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3章 ガルディア帝国 マルコ遺跡編
マルコ遺跡【Aランクダンジョン】攻略開始
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全ての準備が整ったので、翌朝マルコ遺跡へと出発した。フィンとイリスは、Aランクダンジョンのためか緊張している。今日は、まずこの2人をダンジョンに慣らさなくてはいけない。『魔力纏い』があるとはいえ、Aランク邪族ともなると、私達と同じ様に邪力を纏ってくる連中もいるはずだ。初期の1~5階層だと、まだBランク邪族が多く出現するので、肩慣らしには丁度良い。私のレベル上げもあるしね。闘技会が落ち着いたら、1人で来て、レベルを大幅に上げていこう。イリスとフィンに関しては、昨日の夜考えた通り、闘技会が行われるまでに、パワーレベリングを行い、大幅なレベルアップをさせておこう。ゾンビハウスを攻略出来たら、大幅なパワーレベリングになるけど、かなり困難と聞いているから挑戦するかは、まだ保留ね。
「マルコ遺跡に到着したようね。フィン、イリス、心の準備は出来たかな?」
「「はい!覚悟を決めました。」
「ここからは、リッカとジンは別行動ね。暴れてもいいけど、他の冒険者の人達に迷惑をかけたらだめよ。1回の迷惑につき、1回お仕置きするからね。」
「「はい、わかりました。」」
「ジン、この指輪を渡しておくわ。ダンジョンでは、討伐した邪族は消滅しドロップ品が落とされるの。『アイテムボックス』が付与されているから、討伐した時のドロップ品を入れておいたらいいわ。」
「はい、使わせて頂きます。」
「お昼12時に呼び出すから、それまで自由行動よ、解散!」
リッカとジンが気合を入れて、マルコ遺跡に乗り込んでいった。
マルコ遺跡、確かにガルディアの中で最古と言われているだけあって、ヨーロッパにあるどこかの巨大な神殿を思い起こせる。屋根と柱だけが残っていて、それだけでもどこか威厳がある。話では、神殿の中央に階段があり、そこからダンジョンが始まるようだ。
「2人とも行くわよ!」
「「はい!」」
神殿の中に入ると、中央に大きな地下への階段があった。階段近くには、何組かの冒険者もいて、皆ボロボロだった。
「大丈夫ですか?よければ、回復魔法をおかけしますが?」
「すまない。お願いしていいか。俺達は、地下5階層まで行きゾンビハウスに挑戦したんだが、動物のゾンビが強過ぎてな。なんとか勝ったものの、全員ボロボロさ。運良く屋敷の中にある女神像の部屋を発見出来たから脱出してきたんだ。体力も魔力も、もう殆ど残っていない。」
ゾンビハウスか。
他のパーティーも同じくらいの状態だから、普通のヒール系じゃ駄目ね。
「『マックス・リジェネレーション』」
唱えた瞬間、地面に巨大な魔法陣が現れ、パーティー全員を囲んだ。
全員、状態がかなり酷かったが、徐々に身体全体の傷が修復されてきた。10分程で、全員が完治できたようだ。これでもう大丈夫だろう。
「え、まさか、ここにいる全員を治療してくれたのか!」
「はい、ヒール系だと効率が悪いので、リジェネ系を使いました。あと、このマジックポーションを使って下さい。スフィアートで改良されたものですから、美味しく魔力もかなり回復するはずです。」
「最新のマジックポーションじゃないか!---恩にきる。君達は3人だけなのか?いや、すまない。このダンジョンは罠も緻密だが、それ以上に、邪族のスキルの扱い方が地上よりも上手い。あと、御節介だと思うが、ゾンビハウスには挑戦しないほうがいい。予想以上に困難だ。それじゃあ、充分に気をつけてくれ。」
