に並べられている多くの本を読んだ。一日一回支給される新聞を全て読んだりしたことで、辛うじて正気を保てたが、窓もなく寂しい空間で、ず~っと何者かに妾のスキルや魔法を使われているかのような不快感を味わい続けたのじゃ。
人と接する機会は一日に食事支給の三回だけ、かなり豪華な食材が使用されていたためか、全てが美味で、食事面においては然程苦にならなかった。ただ、人ともっと話したいこともあり、配給時少しでも獣人や聖獣形態の妾の存在を印象付けようと、話し方も今のように変化させたこともあって、色々と事情を知ることもできた。全て人間側の身勝手な都合であったため、当初憤っていたものの、どうあってもこの生活からは逃がれられないと悟ったこともあり、妾はじっと脱走できる機会を待った。
この監禁生活も約七十年くらい続いたが、唐突に終わりを告げる。
見知らぬ騎士が獣人形態の妾を見つけてくれたのじゃ。妾の自由を奪う枷を全て破壊してくれたことで七十年ぶりに陽の光を浴びたのじゃが、外はクーデターの真っ最中、大変騒がしいものじゃった。騎士の男は妾の正体に気づいておらず、奴隷として囲われていた子供という認識じゃった。妾はそれを利用して、少しの金銭を貰い、身嗜みを整え聖獣と悟られぬよう、【故郷】へ帰るための旅を始めた。どうやらかなり遠い異国へ連れ去られていたようで、里のあるブルセイド王国に到達するまで、戦争などの足留めもあって七年の年月をかけてしもうた。
妾は早く母上に会いたいと思う気持ちが強かったせいもあり、隣街から王都へと続く街道を使用しなかった。二つの街の間は深い森があり、それが行く手を遮っておった。森内には獰猛な魔物が棲息しているため、普通の者達であれば森を通らない迂回路(街道)を使う。じゃが、それだと馬車で四日程かかってしまう。
じゃから危険を承知で、森を突き抜けるルートを選んだ。妾には《潜伏》《隠蔽》といった存在感を消す遮断系スキルをいくつも持っておる。魔物と遭遇しない自信もあった。全てが順調に進み、あと少しで森を抜け出るところだったのに……そう、あと少しで母上や仲間達に再会できると思っていたのじゃ!
【なのに、あの女によって、全てが台無しにされた!】
久しぶりに聖獣状態で寝たことが、仇となったか。
いや、獣人形態でも同じ末路になっていたかの。
潜伏や隠蔽スキルで魔物には見つからなくとも、あんな不意打ちの魔法には対応できん。
あの女…許せん、絶対に許せん!
どうやって妾の位置を突き止めたのかもわからんが、主従契約を結びたいのなら、普通に話しかけてくればいいじゃろうが!
あの女、ようも妾を殺してくれたな!
許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん……
「え、なんじゃこれは!?」
黒い水だったものが、突然ウネウネと細長い触手となって、妾に巻きついてきた。
「離せ! ぐううぅぅぅ~、なんじゃ…この感覚は…」
巻きつかれた瞬間、身体の中に何かドス黒いものが入ってくるではないか。締め付けの力も強いし、妙に弾力があって噛み千切れん。
『あの女が憎いのじゃろ? それなら殺せばいい。妾達の力を受け入れろ』
なんじゃ、この声は!?
触手の一部が、小さな妾となって語りかけてくる!
ドス黒い何かが、妾の心に浸潤してくる!
『あの女は、監禁生活を強いられたあの者達と同じ欲望の亡者じゃ。妾を回復させないよう不意を突き火達磨にさせ、弱体化させてから無理矢理契約を結ぼうとした。なんとか逃げ切れたが、途中で力尽き死んだ。あんな卑怯者は殺してしまえ!殺せ殺すんじゃ!』
「あ…あ…そう…じゃ。あの女が…妾を殺した。絶対に許さん。顔も匂いも、もう覚えた。何処にいようとも、必ず見つけ出して…殺してやる!」
妾の中に、強い殺意が芽生え、ドス黒く変貌していく。
このまま身を任せ……
『フィリアナ!』
この声は……母上?
