邪神を喰った少女は異世界を救済します

犬社護

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2章 テルミア王国 スフィアート編

大聖堂へ

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冒険者ギルドに到着し、中に入ると係りの人以外、誰もいなかった。え、何これ?受付の男性に理由を聞いてみた。

「今日到着したばかりか、なら知らなくて当然だな。今日になって緊急依頼が出されたんだ。報酬は金貨100枚」

「100枚!依頼内容はどんなものなんですか?」

「我がスフィア教の聖女、アイリス様の捜索さ。行方不明になって3日経っているらしい。始めは、スフィア教の騎士団達だけで捜索していたらしいが全く見つからず、3日目になって冒険者ギルドに緊急依頼が来たんだ」

成る程、それで冒険者全員、アイリスの捜索をしているのか。

「街の外も捜索しているんですか?」

「もちろんだ。だが、今の所、手掛かりはゼロ。アイリス様はどこにいるのか、みんな心配しているんだよ。君達もアイリス様を見つけたら、すぐに大聖堂に連れ戻してくれ」

その後、おすすめの宿屋を聞いたところで、冒険者ギルドを離れた。

「お姉様!、大変な事になってます。私、戻ります」

街の聖魔法の事を知っているか誘導してみるか。

「駄目よ。まだ、何もわかっていない状態で戻ったら今度こそ、邪族に殺されるわ。恐らく、この街の中に邪族は入れない。だから、人間を操って、あなたを転移させ、大森林で殺そうとした。今、戻ったら、もっと遠い場所へ転移させられる」

「う、確かに、この街の歴史上、これまで邪族が侵入した事は1度もありません。四方を魔法(邪法)耐性を付与させた壁に囲まれてますし厳重ですからね。---わかりました、我慢します」

嘘は言ってないわね。聖魔法のことは知らないのか。他の人達はどうなのだろうか?スフィア教のトップである教皇は知っているのかしら?今度、大聖堂に侵入して問い詰めてみようかしら。冗談だけどね。

宿屋の近くに行くと、鍛冶屋があった。

「フィン、イリス、疲れてるところ悪いけど、先に鍛冶屋に行きましょう。武器を作ってもらわないとね」

「師匠の剣ですか?」

「フィンのミスリルの爪よ。『サンダーファング』が予想以上に強力ね。このままだと、予備の鉄の爪もあるけど、あと数回で壊れるわね。早いうちに作っておきましょう」

「良いんですか!ありがとうございます」

鍛冶屋に入ると、ドワーフの夫婦がいた。髭もじゃの男性がドルク、女性がイルミという名前で、仲睦まじい夫婦だ。お互いの自己紹介を済ませ、早速要件に入った。

「ドルクさん、このミスリルを使って、フィンの爪を作ってもらいたいんです」

「ほう、この子が使うのか?どれ、両手を見せてくれ。ふむ、なかなか鍛えておるな。今使っているのは、この鉄の爪か。これは、長く保たんな。相当強力な技を使えるみたいだな」

「どのくらいかかりますか?」

「そうだな、今すぐ始めても3日程かかるな。ただ、この鉄の爪を借りれば、フィンの手の重心や癖がわかるから、より精密なものが出来るがどうする?」

3日か。結構、早く出来るんだ。

「わかりました。鉄の爪は予備がありますのでお渡しします」

前金金貨10枚を渡し、ドルクさんとイルミさんにお礼を言い、鍛冶屋を離れた。


目的の宿屋に到着し部屋に入った。するとイリスは気が抜けたのか、すぐに寝入ってしまった。

「イリス、疲れてたんですね。無理もないですよ。あの----」

フィンの口を左手で塞いだ。そして、右手の人差し指を自分の口に当てた。

「それ以上、言っちゃ駄目よ。操られた人間が、どこかで聞き耳を立てているかもしれないからね」

黙って頷いたので手を話した。

「すいません、師匠」

「イリスも寝ているし、フィンにだけ言っておくわ。この街が今まで、なぜ邪族に襲われなかったかの件についてよ」

「え、それは魔法(邪法)耐性と警備が厳重だからでは?」

「そんな訳ないでしょ。強力な邪法でも使えば、壁を壊せるし、上空から侵入可能よ。邪族が侵入出来ない原因はただ1つ、街全体に聖魔法『クリーチャーリーブ』が施されているのよ」