冒険者全員からお礼を言われた。魔力も殆ど残っていなかったため、全員死を覚悟していたそうだ。散々お礼を言われた後、冒険者達はビルブレムへ帰って行った。ここから徒歩でも、2日程かかるが大丈夫だろう。
「お姉様、その優しさを昨日の対戦相手に見せれば良かったのに。」
「昨日のは別!さっきの冒険者達は、ダンジョンで死にそうになったのよ。そういう人達にこそ、優しくしてあげないと。なんでも優しくしてあげれば、いいというものでもないの。時には、厳しくいかないとね。お仕置きルールみたいに。」
「う!確かにそうですね。」
さて、階段近くまで来たけど、大きいわね。モンスターの口の中に入るような感覚ね。
「さあ、2人ともダンジョンに入るわよ。」
階段を降りると、大きな扉があった。それが自動的に開いた。私達は中へと入っていくと、そこは------森林だった。
「へえ、1階層は森林ゾーンか。」
「森林ですか。あまり良い気分になれないですね。転移した時の事を思い出します。」
「くんくん、木の匂いを感じる。本物だし、明るい!これがダンジョンの中なんだ。」
周りを見渡すと、邪族の気配があるがうまく隠れている。この森林を利用して、気配を消している者もいるわね。Aクラスダンジョンだけの事はあるわ。今のフィンとイリスの力だと、6階層ですぐに殺されるわね。朝は1階層だけにして、環境を慣れさせておいた方がいいわ。当初の予定通り、各階層でフィンとイリスの【パワーレベリング】をしましょう。
パワーレベリング
1) 圧倒的強者が、レベルの高い敵を1ヶ所におびき寄せる。
2) 圧倒的強者が、おびき寄せた敵を死ぬ寸前まで攻撃する。
3) 圧倒的弱者が、1ヶ所に集めた敵に対して、全力で止めをさす。
4) 結果、その弱者は大幅にレベルアップする。
5) これを何度も繰り返す。
1~5階層で、パワーレベリングを繰り返しましょう。ある程度レベルアップしたところで、普通に戦ってもらって、スキルも上げていけばいい。
「フィン、イリス、まずは環境に慣れなさい。周りに邪族が数多く徘徊している。常に、『魔力纏い』と『気配察知』は使用しておきなさい。でないと殺されるわよ。」
「「はい!」」
「あ、フィン姉、木の上にスパイダードラゴン(Bクラス)が2体います。」
あら、よく気付いたわね。
「イリス、嵐魔法で攻撃して。落ちてきたところを止めをさすわ。」
私は後方に移動し、戦い方を観察しておこう。ドラゴンの名称が付いているけど、見た目は蜘蛛ね。体長3m、外殻は硬く、かなり防御力が高い上に素早い。こいつらは、状態異常攻撃が多い。特に雷属性の蜘蛛の巣を浴びると、厄介な事になる。どう対応するかね。
「事前情報で聞いていると思うけど、状態異常には気を付けてね。」
さて、私は今のうちに、パワーレベリングのための邪族を1ヶ所に集めておこう。
○○○ フィン視点
昨日の夜、師匠からマルコ遺跡に出現する邪族の事を色々と聞いたけど、はっきり言って怖い!Aランク邪族の基礎能力値は、現在の私の数値より3倍弱高い。1~5階層は殆どがBランク邪族、5階層より下はAランクばかりだ。いくら師匠の魔法で守られているからといっても不安だ。今の気持ちを師匠に正直に伝えると、私とイリスを短期間のうちに強くする手段はあると言ってくれた。【パワーレベリング】をすると言っていたけど、どう意味なのだろうか?パワーレベリングをしてから、5階層より下を攻略するとも言っていた。あの時、師匠は笑っていたんだよね。こういう時の師匠は、何か途方もない事を考えていて違う意味で怖いよ。あ、早速、スパイダードラゴン2体を見つけた。上手く気配を隠しているけど、その程度なら見抜ける。この邪族は、結構素早く状態異常攻撃を多く使ってくる厄介な敵だ。
「イリス、嵐魔法で攻撃して。落ちてきたところを止めをさすわ。」
