邪神を喰った少女は異世界を救済します

犬社護

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2章 テルミア王国 スフィアート編

『オールアビリティ・セカンド』

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朝11時の少し前、私達はエレノア様がいる2階の大部屋から広場を見ていた。広場は、とても賑やかな事になっていた。アイリスが無事保護された事が噂で流れていたのだ。そして、11時、エレノア様がベランダに出て、アイリスが無事発見され、体調も問題ない事が発表された。そして、アイリスがエレノア様の隣に現れた途端、物凄い騒めきとなった。あちこちから、「アイリス様~!」コールが連呼された。はっきり言って、凄い光景だ。


因みに私は、2人のボディガードをしており、民衆から見えない後方にいる。朝9時に来て、騎士団にスキル『魔力纏い』を教え、私の力も確認してもらったら護衛を快く許可してくれた。その後、なぜかサーシャ様と言われ、結局、貴族・騎士団全員から尊敬の眼差しで見られる様になった。


(後でアイリスから理由を聞くと、貴族の人達が前もって私の事[アイリスの発見、回復魔法の技量が非常に高い、Bクラス邪族を討伐する力量がある]を教えたらしい。始めは、騎士団の人達も若干怪しんでいたが、スキル『魔力纏い』を教えた事でそういった疑念が一掃された。このスキルのおかげで、騎士団の総合力がかなり向上したらしいからだ。貴族には自身の力と回復魔法の技量で、騎士団には自身の力とスキル『魔力纏い』を教えた事で、私自身の扱いが満場一致でアイリス並みになったらしい)


エレノア様が右手を挙げると、騒めきが収まった。そして女神スフィアの神託の一部(聖剣と邪神、スフィアを狙う者を除く)と、近いうちに邪族が攻めてくる事を公表した。一時、大騒ぎとなったが、兼ねてから研究していたポーション類の改良と武器防具の魔法付加の技術の成功を伝えると、違う意味で大騒ぎとなった。物凄い士気の高まりだ。エレノア様の隣には、開発者であるドルクさんとイルミさん、道具屋の主人と作製する薬師の人がいた。


この発表をする前に、ドルクさんとイルミさん、道具屋の主人と作製する薬師の人には、前もって来てもらい、この技術の開発者になってもらった。始めは、全員「恐れ多いことだ、無理だ。」と嫌がっていたが、ある程度の事情を話したことで、渋々ながら納得してくれた。ここでの邪族討伐後、アイリスと旅に出るから、目立った行動はしたくないんだ、ごめんね。


○○○


今は14時、一通り落ち着いてからアイリスの修行を始めた。フィンは、騎士団全員と模擬戦中だ。圧倒的に実戦経験が足りないから、少しでも実力を上げておかないとね。また、私が『魔力纏い』を冒険者の人達に教える事になったため、Cランク遺跡に行くのは、邪族殲滅後となった。アイリスの件、ポーション類、武器防具類の件で騒がれているため、そこまで目立たないだろう。

「アイリス、あなたに教える魔法は、味方の基礎能力値全てを一時的に底上げする力があるわ」

「鑑定を持っていなくても、大丈夫なんですか?」

「逆よ。鑑定があれば数値ばかりに囚われて、魔法が完成してもその数値の2倍以上にはならないでしょう。この魔法を修得するには、相手の魔力の流れを完全に把握し、直感的に攻撃・防御・素早さを知る必要があるわ。その場合なら、時によって2倍以上の力が発揮する可能性もある。慣れれば、すぐに把握して複数の人間に唱えられるでしょう。あと、詠唱は一切いらないからね」

「無詠唱でやるんですか!」

「どうも、この世界の人達は詠唱に拘りすぎ。魔法は、全てイメージによって決まる。詠唱は、そのイメージ部分をを補助するだけのものよ。一度見ただけで、威力そのままで無詠唱で放つ人もいるでしょう」

「います!AランクSランクの人は、ほぼ無詠唱でやってます」

「その人達は、経験でわかったんでしょう。イメージが全てだという事をね。今から、騎士団全員とフィンの魔力の流れを把握しなさい。焦らず一人一人やっていけばいい。そのうち、ある事に気がつくはずよ」

「はい!」

やはり、アイリスは魔法の才能が凄くある。15分程でフィンの魔力の流れを完全に把握した。そして、1時間後には騎士団全員を把握出来た。

「お姉様、魔力の流れが全員違います。!これが正解ですか?」
「正解、よくわかったわね。スキルを見てみなさい」

「あー、気配察知がレベル2になりました」
「そんなところでしょう。このスキルのレベルを上げていくわよ」

「気配察知はそんな簡単に上がらないと聞きましたが」
「ふふ、大丈夫。アイリス、水を水面にゆっくりと1摘落とすとどうなる?」

「えーと、落ちた場所から円になって広がっていきます」

「そう、次は自分を中心として、この地面を水面として考えて、魔力をほんの1摘だけ落としてみなさい。そしてそれを薄く広げていきなさい。この作業は、目を閉じてやりなさい。そうすると、今のあなたなら驚くでしょうね」