「母上…妾は…死にました。でも…死にきれない。あの女を…」
『フィリアナ、大丈夫です。あなたは、まだ完全に死んだわけではありません。私の声が聞こえているのなら、魂が身体の中に入っている証拠です』
あ、母上のおかげで、妾の中からドス黒いものが抜けていく。
母上がそう言うのなら、妾はまだ死んでいないのか?
でも、いつまで経っても目覚めないのは何故じゃろう?
あ、あの煩わしかった触手も消えておる。
『フィリアナ、【フィックス】という男性が今からあなたに蘇生……魔法を施します。あなたの見ている景色の中で、淡い緑の光が出現したら、必ずそれに飛び込みなさい』
蘇生魔法!?
母上ですら習得しておらん究極魔法を使用できる者が、ブルセイド王国内にいたのか!
『フィックスの扱う魔法は、かなり特殊です。生き返らせる代償として、あなたは彼の従魔になりますが安心しなさい。《天眼》で見た限り、彼は心の清い男性です。あの方は仲間に裏切られ、パーティーを追放されてしまい、現在ソロで活動しています。あなたの全てを見られたとしても、フィックスならきちんと受け止めてくれます。だから、彼と共に行動しなさい』
生き返らせる代償として従魔になる……そんな蘇生魔法を聞いたことがないのじゃが? その男も、妾と同じソロで活動しておるのか。《従魔》という言葉に若干の刺を感じるものの、母上が天眼を通して、その男の心を覗き、その人柄を認めたのなら妾とて構わない。
「母上、妾はその男を…見てみたい!」
妾がそう判断すると同時に、天空から一筋の紐がゆっくりと降りてきた。紐自体が、淡く緑の光を放っておる。今の妾は聖獣状態だから、これに噛みつけばいいのかの?
『フィリアナ、フィックスならば、必ずあなたを幸せに導いてくれるでしょう』
「母上、ありがとう!」
妾が紐に噛みつくと、何者かが紐をゆっくりと引き上げていく。それと同時に、妾の身体も黒い水から引き離されていく。
「あ、何故じゃろう? さっきまでの憎しみがどんどん薄れていく。妾の身体が浄化されておるのか?」
フィックスという男は、何者なんじゃ?
母上も認めた男に会ってみたい。
ああ、暖かい光が妾を覆っていく。
眩しすぎて、もう目を開けられん。
妾は、どうなるんじゃろう?
ここは何処じゃ?
白い空間じゃが、地面だけが黒い海と化している。
水深が五センチ程と浅いこともあって、妾のような小型種であってもなんら問題無いレベルじゃが、周囲には誰もおらん。
「む、獣人化できん。水深が浅いとはいえ、あまり濡れたくないのに…どういうことじゃ?全く濡れておらん? これは、黒い水のはず?」
まあ、濡れないしいいかの。
それにしても、妾は獣化した状態で、魔物に見つからぬよう《潜伏》や《隠蔽》スキルを行使し、日向ごっこをしていたはずじゃ。
あの時……そうじゃ!
王都ブルセイドへ向かっている途中、少し疲れたこともあって、森の中に入り木の上を登って、聖獣形態で日向ごっこをしていたんじゃ。しばらくすると、やや遠方で、濃密な魔物の気配を感じた。魔物ランクでいえば三等星、その近辺に人の気配をいくつも感じたから、討伐を彼らに任せ、妾はそのまま昼寝を続行したのじゃ。
しかし、五分程経過すると、普段とは異なる不穏な風の流れを感知したから、何事かと思いキョロキョロと周囲を観察すると、突然火の玉が上空に現れ、妾目掛けて落下してきて直撃した。
木から落ち、全身火に包まれ、あまりの熱さと痛さのせいで地面を転げ回った。突然の急襲、一刻も早くその場から逃れようと思い、《獣人化》や《回復魔法》を使おうとしたが、あまりの激痛のせいで集中できなかったんじゃ。仕方ないから、聖獣形態のままで逃げようとしたところ、おかしな女が現れた。
「見つけたわ、聖獣フィリアナちゃん!」
女は焼け爛れた妾を見て、一目で聖獣と見抜いた。
しかも、名前まで当てよった!