「はい!」
私は、もっと強くなるためにどうすればいいのか、イリスと考えた。私の得意な攻撃は爪術だ。ミスリルの爪に魔法を付加し、攻撃力を増加させる技。ただ、スフィアートの戦争終了時、風魔法と雷魔法しか覚えていなかった。戦争が終わり落ち着いてから、師匠にお願いして全属性の魔法を教えてもらった。さすがに、全ては修得出来なかったけど、新たに水・氷・嵐を覚える事が出来た。師匠は凄い。これまで、氷や嵐といった上位属性は、下位の属性レベルが最低でも5はないと修得出来ないと聞いていた。師匠に話すと、イメージと魔力操作、魔力循環さえしっかりしていれば、下位や上位なんて関係ないらしい。昔の人が、そうでないと修得出来ないと思い込んでいただけだそうだ。
魔法に関しても、教科書に記載されている様々な魔法は、女神スフィアが作ったのではなく、昔の人によって開発されたものが定着し、それが世界中で使用されているだけらしい。師匠曰く、魔法はイメージが重要、フィンやイリスでもイメージがしっかりしていれば、自分が求める魔法を作り出すことか可能だそうだ。だから、教科書に記載されている魔法の中でも、自分に必要と思う魔法があるなら、それを覚えればいいけど、なければ自分で作れと言っていた。教科書に頼るなだそうだ。だから、私は自分専用の魔法を幾つか作った。というか、普通に作れた。
今、それを試す!
「『ダウンバースト』」
イリスの嵐魔法が放たれた。イリスも、私と同じ様に強さを求め、新たに雷・空間・炎・嵐を覚えた。イリスの魔力操作は凄い。本来、上位属性の嵐魔法『ダウンバースト』は上空から広範囲に敵を攻撃する魔法のはず、それを直径5m程まで圧縮して杖から放つ事で攻撃力と発射スピードをかなり上げてる。スパイダードラゴン1体を貫き、残り1体をこちらへ弾きだした。よし、あの技を使ってみよう。
私の場合、魔力操作はイリス程上手くは出来ないため、嵐属性魔法をあそこまで圧縮出来ない。悩んでいた時に、師匠がアドバイスをくれた。
【フィンの場合は、ミスリルの爪を利用しなさい。ミスリルは宝石の様に攻撃魔法を付与させることは出来ないけど、一時的に吸収させることが出来るわ。ただし、吸収したミスリルは5分程で爆発するから、吸収した直後に魔法操作を行い、技を放てば問題ないわ。】
私は、そのアドバイスに従い、ある必殺技を考えた。色々大変だったけど、試行錯誤して必殺技を完成させた。今が使う時だ!
「爪術『ストーム・クロス』」
私は、両腕に付けてるミスリルの爪に嵐魔法『ストーム』をかけ吸収させた。この魔法を爪の先端で一つにまとめ、それを両腕をクロスする様に放った。十字(クロス)となった私の爪術はスパイダードラゴンに命中し、クロスの中心部分から十字に裂けた。やった、成功だ!
師匠曰く、クロスする中心部分は、周りの何十倍の攻撃力となっているらしい。
「もう、討伐したの、早いわね!」
師匠に褒められた。嬉しいな。
「師匠、あの技が実戦で成功しました。」
「見てたわ。フィンもイリスも、ここに来るまでに自分達で修行していたようね。まさか、スパイダードラゴンに攻撃をさせず、それぞれ1発で倒すとはね。良くやったわ!」
「えへへ、お姉様、ありがとうございます。」
「これなら、しばらくの間、2人だけで行動するのもいいかもね。この周辺にいる連中はBクラスだし大丈夫でしょう。2時間だけ、2人で行動してみなさい。即死攻撃や体力が1/4になった時、『ディストーションフィールド』を発動する様にしてあるから、この2時間の間に魔法の発動回数が5回以内なら、お昼ご馳走を作ってあげるわ。」
「「本当ですか!」」
師匠のご馳走は、本当に王宮クラスの食事だ。どうせなら、1回も発動させないようにしよう。-----あれ、ちょっと待って!