「え、でも、それならイリスが知らないのはおかしくないですか?それに、邪族も侵入出来ないなら、邪法で人間を操れないのでは?」

「恐らく極秘にしているんだわ。スフィア教のトップ連中にしか伝わってないのかもね。公にしてしまうと、どこかの悪党に利用される可能性があるし、一般人も邪族を今以上に警戒しなくなってしまうからね。イリスも聖女だけど、まだ11歳だから話してないのかもしれない。邪法の件については、まだなんとも言えないわね。聖魔法『クリーチャーリーブ』に何か問題が発生した可能性もあるし」

「しばらくは、調査をしないといけませんね。今日はどうしますか?」

「フィンは、ここでイリスと休憩していて。あなたもゴブリンナイトと戦って、かなり疲れてるでしょ。危険に陥ったら、私を念じなさい。時空魔法『瞬間移動』ですぐに駆けつけるから」

ちなみに時空魔法『瞬間移動』は短距離の移動方法、『転移』は長距離の移動方法だ。

「わかりました。正直、かなり疲れてました。お言葉に甘えさせてもらいます」

「私は、1度、大聖堂に行ってみるわ。一般人でも入れる区画があるみたいだし、軽く情報収集しておくわ。今後、邪族がどう動いてくるかわからないからね。夕食までに戻れない可能性もあるから、一応お金を渡しておくわ」

フィン、イリスと別れ宿屋を出て、大聖堂へ向かった。それにしても、聖魔法があるのに、どうして邪族は邪法で人間を操れたのかしら?これだけ広範囲な聖魔法を制御するには相当な魔導具が必要となる。もしかしたら、魔導具自体に綻びが発生し、その隙間を縫って邪法を使ってきたのかもしれない。その場合、魔導具を修理しないといけないのだけど、肝心の設置場所がわからない。何か巧妙に隠しているわね。スフィアートでの邪族の目的は、多分その魔導具の破壊と並行して聖女アイリスの抹殺、そしてスフィアートの陥落だ。幸い、向こうはアイリスを殺したと思って、魔導具の破壊に集中しているはず。こちらも早く魔導具の設置場所を把握して修理しないと。一番手っ取り早いのは、スフィア教トップの教皇を拉致し脅して、設置場所を聞くだけなんだけど、それやったら邪族と変わらないよね。


それにしても、冒険者の人達は、みんなアイリスを探しているのよね。金貨100枚となると動くわよね。あ、あそこの露天商の年配の女性に、現在の状況を聞いてみよう。せっかくだし、果物も買って上げよう。

「おお、こんなに買ってくれてありがとうね、お嬢ちゃん」

「私、今日ここに来たばかりなんで状況が良く分からないのですが、冒険者の皆さん、誰かを探しているんですか?」

「ああ、アイリス様だよ。3日前から行方不明になったんだ。騎士団が今日になって、冒険者ギルドに緊急依頼を出したのさ。ただ、こんな事言いたくないけど、もうアイリス様は------」

この人、何か知っているわね。

「何か知っているんですか?」

「ああ、私はこの目で見たんだ。アイリス様は、朝の礼拝堂へのお祈りを毎日欠かさずやっていてね。丁度、その日は私も礼拝堂でお祈りしていたんだよ。そうしたら、急に目の前でアイリス様が消えたんだ。私以外にも見た人は何人かいたよ」

イリスが言っていた事と一致するわね。問題は、その後ね。

「アイリス様が消えた後で、いつもと違う行動をとった人はいませんでしたか?」

「いつもと違う行動?うーん、そうだね、強いて言うなら司祭様かね。アイリス様のお付きの方が、急いで司祭様に知らせて来てもらったんだけど、アイリス様の消えた場所に来た瞬間、ほくそ笑んでたんだよ。ほんの一瞬だったけど、なぜ笑うのか不思議だったよ。この事は誰にも言わないで頂戴ね」

ほくそ笑んでたね、それが自覚があってか、無意識かはわからないけど、その司祭は確実に操られているわね。1度、会ってみましょう。

「おば様、ありがとうございます。私も、1度司祭様にお会いして状況を聞いてみます。おば様の事は言わないので安心して下さい」

アイリスが消えた状況も少し見えてきたわね。大聖堂に行きましょう。

○○○

ここが大聖堂か。物凄く立派な建物だ。ヨーロッパに建てられているものと似ているわ。一般人が入れる礼拝堂はここかな。中に入ると、周辺の壁に絵が描かれており、中央の祭壇に大きな女神スフィア?の像があった。うわー、綺麗な人だ。女神スフィアなのかな?アイリスが消えた場所は、あの像の真下にある祭壇か。うーん、さすがに痕跡がないか。

「おや、これは綺麗なお嬢様だ。何か礼拝堂にご用ですか?」

あ、この人が司祭様か。60代男性で、口と顎髭が凄く似合っている。物腰柔らかそうな人物かな。

「司祭様、はじめまして、サーシャと言います。今日、この街に到着したのですが、アイリス様が行方不明と聞いたので、お話を伺いたく来ました」

この司祭、間違いない。邪族に操られてるわ。頭の上に妙な線が繋がっている。普通の人間には、まず見えないわね。司祭自身は人間だけど、妙に顔色が悪いし覇気がない。アイリスの捜索で疲れているのもわかるけど、生気がない。恐らく、邪族の洗脳をずっと受けているんだわ。

相手を洗脳する邪法は、存在する。その名は『ブレインウォッシュ』。ただし、この邪法は、抵抗力に強い人には通用しない。フィンの時は、ソフィア・アレンシャルの恋心を利用しつけ込む事で抵抗を落とし、『ブレインウォッシュ』を使ったのだろう。

「それはそれは、ありがとうございます。今、騎士団と冒険者の方々が懸命に捜索してくれているのですが、残念ながら、手掛かりらしきものは見つかっておりません」

「司祭様、お顔が優れないように見えますが大丈夫ですか?」

「なんとか大丈夫です。ここ最近、夢でうなされて、あまり寝れていないんですよ」

成る程、いくら司祭で邪族の抵抗性が強くても、毎日少しずつ『ブレインウォッシュ』をかければ、抵抗も弱まってくるか。

「良ければ、回復魔法を唱えましょうか。私は聖魔法を扱えます」
「はは、気を使わせてしまいましたな。身体が、かなりきついのでお願いします」

よし、許可をもらえた。まずは、この線を断ち切らないとね。司祭の部屋に移動し、横になってもらった。目を瞑った隙に、魔力を纏った手刀で線を切断し、その線を掴んで魔法にスキル『隠蔽』を使いつつ、聖魔法『ホーリーボルト』を見えないように圧縮し打ち込んでやった。『ホーリーボルト』は、聖属性を持った雷の事だ。普通に使えば、この建物は全壊するかな。これで、邪族を1体討伐だ。本当なら、切断した線を辿っていきたいところだけど、人命優先ね。

「それじゃあ、回復魔法を唱えますね。『マックスヒール』」

司祭の身体が光輝き、体力・精神ともに全回復した。

「これは、マックスヒール!わかる、わかるぞ。力が全回復している。こんな事が----聖女様以外にも使い手がいるとは------サーシャ、----ありがとう」

あれ?さっきと口調が違うんですけど、精神も回復したから、これが司祭様の素なのかな。顔付きも、穏やかだったものから凛々しくなった表情に変化していた。ここまで変わるものなの!

まあ、いいか。これで司祭様の信頼を獲得できた。
話を進めていこう。
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