母上のような《天眼》スキルがあれば女の記憶を覗けたが、今の妾にはそこまでの力がない。痛みの中、なんとか《透視》スキルで女のステータスを見たが、鑑定スキルのようなものは持っておらんかった。
普段の妾なら、そういったスキルを持っていなくとも聖獣と見抜けるじゃろうが、焼けただれた姿を見て、何の迷いもなく聖獣と言ってのける女に恐怖したんじゃ。火魔法による攻撃、その後すぐに女が現れたこと、タイミングが合いすぎていたからこそ、この女が犯人だと思った。決定的なことは、あの女が放った言葉じゃ!
「フィリアナ、私は光魔法の使い手なの。あなたを治療するから、従魔契約の方、宜しくね♡♡♡」
あの女の薄気味悪い笑顔とあの言葉を聞いた瞬間、背筋がゾクッとした。じゃから、妾は咄嗟に聖魔法《ミストフォッグ》を使って、あの女から逃げたんじゃ。後方から追いかけてくる女、我が身に疼く熱さと激痛、内と外の恐怖に耐えながら森を走りまわり、この事態を引き起こしたあの女を強く憎悪しながら、途中で力尽きたんじゃ。
「妾は死んだ…のか?」
こんな死に方…あんまりじゃろ?
妾を産んでくれた母上に、申し訳ない。
「妾の人生……ここが終着点なのか?」
これまでの生き様が、頭に想い浮かんでくる。
通常、聖獣種はビーストウォーリアーといった戦士職を女神から貰い受けるのじゃが、聖獣の中でも超小型のパピヨン種に入る妾の職業だけは、《アニマルセラピー》という特殊なものじゃった。力がない反面、回復系のスキルや魔法に特化している職業じゃ。この力のおかげで、時折里に訪れる呪いや病気で苦しむ人達を魔法で解放してあげたのじゃが、それが仇となったのか、妾は三十五歳の時に誘拐され、その際、隷属用の首輪を嵌められ、スキルも魔法も封印されてしもうた。
狭い檻に何ヶ月も閉じ込められ、行き着いた先は岩壁だらけの広い部屋じゃった。檻から解放されると、獣人化だけは何故か使用できるようになっていたから、棚に並べられている多くの本を読んだ。一日一回支給される新聞を全て読んだりしたことで、辛うじて正気を保てたが、窓もなく寂しい空間で、ず~っと何者かに妾のスキルや魔法を使われているかのような不快感を味わい続けたのじゃ。
人と接する機会は一日に食事支給の三回だけ、かなり豪華な食材が使用されていたためか、全てが美味で、食事面においては然程苦にならなかった。ただ、人ともっと話したいこともあり、配給時少しでも獣人や聖獣形態の妾の存在を印象付けようと、話し方も今のように変化させたこともあって、色々と事情を知ることもできた。全て人間側の身勝手な都合であったため、当初憤っていたものの、どうあってもこの生活からは逃がれられないと悟ったこともあり、妾はじっと脱走できる機会を待った。
この監禁生活も約七十年くらい続いたが、唐突に終わりを告げる。
見知らぬ騎士が獣人形態の妾を見つけてくれたのじゃ。妾の自由を奪う枷を全て破壊してくれたことで七十年ぶりに陽の光を浴びたのじゃが、外はクーデターの真っ最中、大変騒がしいものじゃった。騎士の男は妾の正体に気づいておらず、奴隷として囲われていた子供という認識じゃった。妾はそれを利用して、少しの金銭を貰い、身嗜みを整え聖獣と悟られぬよう、【故郷】へ帰るための旅を始めた。どうやらかなり遠い異国へ連れ去られていたようで、里のあるブルセイド王国に到達するまで、戦争などの足留めもあって七年の年月をかけてしもうた。
妾は早く母上に会いたいと思う気持ちが強かったせいもあり、隣街から王都へと続く街道を使用しなかった。二つの街の間は深い森があり、それが行く手を遮っておった。森内には獰猛な魔物が棲息しているため、普通の者達であれば森を通らない迂回路(街道)を使う。じゃが、それだと馬車で四日程かかってしまう。
じゃから危険を承知で、森を突き抜けるルートを選んだ。妾には《潜伏》《隠蔽》といった存在感を消す遮断系スキルをいくつも持っておる。魔物と遭遇しない自信もあった。全てが順調に進み、あと少しで森を抜け出るところだったのに……そう、あと少しで母上や仲間達に再会できると思っていたのじゃ!