「やってみます。------え、なにこれ、うそ!色んな位置に魔力を感じます。あれ、この穏やかな魔力は、もしかしてエレノア様ですか?」

「正解よ。アイリス凄いじゃない。それじゃあ、気配察知はいくらになったかな?」

「え~~~、レ、レベル4になりました。嘘、こんな簡単に上がるなんて」

これは、アイリスだから簡単に上がっただけだ。まだ、狭い範囲だけど、アイリスは魔力を立体的に捉えた。これが大きい。あとは練習あるのみか。まずは、あの魔法を修得させましょう。

「アイリス、この気配察知に頼りすぎちゃ駄目よ。暗殺者レベルだと、直前まで魔力の気配自体を絶つ者もいるでしょうからね」

「はい、わかりました。でも、お姉様凄いです。効率良くやれば、ここまで簡単にスキルが上がるんですね」

アイリスの目が凄く輝いている。

「まあ、そうだけど、ここまで上がるのは、それだけアイリスの魔力制御とイメージが上手いからよ」

「えへへ、ありがとうございます」

「さあ、次はいよいよ最終課題ね。フィンで試してみましょう」
「え、魔法ですよね。大丈夫でしょうか?」

「フィンだからこそ、大丈夫なのよ。フィンの魔力は毎日見てるから、攻撃・防御・素早さを直感的に把握しやすいし、制御しやすいはずよ」

ここでフィンを魔法の試射として、呼び出した。

「ふぇ~~~、私を的にするんですか!そんな~~」

「勘違いしないの。この魔法は補助魔法と言ったでしょ。見慣れているフィンでないと駄目なのよ」

昨日教えたはずなのに、完全に忘れてるわね。

「あ、そうでした。うっかりしてました」

「フィンは、そのまま立っていなさい。さて、アイリス、フィンの魔力の流れを感知して、全能力が2倍あると思い浮かべなさい。そして、『オールアビリティ・セカンド』と言いなさい」

「はい、-----『オールアビリティ・セカンド』」

すると、フィンの身体全体が光り、赤白い光がフィンを覆った。

「アイリス、成功よ」
「やった、フィン姉、成功です。身体はどうですか?」

肝心のフィンは、自分に起こった事に驚き、身体全体を確かめている。

「す、凄い。こんな力、今まで感じた事ないよ。凄く力が溢れてるよ。は!とおー!凄い、凄い!あははは」

「うん、基礎能力値がほぼ2倍になっているわ。完璧ね!」

「嬉しいです。この魔法があれば、邪族との戦争時、多くの人々に使えます」

「でも、欠点もあるから注意するのよ。まず、制限時間は30分。必ず30分以内に解除すること。今のアイリスはレベルが低いから、全員は不可能よ。そこは私がフォローするわ」

「う、そうですね、自分のレベルが低い事を忘れていました」

それにしても、フィンはハッスルし過ぎでしょ。『魔力纏い』と似たようなものなんだけど。自分自身で引き上げる場合と他者が無理矢理引き上げる場合で、高揚感とかが違うのかな?

「アイリス、フィンの魔法を解除してあげて」

解除すると、フィンのテンションが猛烈に低下した。

「えー、もう終わりですか?もっと味わってみたかった。」

「フィン、この魔法の制限時間は30分。今は、すぐ解除したから身体に問題ないだろうけど、10分を超えて解除すると、身体に筋肉痛が起こり始める。----そして、30分を超えて解除すると、-----身体全身に激しい痛みが発生し、数日寝たきりとなるわ」

そうそう都合の良い魔法はない。この魔法にはメリットも大きいけど、デメリットも非常に大きい。他者の魔法で自分現状の身体の2倍の能力を一時的とはいえ、無理矢理向上せるのだ。当然『魔力纏い』と異なり、身体の負担も大きくなる。というか実際に試した。精神世界だから良かったものの、現実世界でやってたら死んでたわね。

「そうでした、大きなデメリットもあるんでしたね」

「『魔力纏い』は、自分の魔力とスキルの相乗効果で基礎能力値を底上げするから、大きな負荷は掛からないけど、この魔法は他者の基礎能力値を無理矢理引き上げるから、かなりの負荷が掛かるのよ。それに、今回この魔法は、『魔力纏い』スキルの低い冒険者達に必ず必要となる。フィンが先にやってくれて助かったわ。明日には、冒険者の人達に『魔力纏い』を教えて、『オールアビリティ・セカンド』を使う予定だったの。フィンであれだけテンションが上がるんだから、冒険者の人達はもっとね」

「う~、師匠、忘れて下さい」


着々と準備が整いつつあるわね。
さあ、明日は冒険者達に『魔力纏い』を教えていきましょう!
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