「師匠、6回以上発動させた場合はどうなるんですか?」
----まさか
「決まってるでしょ。食事はあるけど、その前にきついお仕置きが待っているわ。」
「「やっぱり!!」」
「イリス、豪華な食事のため頑張ろう。」
「フィン姉、頑張りましょう!」
----師匠と別れて、イリスと2人で行動している。私もイリスも凄い緊張してる。今まで師匠がいてくれたから、安心して行動出来たし楽しかった。本来の冒険は、ここまで緊張感があるんだ。さっきと全然違う。
「フィン姉、お姉様とそんなに離れていないのに、雰囲気がさっきと全然違うね。」
「本来の冒険は、こうなんだろうね。師匠がいないだけで、ここまで違うとは思わなかったよ。!イリス、気を付けて、敵がいるよ!」
「え、-----あれ?敵がいるのはわかるんですが、姿が見えません。」
これは、擬態!周りの背景と同化させる事で、姿を完全に隠す技だ。敵は1体。それなら、なんとかなる。
「イリス、敵は今、私の前方にいる。イリスは、後方に移動して、目に魔力を集中させて!それなら、多分わかるはず。」
「わかりました。-----あ、いた!微かだけど見えます。フィン姉、危ない!」
イリスにへと目を離した瞬間、敵は目の前にいた!こいつは、カメレオンナイトだ。確か、暗殺系の邪族だ。
「く!」《ギ~~ン》
ミスリルの爪で、なんとか受け止めたけど、まずい!右から蹴りがくる。
「があ!」
「フィン姉!」
とっさにガードしたけど、こいつ体術も強い。右腕が痺れてる。
「くあああ~~」
「く、それなら、これでもくらいなさい!」
私は、とっさに氷魔法の液体窒素を使った。戦争終了後、師匠が忙しかったからリフィアさんに液体窒素の原理や作り方を教わった。凄くわかりやすく教えてくれたから、何度も何度も夜中に練習して、手の平サイズの液体窒素を作ることが出来た。それをカメレオンナイトの目に入れてやった。
「ぎゃあ~~~~」
あまりの痛さに悶絶しているためか、擬態も解けた。今だ!
「『ライトニングファング』、はあー!」
サンダーファングの雷エネルギーをさらに高め圧縮させた技、それが『ライトニングファング』だ。それでカメレオンナイトを袈裟斬りにしてやった。
危なかったけど、なんとか倒せた。
「フィン姉、凄い!カメレオンナイトの目に何をかけたの?」
「液体窒素ていうものをかけたの。リフィアさん曰く、あらゆる物を凍らせることが出来る究極の氷魔法だって。リフィアさんも師匠に教えてもらったて言ってたわ。」
「凄い!そんなものが存在したんだ。全然、知らなかった。」
「でも、今は氷魔法のレベルも低いから、手の平サイズの液体窒素を作るのが限界なんだ。リフィアさんは、広範囲で液体窒素の雨を敵に降らせたんだよ。」
「それでも作れる事自体が凄いです。『ハイ・ヒール』、腕の具合は大丈夫ですか?」
「うん、完治したよ。ありがとう。さあ、探索を再開しよう。」
----この後も、師匠と合流するまでに6回邪族と遭遇した。6回中2回は不意打ちで、即死攻撃1回、魔法攻撃1回で回避できず、あの魔法を発動させてしまった。正直、悔しかった。油断や慢心もしていなかった。敵の気配の隠し方が絶妙で、私もイリスも全く気付かなかった。今回、2人だけで探索してわかったことがある。それは、今まで師匠に頼り過ぎていたということだ。師匠がいなかったら、私達は一体何回死んでいたのだろうか。もっともっと強くなりたいと心底思った。
「マルコ遺跡に到着したようね。フィン、イリス、心の準備は出来たかな?」
「「はい!覚悟を決めました。」
「ここからは、リッカとジンは別行動ね。暴れてもいいけど、他の冒険者の人達に迷惑をかけたらだめよ。1回の迷惑につき、1回お仕置きするからね。」
「「はい、わかりました。」」
「ジン、この指輪を渡しておくわ。ダンジョンでは、討伐した邪族は消滅しドロップ品が落とされるの。『アイテムボックス』が付与されているから、討伐した時のドロップ品を入れておいたらいいわ。」
「はい、使わせて頂きます。」
「お昼12時に呼び出すから、それまで自由行動よ、解散!」
リッカとジンが気合を入れて、マルコ遺跡に乗り込んでいった。
マルコ遺跡、確かにガルディアの中で最古と言われているだけあって、ヨーロッパにあるどこかの巨大な神殿を思い起こせる。屋根と柱だけが残っていて、それだけでもどこか威厳がある。話では、神殿の中央に階段があり、そこからダンジョンが始まるようだ。
「2人とも行くわよ!」
「「はい!」」
神殿の中に入ると、中央に大きな地下への階段があった。階段近くには、何組かの冒険者もいて、皆ボロボロだった。
「大丈夫ですか?よければ、回復魔法をおかけしますが?」
「すまない。お願いしていいか。俺達は、地下5階層まで行きゾンビハウスに挑戦したんだが、動物のゾンビが強過ぎてな。なんとか勝ったものの、全員ボロボロさ。運良く屋敷の中にある女神像の部屋を発見出来たから脱出してきたんだ。体力も魔力も、もう殆ど残っていない。」
ゾンビハウスか。
他のパーティーも同じくらいの状態だから、普通のヒール系じゃ駄目ね。
「『マックス・リジェネレーション』」
唱えた瞬間、地面に巨大な魔法陣が現れ、パーティー全員を囲んだ。
全員、状態がかなり酷かったが、徐々に身体全体の傷が修復されてきた。10分程で、全員が完治できたようだ。これでもう大丈夫だろう。
「え、まさか、ここにいる全員を治療してくれたのか!」
「はい、ヒール系だと効率が悪いので、リジェネ系を使いました。あと、このマジックポーションを使って下さい。スフィアートで改良されたものですから、美味しく魔力もかなり回復するはずです。」
「最新のマジックポーションじゃないか!---恩にきる。君達は3人だけなのか?いや、すまない。このダンジョンは罠も緻密だが、それ以上に、邪族のスキルの扱い方が地上よりも上手い。あと、御節介だと思うが、ゾンビハウスには挑戦しないほうがいい。予想以上に困難だ。それじゃあ、充分に気をつけてくれ。」
冒険者全員からお礼を言われた。魔力も殆ど残っていなかったため、全員死を覚悟していたそうだ。散々お礼を言われた後、冒険者達はビルブレムへ帰って行った。ここから徒歩でも、2日程かかるが大丈夫だろう。
「お姉様、その優しさを昨日の対戦相手に見せれば良かったのに。」
「昨日のは別!さっきの冒険者達は、ダンジョンで死にそうになったのよ。そういう人達にこそ、優しくしてあげないと。なんでも優しくしてあげれば、いいというものでもないの。時には、厳しくいかないとね。お仕置きルールみたいに。」
「う!確かにそうですね。」
さて、階段近くまで来たけど、大きいわね。モンスターの口の中に入るような感覚ね。
「さあ、2人ともダンジョンに入るわよ。」
階段を降りると、大きな扉があった。それが自動的に開いた。私達は中へと入っていくと、そこは------森林だった。
「へえ、1階層は森林ゾーンか。」
「森林ですか。あまり良い気分になれないですね。転移した時の事を思い出します。」
「くんくん、木の匂いを感じる。本物だし、明るい!これがダンジョンの中なんだ。」
周りを見渡すと、邪族の気配があるがうまく隠れている。この森林を利用して、気配を消している者もいるわね。Aクラスダンジョンだけの事はあるわ。今のフィンとイリスの力だと、6階層ですぐに殺されるわね。朝は1階層だけにして、環境を慣れさせておいた方がいいわ。当初の予定通り、各階層でフィンとイリスの【パワーレベリング】をしましょう。
パワーレベリング
1) 圧倒的強者が、レベルの高い敵を1ヶ所におびき寄せる。
2) 圧倒的強者が、おびき寄せた敵を死ぬ寸前まで攻撃する。
3) 圧倒的弱者が、1ヶ所に集めた敵に対して、全力で止めをさす。
4) 結果、その弱者は大幅にレベルアップする。
5) これを何度も繰り返す。
1~5階層で、パワーレベリングを繰り返しましょう。ある程度レベルアップしたところで、普通に戦ってもらって、スキルも上げていけばいい。
「フィン、イリス、まずは環境に慣れなさい。周りに邪族が数多く徘徊している。常に、『魔力纏い』と『気配察知』は使用しておきなさい。でないと殺されるわよ。」
「「はい!」」
「あ、フィン姉、木の上にスパイダードラゴン(Bクラス)が2体います。」
あら、よく気付いたわね。
「イリス、嵐魔法で攻撃して。落ちてきたところを止めをさすわ。」
私は後方に移動し、戦い方を観察しておこう。ドラゴンの名称が付いているけど、見た目は蜘蛛ね。体長3m、外殻は硬く、かなり防御力が高い上に素早い。こいつらは、状態異常攻撃が多い。特に雷属性の蜘蛛の巣を浴びると、厄介な事になる。どう対応するかね。
「事前情報で聞いていると思うけど、状態異常には気を付けてね。」
さて、私は今のうちに、パワーレベリングのための邪族を1ヶ所に集めておこう。
○○○ フィン視点
昨日の夜、師匠からマルコ遺跡に出現する邪族の事を色々と聞いたけど、はっきり言って怖い!Aランク邪族の基礎能力値は、現在の私の数値より3倍弱高い。1~5階層は殆どがBランク邪族、5階層より下はAランクばかりだ。いくら師匠の魔法で守られているからといっても不安だ。今の気持ちを師匠に正直に伝えると、私とイリスを短期間のうちに強くする手段はあると言ってくれた。【パワーレベリング】をすると言っていたけど、どう意味なのだろうか?パワーレベリングをしてから、5階層より下を攻略するとも言っていた。あの時、師匠は笑っていたんだよね。こういう時の師匠は、何か途方もない事を考えていて違う意味で怖いよ。あ、早速、スパイダードラゴン2体を見つけた。上手く気配を隠しているけど、その程度なら見抜ける。この邪族は、結構素早く状態異常攻撃を多く使ってくる厄介な敵だ。
「イリス、嵐魔法で攻撃して。落ちてきたところを止めをさすわ。」
「はい!」
私は、もっと強くなるためにどうすればいいのか、イリスと考えた。私の得意な攻撃は爪術だ。ミスリルの爪に魔法を付加し、攻撃力を増加させる技。ただ、スフィアートの戦争終了時、風魔法と雷魔法しか覚えていなかった。戦争が終わり落ち着いてから、師匠にお願いして全属性の魔法を教えてもらった。さすがに、全ては修得出来なかったけど、新たに水・氷・嵐を覚える事が出来た。師匠は凄い。これまで、氷や嵐といった上位属性は、下位の属性レベルが最低でも5はないと修得出来ないと聞いていた。師匠に話すと、イメージと魔力操作、魔力循環さえしっかりしていれば、下位や上位なんて関係ないらしい。昔の人が、そうでないと修得出来ないと思い込んでいただけだそうだ。
魔法に関しても、教科書に記載されている様々な魔法は、女神スフィアが作ったのではなく、昔の人によって開発されたものが定着し、それが世界中で使用されているだけらしい。師匠曰く、魔法はイメージが重要、フィンやイリスでもイメージがしっかりしていれば、自分が求める魔法を作り出すことか可能だそうだ。だから、教科書に記載されている魔法の中でも、自分に必要と思う魔法があるなら、それを覚えればいいけど、なければ自分で作れと言っていた。教科書に頼るなだそうだ。だから、私は自分専用の魔法を幾つか作った。というか、普通に作れた。
今、それを試す!
「『ダウンバースト』」
イリスの嵐魔法が放たれた。イリスも、私と同じ様に強さを求め、新たに雷・空間・炎・嵐を覚えた。イリスの魔力操作は凄い。本来、上位属性の嵐魔法『ダウンバースト』は上空から広範囲に敵を攻撃する魔法のはず、それを直径5m程まで圧縮して杖から放つ事で攻撃力と発射スピードをかなり上げてる。スパイダードラゴン1体を貫き、残り1体をこちらへ弾きだした。よし、あの技を使ってみよう。
私の場合、魔力操作はイリス程上手くは出来ないため、嵐属性魔法をあそこまで圧縮出来ない。悩んでいた時に、師匠がアドバイスをくれた。
【フィンの場合は、ミスリルの爪を利用しなさい。ミスリルは宝石の様に攻撃魔法を付与させることは出来ないけど、一時的に吸収させることが出来るわ。ただし、吸収したミスリルは5分程で爆発するから、吸収した直後に魔法操作を行い、技を放てば問題ないわ。】
私は、そのアドバイスに従い、ある必殺技を考えた。色々大変だったけど、試行錯誤して必殺技を完成させた。今が使う時だ!
「爪術『ストーム・クロス』」
私は、両腕に付けてるミスリルの爪に嵐魔法『ストーム』をかけ吸収させた。この魔法を爪の先端で一つにまとめ、それを両腕をクロスする様に放った。十字(クロス)となった私の爪術はスパイダードラゴンに命中し、クロスの中心部分から十字に裂けた。やった、成功だ!
師匠曰く、クロスする中心部分は、周りの何十倍の攻撃力となっているらしい。
「もう、討伐したの、早いわね!」
師匠に褒められた。嬉しいな。
「師匠、あの技が実戦で成功しました。」
「見てたわ。フィンもイリスも、ここに来るまでに自分達で修行していたようね。まさか、スパイダードラゴンに攻撃をさせず、それぞれ1発で倒すとはね。良くやったわ!」
「えへへ、お姉様、ありがとうございます。」
「これなら、しばらくの間、2人だけで行動するのもいいかもね。この周辺にいる連中はBクラスだし大丈夫でしょう。2時間だけ、2人で行動してみなさい。即死攻撃や体力が1/4になった時、『ディストーションフィールド』を発動する様にしてあるから、この2時間の間に魔法の発動回数が5回以内なら、お昼ご馳走を作ってあげるわ。」
「「本当ですか!」」
師匠のご馳走は、本当に王宮クラスの食事だ。どうせなら、1回も発動させないようにしよう。-----あれ、ちょっと待って!
「師匠、6回以上発動させた場合はどうなるんですか?」
----まさか
「決まってるでしょ。食事はあるけど、その前にきついお仕置きが待っているわ。」
「「やっぱり!!」」
「イリス、豪華な食事のため頑張ろう。」
「フィン姉、頑張りましょう!」
----師匠と別れて、イリスと2人で行動している。私もイリスも凄い緊張してる。今まで師匠がいてくれたから、安心して行動出来たし楽しかった。本来の冒険は、ここまで緊張感があるんだ。さっきと全然違う。
「フィン姉、お姉様とそんなに離れていないのに、雰囲気がさっきと全然違うね。」
「本来の冒険は、こうなんだろうね。師匠がいないだけで、ここまで違うとは思わなかったよ。!イリス、気を付けて、敵がいるよ!」
「え、-----あれ?敵がいるのはわかるんですが、姿が見えません。」
これは、擬態!周りの背景と同化させる事で、姿を完全に隠す技だ。敵は1体。それなら、なんとかなる。
「イリス、敵は今、私の前方にいる。イリスは、後方に移動して、目に魔力を集中させて!それなら、多分わかるはず。」
「わかりました。-----あ、いた!微かだけど見えます。フィン姉、危ない!」
イリスにへと目を離した瞬間、敵は目の前にいた!こいつは、カメレオンナイトだ。確か、暗殺系の邪族だ。
「く!」《ギ~~ン》
ミスリルの爪で、なんとか受け止めたけど、まずい!右から蹴りがくる。
「があ!」
「フィン姉!」
とっさにガードしたけど、こいつ体術も強い。右腕が痺れてる。
「くあああ~~」
「く、それなら、これでもくらいなさい!」
私は、とっさに氷魔法の液体窒素を使った。戦争終了後、師匠が忙しかったからリフィアさんに液体窒素の原理や作り方を教わった。凄くわかりやすく教えてくれたから、何度も何度も夜中に練習して、手の平サイズの液体窒素を作ることが出来た。それをカメレオンナイトの目に入れてやった。
「ぎゃあ~~~~」
あまりの痛さに悶絶しているためか、擬態も解けた。今だ!
「『ライトニングファング』、はあー!」
サンダーファングの雷エネルギーをさらに高め圧縮させた技、それが『ライトニングファング』だ。それでカメレオンナイトを袈裟斬りにしてやった。
危なかったけど、なんとか倒せた。
「フィン姉、凄い!カメレオンナイトの目に何をかけたの?」
「液体窒素ていうものをかけたの。リフィアさん曰く、あらゆる物を凍らせることが出来る究極の氷魔法だって。リフィアさんも師匠に教えてもらったて言ってたわ。」
「凄い!そんなものが存在したんだ。全然、知らなかった。」
「でも、今は氷魔法のレベルも低いから、手の平サイズの液体窒素を作るのが限界なんだ。リフィアさんは、広範囲で液体窒素の雨を敵に降らせたんだよ。」
「それでも作れる事自体が凄いです。『ハイ・ヒール』、腕の具合は大丈夫ですか?」
「うん、完治したよ。ありがとう。さあ、探索を再開しよう。」
----この後も、師匠と合流するまでに6回邪族と遭遇した。6回中2回は不意打ちで、即死攻撃1回、魔法攻撃1回で回避できず、あの魔法を発動させてしまった。正直、悔しかった。油断や慢心もしていなかった。敵の気配の隠し方が絶妙で、私もイリスも全く気付かなかった。今回、2人だけで探索してわかったことがある。それは、今まで師匠に頼り過ぎていたということだ。師匠がいなかったら、私達は一体何回死んでいたのだろうか。もっともっと強くなりたいと心底思った。
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【完結】異世界に召喚されたので、好き勝手に無双しようと思います。〜人や精霊を救う?いいえ、ついでに女神様も助けちゃおうと思います!〜
月城 蓮桜音
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仕事に日々全力を注ぎ、モフモフのぬいぐるみ達に癒されつつ、趣味の読書を生き甲斐にしていたハードワーカーの神木莉央は、過労死寸前に女神に頼まれて異世界へ。魔法のある世界に召喚された莉央は、魔力量の少なさから無能扱いされるが、持ち前のマイペースさと素直さで、王子と王子の幼馴染達に愛され無双して行く物語です。
※この作品は、カクヨムでも掲載しています。
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三田 陽菜25歳。会社に行こうと家を出たら、足元が消えて、気付けば異世界へ。
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パーティーを追放されるどころか殺されかけたので、俺はあらゆる物をスキルに変える能力でやり返す
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パーティー内で逆境に立たされていたセクトは、固有能力取得による逆転劇を信じていたが、信頼していた仲間に裏切られた上に崖から突き落とされてしまう。近隣で活動していたパーティーのおかげで奇跡的に一命をとりとめたセクトは、かつての仲間たちへの復讐とともに、助けてくれた者たちへの恩返しを誓うのだった。
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