【なのに、あの女によって、全てが台無しにされた!】
久しぶりに聖獣状態で寝たことが、仇となったか。
いや、獣人形態でも同じ末路になっていたかの。
潜伏や隠蔽スキルで魔物には見つからなくとも、あんな不意打ちの魔法には対応できん。
あの女…許せん、絶対に許せん!
どうやって妾の位置を突き止めたのかもわからんが、主従契約を結びたいのなら、普通に話しかけてくればいいじゃろうが!
あの女、ようも妾を殺してくれたな!
許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん許せん……
「え、なんじゃこれは!?」
黒い水だったものが、突然ウネウネと細長い触手となって、妾に巻きついてきた。
「離せ! ぐううぅぅぅ~、なんじゃ…この感覚は…」
巻きつかれた瞬間、身体の中に何かドス黒いものが入ってくるではないか。締め付けの力も強いし、妙に弾力があって噛み千切れん。
『あの女が憎いのじゃろ? それなら殺せばいい。妾達の力を受け入れろ』
なんじゃ、この声は!?
触手の一部が、小さな妾となって語りかけてくる!
ドス黒い何かが、妾の心に浸潤してくる!
『あの女は、監禁生活を強いられたあの者達と同じ欲望の亡者じゃ。妾を回復させないよう不意を突き火達磨にさせ、弱体化させてから無理矢理契約を結ぼうとした。なんとか逃げ切れたが、途中で力尽き死んだ。あんな卑怯者は殺してしまえ!殺せ殺すんじゃ!』
「あ…あ…そう…じゃ。あの女が…妾を殺した。絶対に許さん。顔も匂いも、もう覚えた。何処にいようとも、必ず見つけ出して…殺してやる!」
妾の中に、強い殺意が芽生え、ドス黒く変貌していく。
このまま身を任せ……
『フィリアナ!』
この声は……母上?
「母上…妾は…死にました。でも…死にきれない。あの女を…」
『フィリアナ、大丈夫です。あなたは、まだ完全に死んだわけではありません。私の声が聞こえているのなら、魂が身体の中に入っている証拠です』
あ、母上のおかげで、妾の中からドス黒いものが抜けていく。
母上がそう言うのなら、妾はまだ死んでいないのか?
でも、いつまで経っても目覚めないのは何故じゃろう?
あ、あの煩わしかった触手も消えておる。
『フィリアナ、【フィックス】という男性が今からあなたに蘇生……魔法を施します。あなたの見ている景色の中で、淡い緑の光が出現したら、必ずそれに飛び込みなさい』
蘇生魔法!?
母上ですら習得しておらん究極魔法を使用できる者が、ブルセイド王国内にいたのか!
