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2章 テルミア王国 スフィアート編

教皇との謁見

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夜20時、礼拝堂に行くと、マウロ司祭、クリンカ大司教、そして邪族に洗脳された4人の人間がいた。クリンカ大司教、仕事が速すぎです。まさか、もう発見したとは!

「サーシャ、早速頼む。この4人には、もう説明済みだ」
「わかりました。『マックス・ヒール』」

同時に線を切断し4つの線を掴んで、それぞれに聖魔法『ホーリーボルト』を撃ち込んだ。なぜか全員、私を見ていた。

「4人の人間同時に『マックス・ヒール』か、大した奴じゃ」
「お姉様、その技術を盗んで見せます」

まあ、イリスがやる気になっているからいいか。

「クリンカ大司教、これから教皇様に会いに行けるんでしょうか?」

「そのことなんだが、どうも貴族共がアイリス様を直に見たいと言ってきてな。今、教皇様とともに大広間で待っている。サーシャ、すまんな」

「いえ、構いませんよ」

4人の神官達は、私にお礼を言った後、先に大広間へ移動してもらった。ここで、イリスの偽装を解除しておいた。さて、クリンカ大司教が既に話してくれてるだろうけど、貴族共、きっと何か言ってくるだろう。話を聞かない場合は、最悪、力で黙らせるしかないか。


○○○


-------今、私の目の前に大広間への扉がある。そして、その扉がゆっくりと開かれた。私達が入ると、周りが賑やかになった。

「ああ、アイリス様だ、良くご無事で」
「おお、フィン王女もおられる。クリンカ大司教の言った通りだ」
「アイリス様~~」

正面奥には教皇様が、周りには50人程の貴族達がいた。私は、教えてもらった通りの礼儀作法で教皇様に頭を下げ、自己紹介を始めた。

「教皇様、初めまして。サーシャと申します。フィン王女とアイリス様をお連れしました」

教皇様て女性だったのね。凄く気品のある人で、惹かれる雰囲気がある。

「私は、エレノア・ベーリングと言います。サーシャ、この度はフィン王女と聖女アイリスを助けて頂き、ありがとうございます。フィン王女、お久しぶりですね。そして、アイリス、良くぞ無事に戻って来てくれました」

「教皇様、お久しぶりでございます。私、フィン・レーデンブルクは、ガルム一味に囚われていた所、サーシャさんに助けて頂きました」

「エレノア様、同じく私も大森林で邪族に追われていた所をサーシャさんに助けてもらいました。サーシャさんがいなければ、私は死んでいたでしょう」

2人とも、師匠やお姉様と言わないでくれて良かった。ここで呼ばれたら、要らぬ誤解を生んでいたよ。おっと、貴族連中の1人が文句を言ってきた。

「教皇様、横から口を挟むのをお赦し下さい。アイリス様、フィン王女、ここにいるサーシャという女性は、本当にお2人を助けたのでしょうか?もしかしたら、黒幕である可能性もあります」

この貴族は、私を試しているのかな?それとも、ただのお馬鹿なのかな?仕方がない、反撃しますか。

「私がここにいて、貴方方全員が生きている時点で、黒幕ではないという証拠です」

私が何を示しているのかわかったようだ。

「貴様、不敬だぞ!その言い方であれば、今この場で全員を皆殺し出来る様ではないか!」

面倒くさいけど、仕方がないか。

「教皇様、私の力の一部をこの場で示していいでしょうか?」
「ええ、構いません。あなたのことは、クリンカ大司教から全て聞いています」

ああ、私が異世界の召喚者、邪神の討伐者である事を知っているのね。それでは、貴族達に『威圧』をかけましょう。全員強さがバラバラだから、それぞれ気を失う一歩手前までにしますか。


----3分後、貴族連中全員が床に両手両膝をついていた。全員、満身創痍の状態だ。仕方がないので、回復魔法『リジェネレーション』を唱えてあげた。ヒールは瞬時に回復するけど、この魔法は少しずつ体力を回復させていく。

ここで教皇様が動いてくれた。

「貴方方も、これでわかってもらえましたね。サーシャさんは、我々の味方です。もし、敵であれば、私も含め全員が殺されていたでしょう」

先程の貴族が謝罪してくれた事で、次の話に進めることになった。

「サーシャ、洗脳された6名はもう大丈夫なのですか?」

「はい、邪力の線を切断しました。体調も問題ありません。今回は、魔導具の不具合が原因です。早急に修理をするべきです」

聖魔法の事は、言わない方がいいだろう。

「あの魔導具が、そうですか。わかりました。早速修理の手配をしておきましょう。-----現在、ここスフィアートが邪族に狙われています。いつ攻めて来るのかわからない状況です。サーシャ、邪族を殲滅するため、私達に協力してくれませんか?」

「もちろん協力致します。第1封印が破壊されている状況で、多くの人々を死なせるわけにはいきません。既に手はいくつか打ってあります」

「素早い行動、感謝致します。皆の者、明日の朝11時にアイリスを無事保護したこと、邪族が攻めて来ることを同時に発表します。そして、神託の件は内密とします。皆、次の行動に移りなさい」

「「「ははーーーーー」」」

教皇様が言うと凄いな。これだけで士気が大幅に上がったよ。みんな一斉に行動に移った。

「それでは、皆も納得した様ですし、私の部屋へを移動しましょうか」

部屋へ移動中、先程の貴族達が私に頻りにお詫びとお礼を言ってきた。しかも、サーシャ様と言われたよ。なんか目付きもアイリスを見ているかの様な感じがする。なぜ?

「ふふ、お姉様、先程の回復魔法ですよ。あれほどの人数を簡単に回復させたんです。お姉様の回復魔法の技量に驚いているんですよ。私でも、あの人数を一気には無理です」

えー、そうなの!まあ、味方でいてくれるならいいか。


○○○


ここは、教皇様、エレノア様の部屋だ。


なんか、凄く落ち着くな。ここいるのはエレノア様、クリンカ大司教、マウロ司祭、フィン、アイリスそして私を入れて6人だ。

「サーシャ、改めてフィン王女やアイリスを救ってくれてありがとう。魔導具が破壊され、アイリスが行方不明の状態で邪族が攻めて来たら、スフィアートは間違いなく陥落していたでしょう。邪族の件が片付けば、改めてお礼をしますね。それで、先程、あなたは、いくつか手を打っていると言いましたが、内容をお聞きしてもいいですか?」

ここで、私はポーション類の改良と武器防具への攻撃魔法と回復魔法の付加の件を教えた。案の定、エレノア様、クリンカ大司教、マウロ司祭は、驚きすぎて大きく口を開けていた。

「明日には、武器防具類のオークションが開かれます」

「-----正直驚きました。ポーション類の改良、武器防具への魔法付加、2つとも世界中で研究が行われていて、世界最大難問とも言われています。それを簡単に解決してくれるとは、本当に感謝しきれませんね」

世界最大難問!そこまでなの!

私の場合、ラノベやネット小説を読んで、思い付いてやったら出来たんですけど。
そんな適当にやって出来ましたとは言えない。---------うん、軽く流そう。

「私が解決したのは、最も基本的な土台とされているところですから、今後の改良は任せます」

「いえ、それだけで充分、世界に貢献してますよ。あとは、神託ですか。聖剣?は持っていますか?」

エレノア様に、オリハルコンの剣を渡した。

「これは、確かに聖剣ではないですね。サーシャは、これをどう改良するつもりですか?」

「そうですね、まずオリハルコン自体を別の金属に改造します。私の魔力を常時流し込んで、私の魔力に耐えうる金属に変型させます。通常なら長い年月を必要としますが、短期間で出来る方法を知っています。その方法でも、かなり時間が必要と思います。何ぶん、初めての挑戦ですので、どの程度の期間が必要かわかりません。金属改造後、金属自体に虚無の魔法を付加させる予定です。完成すれば、あらゆる物を虚無へと返す神剣となります。普通の人には、絶対扱えません。触った時点で取り込まれ死にますね。現状、私専用の物となりますが、ゆくゆくは機能を制限して聖女限定に使用可能にする予定です」

ガルム一味から奪ったオリハルコンを調べてみたけど、オリハルコンでも私の魔力の扱い方に長期間は耐えきれない事がわかった。あの時は本当に困ったわ。でも、オリハルコンは神の金属と呼ばれてるぐらいだから、何か改良出来るんじゃないかと思い、破壊覚悟で私の魔力を常時少しずつ流し込んで、オリハルコンの中で循環させてやった。すると、まだ短い期間だけど、ほんの少しずつ変化している事がわかった。鑑定すると、オリハルコンから新たな金属へ変換中となっていた。現在でも、私のアイテムボックス(精神世界)内で、常時流し込んで循環中だ。これをこの剣に応用すれば、神剣を創る事が可能となる。

部屋全体がシーンとなった。

「あのお姉様、いずれ私が使っていき、聖女が引き継がれる度に神剣を継承していくという事ですか?」

「ええ、その通り。たとえ聖女であっても、魔力循環・魔力操作・魔力纏い、この3つのスキルレベルを各々最低8にしないと使用不可にする予定よ。はっきり言って、この世界の人達は聖剣に頼りすぎ。スフィア教で、この神剣を厳重に保管し、何かあった時は聖女が使用すれば良い」

また、部屋全体が静まり返った。え、何?誰か喋ってよ。
あ、エレノア様が喋りだした。でも、凄く身体が震えてるよ。なぜ?

「サーシャ、それは私達にとって非常に有難いわ。でも、あなたの貢献度に対して、私達は同等のものを返せないわ」

「え、私はそういうものを求めていません。強いて言えば、

1) 今後アイリスを旅に連れて行く許可が欲しい
2) 各支部に連絡して、街への出入りを楽にして欲しい
3) ギルドのクラスをAにして欲しい
4) 旅の資金が欲しい

ぐらいですね」

「おい、サーシャ、それだけでいいのか!もっと言って良いんだぞ!」

「そうじゃ、スフィア教にそこまでの事をしてくれるんじゃから、もっと豪快な物を注文して構わんぞ」

「そうですよ、サーシャ」

えー、そんな事言われても、あとは自分で何とか出来るのよね。

「えーと、そう言われても、あとはポーション類や武器防具の値引きくらいですかね?」

「なんと欲のない奴じゃ」
「はは、これで邪神なんだから笑ってしまうよ」

「ふふふ、有難う、サーシャ。今言った事は全て叶えるわ」

おー、やったー!言ってみるものね。

「クリンカ大司教、マウロ司祭、明日から忙しくなりますよ。サーシャ、フィン王女、アイリス、明日朝9時に礼拝堂に来て下さい。大切な発表がありますからね」

「「「はい!」」」


エレノア様が良い人で良かった。さあ、明日からは忙しくなるわ。
気合い入れて行きましょう!
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