『フィックスの扱う魔法は、かなり特殊です。生き返らせる代償として、あなたは彼の従魔になりますが安心しなさい。《天眼》で見た限り、彼は心の清い男性です。あの方は仲間に裏切られ、パーティーを追放されてしまい、現在ソロで活動しています。あなたの全てを見られたとしても、フィックスならきちんと受け止めてくれます。だから、彼と共に行動しなさい』
生き返らせる代償として従魔になる……そんな蘇生魔法を聞いたことがないのじゃが? その男も、妾と同じソロで活動しておるのか。《従魔》という言葉に若干の刺を感じるものの、母上が天眼を通して、その男の心を覗き、その人柄を認めたのなら妾とて構わない。
「母上、妾はその男を…見てみたい!」
妾がそう判断すると同時に、天空から一筋の紐がゆっくりと降りてきた。紐自体が、淡く緑の光を放っておる。今の妾は聖獣状態だから、これに噛みつけばいいのかの?
『フィリアナ、フィックスならば、必ずあなたを幸せに導いてくれるでしょう』
「母上、ありがとう!」
妾が紐に噛みつくと、何者かが紐をゆっくりと引き上げていく。それと同時に、妾の身体も黒い水から引き離されていく。
「あ、何故じゃろう? さっきまでの憎しみがどんどん薄れていく。妾の身体が浄化されておるのか?」
フィックスという男は、何者なんじゃ?
母上も認めた男に会ってみたい。
ああ、暖かい光が妾を覆っていく。
眩しすぎて、もう目を開けられん。
妾は、どうなるんじゃろう?
0
あなたにおすすめの小説
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
《完結》「パパはいますか?」ある日、夫に似た子供が訪ねて来た。
ヴァンドール
恋愛
嫁いですぐに夫は戦地に赴いた。すると突然一人の男の子が訪ねて来た「パパはいますか?」
その子供の顔は戦地に行った夫にそっくりだった。
辺境に追放されたガリガリ令嬢ですが、助けた男が第三王子だったので人生逆転しました。~実家は危機ですが、助ける義理もありません~
香木陽灯
恋愛
「そんなに気に食わないなら、お前がこの家を出ていけ!」
実の父と義妹に虐げられ、着の身着のままで辺境のボロ家に追放された伯爵令嬢カタリーナ。食べるものもなく、泥水のようなスープですすり、ガリガリに痩せ細った彼女が庭で拾ったのは、金色の瞳を持つ美しい男・ギルだった。
「……見知らぬ人間を招き入れるなんて、馬鹿なのか?」
「一人で食べるのは味気ないわ。手当てのお礼に一緒に食べてくれると嬉しいんだけど」
二人の奇妙な共同生活が始まる。ギルが獲ってくる肉を食べ、共に笑い、カタリーナは本来の瑞々しい美しさを取り戻していく。しかしカタリーナは知らなかった。彼が王位継承争いから身を隠していた最強の第三王子であることを――。
※ふんわり設定です。
※他サイトにも掲載中です。
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
旅する書斎(☆ほしい)
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
田舎娘、追放後に開いた小さな薬草店が国家レベルで大騒ぎになるほど大繁盛
タマ マコト
ファンタジー
【大好評につき21〜40話執筆決定!!】
田舎娘ミントは、王都の名門ローズ家で地味な使用人薬師として働いていたが、令嬢ローズマリーの嫉妬により濡れ衣を着せられ、理不尽に追放されてしまう。雨の中ひとり王都を去ったミントは、亡き祖母が残した田舎の小屋に戻り、そこで薬草店を開くことを決意。森で倒れていた謎の青年サフランを救ったことで、彼女の薬の“異常な効き目”が静かに広まりはじめ、村の小さな店《グリーンノート》へ、変化の風が吹き込み始める――。
「魔道具の燃料でしかない」と言われた聖女が追い出されたので、結界は消えます
七辻ゆゆ
ファンタジー
聖女ミュゼの仕事は魔道具に力を注ぐだけだ。そうして国を覆う大結界が発動している。
「ルーチェは魔道具に力を注げる上、癒やしの力まで持っている、まさに聖女だ。燃料でしかない平民のおまえとは比べようもない」
そう言われて、ミュゼは城を追い出された。
しかし城から出たことのなかったミュゼが外の世界に恐怖した結果、自力で結界を張れるようになっていた。
そしてミュゼが力を注がなくなった大結界は力を失い……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる